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○戦傷病者戦没者遺族等援護法に関する質疑回答について(第七回)

(昭和二七年八月六日)

(援護第四〇三号)

(各都道府県知事・地方復員残務処理部長あて引揚援護庁援護局長通知)

戦傷病者戦没者遺族等援護法の主なる質疑に関する解釈は、左記のとおりであるから通知する。

(問一) 死亡者の妻と死亡者の父の婚姻届を誤つて受理し、戸籍の記載がなされている場合において、後に婚姻を取り消したときは、始めから婚姻は成立しなかつたものとして両者は共に遺族年金を受けることができるか。又これらの者が婚姻の届出をしていないが、事実上の婚姻関係にある場合、遺族年金を受ける権利はどうなるか。

(答) 婚姻が取り消された場合においては、婚姻の取消は、その効力を既往に及ぼさないので、婚姻は成立していたものとみるべきであり、従つて、この場合両者は共に遺族年金を受けることができないことになる。又近親者間においては、事実上婚姻関係は成立しないと認めるべきであるから、かかる場合は、共に遺族年金を受ける権利を失わないものと解する。

(問二) 都道府県知事において、請求書に添付している戸籍の謄本又は抄本により死亡者とその妻の婚姻が近親婚であることを発見したときは、戸籍の訂正をなさしめるべきものであると思料するがどうか。

(答) 都道府県知事において、戸籍の訂正を要求することはできないものと解する。即ち、戸籍法第二十四条又は第百十三条の規定により戸籍の訂正をするには、その記載が法律上許されない場合又はその記載に錯誤若しくは遺漏がある場合に限られている。

この場合、戸籍の記載に錯誤又は遺漏がある場合に該当しないことは明らかであり、また「戸籍の記載が法律上許されない場合」にも該当しない。

従つてかかる場合には、婚姻の当事者又は親族から、その取消を裁判所に要求することができ、取消の裁判があつたときに、戸籍にその旨の記載がなされるにすぎない。(戸籍法第七十五条)なお、死亡者の死亡後、婚姻が取り消された場合においても、死亡者の配偶者は、配偶者として遺族年金及び弔慰金を受けることができる。

(問三) 父と母が内縁関係にある間に生れた子(戦没者)であるが、父が認知していないため、戸籍には、母の私生子として記載されている場合、死亡者の父は、援護法による援護を受けることができるか。

(答) 子の死亡前か又は死亡後に認知していない場合は、戦没者の父として認められないから、父は、援護法による援護を受けることができない。子死亡後は、その直系卑属があるときに限り、死亡した子を認知することが許されるが、この場合において、生存している直系卑属が成年ならば、その承諾を得なければならないことになつている。(民法第七百八十三条第三項)

(問四) 教育職員がその身分を喪うことなく軍人となつた場合において、その者が軍人として在職中公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより軍人を退職したとき、恩給法による増加恩給を受けることができる不具廃疾の状態にあるものが引き続き教育職員であるときは、同法第五十二条の規定により教育職員を退職しなければ、増加恩給の裁定を求めることができないことになつている。従つて、現に教職員として在職している者は、援護法附則第五項に規定する「軍人たるによる増加恩給を受けることができる者」に該当しないものと思料するがどうか。

(答) 御見解のとおりである。従つて、かかる者は、増加恩給の裁定をまつことなく、障害年金を請求することができる。

(問五) 戦没者の養子が、戦没者の死亡後、離縁により養父との親族関係を終了させて戦没者の弟である実父のもとに復籍した。この場合、なお、その養子と戦没者との間においては、叔父、甥としての親族関係はあるが、「離縁によつて死亡した者との親族関係が終了した」という条項に該当し、その養子は、遺族年金を受けることができないものと解すべきであると考えるが如何。

(答) 御見解のとおりである。「死亡した者との親族関係が終了したとき」というのは、死亡した者との養親子関係にもとづく親族関係が終了したときと解すべきものと考える。

(問六) 戸籍簿が焼失したことによりこれを再製している場合、その再製完了をまつて戸籍の謄、抄本の交付を求めることになると思われるが、それ以前にこれらの交付を得る便法は考えられないか。

(答) 貴見のとおり戸籍簿の再製完了をまつて行うべきものである。これ以上に便法は考えられない。

(問七) 旧民法の施行時において、男三○歳未満、女二五歳未満の者が、父母の同意を得ないで婚姻しているときは、援護法の適用につき、この婚姻を有効なものとして扱つてよいと解して差し支えないか。

(答) 御意見のとおりである。

(問八) 戸籍においては、嫡出子としての届出がなされているが、嫡出推定の実態を明らかに欠いている場合(たとえば、夫が未復員の期間中出生した子であつて、妻と夫以外の男子との間の子であることが客観的に明らかであるとき)は、夫との間の親子関係を否認しても差し支えないか。