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○戦傷病者戦没者遺族等援護法の運用について(その二)

(昭和三八年七月一日)

(援護第一六六号)

(各都道府県民生部長・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省援護局援護課長通知)

標記のことについて、別添のとおり問答集を作成したので、戦傷病者戦没者遺族等援護法の運用に資せられたい。

(別添)

戦傷病者戦没者遺族等援護法問答(その二)

(問一) 旧国家総動員法による被徴用者が徴兵検査の通知を受けて郷里へ帰る途中空襲のため爆死した場合には、その者が徴用を解除されていない限り業務上の死亡として取り扱つて差し支えないか(群馬県)。

(答) 御照会の場合は、総動員業務につくことを事実上免除されている間の死亡であるから、業務上の死亡と解されず、したがつて、戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「遺族援護法」という。)の該当者として取り扱うことはできない。

(問二) 満州における報国農場の隊員は旧国家総動員法による被徴用者ではないが、隊員としての選衡事情及び隊員としての勤務の実態等は被徴用者の場合と類似した状態であつたので、その死没者を準軍属として処遇するよう配慮されたい(香川県)。

(答) 一般の満州開拓民、特に日ソ開戦前の満州開拓青年義勇隊の隊員又は満州国内における勤労報公務員との均衡上等からして、報国農場の隊員のみを準軍属の範囲に加えることは適当でないものと考えているが、今後の問題として慎重に検討したい。

(問三) 準軍属について、その父が遺族給与金を受給中に、その母が年齢到達によつて受給権が発生し、その後父が死亡した場合、母の請求権の消滅時効はいつから進行するのか(愛媛県)。

(答) 母の権利発生のときから時効は進行するものと解する。

(問四) (問三)の(答)のとおりであれば、母の権利発生に伴い、母(被選定人が父であるときは、父)は請求者選定届を添えて請求書を提出し受給権の確認を得ておくべきであるか(愛媛県)。

(答) 御見込みのとおりである。

(問五) 遺族給与金の受給権を有する準軍属の父母が別居している場合、遺族給与金の分割支給はできるか(愛媛県)。

(答) できないものである。

(問六) 扶養することのできる直系血族がともにない準軍属の父母について、母は六○歳未満であつたため遺族給与金の受給権が発生していなかつたが、父は六○歳以上であつたため昭和三十四年一月から遺族給与金を受けている場合において、この母が次に掲げる日に六○歳に到達したときは遺族給与金の受給権はどうなるか(群馬県)。

(一) 昭和三十八年九月三十日

(二) 昭和三十八年十月一日

(三) 昭和三十八年十月二日

(答)(一) 母は、法改正前である昭和三十八年九月三十日にすでに受給資格を得ることになるから、同日から父と同順位において遺族給与金の受給権を有する。

(二) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十八年法律第七十四号。以下「法律第七十四号」という。)の施行の日に権利を取得することになるが、この母の場合は同法の施行によつて権利を取得したのではなく、六○歳への到達によつて権利を取得したものであるから、同法が施行されなかつたとしてもその日に権利を取得するものであり、したがつて、同法附則第四条の適用はなく、母は父と同順位において十月一日から遺族給与金の受給権を取得する。

なお、この御照会とは異なつて、母が扶養を期待できる直系血族を有していて、そのまま十月一日に六○歳に到達した場合には、法律第七十四号の施行によつて権利を取得したこととなるから同法附則第四条の適用を受け、母は、十二月三十一日までは父の後順位とみなされ、昭和三十九年一月一日から遺族給与金の受給権を取得する。

(三) 母は法律第七十四号の施行日である十月一日には未だ権利がなく、十月二日に六○歳到達により権利を取得したもので、同法の施行により権利を取得したものではないと解して差し支えないから、母は父と同順位において十月二日から遺族給与金の受給権を取得する。

(問七) 準軍属の父母に対する遺族給与金の支給条件が緩和されたが、入夫婚姻による妻の父母に対する遺族年金又は遺族給与金の所得制限を撤廃することは考慮できないか(滋賀県・兵庫県)。

(答) 入夫婚姻による妻の父母は、実父母と異なり祖父母と同程度の処遇をすることが適当であると考えるので、所得制限を撤廃することは考えていない。

(問八) 戦時災害要件を撤廃した後の公務傷病の判定基準は示されるか。また、今回の改正により軍属と準軍属との公務傷病の考え方は同じとなつたと考えてよいか(神奈川県・長野県・兵庫県・愛媛県・鹿児島県)。

(答) 公務傷病の判定基準を特に示す予定はないが、軍属と準軍属との公務傷病の一般的な考え方は同様になつたものと理解されたい。

(問九) 在郷死亡者のうち、直接死因となつた傷病が従前の取扱上公務傷病とされているものと異なるため、遺族年金等が支給されていない場合があり、また、身分関係についても戸籍と事実とが相違しているために遺族援護法に規定された遺族と認められない場合がある。このような実情をそのまま看過することは遺族援護法の立法趣旨からみても適当でないので、現地について特別の実情調査を実施のうえ実情に即した特認の措置を講ぜられたい(香川県)。

(答) 死因の公務性については、従来から死亡診断書の病名に捉われることなく事実に即した判定を行なうよう努力をしているので、症状の経過、死亡直前の具体的症状が判明する診断書又はそれを推定しうる当時の記録等があれば、却下済の事案であつても、その都度証拠を添えて当局に個々に協議されたい。また、親族関係、たとえば、親子関係があつたかどうかは、民法の規定によるべきであるので、これについては、厚生大臣の認定により処理することは考えていない。

(問一○) 法律第七十四号に関連し、すでに却下されている事案につき、死因関係の適格通知を出す予定はあるか(青森県)。

(答) 出すことは考えていない。

(問一一) 内縁関係にあつた男Aとその内妻Bとの間の子Cは、Bの実姉Dの子(私生子)として戸籍上の届出がなされていたところ、Cは、昭和十九年九月十二日死亡(Cには配偶者及び直系卑属はない。)し、Aは、昭和二十年十一月二十一日B(Bは昭和三十年八月二十三日死亡)と入夫婚姻の届出をした。その後、Aは、CがDの私生子として届出がなされているのは誤りであるとして戸籍法第百十三条の規定により、某家庭裁判所に「CをDの戸籍からAの戸籍に移記する」旨の戸籍訂正許可の審判を申し立て、昭和三十四年七月二十九日同裁判所により当該戸籍訂正許可の審判がなされ、Aは、同年八月三十一日その旨の届出を行なつたが、Aは、これと併行して同年七月十四日CをAの嫡出子としてCの出生届を行なつている。

以上のような場合、AとCとの間の父子関係は有効に成立するかどうか。なお、CD間の親子関係不存在確認の裁判はなされていない。

(答) 子Cの死亡後にAが戸籍法第六十二条の出生届をしても、Cに直系卑属がないときは認知の効力を生じないものと解せられるので、AとCとの間には父子関係はないものと考える(法務省民事局第二課回答)。

(問一二) 内縁関係にあつた男Aとその内妻Bとの間の子C(大正九年四月十二日出生)は、Aの養父母であるDE間の子として戸籍上の届出がなされていたところ、AとBは、大正十二年八月六日婚姻した。その後、Cは昭和十九年六月二十二日に(Cには配偶者及び直系卑属はない。)、Dは昭和二十二年七月三十日に、Aは昭和二十五年三月十日にそれぞれ死亡したが、Bは、CがDE間の子として届出がなされているのは誤りであるとして戸籍法第百十三条の規定により、某家庭裁判所に、「CをBの子としてBの戸籍へ移記する」旨の戸籍訂正許可の審判を申し立て、昭和三十四年五月六日同裁判所により当該戸籍訂正許可の審判がなされ、Bは、同年六月二十日その旨の届出を行つた。

以上のような場合、BとCとの間の母子関係は有効に成立するか。なお、Eは、昭和三十六年二月十四日死亡した。

(答) 母子関係は出生の事実によつて認められるので、御照会の場合はBとCとの間に母子関係があるものと考えられる(法務省民事局第二課回答)。

(問一三) 満鉄軍属たるの挙証は具体的にどのような方法で実施するか(滋賀県)。

(答) 昭和三十八年五月二日厚生省発援第九三号通達の第三にも記載してあるとおり、特殊勤務の実態が明らかとなる資料の収集は中中困難かと考えるが、請求者にもできる限りの資料を添付させることはもちろん、都道府県においても種々の方法により当時の資料の収集に協力されたい。

(問一四) 昭和三十八年五月二日援発第三五一号通達の第四の三の(三)のロに示す「国策会社」とは如何なるものをいうのか(愛媛県)。

(答) 昭和三十八年政令第百五十七号による改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法施行令第一条第一号に掲げる会社をいうものである。

(問一五) 法律第七十四号により新たに満鉄軍属としての身分を取得した者がすでに準軍属(戦闘参加者)として障害年金、遺族給与金又は弔慰金を受給している場合は、これらの者に対し今回の法改正による軍属適格者である旨の通知をする予定はないか(長野県)。

(答) 戦闘参加者と満鉄軍属とは、その認定上身分に関してはもちろん、死因の公務性についても自ら差異があるため、戦闘参加者としての挙証資料のみで、満鉄軍属としての適格性を判断することは、極めて困難であるので、現在適格通知を出すことは考慮していない。

(問一六) 満鉄軍属の身分を判定するに当たり、引揚者給付金の認定書を参考としてよいか(愛媛県)。

(答) 当然差し支えないことであり、このような着想によつて資料の収集に努められるようにされたい。

(問一七) 満鉄軍属の公務傷病の判定基準を考えているか(神奈川県・長野県)。

(答) 特殊勤務に就いていた地域、勤務の内容等を考慮しつつ、おおむね一般の軍属に対する従前の取扱い例によるものと考えているので、特に満鉄軍属だけを対象とした判定基準は考えていない。

(問一八) 昭和三十八年五月二日援発第三五一号通達の別紙第三号様式の「配属先」については、遺族は知らない場合がきわめて多いと考えるが、どの程度記載させる予定か(宮城県)。

(答) 「配属先」は、通常の場合、満鉄軍属であるかどうかを判定する重要な項目であるばかりか、傷病の公務性の判定に当つても、欠くことのできない要素と考えられるので、遺族が知つている限り詳しく書くよう指導されたい。不十分な点は都道府県において調査して補足されたい。

(問一九) 法律第七十四号附則第二条第三項ただし書及び第四項並びに第三条第二号についての具体的事例を示されたい(徳島県)。

(答) 戦闘参加者(A)の実父(B)は昭和三十年二月十日死亡し、実母(C)には「その者を扶養することができる直系血族たる私生子(D)がいるため、法律第七十四号による改正前の遺族援護法第二十五条第三項第二号に該当せず、実父(B)の父(E)すなわち、戦闘参加者の祖父が遺族給与金を受けていた。ところが、今般の法改正によりこの戦闘参加者(A)が満鉄軍属となつた場合、満鉄軍属(A)に係る先順位の遺族たるによる遺族年金は当然実母(C)に支給されることとなり、祖父(E)は、後順位者としての五○○○円の遺族年金しか支給されないこととなるので、それまで祖父(E)に支給されていた三万五○○円の遺族給与金の既得権を保護するため、祖父(E)が先順位者としての遺族年金を受けることができるようになるまで(附則第二条第三項ただし書)又は戦闘参加者(A)に係る遺族給与金の支給が開始されてから通じて五年間を経過する日まで(附則第三条第二号)、新たに取得した満鉄軍属の遺族たる身分にかかわりなく、引き続いて遺族給与金の支給が受けられることになつている(附則第二条第三項ただし書)。なお、祖父(E)については遺族給与金を受けることのできる間は、後順位者としての五○○○円の遺族年金は支給されない(附則第二条第四項)。

    E(祖父)

    │

    ├─────(亡)B(父)

    │        │

(亡)  F(祖母)     │

             ├─────A(死亡者)

(亡)  G(祖父)     │

    │        │

    ├────────C(母)

    │        │

(亡)  H(祖母)     │

             ├─────D(私生子)

             │

             │

             ?

(問二○) 法律第七十四号により新たに軍属となつた者について、その遺族がすでに引揚者給付金等支給法による遺族給与金を受けている場合の調整はどうするか(滋賀県・京都府)。

(答) 従来、準軍属として弔慰金を受けている者については、すでに調整がなされているので問題がないが、これまで遺族援護法上何らの処遇も受けず、今回の法改正により始めて弔慰金が裁定されることとなる者については、他の者との均衡からして、引揚者給付金等支給法第十二条第二項に規定する調整を行なうことが必要である。したがつて、従来の取扱いと同様に遺族給付金の認定取消を行ない、その支払額を国の債権として管理することとなるが、その返還の方法については、たとえば、弔慰金を受給した際に納付するとか、履行延期の特約等の措置をとるなど、債務者の返還能力に応じた配慮が必要であるものと考える。

(問二一) 「準戦地勤務の軍属」たる準軍属につき、遺族援護法第四条の「公務傷病の範囲」について何らかの規定が必要でないのか(大阪府)。

(答) 遺族援護法第二条第三項第六号に該当する者は準軍属となつているが、その者の本来の身分は軍属であり、軍属の業務上の傷病は、遺族援護法上の概念としては「公務上傷病」として捉えているため、他の準軍属のように業務上の傷病を特に公務上の傷病とみなす必要がないので、遺族援護法第四条第四項に規定しなかつたものである。したがつて、遺族援護法第二条第三項第六号に該当する者の公務傷病の考え方と同法同条第一項第二号に該当する者の公務傷病の考え方とは同様である。

(問二二) 旧令共済組合の殉職年金についての時効が完成した非戦地勤務の有給軍属は、法律第七十四号による準戦地準軍属(遺族援護法第二条第三項第六号)としての対象となるか(兵庫県)。

(答) 御見込みのとおりである。

(問二三) 準戦地に所在したもとの陸軍病院に勤務中の日赤救護員の死亡の原因が肺結核、心臓性疾患等の場合には公務死亡として取り扱われるか。

(答) 御照会のような疾病であつても、当該疾病が日赤救護員として課せられた任務遂行と相当因果関係があるものと認められるものであるときは、軍人軍属の場合と同様、公務傷病として取り扱うものである。

(問二四) 準戦地のうち昭和二十一年勅令第五百四号による改正前の恩給法施行令第三号表の上欄に掲げる地域に所在したもとの陸軍又は海軍の病院に勤務中の日赤救護員が同表の下欄に掲げる流行病により死亡した場合は、公務により死亡したものと解してよいか。

(答) 御見込みのとおりである。

(問二五) 法律第七十四号により戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律(昭和三十六年法律第百三十四号)により準軍属として処遇されることとなつた「国家総動員法に基づく被徴用者等である非戦地勤務の有給軍属」についても、弔慰金が支給されることとなつたのか(愛媛県)。

(答) 御見込みのとおりである。

(問二六) 特別弔慰金の支給要件の緩和により、「勤務関連」の判定も甘くなるのか(高知県)。

(答) 判定は従来どおりであるから、了知されたい。

(問二七) 遺族援護法第三十四条のいわゆる特別弔慰金について、二年・六年の制限を完全に撤廃してはどうか。また、同法第三十四条第一項の公務死亡に係る弔慰金については、昭和十六年十二月八日以後に死亡した場合を原則とする旨の制限を撤廃し、「特別賜金の支給を受けなかつた者」には支給できるように改めることは考えていないか(長野県)。

(答) 現在のところ二年・六年の制限を撤廃することは考慮していない。また、遺族援護法第三十四条第一項による弔慰金を特別賜金を受けたことのない死亡者にも及ぼすかどうかについては、遺族援護法の制定された昭和二十七年当時すでに結論が出されたことであるので、現在これを改めることは考えていない。

(問二八) もとの陸海軍の有給軍属が遺族援護法に定められた戦地又は準戦地において所定の時期以後公務上死亡した場合には、法律第七十四号による同法第三十四条の改正後はその遺族が現に旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法による殉職年金を受けているときでも、遺族援護法による弔慰金(五万円又は三万円)の支給対象となると解して差し支えないか(愛媛県)。

(答) 御見込みのとおりである(遺族援護法第三十四条第五項参照)。

(問二九) 戦没者の死亡が昭和十六年十二月八日前であり、遺族たる母が昭和二十七年の遺族援護法の施行当時六十歳未満であつたため、この遺族は遺族年金及び弔慰金とも請求できず、直接公務扶助料を請求したところ、死亡原因が公務に基づかないものとして却下された。これに対し、総理府恩給局長に不服の具申をしたが、昭和二十八年法律第百五十五号附則第三十五条の二第三項の規定により具申ができないものとして返送されたので、厚生大臣に不服の申立てをしたところ、遺族援護法により処分をしたものではないから、不服の申し立てを受理する理由がないとして返戻された。このような場合、不服申立てはどこにすべきものであるか、教示願いたい(青森県)。

(答) 御照会の事例については、遺族援護法に基づく厚生大臣の処分が行なわれていないので、行政不服審査法の施行の前後を問わず、厚生大臣に対する不服申立て又は異議申立てをすることはできないこととなつており、また、恩給法上においても、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第三十五条の二第三項の規定により、行政不服審査法の施行の前後を問わず、これまた総理府恩給局長又は内閣総理大臣に対する具申又は不服申立てをすることができないこととなつている。更に行政訴訟についても、御照会の事例は、出訴期間を徒過しているので、不能と考えられる。したがつて、この場合、適当な救済手段はないが、しいていえば、民事訴訟(たとえば、損害賠償等)を提起することも或いは可能かと思われる。