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○生活保護法関係不服申立ての取扱いに係る質疑応答について

(昭和三八年五月二八日)

(社保第四〇号)

(各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局保護課長通知)

生活保護法関係不服申立ての取扱いについては、昭和三十七年十二月一日社発第七八七号厚生省社会局長通達「行政不服審査法の施行に伴う生活保護法の一部改正について」をもつて示されたところであるが、今般その具体的取扱いに係る質疑応答を次のとおり整理したので、取扱い上の指針とされたい。

なお、この通知において「審査法」とは行政不服審査法をいい、「保護法」とは生活保護法をいう。

おつて、昭和三十八年一月十八日社保第四号本職通知「生活保護法による指定医療機関の指定取消を行なう際の教示について」は廃止する。また、以下に掲げる質疑に関し照会された向きについては、本通知をもつて回答に代えるから了知されたい。

第一 不服申立ての提起

問一 現業員が行なう経済的保護に直接関係のない生活面の指導援助は、事実行為ではあるが、保護法にいう自立を助長するための活動であるから、審査法第二条第一項にいう処分であり、したがつてこれに不服があるときは審査請求をすることができると解してよいか。

答 現業員が自己の責任及び判断によつて行なうあつせん等の行為は、公権力の行使として行なわれるものではないから、審査法第二条第一項にいう処分には含まれない。

問二 集団申請等の場合において二以上の世帯の代表が共同して審査請求をすることができるか。

答 保護の決定及び申請の却下は個々の事例について行なわれるものであり、処分の相手方が二世帯以上になることはないから、共同して審査請求をすることはできない。

問三 保護の決定及び実施に関する処分の相手方が、保護の受益者でもなく、同一世帯員でもない全くの第三者を代理人として、審査請求をすることができると解してよいか。

答 お見込みのとおりである。

問四 代理人の資格を証明する書面の書式は、代理人の自由と解してよいか。

答 お見込みのとおりである。ただし、審査庁は、提出された書面では証明不十分であると認めた場合には、改めて提出を求めることができる。

問五 福祉事務所の職員等から決定通知書を発送したむね聞き知つた日及び福祉事務所の職員等から保護の決定又は申請の却下を聞き知つた日は、審査法第十四条第一項にいう「処分があつたことを知つた日」といえるか。

答 処分があつたことを知つた日とは、決定通知書又は却下通知書を受領した日と解すべきであり、照会の日はいずれも処分があつたことを知つた日には該当しない。

問六 保護申請に対する決定が遅延した場合、申請者は不作為についての不服申立てができるか。

答 保護については、保護法第二十四条第四項の規定により、三十日以内に通知がないときは申請者は申請が却下されたものとみなし、処分についての審査請求をすることができるから、不作為についての不服申立ては実際上あり得ないであろう。

なお、決定通知書又は却下通知書が決定期間経過後に送付された場合であつても、通知書を受領した以上処分についての審査請求をすべきであつて、不作為についての不服申立てをすることはできない。

問七 保護法第四十条第二項、第四十一条第二項及び第四十二条に規定する施設の設置の認可等の申請に対し、都道府県知事又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市の長が、不当に長く何らの決定をしない場合は、不作為として、不作為庁に対し異議申立てができるか。

答 審査法第七条の規定により、異議申立て又は厚生大臣若しくは都道府県知事に対する審査請求のいずれかをすることができる。

問八 審査請求は原則として審査庁に対し直接するものとし、例外的に処分庁を経由してもよいこととされたが、取扱い上処分庁を経由するよう指導方針を立てたいと思うがどうか。

答 そのような指導方針を立てることは、制度上の原則及び例外を実行上逆転させることとなるので適当とはいえない。

問九 外国人は保護に関する不服申立てをすることができるか。

答 審査法は、国民の権利利益の救済を図るものであるから、他に不服申立てを認める法律上の根拠がない以上、外国人は保護に関し不服申立てをすることができない。

第二 審理手続

問一 審査請求に手続上の不備があるため補正を命じた場合、保護法第六十五条に規定する裁決期間の起算日は、はじめて審査請求書を受理した日か、それとも補正後の審査請求書を受理した日か。

答 はじめて審査請求書を受理した日である。

問二 処分庁の弁明書は必ず提出させなければならないか。

答 審査法第二十二条によれば必ずしも提出させなくともよいのであるが、保護の決定及び実施に関する処分についての審査請求が都道府県知事に対し直接された場合は、弁明書を提出させるのが適当である。

なお、この手続をとつた場合であつても裁決は五十日以内にしなければならないことはいうまでもないが、かりに期間経過後に裁決されたとしても、当該裁決は有効である。

問三 次に掲げる者は、審査庁の許可を得たうえ、保護の決定及び実施に関する処分についての審査請求に参加できる利害関係人と解してよいか。

(1) 扶養義務者

(2) 受益者でない同居の親族

(3) 扶養義務者ではないが、現に事実上の仕送りをしている者

(4) 審査請求人に対し金銭に関する債権をもつ者

答 保護の決定及び実施に関する処分についての不服申立てにおいても参加人の参加は認められるが、照会中列挙されている者はいずれも申立人の審査請求の認否につき直接の利害関係がないから、審査請求に参加することはできない。

参加人の例としては、申立人に対し保護費等を支弁すべき都道府県又は市町村が考えられる。

問四 医療扶助単給世帯においては受療者のみが受益者であるので、受療者が保護の決定及び実施に関する処分について審査請求をした後審理中に死亡した場合は、同一世帯員は手続を承継しないと解してよいか。また、単身者の場合はどうか。

答 医療扶助単給の決定であつても、世帯を単位として要否及び程度を判定したうえでの決定である以上、同一世帯員は受益者であつて、当然審査請求人の地位を承継する。単身者については、その絶対的扶養義務者等縁故者がいても、第三者は手続を承継せず、申立人の死亡により審査請求は終了する。

第三 裁決

問一 改正前の保護法第六十五条第一項に規定されていたごとき保護の実施機関に対する下命の裁決はすることができないか。

答 処分についての審査請求の裁決は、却下、棄却、取消し及び変更の四種類であつて、下命の裁決は、することができない。

問二 審査法第四十条第五項の規定により、改正前の保護法において解釈上認められていた不利益変更の裁決はできないこととされたと解してよいか。

答 お見込みのとおりである。

なお、不服申立てとは別個に、正当な理由に基づいて処分庁が不利益となる処分をすることは差しつかえないものである。

第四 教示

問 指定医療機関の指定を取り消す場合、相手方に対する教示は必要か。

答 審査法第五十七条第一項の規定により、教示しなければならない。教示は、通知書に次の例により教示事項を記載してすることとされたい。

なお、注意及び戒告は処分ではないから、教示は不要である。