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○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部改正について
(昭和三九年八月三日)
(援発第七八〇号)
(各都道府県知事・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省援護局長通知)
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百五十九号)の施行については、さきに昭和三十九年七月九日厚生省発援第三六号をもつて事務次官から通達されたところであるが、戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「法」という。)の一部改正、旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)の一部改正及び戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十七年法律第百十五号)の一部改正については、さらに左記の事項に留意し遺憾のないようにされたく、通達する。
記
1 軍人軍属の公務傷病の範囲の拡大について
法第四条第二項の規定の改正による軍人軍属の公務傷病の範囲の拡大については、次に留意すること。
(1) 改正後の法第四条第二項は、改正後の法第二条第一項に規定する軍人軍属すべてについて適用されるものであること。すなわち同項第一号に規定する軍人のうち「旧恩給法の特例に関する件第一条に規定する軍人又は準軍人」以外の判任文官等を含むもとの陸軍又は海軍部内の公務員又は公務員に準ずべき者及び法第二条第一項第二号から第四号までに規定する者について、新たに第四条第二項の規定が適用されることとなつたものであること。
(2) 改正後の法第四条第二項に規定する「事変地の区域及びその区域が事変地であつた期間」は、改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法施行令(以下「令」という。)第二条第一項に定められているが、その範囲は軍人、軍属いずれの場合についても従来の軍属の在職期間に係る事変地と同一であること。
戦地の区域及びその区域が戦地であつた期間については、軍人、軍属いずれの場合についても従前の軍人に係る戦地と変りがないものであること。
(3) 改正前の法においては法第四条第二項の規定の適用が、法第二十三条第一項第一号及び法第三十四条第一項の場合に限られていたが、改正後は法に規定するすべての公務傷病について法第四条第二項の規定が適用されるものであること。(たとえば、法第七条第一項又は第二項、法第三十九条の二第一項第一号の公務傷病にも適用されるものであること。)
(4) 事変地における傷病につき法第四条第二項の規定によつて公務傷病とみなされて支給される障害年金及びその加給金並びに遺族年金の額は現行の額の一○分の六となつたが、事変地における傷病につき法第四条第二項の規定によつて公務傷病とみなされて障害年金の支給を受けていた者が平病死した場合にその遺族に支給される遺族年金については、さらにその一○分の六の額とされるものであること。
(5) 改正前の法第四条第二項の規定により、公務傷病とみなされた傷病による軍人の死亡については、恩給法においても公務傷病による死亡とみなし、恩給法上の遺族には公務扶助料が支給されることとなつているが、改正後の法第四条第二項の規定により新たに公務傷病とみなされる軍人の傷病については、恩給法において公務傷病とみなされないこととなつているものであること。この場合において、恩給法による普通扶助料と遺族年金が併給されることとなる事例の生ずることが予想されるが、このような場合においては改正後の法第三十二条の二の規定により調整が行なわれるものであること。
2 遺族一時金の支給について
(1) 法第三十九条の二第一項第一号については、次に留意すること。
ア 第一号に掲げる遺族に支給する遺族一時金は、同号ただし書のとおり退職後の交通事故による死亡の場合等公務傷病による影響がまつたく考えられない事由による死亡を除き、すべての公務傷病に併発した疾病による死亡について支給されるものであること。
イ 厚生大臣の指定する疾病は、改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法施行規則(以下「施行規則」という。)第三十八条の二第一項に定められているとおり、結核性疾病及び精神病並びに昭和十二年七月七日以後における在職期間内に発した公務上の結核性疾病又は精神病に関連する疾病(たとえば公務上の結核がなおらない間に発した肺炎など)であること。
ウ 「当該在職期間経過後」とは、「軍人」の場合は「退職後」であり、「軍属」の場合は「事変地又は戦地勤務終了後」のことであつて、その「当該在職期間」はいずれも公務傷病にかかつた期間を含む在職期間であること。
(2) 法第三十九条の二第一項第二号については、次に留意すること。
ア 第二号に掲げる遺族に支給する遺族一時金は、相当の期間戦地に勤務していた軍人軍属が戦地勤務終了後短期間に死亡した場合に、その死亡が戦地勤務による影響を受けたものと推測されるため支給されるものであるので、同号ただし書のとおり交通事故死、刑死等で戦地勤務による影響がまつたく考えられない事由による死亡については除外されるものであること。
イ 「当該在職期間経過後」とは、「引き続く六箇月をこえる戦地勤務終了後」の趣旨であり、「戦地勤務終了」の時期は具体的には「当該戦地勤務を終えて内地に上陸したとき」であること。
ウ 戦地における在職期間には、終戦後の未復員期間も含まれることになつているが、当該未復員期間は戦地勤務に引き続いたものでなければならず、またこの戦地とは法第四条第五項に規定するものでなければならないこと。
エ 厚生大臣の指定する疾病は、改正後の施行規則第三十八条の二第二項に定められているとおり、結核性疾病又は精神病であり、法第三十九条の二第一項第一号に係る指定疾病とは異なつていること。
(3) 法第三十九条の二第二項にいう「これらに相当する給付を受けるべき遺族の範囲に該当する者」には、現にこれらの給付を受けている遺族のみならず、法施行の際すでに一八歳以上であつたことによりこれらの給付を受けることができない子、まだ六○歳に達していないことにより現在これらの給付を受けることができない父母等も含まれるものであること。
(4) 法第三十九条の二第二項にいう「これらに相当する給付」には弔慰金は含まれないこと。したがつて遺族一時金の支給要件及び弔慰金の支給要件のいずれをも充足する者があれば、これらが併給されることになること。
(5) 遺族一時金を支給すべき遺族の範囲及び順位は遺族年金の場合と同様であるが、夫、子、父母、孫、祖父母又は入夫婚姻による妻の父母については、遺族年金におけるような法第二十五条第一項各号に定める年令制限等の支給条件は付されていないものであること。したがつて、たとえば死亡者の子についていえば、死亡者の死亡の当時、日本の国籍を有し、かつ生計関係があれば年令にかかわりなく遺族一時金が支給されるものであること。
(6) 遺族一時金は、昭和二十一年二月一日から昭和二十七年四月二十九日までの間に再婚を解消した配偶者、氏を改めた婚姻を解消した父母、祖父母等及び遺族以外の者との養子縁組を解消した配偶者、子又は孫にも支給されること(改正法附則第四条参照)。
(7) その他遺族一時金の支給事務等に関し留意すべき事項は次のとおりであること。
ア 遺族一時金の裁定は厚生大臣が行なうものであり(改正後の法第六条参照)請求書等の受理に関する事務、権利の裁定に必要な調査に関する事務並びに記入及び交付に関する事務が各都道府県知事又は琉球政府の当局に委任されていること(改正後の令第十一条参照)。
イ 遺族一時金は現金で遺族年金と同様、請求者の希望する郵便局において支払われること。
ウ 遺族一時金請求書の様式は、改正後の施行規則様式第二十四号の二に、請求書に添付すべき書類は同規則第三十八条の三に、請求書の経由は同規則第四十五条又は第四十五条の三に定められているが、請求書に添付すべき書類の詳細についてはおつて通知するものであること。
エ 遺族一時金裁定通知書等の様式及びその取扱いについては、改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法施行事務取扱規程に定められていること。
3 再婚を解消した妻等に対する遺族年金等の支給について
(1) 再婚を解消した配偶者に対する遺族年金又は遺族給与金の支給については、次に留意すること。
ア 再婚は旧恩給法の特例に関する件の施行の日すなわち昭和二十一年二月一日以後のものでなければならないこと。
イ 離婚による再婚の解消又は再婚の取消は、法の施行の日の前日すなわち昭和二十七年四月二十九日までになされていなければならないこと。
ウ 再婚の解消は離婚によるものでなければならないこと。したがつて再婚の相手方が死亡したことによつて再婚を解消した場合は含まれないこと。
エ 「離婚による婚姻の解消」には「事実上離婚により婚姻を解消していたと同様の事情にある場合」も含まれるものであること。
オ 二度以上再婚した場合はそのすべてにつき離婚による再婚の解消又は再婚の取消をしていても遺族年金等の支給の対象とならないこと。(改正法附則第三条第一項第三号参照)。また離婚による再婚の解消又は取消しをした場合で、別に遺族以外の者と養子縁組をしたときは(カ)に述べる場合を除き、たとえその縁組を解消していても遺族年金等の支給の対象とならないこと。
カ 再婚の際に再婚の相手方の直系尊属との養子縁組をも行なつていた場合には、当該再婚の解消又は取消しを行なつていれば、遺族年金等が支給されるものであること(改正法附則第三条第一項第二号参照)。
キ 判任文官等の戸籍上の配偶者については、旧軍人恩給の停止期間中も扶助料の支給を受けることができたものであるので再婚の解消又は取消しをしていても遺族年金は支給されないこと(改正法附則第三条第一項参照)。
(2) 氏を改めた婚姻を解消した父母、祖父母又は入夫婚姻による妻の父母に対する遺族年金又は遺族給与金の支給については次に留意すること。
ア (1)のア、イ、ウ及びオ(前段に限る)の事項については、氏を改めた婚姻についても同様であること。
イ 「離婚により氏を改めた婚姻の解消」には「事実上離婚により婚姻を解消していたと同様の事情にあつた場合」は含まれないものであること。
ウ 判任文官等の死亡の当時同一戸籍内にあつた父母及び祖父母については、旧軍人恩給の停止期間中も扶助料の支給を受けることができたものであるので氏を改めた婚姻の解消又は取消しをしていても遺族年金は支給されないこと(改正法附則第三条第二項参照)。
(3) 再婚を解消したことにより遺族年金を受ける権利を取得した配偶者又は氏を改めた婚姻を解消したことにより遺族年金を受ける権利を取得した父母、祖父母等のほかにすでに同一の死亡者に係る公務扶助料を受ける遺族がある場合には、これら配偶者、父母、祖父母等に支給される遺族年金の額は七万一○○○円ではなく、配偶者については一万円、父母、祖父母等については五○○○円であること(戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百八十一号)附則第十八項参照)。
また、すでに同一の死亡者に係る遺族年金を受ける遺族がある場合には、配偶者、父母、祖父母等に支給される遺族年金の額はいずれも五○○○円であること(法第二十六条第二項及び法第二十五条第五項参照)。
なお、再婚を解消したことにより遺族給与金を受ける権利を取得した配偶者、父母、祖父母等のほかにすでに同一の死亡者に係る遺族給与金を受ける遺族がある場合には、当該遺族が遺族給与金を受ける権利を失うまでこれら配偶者、父母、祖父母等には遺族給与金が支給されないものであること(法第二十五条第五項参照)。
4 判任文官等の内縁の妻等に対する遺族年金の支給について
判任文官等の内縁の妻等に対する遺族年金の支給については、次に留意すること。
(1) この改正は公務上死亡した判任文官等について、恩給法の遺族要件に該当しないために何らの給付をも受けられなかつたこれらの者の内縁の妻、別戸籍の父母等に遺族年金を支給することを趣旨としたものであるが、今回の改正における他の改正項目についても併せて適用することが適当であるため、この際判任文官等を法第二条第一項第一号に規定する「軍人」とし「軍人」の範囲を拡大することとしたので、遺族年金のほか改正後の法第四条第二項の規定により公務傷病とみなされた第六項症以上の傷病に係る障害年金、同項の規定により公務傷病とみなされた傷病による死亡に係る弔慰金及び法第三十九条の二の規定による遺族一時金も支給されるものであること。
(2) 新たに軍人に含まれることとなつた判任文官等とは次に掲げる者であること。
ア もとの陸軍又は海軍の判任官で警部、監獄看守長、警査、巡査又は監獄看守以外の者(たとえば陸軍属、海軍技手)
イ もとの陸軍又は海軍の理事官、事務官、通訳官又は編修
ウ もとの陸軍又は海軍の判任官又は高等官待遇を受けるもので警査、巡査、警守又は監獄看守以外のもの(たとえば陸軍通訳、海軍准教員など)
エ アに掲げる者で各庁職員優遇令により奏任官となつた者又は退官若しくは死亡に際して奏任官となつた者
オ 従軍文官(たとえば逓信省の文官の身分のまま軍事郵便所に勤務していた文官、鉄道省の文官の身分のまま鉄道連隊に勤務していた文官)
(3) 法第四条第二項の規定により公務傷病とみなされた傷病により死亡した判任文官等については恩給法において公務死亡とみなされないので遺族年金を受ける遺族は実体上も法に定めるとおりであるが、その他の場合の判任文官等については恩給法による公務扶助料の対象ともなるので、実体上は公務扶助料の遺族要件に該当しない遺族又は公務扶助料を受ける権利を失つた遺族に対してのみ支給されるものであること。
なお、具体的な範囲は次のとおりであること。
ア 判任文官等の死亡の当時の内縁の夫又は妻
イ 判任文官等の死亡が民法応急措置法の施行前であつた場合、死亡の当時、その者と同一戸籍内になかつた父母、祖父母及び子
ウ 判任文官等の死亡の当時の孫及び入夫婚姻による妻の父母
エ 判任文官等の家を去つたこと等により公務扶助料を受ける権利を失つた遺族
(4) 判任文官等の遺族に対する弔慰金については、改正前から死亡した者の死亡に関し公務扶助料を受ける遺族がない場合にのみ支給することとしていたが、改正後も同様であること。
(5) 判任文官等の内縁の妻、別戸籍の父母等がこの改正により遺族年金を受ける権利を取得した場合における遺族年金の額については3の(3)の場合と同様であること。
5 その他
以上の1から4までの改正並びに「特別弔慰金の適用期間の拡大」、「旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律の改正」及び「六○歳未満の父母に支給する遺族年金の増額」に関する遺族年金等の請求手続、証書の書換要領等の詳細については、おつて通知するものであること。