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○毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準―その1(固体以外のものを貯蔵する屋外タンク貯蔵所の基準)の運用について

(昭和五二年一〇月二〇日)

(薬安第六六号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局安全課長通知)

標題の件については、昭和五十二年十月二十日薬発第一一七五号をもつて通知したところであるが、この基準の運用に当たり留意すべき具体的事項は、左記のとおりであるので、後了知のうえ、関係各方面に対し周知徹底を図られたい。

第一 タンクについて

1 基準第3項(3)にいう「過充てんを防止するための装置」は、通常、液面計でよいが、内容物の毒性等を考慮し、必要に応じ、警報器又は自動過充てん防止装置を設けること。

2 基準第3項(4)にいう「安全装置」は、安全弁、減圧弁又は水封(液封)安全器のうち、適切なものを設けること。

3 タンクの設計に関しては、別添資料1を参照されたいこと。

第二 流出時安全施設について

1 基準第4項にいう「安全に収容できる施設」とは、次の施設のいずれかをいうものであること。

(1) 短時間に移送可能な予備貯槽又はピット状構造物(いわゆるブローダウンタンク、ノックダウンタンク等を含む。)及び移送施設(配管及びポンプを含む。)

(2) タンク周囲又はタンク群周囲の防液堤

(3) タンク周囲又は当該タンク近接のピット状構造物、池・くぼ地等の施設(ただし、貯蔵量の全てを収容できる構造のもの。)

(4) その他(1)~(3)と同等以上の施設

2 基準第4項にいう「除害・回収等の施設」とは、次の施設のいずれかをいうものであること。

(1) 毒物又は劇物を除害用塔槽類施設等に導き、回収又は廃棄する施設

(2) 毒物又は劇物を除害用薬剤で除害し廃棄する施設(水による除害が可能な毒物又は劇物にあつては、希釈し廃棄する施設)

(3) その他(1)又は(2)と同様以上の施設

なお、除害用塔槽類施設等については、別添資料2を参照されたいこと。

3 基準第4項にいう「貯蔵場所」とは、タンク、タンク付属設備、周辺空地等を含めた区域をいうが、隣接して貯蔵する毒物又は劇物が相互に反応を起こす場合は、それぞれ独立した貯蔵場所とみなし、それぞれの貯蔵場所から当該毒物又は劇物が流出等しない措置を講ずる必要があること。

4 漏えいした毒物又は劇物が臭気を伴うガス又は煙を発生する場合には、流出液を処理できる装置(移動式ポンプ等)を併設する必要があること。

第三 配管等について

1 配管とタンクとの結合部分は、柔軟性を持たせるため、ベローズ形伸縮管、蛇腹形伸縮管(多層シート)、フレキシブルホース、L字形等の屈曲性を有する管又はその他柔軟性を有する管を使用すること。

2 次表に該当する場合であつて、次の要件を満足するときは、必ずしも鋼製保護管は必要としないものであること。

(ア) 設置する場所は、車両の往来、衝撃又は振動の少ない事業所内であること。

(イ) 埋設位置が明確であり十分管理をなし得ること。

(ウ) 内圧、外圧、温度変化等に十分耐え得る規格のものであること。

毒物又は劇物の種類

配管の材質

塩酸、硫酸(六○%以下に限る。)

硬質塩化ビニル

第四 バルブ等について

高圧用及び振動・衝撃を受けるバルブ等は、鋳鉄製又は非金属製の弁体を用いるべきでないが、別添資料3に該当する場合は、この限りでないこと。

第五 ポンプ設備について

1 不揮発性毒物又は劇物を小容量取り扱う小型ポンプであつて、安全性が十分考慮されている場合は、基準第7項(2)の規定は、必ずしも適用する必要はないこと。

2 ポンプ設備で受け入れできない場合には、受け入れ配管のホース接続箇所は、圧送中離脱するおそれのないよう、フランジ結合方式等による接続用具を用いること。

なお、ねじ込み結合方式又は三鈎結合方式による接続用具を用いる場合には、三以上の谷を有するものとすること。

3 空気又はガスを用いて圧送する場合は、次の要件を満足する安全な設備等とすること。

(1) 圧送中離脱するおそれのない接続用具を用いること。

(2) 配管等は、最高使用圧力の一・五倍の耐圧試験に耐え得るもので、かつ、最高使用圧力一・一倍以下で作動する安全弁を具備したものを用いること。

(3) 送り出し側と受け入れ側との連絡を密にすること。

4 無漏えい型ポンプの場合又はポンプ設備が防液堤内に設置されている場合は、基準第7項(3)の規定は適用する必要はないこと。

第六 検査等について

1 基準第8項(2)の測定は、原則として水準儀その他の計測器によるものをいうが、容量五○○kl未満のタンクにあつては、必ずしも計測器によらず、視覚検査であつても差し支えないものであること。

2 枕型タンクの検査については、基準第8項(3)の規定はその構造等からみて実情にそぐわない面があるので、必ずしも実施する必要はないこと。

3 基準第8項(3)の検査については、ロの検査に代えて、イの検査を行うことは差し支えないこと。

4 安全弁の検査等は、次により実施すること。

(1) 外観検査は、当該安全弁が使用されている設備の外部検査と同時に、又は過去の実績・経験から定めた周期で行うこと。この検査は当該設備の運転中に実施すること。

(2) 作動検査及び漏えい検査は、少なくとも年に一回実施すること。

(3) 検査で異常を認めたときは、可及的速やかに修理を行うこと。なお、腐食性ガスに係る安全弁は、一度作動した後は、当該ガスに腐食されて作動不良となるおそれがあるので、このような場合は速やかに交換すること。

5 破壊板の検査等は、次により実施すること。

(1) 外観検査は、当該破壊板が使用されている設備の外部検査と同時に、又は過去の実績・経験から定めた周期で行うこと。この検査は、当該設備の運転中に実施すること。

(2) 分解検査は、少なくとも年に一回実施すること。

(3) 破壊板と安全弁又は破壊板と破壊板を直列に使用している場合であつて、両者の間に毒物又は劇物の漏えいが疑われるときは、タンクに近接した側の破壊板の漏えい検査を実施すること。

(4) 検査で異常を認めたときは、可及的速やかに交換すること。

第七 その他の事項

その他、毒物又は劇物の特殊性に応じ、その取り扱いに当たつては、次の諸点に留意すること。

1 毒物又は劇物は、当該毒物又は劇物の性質に応じた適正な温度を保つよう取り扱うこと。

2 毒物又は劇物の変質、異物の混入等により当該毒物又は劇物の危険性が増大(異常反応、分解等)しないような措置(不活性ガスの封入等)を講ずること。

3 毒物又は劇物が残存し、又は残存しているおそれのある設備、用具等を修理する場合は、安全な場所で当該毒物又は劇物を完全に除去した後に行うこと。

4 毒物又は劇物が可燃性であつて、その可燃性の液体、蒸気等が滞留し、又はその可燃性の微粉が著しく浮遊するおそれのある場所では、電線と電気器具とを完全に接続し、かつ火花を発する機械器具、工具、はき物等を使用しないこと。

5 毒物又は劇物を保護液中に保存する場合は、当該毒物又は劇物が保護液から露出しないよう注意すること。

別添資料1

タンク設計に関する事項

タンク設計に当たつては、日本工業規格(JIS)等の諸規定によるほか、少なくとも次の点を考慮する必要があること。

(1) タンクの設計は原則として「石油貯ソウの構造(全溶接鋼製)」(JISB8501―1976)によること。ただし、当該JISによりアニュラープレートを必要とする場合、その厚さ(ta)と側板の厚さ(ts)の比(ta/ts)は0.7 以上とし、この値が1以上となる場合は、次の計算式による数値と下表の数値を比較して大きい方の数値を採り、更に当該数値にプラスアルファを加えるものとする。

(計算式)

ts=(D(H-0.3)P/2tn)+C

D:タンクの内径(m)

H:板厚を求めようとしている段の側板の下端から最上段の側

板の上端までの高さ(m)

P:貯蔵する毒物又は劇物の比重

f:設計の引張応力:材料が軟鋼の場合は、14.8kg・f/mm2

(184 MPa) 、高張力鋼の場合は当該JIS又は製造業者の

保証する降状点の最小値の60%をとる。

n:継手効率、一般に0.85とする。ただし、側板最下段の場合

は0.85より大きな値としてはならない。

C:腐れ代(mm)

タンクの内径(m)

側板の最小厚さ(㎜)

D≦16

16<D≦35

35<D≦60

60<D

4.5

6

8

10

(2) タンクの高さに対する径の比が極めて小さいものは、地震等により転倒、ざ屈等を起こさないよう考慮する必要があること。

(3) タンクの高さは、側板の下端から上端まで最高22mとすること。

ただし、球形タンクにあつてはこの限りでない。

(4) タンクは、貯蔵する毒物又は劇物の比重等を考慮し、地耐力に応じて高さ等を定める必要があること。

別添資料2

除害用塔槽類施設等の例示

(1) 吸収塔又は槽(溶剤使用)

(2) 反応塔又は槽(除害用薬剤使用)

(3) 吸収塔(活性炭使用)

(4) 接触分解反応塔(触媒方式)

(5) 酸化分解炉(高温方式)

(6) 燃焼炉

(7) 液化分離装置(低温又は加圧方式)

(8) 再利用施設又は回収施設

別添資料3

鋳鉄製又は非金属製の弁体を用いてもよい事例

毒物又は劇物の変質若しくは弁体の腐食を防止するため、止むを得ず鋳鉄製又は非金属製の弁体を用いる場合は、次表によること。

弁体の材質

常用圧力(kg/㎝2)

常用温度

ねずみ鋳鉄(JISG5501)

10未満及び振動・衝撃を受けない箇所

 

 

 

0℃~250℃

球状黒鉛鋳鉄(JISG5502)

黒心可鍛鋳鉄(JISG5702)

白心可鍛鋳鉄(JISG5703)

パーライト可鍛鋳鉄(JISG5704)

 

 

 

16以下及び振動・衝撃を受けない箇所

 

 

 

 

ダクタイル鉄鋳造品*1

マレアブル鉄鋳造品*2

 

 

 

 

 

24以下

 

-5℃~350℃

 

 

 

 

非金属

各使用温度における非金属の強度を考慮した設計圧力を最高使用圧力とする。

*1 製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示(昭和50年8月通商産業省告示第291号)第4条第7号備考に適合

*2 同告示第4条第7号備考2に適合