添付一覧
○母子・寡婦福祉資金貸付制度等の運用上の疑義回答集について
(昭和五四年八月二日)
(児福第二〇号)
(各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省児童家庭局母子福祉課長通知)
母子・寡婦福祉資金の貸付業務については、かねてから種々御尽力を煩わしているところであるが、今般、母子・寡婦福祉資金貸付制度等の運用について、疑義回答集として整理したので、事務処理上の参考とし、適正な運用に遺憾のないようされたい。
なお、昭和四十四年十月二十八日児福第二五号、昭和四十九年十月二十日児福第一七号、昭和五十年十一月二十九日児福第一八号の一及び昭和五十二年三月十日児福第六号の通知は、本通知の施行に伴い、廃止する。
記
〔母子・寡婦福祉資金共通事項〕
(問1) 修学資金の貸付けを受けた者の連帯借主が、大学紛争のため、予定の卒業期日に卒業できない場合、在学していることを理由に卒業するまで当初の貸付契約を更新し、継続して貸し付けてよいか。
(答) 昭和四十四年八月七日から施行された「大学の運営に関する臨時措置法」(昭和四十四年法律第七十号)第七条第二項の規定によつて「教育等の停止措置」がとられた場合には、同法第八条に定める「停止に伴う効果」として休学の扱いとなり、在学期間に算入されず、国公立大学においては授業料を免除されることになつているので、母子福祉法施行令第十条に規定するところにより処理されたい。
(問2) 学校教育法第四十五条及び第五十四条の二に規定する通信教育を受ける生徒に対して、修学資金を貸し付けてよいか。
(答) 貸し付けることを妨げないが、申請にかかる修学の実態を十分に把握し、貸付金額、貸付期間を適正に決定するよう配意されたい。
(問3) 県立高等学校の在学生(二、三年生)の授業料が引き上げられた場合、これらの者に対して第一学年に適用される修学資金の貸付限度額まで貸し付けてさしつかえないか。
(答) 授業料の引上げが大幅である場合において、国公立の第一学年に適用される貸付限度額の範囲内で、その引上げ額等を考慮しつつ、弾力的に取り扱つてさしつかえない。
(問4) 外国に留学した場合にも修学資金の貸付け対象としてよいか。
(答) 修学資金の貸付け対象は、学校教育法に規定する高等学校及び大学等に限られているので、この場合は貸し付けることはできない。
(問5) 技能習得資金又は修業資金の貸付けにおいて、貸付期間が三年以内であれば予科一年、本科一年、研究科一年というような二科以上にわたつてもよいか。また、各科の履修期間が三年となつている場合に、二科以上にわたつて三年を超えて貸し付けてもよいか。
(答) 科目が異なつても、事業を開始し、又は就職するために必要な知識技能を習得するのに必要であれば、三年以内の範囲内で貸し付けてさしつかえない。ただし、総体の期間が三年を超える場合は、三年とするものである。
(問6) 療養資金の自己負担分には、差額ベッド代及び付添看護料の協定料金との差額を含むか。
(答) 症状及び入院時の事情等からやむを得ない場合については、貸付対象経費としてさしつかえない。
(問7) 療養資金の貸付けについて、貸付申請以前において受けた医療について貸付けを行う場合の遡及期間は、申請日の一年前以降の医療にかかる費用を貸付対象として取り扱つてよいか。
(答) 当該資金の措置期間の定めが「医療を受ける期間が満了して後六箇月を経過するまで」となつていることにかんがみ、遡及期間は六か月を超えないものとして取り扱うこととされたい。
(問8) 生活資金の貸付けについて、医療費に対して地方公共団体から扶助等が行われており、療養資金の貸付けを必要としない場合に、生活資金を単独で貸し付けてよいか。
(答) 生活資金の貸付けは、技能習得資金または療養資金の貸付けを受けている期間中に限られているので、貸し付けることはできない。
(問9) 住宅資金の貸付対象として、公営住宅の譲り受けに必要な場合にも貸し付けることができるか。
(答) お見込みのとおりである。
なお、貸付決定にあたつては、申請にかかる住宅の実態を十分に把握し、貸付金額を適正に決定すること。
(問10) 間貸しをするために増改築をする場合は、事業開始資金を貸付けてさしつかえないか。又、間貸しを営んでいる場合に、増改築する必要がある場合には、事業継続資金の貸付けの対象としてよいか。
(答) お見込みのとおりである。
(問11) 現に事業を営んでいる者が、新たに支店等を出す場合には、事業開始資金の貸付け対象としてよいか。
(答) 現に営んでいる事業を拡張するものであるから、事業継続資金の対象として取り扱うこととされたい。
(問12) 転宅資金の貸付けは、現居住地の都道府県か、それとも新居住地の都道府県で行うものか。
(答) 転宅資金の貸付けは、原則として借入申込者が新たに定めた新住地の都道府県で行うものとすること。
なお、借入申込みの手続については、借入申込者が新居住地に転居を完了する前であつても、借入申込書を受理し、貸付決定を行い、借入申込者が新居住地に転居した際には、ただちにその者に貸付金を交付できるように特に配意されたいこと。
(問13) 地方自治法第二百三十一条の三の規定が適用される地方公共団体の収入に、母子寡婦福祉資金の違約金が含まれると解されるか。
また、違約金の端数計算において違約金額が一〇円未満であるときは、徴収しない取扱いとしてよいか。
(答) 含まれないものと解されたい。
なお、端数の取扱いについては、国の債権の管理等に関する法律第百十四号、第二十一条第一項第三号の規定を参考とする等、各都道府県において財務規則等に所要の規定を設けて善処するようにされたい。
(問14) 償還金の時効について、その取扱いを指示されたい。
(答) 貸付けは私法上の法律行為であり、私法規定(民法)によつて規律されるが、貸借契約の当事者である地方公共団体の立場の公正を確保するため、地方自治法による規制を受ける面もある。
すなわち、①地方自治法第二百三十六条第四項が適用され、地方公共団体の行う納入の通知(同法第二百三十一条参照)及び督促(同法施行令第百七十一条参照)は絶対的時効中断の効力を有すること。②同法第二百三十六条第二項にいう「法律に特別の定めのある場合」として、民法第百四十五条が適用され、当事者が時効を援用しない以上、時効による消滅の判断とすることはできないとしているので、時効の援用を必要とする。
したがつて、母子福祉資金償還金の時効については、①時効完成の期間は一〇年間であること。②前述の地方自治法の規定が適用できること。を基本に、地方財務における一般の私法債権の場合と同じく取り扱うこととされたい。
なお、昭和三十九年四月一日現在において、既に時効の期間が進行していた債権についての取扱いは、「地方自治法の一部を改正する法律」(昭和三十八年法律第九十九号)附則第九条により、従前の例(すなわち、母子福祉資金償還金にかかる時効の中断、完成、発効については全面的に民法規定が適用される。)によることとされているので注意されたい。
(問15) 貸付償還金の時効については、民法第百四十五条の規定により、債務者による時効の援用が必要とされているが、所在不明者の場合の取り扱いを指示されたい。
(答) 債務者がその援用する見込みがあるものとみなして取り扱つてさしつかえない。
なお、みなし消滅整理する場合は、官公署の不在証明等の書類を作成しておく必要がある。
(問16) 母子福祉資金の貸付けにより生じた債権の消滅時効については、地方自治法第二百三十六条第四項の規定が適用されるものと思料され、
1 この規定に基づく普通地方公共団体の行う納入の通知及び督促は、民法の催告が六か月以内に裁判上の手続きをしなければ、時効中断の効力を有しないのに比し、裁判手続きを要件としないで時効中断の効力を有すると解するが如何。
2 納入の通知又は督促をして時効が中断された後、さらに民法の適用、又は準用により催告及び債務承認等により時効を中断することはできないと解するが如何。
(答) 1 お見込みのとおりである。 2 債務承認の方法による中断は効力を有するものと解されたい。
(問17) 母子福祉資金借受者の連帯保証人が死亡した場合、その保証債務は当該保証人の相続人に承継されるものであるか。
(答) お見込みのとおりである。
(問18) 母子福祉法に基づく母子福祉資金の貸付対象者に、外国人は含まれると解してよいか。
(答) お見込みのとおりである。
なお、貸付けに当つては、居住、償還等の問題があるので、次のいずれの条件にも該当する場合は、貸付けを行つて差しつかえない。
(1) 外国人登録が行われていること。
(2) 現住地に六か月以上居住し、将来とも永住する見込があること。
(3) 償還能力が十分あり、また確実な保証人が得られること。
〔寡婦福祉資金関係〕
(問19) 修学資金又は修業資金を貸し付けている途中において、当該資金の貸付けを受けている寡婦が死亡した場合は、母子福祉法第十条第三項の規定と同様の取扱いをし、当該資金により修学、知識技能を終了するまでの間当該資金の貸付けを行うことができるか。
(答) 修学又は修業が達成されるまで継続して貸し付けることが適当と認められる場合においては、貸付けを妨げるものではない。
(問20) 修学資金は新たに高等学校、大学等に就学させるための経費として貸し付けられるが、「新たに」とは、新入学のみをさすのか、在学中に母が寡婦となつたものには貸し付けられないのか、修業資金についても同じ。
(答) 「新たに」とは、貸付申請が新規であるという意に解されたい。したがつて、新入学のみをさすものではない。在学中に母が本制度による寡婦となつた者にかかる修学資金、修業資金も同様に「新た」な貸付けの申請があれば貸し付けることができる。
(問21) 子のない寡婦に対する貸付けは、所得税非課税者に限られているが、「子のない寡婦」とは、子があつても現に扶養する子のない寡婦も含まれると解すべきか。
(答) その子が完全に独立し、同一生計を営なんでいない場合について、貴見のとおり解されたい。
(問22) 二〇歳以上の父母のないものには、修学資金、就学支度資金、修業資金は貸し付けられないか。
(答) 「新たに」貸付を行うことはできない。