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○領事関係に係るウィーン条約について

(昭和五八年一一月一日)

(薬麻第七三四号)

(各都道府県衛生主管部(局)長・各地区麻薬取締官事務所(支所)長あて厚生省薬務局麻薬課長通知)

標記条約(昭和五十八年十月十一日条約第十四号)が公布され昭和五十八年十一月二日から我が国について効力を生ずることにより、左記の事項に留意のうえ、その適切なる運用については遺憾のないようされたい。

1 本条約に加入している国(昭和五十八年十月三日現在一○六か国)の国民を逮捕した場合は、当該国民(被疑者)に対し

当該被疑者は、逮捕等された事実について関係領事機関に通報してもらう権利がある

及び

領事機関にあてたいかなる通信も遅滞なく送付してもらう権利がある

旨を遅滞なく告知する義務があること。この場合、当該被疑者が関係領事機関に通報されることを要請したときは、その旨を遅滞なく被疑者を逮捕等した都道府県又は地区麻薬取締官事務所(支所)を管轄区域とする関係領事機関に通報すること。

2 前記1の被疑者の権利は、在日韓国人(大韓民国に籍を有する者に限る。)及び在日中国人(中華人民共和国に籍を有する者に限る。)にも適用されるため、外国人登録証や本人の供述等により確認のうえ告知すること。

3 前記1の権利を告知したこと及び関係領事機関への通報要請の有無については、別添「領事機関への通報要請等権利の告知及び確認書」を作成しておくこと。また、これらの事が都道府県又は麻薬取締官事務所(支所)によつて実施されたことを事件送致後、担当検察官が了知できるようにしておくこと。

4 領事官は、通常逮捕のみ可能であること。

したがつて、現行犯人逮捕又は緊急逮捕はできないこと。

5 領事機関の長を抑留又は拘禁した場合には、外務省に通報し、外務省から当該領事機関の長の派遣国に通報されることになつているので、領事機関の長を抑留又は拘禁したときは、都道府県又は地区麻薬取締官事務所(支所)は、直接、外務大臣官房儀典官室(電話○三―五八一―三九一八)又は同儀典官室総務班(電話○三―五八○―三九一八、内線二○九六)に通報し、その旨を麻薬課にも通報すること。

領事機関の長以外の職員の場合には、都道府県又は地区麻薬取締官事務所(支所)は、直接、当該領事機関の長に対し通報し、その旨を麻薬課にも通報すること。

6 「日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約(昭和四十年九月二十九日条約第二十二号)」、「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約(昭和四十二年八月十五日条約第十九号)」、「日本国とハンガリー人民共和国との間の通商航海条約(昭和五十一年八月二十五日条約第十四号)」、「日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約(昭和五十五年十月二十日条約第三十二号)」及び「日本国とドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約(昭和五十七年九月四日条約第十四号)」に関係する国の国民(被疑者)については、領事機関への通報される権利の行使の有無に関係なく「直ちに通報される」こと。

また、「ソヴィエト社会主義共和国連邦」、「ハンガリー人民共和国」及び「ドイツ民主共和国」は本条約に加入していないため「領事機関にあてたいかなる通信も送付される権利」について告知する義務はないこと。

なお、前記6に掲げる領事条約等のほか、「日本国とパキスタンとの間の友好通商条約(昭和三十六年八月十八日条約第十六号)」、「日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約(昭和三十九年七月十七日条約第十六号)」及び「日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約(昭和四十二年九月二十日条約第十六号)」についても周知のこと。

7 当該国民(被疑者)が関係領事機関に通報されることを要請したときで、領事官と面談したくない旨申し立てた場合、その旨当該領事機関に通報すること。

(資料1)

領事関係に関するウィーン条約(昭和五十八年十月十一日条約第十四号)について麻薬取締官及び麻薬取締員に関係ある事項についての概略は、次のとおりである。

1 この条約の適用上、

(1) 「領事機関」とは、総領事館、領事館、副領事館は代理領事事務所をいう。

(2) 「領事管轄区域」とは、領事機関について領事任務遂行のために定められた地域をいう。

(3) 「領事機関の長」とは、その資格において行動する責務を有する者をいう。

(4) 「領事官」とは、その資格において領事任務を遂行する者(領事機関の長を含む)をいう。

(5) 「事務技術職員」とは、領事機関の事務的業務又は技術的業務のために雇用されている者をいう。

(6) 「役務職員」とは、領事機関の役務のために雇用されている者をいう。

(7) 「領事機関の構成員」とは、領事官、事務技術職員及び役務職員をいう。

(8) 「領事機関の職員」とは、領事機関の長以外の領事官、事務技術職員及び役務職員をいう。

(9) 「個人的使用人」とは、専ら領事機関の構成員の個人的な役務のために雇用されている者をいう。

(10) 「領事機関の公館」とは、建物又はその一部及びこれに附属する土地であつて、専ら領事機関のために使用されているもの(所有者のいかんを問わない。)をいう。

(11) 「領事機関の公文書」には、領事機関に属するすべての書類、文書、通信文、書籍、フィルム、テープ及び登録簿並びに符号及び暗号、索引カード並びにこれらを保護し又は保管するための家具を含む。(第一条第一項関係)

2 領事官は、二の種類の者、すなわち、本務領事官及び名誉領事官とする。(第一条第二項関係)

3 領事機関の構成員であつて接受国の国民であるもの又は接受国に通常居住しているものの地位については、後記30及び31に定める。(第一条第三項関係)

4 接受国の当局は、領事機関の長若しくはその指名した者又は派遣国の外交使節団の長の同意がある場合を除くほか、領事機関の公館で専ら領事機関の活動のために使用される部分に立ち入つてはならない。(第三十一条関係)

5 領事機関の公文書及び書類は、いずれの時及びいずれの場所においても、不可侵とする。(第三十三条関係)

6 派遣国の国民に関する領事任務の遂行を容易にするため、

(1) 領事官は、派遣国の国民と自由に通信し及び面接することができる。派遣国の国民も同様に、派遣国の領事官と通信し及び面接することができる。

(2) 接受国の権限ある当局は、領事機関の領事管轄区域内で、派遣国の国民が逮捕された場合、留置された場合、裁判に付されるため勾留された場合又は他の事由により拘禁された場合において、当該国民の要請があるときは、その旨を遅滞なく当該領事機関に通報する。逮捕され、留置され、勾留され又は拘禁されている者から領事機関にあてたいかなる通信も、接受国の権限ある当局により、遅滞なく送付される。当該当局は、その者がこの(2)に基づき有する権利について遅滞なくその者に告げる。

(3) 領事官は、留置され、勾留され又は拘禁されている派遣国の国民を訪問し、当該国民と面談し及び文通し並びに当該国民のために弁護人をあつせんする権利を有する。領事官は、また、自己の管轄区域内で判決に従い留置され、拘留され又は拘禁されている派遣国の国民を訪問する権利を有する。ただし、領事官が当該国民のために行動することに対し、当該国民が明示的に反対する場合には、領事官は、そのような行動を差し控える。(第三十六条第一項関係)

7 前記6に定める権利は、接受国の法令に反しないように行使する。(第三十六条第二項関係)

8 領事官は、抑留されず又は裁判に付されるため拘禁されない。ただし、重大な犯罪の場合において権限のある司法当局の決定があつたときを除く。(第四十一条第一項関係)

9 領事官は、最終的効力を有する司法上の決定の執行の場合を除くほか、拘禁されず又は身体の自由に対する他のいかなる制限も課されない。ただし、前記8のただし書に該当する場合を除く。(第四十一条第二項関係)

10 領事官は、自己について刑事訴訟手続が開始された場合には、権限のある当局に出頭しなければならない。もつとも、刑事訴訟手続は、領事官としての公の地位に相応の敬意を払いつつ行うものとし、前記8のただし書に該当する場合を除くほか、領事任務の遂行をできる限り妨げない方法で行う。前記8のただし書に該当する場合において領事官を拘禁したときは、当該領事官についての訴訟手続はできる限り遅滞なく開始する。(第四十一条第三項関係)

11 領事機関の職員が抑留された場合若しくは裁判に付されるため拘禁された場合又は当該職員につき刑事訴訟手続が開始された場合には、接受国は、その旨を速やかに当該領事機関の長に通報する。領事機関の長自身が前段に定める措置の対象となる場合には、接受国は、外交上の経路を通じて派遣国に通報する。(第四十二条関係)

12 領事官及び事務技術職員は、領事任務の遂行に当たつて行つた行為に関し、接受国の司法当局又は行政当局の裁判権に服さない。(第四十三条第一項関係)

13 領事機関の構成員に対しては、司法上又は行政上の手続において証人として出頭するよう要求することができる。事務技術職員又は役務職員は、後記15に定める場合を除くほか、証言を拒否してはならない。領事官については、出頭又は証言を拒否した場合においても、いかなる強制的措置又は刑罰も適用しない。(第四十四条第一項関係)

14 領事官の証言を要求する当局は、領事官の任務の遂行を妨げないようにする。当該当局は、可能な場合には、領事官の住居において若しくは領事機関内で証言を録取すること又は書面による領事官の供述を受理することができる。(第四十四条第二項関係)

15 領事機関の構成員は、任務の遂行に関連する事項に関し証言を行う義務並びに当該事項に関する公の通信文及び公の書類を提出する義務を負わない。領事機関の構成員は、また、派遣国の法令に関し鑑定人として証言を行うことを拒否する権利を有する。(第四十四条第三項関係)

16 派遣国は、領事機関の構成員について、前記8、9、10、12、13、14及び15に定める特権及び免除を放棄することができる。(第四十五条第一項関係)

17 放棄は、後記18に定める場合を除くほか、すべての場合において明示的に行うものとし、接受国に対し書面により通告する。(第四十五条第二項関係)

18 領事官又は事務技術職員は、前記12の規定により裁判権からの免除を享受する事項について訴えを提起した場合には、本訴に直接係る反訴について裁判権からの免除を援用することができない。(第四十五条第三項関係)

19 領事機関の構成員は、赴任のため接受国の領域に入つた時又は、既に接受国の領域内にある場合には、領事機関における自己の任務に就く時から、この条約に定める特権及び免除を享受する。(第五十三条第一項関係)

20 領事機関の構成員の世帯に属する家族又は当該構成員の個人的使用人は、当該構成員が前記19の規定により特権及び免除を享受する日又は当該家族若しくは当該個人的使用人が接受国の領域に入つた日若しくはその地位を得た日のうち最も遅い日からこの条約に定める特権及び免除を享受する。(第五十三条第二項関係)

21 領事機関の構成員の任務が終了した場合には、当該構成員、その世帯に属する家族又は当該構成員の個人的使用人の特権及び免除は、通常、その者が接受国を去る時又は接受国を去るために要する相当な期間が経過した時のいずれか早い時に消滅する。当該特権及び免除は、武力紛争が生じた場合においても、第一文に規定する時まで存続する。前記20に規定する家族及び個人的使用人の特権及び免除は、これらの者が領事機関の構成員の世帯に属する者でなくなり又は領事機関の構成員のために役務を行わなくなつた時に消滅する。ただし、これらの者が相当な期間内に接受国を去る意思を有する場合には、これらの者の特権及び免除は、退去の時まで存続する。(第五十三条第三項関係)

22 もつとも、領事官又は事務技術職員が任務の遂行に当たつて行つた行為についての裁判権からの免除は、無期限に存続する。(第五十三条第四項関係)

23 領事機関の構成員が死亡した場合には、その世帯に属する家族は、接受国を去る時又は接受国を去るために要する相当な期間が経過した時のいずれか早い時まで、与えられた特権及び免除を引き続き享受する。(第五十三条第五項関係)

24 名誉領事官を長とする領事機関の公文書及び書類は、いずれの時及びいずれの場所においても、不可侵とする。ただし、当該公文書及び書類が他の文書及び書類と区別して保管されることを条件とする。(第六十一条関係)

25 前記6の規定は、名誉領事官を長とする領事機関について準用する。(第五十八条第一項関係)

26 前記11、12、15、16、17、18、19、20、21、22、及び23の規定は、名誉領事官について準用する。(第五十八条第二項関係)

27 この条約に定める特権及び免除は、名誉領事官の家族又は名誉領事官を長とする領事機関に雇用される事務技術職員の家族には与えられない。(第五十八条第三項関係)

28 名誉領事官は、自己について刑事訴訟手続が開始された場合には、権限ある当局に出頭しなければならない。もつとも、刑事訴訟手続は、名誉領事官としての公の地位に相応の敬意を払いつつ行うものとし、当該名誉領事官が抑留され又は拘禁されている場合を除くほか、領事任務の遂行をできる限り妨げない方法で行う。名誉領事官を拘禁したときは、当該名誉領事官についての訴訟手続は、できる限り遅滞なく開始する。(第六十三条関係)

29 この条約は、文脈上許容される範囲内で、外交使節団による領事任務の遂行についても、適用する。(第七十条第一項関係)

30 領事官であつて接受国の国民であるもの又は接受国に通常居住しているものは、任務の遂行に当たつて行つた公の行為についての裁判権からの免除及び身体の不可侵並びに前記15に規定する特権のみを享受する。ただし、接受国によつてその他の便益、特権及び免除が与えられる場合は、この限りでない。接受国は、当該領事官に関し、前記11に定める義務を負う。当該領事官について刑事訴訟手続が開始された場合には、刑事訴訟手続は、当該領事官が抑留され又は拘禁されている場合を除くほか、領事任務の遂行をできる限り妨げない方法で行う。(第七十一条第一項関係)

31 領事官以外の領事機関の構成員であつて接受国の国民であるもの又は接受国に通常居住しているもの及びその家族並びに前記30に規定する領事官の家族は、接受国により認められている限度において便益、特権及び免除を享受する。領事機関の構成員の家族及び個人的使用人であつて、接受国の国民であるもの又は接受国に通常居住しているものも、接受国において認められている限度において便益、特権及び免除を享受する。もつとも、接受国は、これらの者に対して裁判権を行使するには、領事機関の任務の遂行を不当に妨げないような方法によらなければならない。(第七十二条第二項関係)

(別表)

領事関係に関するウィーン条約の締約国

(昭和五十八年十月三日現在)

アルジェリア民主人民共和国、アルゼンティン共和国、オーストラリア連邦、オーストリア共和国、バハマ国、バングラデェシュ人民共和国、ベルギー王国、ベナン人民共和国、ブータン王国、ボリヴィア共和国、ブラジル連邦共和国、カメルーン連合共和国、カナダ、カーボ・ヴェルデ共和国、チリ共和国、中華人民共和国、コロンビア共和国、コスタ・リカ共和国、キューバ共和国、サイプラス共和国、チェッコスロヴァキア社会主義共和国、デンマーク王国、ジブティ共和国、ドミニカ共和国、エクアドル共和国、エジプト・アラブ共和国、エル・サルヴァドル共和国、赤道ギニア共和国、フィジー、フィンランド共和国、フランス共和国、ガボン共和国、ドイツ連邦共和国、ガーナ共和国、ギリシャ共和国、グアテマラ共和国、ガイアナ協同共和国、ハイティ共和国、ホンデュラス共和国、アイスランド共和国、インド、インドネシア共和国、イラン回教共和国、イラク共和国、アイルランド、イタリア共和国、ジャマイカ、日本国、ジョルダン・ハシェミット王国、ケニア共和国、キリバス共和国、大韓民国、クウェイト共和国、ラオス人民民主共和国、レバノン共和国、レソト共和国、リヒテンシュタイン公国、ルクセンブルグ大公国、マダガスカル民主共和国、マラウイ共和国、マリ共和国、モーリシャス、メキシコ合衆国、モロッコ王国、モザンビーク人民共和国、ネパール王国、ニュー・ジーランド、ニカラグア共和国、ニジェール共和国、ナイジェリア連邦共和国、ノールウェー王国、オーマン国、パキスタン回教共和国、パナマ共和国、パプア・ニューギニア、パラグァイ共和国、ペルー共和国、フィリピン共和国、ポーランド人民共和国、ポルトガル共和国、ルーマニア社会主義共和国、ルワンダ共和国、サントメ・プリンシペ民主共和国、セネガル共和国、セイシェル共和国、ソマリア民主共和国、スペイン国、スリナム共和国、スウェーデン王国、スイス連邦、シリア・アラブ共和国、タンザニア連合共和国、ドーゴー共和国、トンガ王国、トリニダッド・トバゴ共和国、テュニジア共和国、トルコ共和国、トウヴアル、アラブ首長国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国、上ヴォルタ共和国、ウルグァイ東方共和国、ヴァチカン市国、ヴェネズエラ共和国、ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国、ザイール共和国

(以上一○七か国)