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○戦傷病者戦没者遺族等援護法に関する質疑回答について(第一回)
(昭和二七年六月一二日)
(援護第二九五号)
(各都道府県知事・各地方復員残務処理部長あて引揚援護庁援護局長通知)
戦傷病者戦没者遺族等援護法に関する主なる質疑事項の解釈は、左記のとおりであるから、事務取扱上過誤のないようにいたされたい。
記
(問一) 法第十一条第一号に規定する「重大な過失によつて公務上負傷し」とは、如何なる場合か例示されたい。
(答) 公務遂行と負傷又は疾病が因果関係にあるも、その間に本人の重大な過失が介在する場合であり、「重大な過失」とは軍人又は軍属としてその職務遂行上当然に為さなければならない注意を著しく欠いた場合である。
例えば、貨物自動車により食糧その他のものを輸送することをもつて任務としている者が、その輸送中において飲酒し、泥酔の結果、運転を誤り、事物に激突して負傷した場合の如きである。
(問二) 法第二十二条に規定する「重度の不具廃疾の状態にあるもの」とは如何なる程度のものか。
(答) 重度の不具廃疾の状態にあるものとは、恩給法別表第一号の四の特別項症より第二項症に定める程度のものである。
(問三) 陸軍部内の有給の雇員、よう人が、その死亡の日に任官した場合において、その死亡原因たる疾病又は負傷が任官の日前であるときは、その者の遺族には遺族年金又は弔慰金が支給されるか。
(答) 死亡した者の死亡当時の身分が本法に定める軍属ではなくても、死亡の原因たる疾病又は負傷が軍属としての在職期間内に発生したものであるときは、その者の遺族に対し、遺族年金又は弔慰金が支給される。
(問四) 女子挺身隊員が、原爆により傷いを受け帰郷後死亡したときは、その者は法第三十四条第二項に該当するか。
(答) 女子挺身隊員は、国家総動員法第五条の規定に基く女子挺身勤労令(昭和十九年八月二十二日((勅令第五百十九号))により総動員業務に協力せしめられたものであつて、これらの者が業務に従事中原爆により傷いを受けたときは「在職期間内における公務上の負傷とみなされる」のであつて、この傷いにより帰郷後死亡したときは、「在職期間経過後これにより死亡したもの」として、その者の遺族に対し、弔慰金が支給される。
(問五) 法第三十一条第三号の規定は、生存配偶者が死亡した者との姻族関係を終了させる意思を表示した場合を包含するか。
(答) 法第三十一条第三号は、養子縁組によつて養親及びその血族との間に親族関係の成立している養子、その配偶者及び直系卑属が、離縁によつて死亡した者との親族関係が消滅した場合等のことであつて、生存配偶者が死亡した者との姻族関係を終了させる意思を表示したことにより親族関係が消滅した場合を含むものではない。
(問六) 弔慰金を受けることができる遺族が、その受給権を放きしたときは次順位者に弔慰金が支給されるか。
(答) 本法に定める援護は、公益的見地から与えられる所謂公権であつて、恩給権と同様に年金又は弔慰金を受ける権利を放きすることはできないものと解する。
(問七) もとの軍人軍属が旧民法施行の当時死亡した場合において、その者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた遺族は、法第二十三条又は第三十四条に規定する遺族として扱われるか。
死亡した者の死亡が昭和二十二年五月三日以後(即ち、日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律の施行の日以後)であつた場合はどうか。
(答) 旧民法施行の当時死亡した者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた者は、旧民法第七百二十八条の規定により親子間におけると同一の親族関係にあるものであつて、当然本法に定める遺族として扱われる。
死亡した者の死亡が昭和二十二年五月三日(民法応急措置法施行の日)以後であつた場合は旧民法施行の当時における親子関係が新民法施行後も引き続き存続するものではないから、本法に定める遺族として扱われない。
(問八) 死亡した者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた者で弔慰金を受けることができる者は、実父母との関係において、その支給順位は如何になるか。
(答) これらの者については、弔慰金を受けるべき順位につき別段の規定がないから、実父母との関係においては、両者は同順位のものであると解する。
(問九) 禁こ以上の刑の判決を受けた後において、控訴中の者は、法第三十八条第三号に該当するか。又執行を受けることがなくなるまでの遺族とは、仮出獄中の者、刑の執行を停止さている者を含むか。
(答) 控訴中の者は、刑が確定しているものではないから、この号に該当しない。
仮出獄とは、懲役又は禁この執行を受けている者が、その刑の執行中改悛の状があるとき条件つきで釈放することであり、刑の執行停止とは、刑の言渡しを受けている者が心神喪失の状況にある場合、老令、疾病等による一定の肉体条件その他により刑の執行が客観的に困難な状態にある場合において、検察官の指揮によりその者の刑の執行を停止することであり、いずれもこれらの処分を受けている者は、刑の執行が終了したものではないから法第三十八条第三号後段に該当するものである。