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○日本赤十字社法の施行に関する件

(昭和二七年九月一一日)

(厚生省発社第六三号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官依命通知)

日本赤十字社法は、昭和二十七年八月十四日法律第三百五号をもつて公布され、これに伴う政令及び省令も近く公布されることとなつたが、この法律は、日本赤十字社の行う事業の公共性と国際性とに鑑み、これを特殊法人に改組し、もつてその事業の円滑適正なる運営を期せしめることを目的とするものであつて、その運用の成否は、直接国民生活の安定の上に、ひいては国際信用の上にも重要な関係を有するものであるから、特に左記事項留意の上、広く法の趣旨の周知徹底に努めると共に、その運用について格段の意を用いられ、この法律の所期の目的達成に万遺憾なきを期せられたく、命によつて通知する。

第一 一般事項

1 本法制定の趣旨は、日本赤十字社の特性を生かし、その自主性を重んじ、事業の円滑適正なる運営を図らしめ、もつて国民生活の安定に一段の力を尽くすようにすると共に、他面日本赤十字社が国際赤十字の一員としての地歩を固め赤十字国際機関並びに各国赤十字社と協力し、世界の平和と人類の福祉に貢献せしめるために特殊法人としての法的根拠を与え、国の指導援助の下にこれを強化しようとするものであること。

2 本法は、日本赤十字社が赤十字に関する諸条約等の精神にのつとつて、赤十字の理想とする人道的任務の達成にあたることを目的とする我が国唯一の赤十字であることを明らかにしたものであること。

3 本法は、日本赤十字社の運営の適正を図るため、従前と異なり、その社員の地位を明確にすると共に、役員に関する規定を時代に即応する民主的なものに改め、総会に代るべき代議員会を設ける等その組織を整備したものであること。

4 日本赤十字社の業務は、何れも国の業務と極めて密接な関係を有するものであるので、国又は地方公共団体は日本赤十字社に対し、費用の補償又は補助、運送及び通信に関する便宜供与、租税の免除その他の援助をなし得るほか必要ある場合には、一定の助成をなし得ることとしたこと。

しかしながら、日本赤十字社の役員の決定等については、その自主性を重んずることとしたこと。

第二 社員に関する事項

社員について特に一章を設け、その平等取扱、加入脱退並びに権利義務等社員の地位を明確ならしめたのは、従来、これらの点が必ずしも明確でなかつた実状に鑑み、確固たる社員意識に立脚した社員制度の確立を企図したものであるから、特にこれが趣旨の普及徹底に努められたいこと。

第三 管理に関する事項

1 代議員は、役員の選出母体であり議決機関である代議員会の構成員であるので、その選出に当つては、日本赤十字社の特性に鑑み、その自主性を重んじようとする本法の趣旨に則り、できうる限り、公私分離の原則を尊重し、真に適格者が選出されるよう指導すると共に、一般社員の意思が十分反映せしめられるようその啓発に努められたいこと。

2 支部長以下の末端組織の職員の選出等に当つても、前項の趣旨に沿うよう十分指導されたいこと。

第四 業務に関する事項

1 日本赤十字社の業務は、国又は地方公共団体が行う業務と極めて密接な関係を有するので、日本赤十字社との連絡を密にし、適正円滑なる業務の運営が行われるよう留意すること。

2 日本赤十字社が行う救護員の確保については、救護業務の重要性に鑑み、その趣旨の周知徹底に努めると共に、関係諸機関が積極的にこれに協力するよう指導されたいこと。

3 国は、日本赤十字社に対し、赤十字に関する諸条約に基づく国の業務のほか、非常災害時における国の業務についても直接これを委託することもできるが、これは非常事態が発生して交通、通信その他の連絡機関が総べて途絶したような極めて稀有な場合においてのみ考えられることであり、通常の災害の場合における救護業務は従前通り災害救助法によつて運用されるべきものであるから、この点誤解のないよう特に留意すること。

4 運送及び通信に関して、日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本放送協会等が日本赤十字社の業務の遂行について便宜を与えることは、これを法によつて強制する趣旨のものではなくあくまでもその自主的な協力に俟つものであるから、この点留意されたいこと。

5 日本赤十字社が第一種、第二種社会福祉事業を経営する場合は、社会福祉事業法に定める社会福祉事業の趣旨及び事業経営の準則に則ることは勿論、事業の届出及び監督等についても社会福祉法人と同様の取扱を受けるものであるから、これが指導監督について遺憾なきを期せられたいこと。

なお、当分の間はあらたに施設を設置して第一種社会福祉事業を経営する場合は、法附則第七項の規定により厚生大臣の認可を必要とするがこの場合厚生大臣の認可のほか、社会福祉事業法、児童福祉法による届出及び生活保護法、児童福祉法等による施設設置の認可をも必要とするものであるから特に留意されたいこと。

第五 助成に関する事項

1 日本赤十字社が、その業務の実施に必要な施設又は設備を整備する場合において、補助金の支出その他の助成をなし得ることになつたので、助成をなすに当つては、本法に基づく施行規則に規定する手続により、慎重に要件を審査されたいこと。

2 助成に関する都道府県の条例、規則等を制定し、又は改廃したときは、その都度当省へ報告されたいこと。

第六 寄附金募集に関する事項

1 日本赤十字社が寄附金の募集を行うことは社員制度の確立上これを避けることが望ましいのであるが、その財源の基礎となる社費の徴収の現状からみて当分の間は、厚生大臣への届出によつて年一回の定期の寄附金募集を認め、更に特別の事情があるときは厚生大臣又は都道府県知事の許可によつて臨時に寄附金募集を行うことを認めている。但し、この場合の寄附金募集は社会福祉事業以外の事業の経営に必要な資金を得るためのものであつて社会福祉事業については、別に社会福祉事業法第六十九条によつて行わなければならないものであるから特に留意されたいこと。

2 法附則第十一項による臨時の寄附金募集の許可に当つては、社会福祉事業法第六十九条の場合と同様に、共同募金その他の一般募金との時期的調整等については特に考慮され、十分審査の上、許可の可否又は許可の条件を決定されるよう厳に留意されたいこと。

なお、許可した場合は、速やかに当省へ報告されたいこと。