添付一覧
○麻薬取締法の施行について
(昭和二八年一〇月二七日)
(薬麻第七八三号)
(各都道府県衛生部(局)長・各地区麻薬取締官事務所長あて厚生省麻薬課長通知)
標記の件に関しては、さきに昭和二十八年四月十五日薬発第八二号及び同月十七日薬発第一四二号をもつて通知したところであるが、なお麻薬取締法第五十一条の規定により都道府県知事が免許の取消等を行う際の基準及び麻薬取扱者が麻薬を貯蔵又は保管するための設備の基準等その他、法の運用について公平を期し、もつて円滑なる運営を図るため、左記のとおり通知するから了知ありたい。
記
1 麻薬卸売業者の免許を与えるに際しては、法第三条第二項及び第三項の規定を適用するのは勿論であるが、国民保健衛生に重要な関係をもつ麻薬を取り扱うものであるから、その保管設備に関しても充分な考慮を払う必要があるので、昭和五十六年八月十四日薬発第七八〇号厚生省薬務局長通知を参照のうえ指導される事が望ましいこと。
なお、離島等において国民医療上、特に麻薬卸売業者の免許を与える必要がある場合等については同通知による保管設備に代えて堅固な金庫等を備えさせる等の措置を講ずることは差し支えないこと。
2 公定書外医薬品である家庭麻薬を製造しようとするためには、薬事法の規定により公定書外医薬品製造許可の必要であることは勿論であるが、その申請の前提として麻薬取締法上、家庭麻薬製造業者であることが必要である。従つて今後家庭麻薬を製造しようとするときは、あらかじめ家庭麻薬製造業者の免許をとり、その後において、公定書外医薬品の製造許可を申請させるように指導すること。
なお事務の敏速化を図る必要上右免許及び許可申請書は便宜同時に提出しても差し支えない。
3 麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者が法第二十四条第十項の規定により麻薬を譲渡しようとするとき又は法第二十九条の規定により麻薬を廃棄しようとするときは、施行規則別記第十号様式又は第十一号様式中「免許の種類」欄には、麻薬施用者、麻薬管理者又は麻薬研究者と記入するほか当人の氏名を、「氏名又は名称」欄には、施設の開設者若しくは設置者の氏名又は名称を記入させること。
4 法第五十一条第一項の規定により免許の取消等を行うときは、各都道府県において公平にして妥当な処分を行うべく慎重な取扱をすることが法運営上必要と思考されるので別表麻薬取扱者に対する行政処分基準を参考として免許の取消、業務の停止等の処分を行うこと。
(1) 麻薬は、医療上極めて高い価値を有する医薬品であるがその取扱いを誤ると、その害毒はまことに恐るべきものがある。従つて麻薬が医療及び学術研究以外の用途に使用されることによつて生ずる保険衛生上の危害を防止することを目的としてその取扱全般にわたり規制するため麻薬取締法が制定されているのである。
(2) 麻薬取扱者はこの目的を達成するため法の規制するところに従つて麻薬の取扱を許容されているものである。従つて麻薬取扱者が故意に法の趣旨に反し著るしく法の制定に違反する行為を行つた場合は、麻薬取扱者としての適格を欠くものであるから最高の処分である免許の取消を行うことが至当と思料される場合もあり、又著しく悪質でないものについては、特に情状を勘案することにより処分内容を確定することが必要であり、これについては左の事項留意の上実施すること。
① 麻薬取扱者に対する一般的な行政処分の基準は、別表のとおりであるが、この内当該条項の規定に違反する行為についてもその情状等により処分の必要のない場合もあり、個々の事件によつて適宣判断する必要がある。
例えば法第十二条第一項の規定に違反し、塩酸ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)を相続等により取得したような場合について見ると、
イ 犯意あり、極めて悪質な違反行為の場合は免許の取消又は一年以下の処分とし、
ロ 犯意微弱にして違反の程度大なる場合は百八十日以下の処分とし、
ハ 犯意微弱にして違反の程度軽微な場合は六十日以下の処分とし、
ニ 犯意なく極めて軽微な違反行為の場合は十日以上三十日以下とし、なお、諸般の状況等を十分考慮し最も妥当と思料される処分をするよう注意すること。
② 二以上の条項に違反した場合は、行政処分の重い重要な条項の違反行為に対して処分するのが妥当であるが、特にその違反行為が麻薬取扱者として悪質と認められる場合には併合して処分をして差支えないこと。
③ 行政処分の期間終了後において重ねて法に違反した場合については前回の違反内容を勘案の上加重して行政処分を科すること。
別表
麻薬取扱者に対する行政処分基準
法条 |
項 |
要旨 |
処分期間 |
四 |
三 |
免許証の譲渡、貸与 |
九十日以下 |
八 |
|
免許証の返納 |
二十日以下 |
九 |
一 |
免許証の記載事項の変更届 |
二十日以下 |
十 |
一 |
免許証の再交付 |
二十日以下 |
〃 |
二 |
再交付後の亡失免許証の返納 |
二十日以下 |
十二 |
一 |
ヘロインの取扱 |
免許の取消又は一年以下 |
〃 |
二 |
原料植物の栽培 |
免許の取消又は一年以下 |
十三 |
|
輸入 |
免許の取消又は一年以下 |
十四 |
一 |
輸入許可 |
免許の取消又は一年以下 |
〃 |
二 |
許可申請書の記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
三 |
記載事項の変更 |
三十日以下 |
十五 |
|
輸出許可書の提出 |
三十日以下 |
十六 |
|
輸入許可書の返納 |
二十日以下 |
十七 |
|
輸出 |
免許の取消又は一年以下 |
十八 |
一 |
輸出許可 |
免許の取消又は一年以下 |
〃 |
二 |
許可申請書の記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
三 |
記載事項の変更 |
三十日以下 |
〃 |
六 |
許可書の送付 |
三十日以下 |
十九 |
|
輸出許可書輸出許可証明書の返納 |
二十日以下 |
二十 |
一~二 |
製造 |
免許の取消又は一年以下 |
二十一 |
一 |
製造許可 |
免許の取消又は一年以下 |
二十二 |
|
製剤 |
免許の取消又は一年以下 |
二十三 |
一 |
製剤、小分の許可 |
免許の取消又は一年以下 |
二十四 |
一~九 |
譲渡 |
免許の取消又は一年以下 |
二十五 |
|
小売業者の譲渡 |
免許の取消又は一年以下 |
二十六 |
一~二 |
譲受 |
免許の取消又は一年以下 |
二十七 |
一 |
施用、交付 |
免許の取消又は一年以下 |
〃 |
二 |
不正施用、不正交付 |
免許の取消又は百八十日以下 |
〃 |
三 |
中毒者に対する施用、交付 |
百八十日以下 |
〃 |
四 |
処方せんの記載事項 |
六十日以下 |
二十九 |
|
麻薬の廃棄 |
六十日以下 |
三十 |
一 |
証紙による封かん(輸入、製造、製剤、小分) |
百八十日以下 |
〃 |
二 |
営業者の麻薬譲渡(麻薬小売業者を除く。) |
百八十日以下 |
〃 |
三 |
施用、小売業者の麻薬譲渡 |
百八十日以下 |
三十一 |
|
容器、被包の記載事項 |
百八十日 |
三十二 |
一 |
譲受、譲渡証の交付 |
九十日 |
〃 |
二 |
譲受、譲渡証の保存 |
三十日以下 |
三十三 |
二 |
管理の義務 |
六十日以下 |
〃 |
三 |
管理麻薬の施用、交付 |
九十日以下 |
三十四 |
一 |
保管の義務 |
六十日以下 |
〃 |
二 |
保管の状況 |
二十日以下 |
三十五 |
一 |
事故の届出 |
三十日以下 |
三十七 |
一 |
帳簿の具備、記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
二 |
帳簿の保存 |
三十日以下 |
三十八 |
一 |
小売業者の帳簿の具備、記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
二 |
小売業者の帳簿の保存 |
三十日以下 |
三十九 |
一 |
管理者の帳簿の具備と記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
二 |
帳簿の引渡 |
二十日以下 |
〃 |
三 |
帳簿の保存 |
三十日以下 |
四十 |
一 |
研究者の帳簿の具備、記載事項 |
六十日以下 |
〃 |
二 |
帳簿の引渡 |
二十日以下 |
〃 |
三 |
帳簿の保存 |
三十日以下 |
四十一 |
|
記録の具備、記載の事項 |
六十日以下 |
四十二 |
|
輸入業者の届出 |
三十日以下 |
四十三 |
|
輸出業者の届出 |
三十日以下 |
四十四 |
|
製造、製剤、家庭麻薬の届出 |
三十日以下 |
四十五 |
|
元卸売業者の届出 |
三十日以下 |
四十六 |
|
卸売の届出 |
三十日以下 |
四十七 |
|
小売の届出 |
三十日以下 |
四十八 |
|
管理者の届出 |
三十日以下 |
四十九 |
|
研究者の届出 |
三十日以下 |
五十 |
|
中毒者の届出 |
四十日以下 |
五十三 |
|
報告の徴収立入倹査収去 |
五十日以下 |