添付一覧
○中核市における社会福祉に関する事務処理の特例について
(平成七年四月一日)
(社援企第五三号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会・援護局長通知)
「地方自治法の一部を改正する法律」(平成六年法律第四十八号)により創設された中核市制度については、平成七年四月一日から施行されたところであり、これに伴い、「地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成六年法律第四十九号)、「地方自治法施行令等の一部を改正する政令」(平成六年政令第三百九十七号)、「地方自治法の一部を改正する法律及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(平成六年政令第三百九十八号)、「国民生活基礎調査規則等の一部を改正する省令」(平成七年厚生省令第五号)、「身体障害者福祉法施行規則第三条第一項の規定による医師の指定基準を定める件の一部を改正する件」(平成七年厚生省告示第二十五号)、「生活保護法による保護の基準の一部を改正する件」(平成七年厚生省告示第二十六号)及び「生活保護法第五十二条第二項の規定による診療方針及び診療報酬の一部を改正する件」(平成七年厚生省告示第二十七号)が、別紙のとおり、それぞれ、同日から施行されたところである。
中核市の指定は関係市からの申出に基づき、平成八年度から行われるものであるが、当局所管の行政事務のうち中核市の特例を講ずるものは次のとおりであるので、今後の円滑な事務運営を図るため、周知徹底を図られたい。
第一 民生委員に関する事項
一 民生委員の定数決定について
中核市における民生委員の定数は、当該中核市の市長が定めるものであること。
二 民生委員の委嘱等について
中核市の区域に置かれる民生委員を委嘱又は解嘱する場合の厚生大臣への推薦又は具申並びに中核市の区域に置かれる民生委員に対する表彰の厚生大臣への具申は、当該中核市の市長が行うものであること。
三 民生委員の指揮監督等について
中核市の区域に置かれる民生委員に対する指揮監督及び指導訓練は、当該中核市の市長が行うものであること。
四 民生委員協議会の区域の決定について
中核市の市長は、民生委員協議会を組織する区域の決定を行うものであること。
五 費用負担について
中核市については、民生委員法(昭和二十三年法律第百九十八号)第二十六条に規定する民生委員に関する諸経費は、当該中核市が負担し、中核市が負担した費用については、同法第二十八条に基づく国の補助が行われるものであること。
第二 身体障害者の福祉に関する事項
一 身体障害者相談員について
中核市の区域に置かれる身体障害者相談員への相談・援助業務等の委託は、当該中核市が行うものであること。
二 身体障害者手帳について
1 身体障害者手帳の交付等について
中核市に居住する身体障害者に対する手帳の交付等は、当該中核市の市長が行うものであること。また、中核市の指定日前に都道府県知事に申請のあったもので、中核市の指定日以後、中核市の市長により交付されると予想されるものについては、円滑な事務の引き継ぎを行われたいこと。
2 身体障害者手帳交付台帳の整備について
中核市の市長は、身体障害者手帳交付台帳を備えて、新たに手帳を交付する身体障害者につき必要な事項を記載すること。また、中核市に居住する身体障害者に対して従前都道府県知事の行った手帳の交付は、中核市の指定日以後は市長が行ったものとみなされるので、これらの者について台帳の写の送付を受けて引き継ぎ、その整備を行われたいこと。
3 医師の指定等について
中核市の市長は、身体障害者手帳の交付申請に係る診断を行う医師の指定及び取消しを行うものであるが、指定医師については、現在一応充足していると考えられるので、なるべく新規の指定は見合わせるとともに、指定を要する場合は、指定医師の診断が高度の学識経験を必要とし、かつ、身体障害者の権利に重大な影響があるので、慎重に措置されたいこと。また、従前都道府県知事の行った医師の指定は中核市の指定日以後は市長が行ったものとみなされるので、円滑な事務の引き継ぎを行われたいこと。
4 障害程度の認定に疑いのある場合の措置について
手帳の交付の申請があった場合、その障害が身体障害者福祉法別表に掲げるものに該当しないと認めるときは、中核市の市長は、中核市に置かれる地方社会福祉審議会に諮問することを要し、中核市に置かれる地方社会福祉審議会が調査審議を行い、なおその障害程度の認定について疑があるときは、中核市の市長は厚生大臣に対し、その障害程度の認定を求めなければならないものであるので、障害程度の認定については、慎重に措置されたいこと。
三 更生医療の給付について
1 指定医療機関について
中核市の市長は、更生医療を担当させる医療機関(国が開設したものを除く。)の指定及び指定の取消しを行うものであること。
2 診療内容及び診療報酬の請求の審査並びに診療報酬の額の決定について
中核市の市長は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、その結果に基づき診療報酬の額を決定するものであること。また、決定に当たっては、社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会、国民健康保険法に定める国民健康保険診療報酬審査委員会等の意見を聞かなければならないので、中核市の市長は、審査及び支払いに関する事務を委託する契約を締結されたいこと。また、都道府県知事は、委任を受けた市町村長の範囲を変更することに関して、社会保険診療報酬支払基金等との契約を変更されたいこと。
なお、この審査及び決定は、従来における都道府県知事と同様の立場において行うものであるから、中核市の市長は、当該中核市の市長の委託した身体障害者に係る医療については、指定医療機関の所在地とは関係なく実施することができるものであること。従って、当該中核市の区域内に所在する指定医療機関に委託された身体障害者であっても、当該中核市の市長以外の市町村が委託した身体障害者については、当該中核市の市長は審査及び決定の権限を有しないものであること。
また、中核市の指定日前に診療したものであっても、指定日以後において社会保険診療報酬支払基金事務所に提出された中核市に係る診療報酬請求書については中核市の市長が審査及び決定を行うものであること。
以上につき、社会保険診療報酬支払基金事務所と連絡をとり遺憾のないように措置されたいこと。
3 指定医療機関に対する報告の請求及び検査について
中核市の市長は、指定医療機関に対する報告の請求及び検査を行うものであるので、当該医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は職員をして実地に診療録その他の帳簿書類を検査し、十分にその指導監督を行われたいこと。
なお、この報告の請求及び検査は従来の都道府県知事と同様の立場において行うものであるかが、当該中核市の区域内に所在する指定医療機関について実施するとともに、その委託した身体障害者に係る医療については、当該中核市の区域外に所在する指定医療機関についてもこれを実施すること。従って、中核市の区域内に所在する指定医療機関であっても、都道府県知事は、その委託した身体障害者に係る医療については、従来どおり当該指定医療機関に対する報告の請求及び検査を行うことができるものであること。
四 身体障害者更生援護施設及び養成施設について
中核市が設置又は附置する身体障害者更生援護施設又は養成施設に関する都道府県知事への届出及びこれらの施設の運営に関する都道府県知事への報告等はこれを行うことを要しないものであること。また、中核市が設置した身体障害者更生援護施設の運営等については、更生大臣の監督を受けるものであること。
五 身体障害者居宅生活支援事業について
中核市の市長は、国、都道府県、指定都市及び中核市以外の者が、中核市の区域内において身体障害者居宅生活支援事業を行う場合の開始の届出等の受理、報告の聴取、事業の制限命令等を行うものであること。
中核市が行う身体障害者居宅生活支援事業に関する都道府県知事への届出、報告等はこれを行うことを要しないものであること。また、中核市が行う身体障害者居宅生活支援事業については、厚生大臣の監督を受けるものであること。
六 身体障害者福祉司及び身体障害者更生相談所の設置について
指定都市は、地方自治法施行令第百七十四条の二十八の規定により身体障害者福祉司及び身体障害者更生相談所を設置することができることとなっているが、中核市は身体障害者福祉司及び身体障害者更生相談所の設置は行わないものであること。
七 費用負担について
中核市については、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第三十六条に規定する諸経費(第一号及び第二号に掲げる経費を除く。)は、当該中核市が負担し、中核市が負担した費用については、同法第三十七条の二に基づく国の負担又は補助が行われるものであること。
第三 生活保護に関する事項
一 保護施設について
1 社会福祉法人等による保護施設の設置の認可及び監督
社会福祉法人及び日本赤十字社の設置する保護施設に関し、当該保護施設が主として利用される地域が中核市であるものについての認可、運営の指導、管理者からの報告の徴収、立入検査、改善命令、管理規程の変更命令等は、当該中核市の市長が行うものであること。
2 中核市が設置する保護施設についての監督の特例
中核市が設置する保護施設については、都道府県知事への届出を行うことは要しないものであり、また、従来都道府県知事から受けていた改善命令等については、厚生大臣から受けるものであること。
二 医療扶助の実施について
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号。以下「法」という。)第四十九条の規定による医療機関の指定、法第五十条第二項に規定する指導、法第五十一条第二項の規定による指定の取消し、法第五十三条の規定による医療費の審査決定、法第五十四条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査並びに法第五十五条の規定による助産機関等に関する事務については、従来における都道府県知事と同様の立場において、中核市の市長が行うこととされたいこと。
この場合において、特に注意すべき点は、次の諸点であること。
1 既に都道府県知事の指定によって指定医療機関となっているものに関する指定の取消し及び指導についても、中核市の市長が行うものであること。
2 診療内容及び診療報酬の請求の審査並びに診療報酬の額の決定に当たっては、中核市の市長は、実施体制の整備に配意されたいこと。
3 診療報酬の額の決定に当たっては、法第五十三条第三項の規定により社会保険診療報酬支払基金の審査委員会又は政令で定める審査機関の意見を聴かなければならないが、中核市の市長は、社会保険診療報酬支払基金と当該意見聴取に係る契約を締結すること。この場合においては、中核市の市長は、従来都道府県及び指定都市市長あてに通知されている関係通達を参照し、従来締結していた支払いのみに係る契約を改訂して都道府県知事と同様の契約を締結されたいこと。
また、都道府県知事は、審査の対象範囲が変更したことに関して、社会保険診療報酬支払基金と覚書を交換されたいこと。
さらに、中核市の指定日前に診療したものであっても指定日以後において社会保険診療報酬支払基金に提出された中核市から委託のあった被保護者にかかる診療報酬請求書については中核市の市長が審査及び決定を行うものであること。
4 中核市の市長が保護の決定及び実施の責任を有する被保護者に係る医療に関する生活保護法施行規則第十七条第一項の規定による診療報酬請求書及び診療報酬明細書は、中核市の市長が指定する医療費の審査機関に対して提出されることとなったこと。
5 生活保護法第五十二条第二項の規定による診療方針及び診療報酬(昭和三十四年厚生省告示第百二十五号)の第六項による協定についても、中核市の市長が事務を行うものとすること。また、既に都道府県知事が協定したものについては、中核市の市長が協定したものとみなされるものであること。
6 法第五十四条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査は、厚生大臣が行うほか、原則として中核市の市長が行うこととなったが、特に必要がある場合には、上級監督庁として都道府県知事も行うことができるものであること。
三 費用について
1 居住地不明者等に係る保護費の負担
居住地がないか又は明らかでない被保護者につき市町村が支弁した保護費、保護施設事務費及び委託事務費並びに宿所提供施設又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十八条に規定する母子寮にある被保護者につきこれらの施設の所在する市町村が支弁した保護費、保護施設事務費及び委託事務費については、法第七十三条第一号及び第二号の規定により、都道府県がその四分の一を負担することになっているが、中核市が前記の被保護者につき支弁した経費については、前記の都道府県による負担は行われないこととされたこと。
したがって、中核市は、前記の被保護者につき支弁した経費の四分の一を負担するものであること。
2 中核市が設置する施設設備費の負担について
中核市が設置する保護施設の施設設備費については、法第七十三条第三号の規定による都道府県の負担は行われず、法第七十五条第一項第二号の規定による国の負担が行われるものとされたこと。
したがって、中核市は、その設置する保護施設の設備費については、二分の一を負担するものであること。
3 社会福祉法人又は日本赤十字社が設置した保護施設に対する補助及び監督
中核市は、当該中核市の市長がその設置を認可した保護施設の修理、改造等に要する費用については、法第七十四条第一項の規定により、その四分の三以内を補助することができることとされ、当該補助した経費の三分の二以内について、法第七十五条第二項の規定による国の補助を受けることができるものとされたこと。
また、中核市は、前記の補助を受けた保護施設に対し、法第七十四条第二項の規定による監督を行うものとされたこと。
第四 行旅病人及び行旅死亡人の取扱いに関する事項
行旅病人及行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)第五条の規定による行旅病人又はその同伴者の引取り及び救護費用の負担並びに同法第十三条の規定による行旅死亡人取扱費用の負担については、行旅病人死亡人等ノ引取及費用弁償ニ関スル件(明治三十二年勅令第二百七十七号)の規定により、行旅病人若しくはその同伴者又は行旅死亡人の救護又は取扱を行った地の道府県の事務とされているが、中核市がこれらの者の救済又は取扱いを行った場合は、前記の事務は中核市が行うこととされたこと。
第五 社会福祉事業法に関する事項
1 地方社会福祉審議会について
中核市には、地方社会福祉審議会を置くものとすること。
2 指導監督及び訓練について
中核市における職員の行う事務の指導監督のための計画の樹立及び実施並びに職員に対する訓練については、当該中核市の市長が行うものであること。
3 監督の特例について
中核市が設置した社会福祉施設及び中核市が行う社会福祉事業については、知事の改善命令、制限命令等は受けないものであること。