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○麻薬取締法施行上の疑義について
(昭和二九年三月八日)
(薬第二三三号)
(厚生省薬務局長あて滋賀県知事照会)
当管内において医師の資格のない某が知人である他府県の医師の名義で亡失の理由により医師免許証の再交付を受け巧みに氏名等を変造しその免許証により昭和二十七年十一月一日以来某会社の診療所医師として医業を行うと共に法定の手続により昭和二十八年及び二十九年度の麻薬施用者の免許を受けその業務に従事中のところ今般医師でないことが発覚した。
この場合次の事項について疑義が生じたので貴局の御見解を得たく照会します。
なお事件処理上急を要しますので至急御回答願います。
記
1 前記事例は刑法第百五十七条の規定(公正証書原本不実記載罪)の適用をうけるものと解せられ従つてこの場合当該麻薬施用者免許は行政行為の効果たる権利義務につき無能力者に対してなされたるものとして当然無効のものと思われるが如何
2 (一)の理由により、この者が麻薬取締法第二条第一項第十三号に規定する者(麻薬施用者)の行為を行つた時は同法第二十七条に違反すると考えられるが如何
3 麻薬取締法第五十一条によれば免許取消の理由として同法の規定(法第三条第三項各号)に違反した場合が含まれるが(一)の理由により取消の必要なきものと思われるが如何
4 麻薬取締法第五十一条及び第五十二条の規定は対象が本件の如き完全なる無能力者(無資格者)である場合はその趣旨の外にあるものと考えられるのでその無効なことを確認し宣言する行為として取消の処分を行う場合同法第五十二条の規定は適用されないものと考えられるが如何
(昭和二九年六月一日 薬収第三八○号)
(滋賀県知事あて厚生省薬務局長回答)
昭和二十九年三月八日、薬第二三三号により照会の標記の件については、左記のとおり回答する。
記
1 行政庁が麻薬施用者の免許を受けるための法定資格を欠く者に対して免許を与えた場合、その免許行為は、重大且つ明白な瑕疵を持ち、従つて無効の行政行為である。故に照会にかかる医師の資格を持たない者某の麻薬施用の行為は、有効な麻薬施用者の免許に基くものではなく、麻薬取締法第二十七条の規定に違反するものである。
2 前記の者について、麻薬施用者の免許の取消は、麻薬取締法第五十一条に規定される取消ではないから、同法所定の手続によることを要しないが、本人に対する通知又は公示によつて右の免許が無効であることを明示されたい。