添付一覧
○生活保護法による保護施設の管理規程について
(昭和三二年三月三〇日)
(社発第二五四号)
(各都道府県知事・五大市長あて厚生省社会局長通知)
標記の件に関し、生活保護法第四十六条は、その制度を各保護施設の設置者に命ずるとともに、その内容についてはこれをその設置者の創意と研究に委ね、その規制については各都道府県知事の後見的監査にまかせているところであるが、現行の管理規程の中には種々不適当と思われる規定も見受けられるので、今後は、管理規程を受理したときは、左記により十分検討を加え、必要あるときは変更命令その他の措置をとるとともに、すでに届出を了しているものについても速やかに適切なる指導をされたい。
記
(管理規程の制定)
第一 管理規程の題名中には管理規程の名称を使用すること。
第二 管理規程は保護施設の設置者が保護施設ごとに制定するものであること。
2 某園規程、某園事務規程、某園内務規程等の数個の規則をあわせてはじめて管理規程の実を備えるごときものが見受けられるが、これは適当ではないこと。
3 保護施設の事務の一部を委託している場合において、受託者が管理規程を制定しているものを見受けるが、これは適法ではないこと。
第三 管理規程には法第四十六条第一項各号の事項を直接かつ具体的に明示すること。特に施設を利用する者に対する処遇方法、守るべき規律等保護施設の管理上重要な事項を内規その他に委任することは望ましくないこと。
第四 管理規程の制定は原則として当該保護施設が地方公共団体の設置にかかる場合にあつては規則によることとし、社会福祉法人又は日本赤十字社の設置にかかる場合にあつては、定款に別段の定めがないときは理事の過半数をもつて決すること。
第五 管理規程の制定にあたつては、文言を十分検討して表現にあやまりのないようにすること。
(事業の目的及び方針)
第六 事業の目的及び方針に関しては人種、信条、性別、社会的身分又は門地により差別し、あるいは宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制するがごとき規定を設けてはならないこと。
(職員の定数、区分及び職務内容)
第七 職員の定数、区分及び職務内容については、地方公共団体の条例、規則又は社会福祉法人の定款等によつて定められたもののほか、嘱託、臨時職員等の身分によるものも規定すること。
なお、職員の区分とは職種の区分であつて身分の区分ではないこと。
第八 職務内容は職種ごとに事務内容を明記し、責任の所在が明らかになるように規定すること。
(その施設を利用する者に対する処遇方法)
第九 処遇方法について規定すべき特に必要な事項は次の各号であること。
一 生活指導に関する事項
二 救護施設及び更生施設にあつては給食に関する事項
三 保健衛生に関する事項
四 医療的処遇に関する事項
五 施設の課する作業に関する事項
六 授産施設にあつては作業種目、作業工賃及び作業条件等に関する事項
七 教養娯楽その他の必要な事項
第十 処遇に関する事項を規定するにあたつては、慈恵的表現を避けるようにすること。
第十一 生活指導に関する事項については、施設の長及び生活指導を担当する職員が随時その施設を利用する者に面接の機会を与えるような規定をおくことが望ましいこと。
第十二 給食に関する事項については、献立の作成等調理の方針について規定することが望ましいこと。
第十三 保健衛生に関する事項については健康診断、入浴及び消毒等について規定すること。
第十四 救護施設及び更生施設にあつては、被収容者は疾病にあたつては、特定の診療日時に、又は随時に、必要な診療を受けられるべき旨の規定をおくこと。
第十五 授産施設における作業工賃は、原則として純利益の全額を出来高払いの方法によつて支払うべき旨の規定をおくこと。
第十六 作業種目及び必要あるときは作業条件を明示する規定をおくこと。
(その施設を利用する者が守るべき規律)
第十七 その施設を利用する者の守るべき規律については、余りに細分して生活のゆとりを失い、又は就床時間を極端に長くとる等通常の日常生活からはなはだしく相違した生活様式を定めるようなことのないようにすること。
第十八 内職、手伝い等により被収容者が自立又は更生にはげむことは必要なことであると思われるが、これらについて規定するにあたつては施設内の秩序維持はもちろん、健康を害しその他の弊害を生ずるおそれのないよう規制すること。
(施設の課する作業)
第十九 救護施設にあつては、被収容者の特性からみて原則として作業を課する必要は認められないので、これについて規定する場合は特に慎重に取り扱うこと。
第二十 施設が作業を課する場合においては、その作業が処遇上欠くべからざるものであることを要し、当該施設の運営上職員の不足を補充する意味等により作業を課するような規定をおくことは認めがたいこと。
第二十一 任意に内職、手伝い等に従事することは、施設が被収容者に課する作業とは考えられないものであること。
第二十二 作業を課する場合においてその種類、方法及び時間を定めるにあたつては、画一的に定めることを避け被収容者各人の年令、性及び体力等に応じて処遇上最も効果を挙げるような規定をおくこと。
第二十三 被収容者に作業を課した場合において生じた収益(作業に要した必要経費は除く。)の処分については、原則として被収容者の処遇にあてるように規定することが適当であること。
(その他施設管理についての重要事項)
第二十四 施設の管理について規定すべき重要事項の二、三を例示すれば次のとおりであること。
一 災害対策に関する事項
二 施設の管理組織に関する事項
三 入所及び退所に関する事項
四 経理に関する事項、特に被収容者が収容に要する費用の全部又は一部を負担する場合における費用の徴収に関する事項
第二十五 災害対策に関する事項についての規定は必ず設けるようにすること。
2 災害対策についての規定には左の事項に特に留意すること。
一 施設長は消火、避難、警報その他の防災に関する設備及び火災発生等の虞のある個所の点検をなすべきこと
二 所轄消防署との連絡及び避難訓練に関する事項
第二十六 施設の管理組織に関する事項については、保護施設の規模構造等により、第七による単なる職員の区分及び職務内容の明示によつては当該施設の管理方法が明確でない場合にあつては管理組織に関して規定した条項を設けることが適当であること。
第二十七 入所及び退所に関する事項については、被保護者の素行、性癖及び経歴等を理由として、入所を拒むことができる旨を規定することは適当とは認めがたいこと。