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○戦傷病者戦没者遺族等援護法施行事務の取扱について

(昭和二七年五月一五日)

(引揚援護庁発総第二三五号)

(各都道府県知事あて引揚援護庁次長通知)

戦傷病者戦没者遺族等援護法は、本年四月一日より適用されることになり、その運用については、さきに事務次官より通知したとろであるが、これが施行事務の取扱については、左記事項を留意の上、その実施に遺憾なきを期せられたい。

第一 定義等に関する事項

一 法律にいう軍人とは、次の者であること。

イ 軍人

(一) もとの陸軍又は海軍の現役、予備役又は補充兵役にあつた者。

(二) 国民兵役にあつた者で、召集せられたもの及び志願により国民軍に編入されていた者。

ロ 準軍人

(一) もとの陸軍の見習士官、士官候補生及び技術候補生(見習士官を除く。)、軍医候補生及び軍医予備員候補生並びに陸軍予科士官学校、陸軍幼年学校、陸軍兵器学校、陸軍少年飛行兵学校、宇都宮陸軍飛行学校、太刀洗陸軍飛行学校、熊谷陸軍飛行学校、陸軍航空通信学校、岐阜陸軍航空整備学校、所沢陸軍航空整備学校、陸軍少年戦車兵学校、陸軍野戦砲兵学校、陸軍重砲兵学校、千葉陸軍防空学校及び陸軍少年通信兵学校の生徒、陸軍経理学校の予科生徒並びに陸軍戸山学校の軍楽生徒であつて軍人でない者。

(二) もとの海軍候補生及び見習尉官並びに海軍兵学校、海軍機関学校及び海軍経理学校の生徒、海軍予備学生、海軍予備生徒、海軍予備練習生及び海軍予備補習生。

(三) 右のほか、次に掲げる者は準軍人として取り扱うものとすること。

もとの陸軍の特別操縦見習士官、特別甲種幹部候補生、甲種予備候補生、乙種予備候補生、通信兵候補生及び船舶兵候補生、経理部少年依託生徒出身の経技建技下士官候補生。

ハ 文官

恩給法の特例に関する件第一条に規定するもとの陸軍又は海軍部内の公務員及び公務員に準ずべき者のうち、左に掲げる者をいうこと。

(一) 警部、監獄看守長、警査、巡査、警守又は監獄看守

(二) 高等文官(但し、理事官、事務官、通訳官、編修及び各庁職員優遇令により奏任官となつた者又は退官若しくは死亡に際し奏任官となつた者を除く。)

二 法律にいう軍属とは、もとの陸軍又は海軍より法令又は規程によつて給料又は報酬を受けていた嘱託員、雇員、よう・・人、工員及び鉱員をいうこと。但し、死亡の際に及してこれらの身分を取得したものを除くこと。

三 法律にいう軍人の「就職から退職(復員の場合を除く。)」とは、次の場合をいうものであること。

イ 現役の軍人にあつては、任官又は入営若しくは入団から現役をはなれたとき、までの期間

ロ 非現役の軍人にあつては、召集による部隊編入又は志願により軍人たる勤務についたときより、召集せられた者については召集解除のとき、志願により軍人たる勤務に服した者については解職までの期間

ハ 準軍人にあつては、戦務、戒厳地境内の勤務又は外国の鎮じゆ・・に服したときより、その勤務を終りたるまでの期間(但し、もとの陸軍の見習士官又はもとの海軍の候補生若しくは見習尉官については、その身分を有していた期間)

ニ 文官にあつては、任官のときより、免官、退官又は失官までの期間

四 法律にいう「公務上負傷し、又は疾病にかかり」とは、負傷又は疾病と公務遂行との間に相当因果関係がある場合をいうのであつて、その範囲は、恩給法にいう公務傷病の範囲と同じであること。

五 法律にいう「戦時災害」とは、左に掲げるものをいうこと。なお、ホに掲げる負傷又は疾病については、追つて通知するものであること。

イ 敵の使用した兵器による負傷又は疾病

ロ 彼我直接の戦闘手段による負傷又は疾病

ハ 戦闘を直接の原因とする負傷又は疾病

ニ 原因が敵の謀略にあるものと確認される負傷又は疾病

ホ 前各号に掲げる負傷又は疾病に準ずる負傷又は疾病

六 この法律において、「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」とは、民法に定める婚姻成立の実質的要件に違反することなく、婚姻する意志のもとに、事実上夫婦の関係にあつた者で、ただ形式的要件である戸籍事務管掌者に対する届出をしていないものをいうこと。

七 遺族年金の支給条件のうち「不具廃疾であつて、生活資料を得ることができない」とは、精神又は身体上の機能障害或いは欠損により労働能力をそう・・失し、又は労働能力に高度の制限をきたし、そのために自己の生活を維持することが不可能であり、且つ、自己の資産がないため、これにより生活することを得ない場合を指し、身体上の機能障害又は欠損を有していても自己の資産により、生活を維持していると認められるときは、この条件に該当しないものであること。なお、扶養者及び扶養者の資産により、生活資料を得ているとき、又は得ることができるときにおいても、法律にいう「生活資料を得ることができない」ものに該当するものであること。

八 父、母、孫、祖父又は祖母に対する遺族年金の支給条件のうち、「その者を扶養することができる直系血族がない」とは、直系血族がない場合及び直系血族があつても、その者が次のイ又はロに該当する場合をいうこと。

イ 六○歳以上又は一八歳未満の者(但し、相当の資産資力を有するものを除く。)

ロ 六○歳未満又は一八歳以上の者のうち、不具廃疾であつて、生活資料を得ることができないもの又は生活保護法の適用を受けているもの

九 弔慰金を受けるべき遺族の順位に関しては、死亡者と同じ氏を称していた配偶者がその氏を改めないで婚姻したときは、遺族以外の者と婚姻した場合であつても、第一順位とする規程があるが、この場合、「氏」とは、戸籍筆頭者の氏を指し、例えば、死亡者の妻であつた者がたまたま同一の氏の者と婚姻してもその妻が夫の戸籍に入つたとき、即ち、戸籍において、夫が筆頭者である場合においては、氏を改めたことになること。

第二 請求書の受理等に関する事項

一 障害年金、遺族年金及び弔慰金に関する請求書の受理及び進達の経路は、次のとおりであること。

イ もとの陸軍の軍人軍属に関するもの

(一) 請求者の住所地を管轄する都道府県知事が、市町村長から請求書を受理した場合においては、遺族年金及び弔慰金に関するものについては、死亡者の除籍当時の本籍地、障害年金に関するものについては、傷病者の退職当時の本籍地(以下本籍地と総称する。)の都道府県知事に送付すること。

(二) 本籍地の都道府県知事が、障害年金、遺族年金又は弔慰金の請求書を住所地の都道府県知事から受理したときは、裁定に必要な調査を行い、厚生大臣に送付すること。

ロ もとの海軍の軍人軍属に関するもの

(一) 請求者の住所地を管轄する都道府県知事が、市町村長から請求書を受理したときは、本籍地の都道府県知事に送付すること。

(二) 本籍地の都道府県知事が、請求書を住所地の都道府県知事から受理したときは、次の区分により、それぞれ厚生大臣又は地方復員残務処理部長に送付すること。

1 引揚援護庁復員局第二復員局残務処理部に在籍する者については、厚生大臣

2 地方復員残務処理部に在籍する者については、当該地方復員残務処理部長

3 在籍する部局が不明である者については、当該都道府県を管轄する地方復員残務処理部長

二 本籍地の都道府県知事が、もとの陸軍に属していた軍人軍属に係る障害年金、遺族年金又は弔慰金に関する請求書を受理した場合における調査は、おおむね、左の事項につき、左の順序により行うものであり、これが事務取扱については、別途通知するものであること。

イ 傷病者又は死亡者の身分が法律に規定する軍人軍属であるかどうかの調査

ロ 傷病者の受けた傷病の原因又は死亡者の死亡原因がそれぞれ法律に定める在職期間内に生じたものであるかどうか、又は公務に起因するものであるかどうかの調査

ハ 請求者が遺族であるかどうかの調査

三 本籍地の都道府県知事が、もとの海軍に属していた軍人軍属に係る障害年金、遺族年金又は弔慰金に関する請求書を受理した場合においては、別に示すところにより、保有資料との照合、遺族に関する調査及び厚生大臣から特に命ぜられた事項の調査を行うこと。

四 住所地の都道府県知事は、厚生大臣から特に命ぜられた事項又は依頼を受けた事項について、裁定に必要な調査を行うものであること。

第三 障害年金請求書及びその添付書類に関する事項

障害年金に関する請求書を受理した場合、請求書に添付すべき書類については、次の点を留意すること。

一 履歴書の記載事項は、就職年月日、就職場所、転任年月日、勤務場所及び昇任年月日等順を追つて詳記し、退職については、その事由を明記するよう指導し粗漏のないように努められたいこと。なお、履歴の記載については、その者が就職後まもなく疾病にかかつた場合に、その疾病が公務に起因するかどうかの判定を容易ならしめるため、就職前六か月間の職歴をも詳細に記載すること。

二 「不具廃疾の原因となつた負傷又は疾病が公務に起因することを認めることができる書類」とは、傷病を受けたときの現認書又は所属部隊長等の事実証明書をいうこと。なお、これらの書類がない場合において提出すべき申立書には、当該傷病を受けた事実を詳細に記載するものとすること。

三 戦時災害によることを認めることができる書類又はこれらの書類がない場合における申立書についても、前記二に準ずるものとすること。

四 「症状の経過を記載した書類」とは、病院、療養所に入院又は入所していた場合の病床日誌の写、病歴書、症状経過及び療養状況書又は診療担当医師の症状の経過の証明書を指すが、これらの書類がない場合には本人の口述書でも差し支えないこと。

五 恩給法の特例に関する件第六条の規定により既に傷病賜金を受けた者については、恩給局の裁定通知書又は恩給局長の証明書、未復員者給与法によつて、既に障害一時金の支給を受けた者については、障害一時金を支給する旨の厚生大臣の裁定通知書又は障害一時金を支給した旨の都道府県知事の証明書を添えること。

第四 遺族年金請求書及び弔慰金請求書の添付書類に関する事項

遺族年金請求書及び弔慰金請求書を受理した場合、請求書に添付すべき書類については、次の点を留意すること。

一 遺族年金又は弔慰金に関する請求書の添付書類を省略することができる場合は、次の通りであること。

イ 同一人が二以上の弔慰金を同時に請求する場合において、これらの死亡者がもとの陸軍に属していたものであつて、同一戸籍とう・・本にこれらの死亡者の除籍記事が悉く記載されている場合は、一人を除き他の者に関する戸籍書類を省略することができること。

ロ 同一の死亡者について、遺族年金と弔慰金とを同時に請求する場合であつて、左に該当する場合は、左の書類の添付を省略することができること。

(一) 遺族年金及び弔慰金をあわせ受ける権利を有する者であるときは、その者についての遺族年金請求書に添付する戸籍書類

(二) 遺族年金を受ける権利を有する者が弔慰金の請求者でない場合において、当該遺族が、死亡者の死亡当時同一戸籍内にあつた場合は、当該遺族年金請求書に添付すべき戸籍書類のうち、死亡当時における死亡者と請求者との身分関係を明らかにすることができる戸籍書類

二 軍人軍属が、公務上死亡したことにより遺族年金又は弔慰金を請求する場合において添付すべき「死亡した者の死亡が在職期間内における公務上の負傷又は疾病によるものであることを認めることができる書類」及び「戦時災害によることを認めることができる書類」は退職後死亡した場合及び特に要求する場合を除き省略させること。

三 法第二十三条第一項第二号に該当する者として、遺族年金を請求する場合において、添付すべき「死亡した者が障害年金又は増加恩給を受ける権利を有するものであることを認めることができる書類」とは、障害年金証書又は増加恩給証書若しくは増加恩給を受けていた旨の恩給局長の証明書であること。

四 遺族年金を受けようとする遺族が遺族年金請求書に添えて提出する戸籍の抄本については次によるものであること。

イ 死亡者の死亡の当時、死亡者と請求者とが同一戸籍内にあつた場合

(一) 請求者が引き続き右と同一戸籍内にあるとき(本籍地が異動した場合を除く。)

死亡者と請求者との身分関係を記載した請求当時の戸籍の抄本一部

(二) 請求者が請求の当時右の戸籍と異なる戸籍にあるとき

死亡者と請求者との身分関係を記載した死亡当時の戸籍の抄本一部及び請求者が死亡者の死亡以後、戸籍を異にするごとに戸籍の抄本一部

ロ 死亡者の死亡の当時死亡者と請求者とが戸籍を異にしていた場合

(一) 死亡者の死亡の当時における死亡者の戸籍の抄本一部及び死亡者の死亡当時における請求者の戸籍の抄本一部(これら二部の抄本によつて死亡者と請求者との死亡当時における身分関係を明らかにすることができない場合においては、さらに当該身分関係を明らかにするに足る戸籍の抄本)

(二) (一)の抄本の外、死亡者の死亡後戸籍を異にするごとに戸籍の抄本一部

五 弔慰金を受けようとする遺族が弔慰金請求書に添えて提出する戸籍のとう・・本及び抄本については、次によるものであること。

イ 死亡者の死亡の当時、死亡者と請求者とが同一戸籍内にあつた場合

(一) 請求者が引き続き右と同一戸籍にあるとき(本籍地が異動した場合を除く。)請求当時における請求者の戸籍とう・・本一部

(二) 請求者が請求の当時右の戸籍と異なる戸籍にあるとき

死亡者と請求者との身分関係を記載した死亡当時の戸籍のとう・・本一部及び請求者が死亡者の死亡以後、戸籍を異にするごとに戸籍の抄本一部

ロ 死亡者の死亡当時、死亡者と請求者とが戸籍を異にしていた場合

(一) 死亡者の死亡当時における死亡者の戸籍のとう・・本一部及び死亡者の死亡当時における請求者の戸籍の抄本一部(これらのとう・・本及び抄本によつて死亡者と請求者との死亡当時における身分関係を明らかにすることができない場合においては、さらに当該身分関係を明らかにするに足る戸籍の抄本)

(二) (一)のとう・・本及び抄本の外、死亡者の死亡後戸籍を異にするごとに戸籍の抄本一部

六 請求者の順位より先順位の者がない旨を認めることができる戸籍の抄本とは、死亡者の死亡当時の戸籍とう・・本において請求者の順位より先順位であると考えられる者が記載されている場合において、その者が弔慰金を受けることができなくなつた事実を認めるにたる戸籍の抄本をいうものであること。

七 「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者であることを認めることができる書類」とは、主として次のものをいうものであること。

イ 当事者(内縁関係にあつた夫及び妻)双方の父母、その他尊族の証明する書類

ロ 媒酌人の証明書

ハ 内縁関係にあつた当時における居住地の市町村長又は民生委員の証明書

ニ 内縁関係にあつたと認められる通信書その他の文書等

八 父、母、孫、祖父又は祖母が遺族年金を請求する場合において、施行規則第二十五条第七号、第八号又は第九号の規定により「配偶者(注)内縁関係を含む。)がなく、且つ、その者を扶養することができる直系血族がない旨の申立書」又は「その者を扶養することができる直系血族がない旨の申立書」を添付すべきときは、当該申立書に記載されている事実に誤がない旨を市町村長が証明するよう管下市町村を指導せられたいこと。

九 市町村長が死亡者の配偶者、父、母、祖父又は祖母に関する遺族年金請求書を受付けた場合これらの者が事実上の婚姻関係にあり又はあつたと認めたときは、当該請求書を送付する際事情を具しその旨を都道府県知事に通知するよう管下市町村を指導されたいこと。

十 市町村長が死亡した者の配偶者から弔慰金請求書を受付けた場合当該請求者が実家に復氏しているものであるときは、遺族以外の者と事実上の婚姻関係にあるか又はあつたかについて特に留意し、これらの事実が認められた場合は、当該請求書を送付する際事情を具しその旨を都道府県知事に通知するよう管下市町村を指導せられたいこと。

第五 その他

一 管下市町村長に対する指導については、次官通知において、通知したとおりであるが、弔慰金を受けようとする者が刑の執行を受けているような場合においては、市町村においてその旨を都道府県に通知する等の措置をとるよう依頼する等の措置をとるようにすること。

二 援護法施行事務取扱規程第十条第一項第三号にいう副申書のうち、もとの陸軍に関するものについては、死亡者の身分、死因については戦没者調査票に、遺族関係については、請求書下欄に所見を記載し、副申書に代えることができるものであること。

三 本籍地都道府県において備えなければならない遺族年金及び弔慰金請求書受付送付簿のうち、もとの陸軍に関するものについては、当分の間、現に本籍地都道府県において保管している戦没者調査票さく・・引をもつて代えることができるものであること。

四 国家総動員法に基く勅令の規定により、徴用された者、協力させられた者、陸海軍の要請に基いて戦闘に参加した者、特別未帰還者の弔慰金請求に関する手続については別途通知すること。