添付一覧
○児童福祉法の運用に関する疑義及びこれが解答について(その六)
(昭和二四年五月一三日)
(児発第四二三号)
(各都道府県知事あて厚生省児童局長通知)
(養護施設に併設した保育所)
問一 養護施設に併設(別棟にて職員も別)してある保育所において養護施設に入所している児童を保育する場合、同一の児童に対し、措置に要する費用を夫々支出することができるか。
答 養護施設は、乳児以外の児童の養育保護を目的とする施設であり、保育所は、日々保護者の委託を受けて、その乳児又は幼児を保育することを目的とする施設であるから都道府県知事が児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置により養護施設に入所させた児童を市町村長が、法第二十四条の措置により保育所に入所させることは養護施設の性質上あり得ない。尤も養護施設に併設した保育所に養護施設に収容している以外の児童を法第二十四条の措置により入所させることができるのはいうまでもない。養護施設に入所している少年が学校に行つている間入所している幼児を保育することは養護施設の本来の目的であつてこれは、法第二十四条の措置とは関係がないから別に保育に必要な経費を支出することができないこともこれ亦いうまでもない。
(公共団体の設置する児童福祉施設の経営を宗教団体に委託すること)
問二 都道府県又は市町村(以下公共団体という。)は、その設置する児童福祉施設の経営を宗教団体に委託することができるか。
答 公共団体が、その設置する児童福祉施設の経営を宗教団体に委託する場合というのは公共団体が、対外的に児童福祉施設の設置者となり、その所有する基本財産(土地、建物、備品、基金等)を提供し、その基本財産の処分を除き、経常的な一切の経費の負担ならびに事務執行の責任は、宗教団体が負う場合を指すものと解する。
この場合法にいう設置者はあくまでも公共団体であり児童福祉施設最低基準(以下省令という。)遵守の終極的な責任については、公共団体がこれを負うのであるが、省令の個々の条文に規定する基準遵守の直接な責任は当該委託の内容により公共団体が負うべきものと、宗教団体が負うべきものとに分れ、一律に決定することはできない。而して当該児童福祉施設の運営に特定の宗教をとりいれたり、当該宗教団体に特権を与えたりすることは、憲法第二十条に禁止するところである。個々の実情を判断してこのような結果にならないと認められる場合には経営を委託して差し支えない。
(同右)
問三 公共団体の営造物(公共団体に所有権のある建物等)を宗教団体が児童福祉施設として経営している場合は問一にいう経営の委託にならないか。
答 公共団体がその所有する基本財産を宗教団体に無償又は著しく低廉な価格で貸与又は譲渡し、宗教団体は、対外的に児童福祉施設の設置者となり収支の責任及びその他経営の全般を自らの責任において行う場合が、これに当るのであるが、この場合は経営の委託とは解されず当該児童福祉施設の設置及び経営の主体は、宗教団体である。この場合注意しなければならないのは、公共団体の基本財産の貸与又は譲渡に憲法第八十九条及び地方自治法第二百十二条及び第二百三十条の規定が適用されることである。
(宗教団体が設置及び経営の主体である児童福祉施設への法による入所の措置)
問四 公共団体が基本財産の提供その他の財政負担もしない児童福祉施設であつて宗教団体が設置し経営するものその他、問一、問二に掲げる児童福祉施設に該当するものに都道府県知事又は市町村長が法第二十七条第二項第三号又は法第二十二条から第二十四条までに規定する入所措置をとることは差し支えないか。
答 お見込の通りである。
(費用の負担)
問五 法第二十二条から第二十四条までの措置により、市町村長が国、都道府県以外の者の設置する助産施設、母子寮、保育所(以下助産施設等という。)に入所させた者について本人又はその扶養義務者がその費用の全部又は一部を負担することができず、且つ、保護を受ける者及び同居の配偶者、直系尊属又は直系卑属が、同一市町村に一か年以上引き続いて居住しておらないとき、その費用を負担するのはどこか。
答 これについては、昭和二十三年八月二十三日児発第五五四号通知において解答済みであるが、再説すれば、市町村が法第五十一条によりその費用を負担する。
問六 たとえば甲県知事が法第二十七条第一項第三号の措置により国以外の者の設置する養護施設に入所させた児童の保護者が乙県丙市に居住し、その費用を負担することができず、且つ、児童福祉法施行規則第五十条第一号に該当する場合、丙市が負担を免除された費用は甲県の負担であるか。
答 お見込の通り、措置者たる甲県が代つて負担する。
(児童相談所の設置)
問七 児童相談所の設置は、都道府県の条例をもつてすべきか、規則を以つてすべきか。
答 本問については、昭和二十三年八月二十五日児発第六○九号「児童福祉法の運用に関する疑義及びこれが解答について」中、問一○で回答済みである。(なお、同問に対する解答中、地方自治法第二百十一条とあるは第百五十六条のミスプリントであるから訂正する。)再説すれば次の通りである。
即ち児童相談所の行う事務は、国と地方公共団体相互の利害に関係のある事務であり、児童相談所は、法第二十七条第一項の措置をとる権限を都道府県知事に委任されることがあるから、児童相談所に関する基本的事項、名称、位置及び管轄区域は条例をもつて定めることが、地方自治行政の運営上適切であると思われる。但し、規則をもつて定めても地方自治法の上から違法ではない。