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○医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理に関する基準(原薬GMP)について
(昭和六三年七月一五日)
(薬発第五九八号)
(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)
医薬品の品質管理は、医薬品の「製造管理及び品質管理に関する基準」(以下「GMP」という。)により図られているが、医薬品の製造原料を製造する製造所又は作業所については、厚生省令で定める医薬品のGMPの適用が除外されている。当該製造所又は作業所については、従来から適宜指導を行ってきたところであるが、近年、より高い品質の医薬品の製造原料の供給が要求されていることから、別添のとおり「医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理に関する基準(原薬GMP)」を定めたので、通知する。
本基準については、昭和六十五年一月一日からこの基準に沿って製造が行われることを目途としているので、貴管下の医薬品の製造原料を製造する製造業者に対し、その趣旨の周知徹底を図るとともに、自主的に実施計画を立案するよう指導し、これに対し必要に応じ指導助言を行うこととされたい。
なお、本基準の実施については、特に左記事項に留意することとされたい。
記
1 基準の適用範囲について
本基準は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十二条の許可を受けている医薬品の製造所のうち、最終製品の段階において薬理作用を有する物質(有効成分)を医薬品の製造原料として製造している製造所又は作業所に適用する。ただし、医薬品の製造管理及び品質管理規則(昭和五十五年厚生省令第三十一号)第九条第一号ロからへまでに掲げる医薬品の製造原料のみを製造する製造所又は作業所並びに同条第二号及び第三号に掲げる製造所又は作業所を除く。
2 品質管理部門の設置について
本基準で各製造所ごとに製造管理責任者及び品質管理責任者の設置を規定したのは、製造部門から独立した品質管理部門を設け、製造及び品質管理の責任体制を明確にすることにより品質確保の向上を図るためのものであること。
3 基準書類の整備について
本基準において、製品標準書、製造管理基準書及び品質管理基準書等の作成を規定したのは、適正なる製造管理及び品質管理を行うために標準となるものが必要であるためであり、この趣旨にかんがみ十分に内容を検討し定めるとともに、作業における記録についても製品の品質確保が十分できるよう、その整備を図ること。
4 苦情処理について
品質等に関する苦情処理についての規定を設けたのは、品質確保に関する情報を収集し、これらの情報をもとに製造管理及び品質管理の改善を行うことを目的としたものであり、この趣旨に沿つて十分な体制の整備を図ること。
別添
医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理に関する基準(原薬GMP)
第一章 総則
(目的)
第一条 この基準は、医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理に関する基準(原薬GMP)を定めることにより、医薬品の製造原料(以下「原薬」という。)の品質の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この基準において、用語の定義は次のとおりとする。
一 「原薬」とは、化学合成、発酵若しくは抽出など又はこれらの操作の組み合わせによつて製造され、最終製品の段階において薬理作用を有する物質(有効成分)であつて、医薬品の製造原料となるものをいう。
二 「医薬品製造管理者」とは、薬事法第十五条第三項に規定する医薬品製造管理者をいう。
三 「原料」とは、原薬の製造に用いられる物質であつて、製品である原薬に含有されないものを含み、資材及び製造の中間工程で造られるものを除くものをいう。
四 「資材」とは、製品に使用されるものであつて、容器、表示材料(ラベル及び添付文書をいう。)及び包装材料(梱包材料を除く。)をいう。
五 「中間体」とは、原薬の製造の中間工程で造られるものであつて、さらに以後の製造工程を経ることによつて製品たる原薬となるものをいう。
六 「製品」とは、すべての製造工程を終えた原薬(最終製品)をいう。
七 「ロット」とは、原料及び製品(中間体を含む。)について用いるもので、同一製造期間に一連の製造工程により均質性を有するように製造されたものの一群をいう。
八 「管理単位」とは、資材について用いられるもので、同じ材質のもので均質性が確認されたものの一群をいう。
(製造管理責任者及び品質管理責任者)
第三条 医薬品の製造原料の製造業者(以下「原薬の製造業者」という。)は、製造所ごとに、医薬品製造管理者の管理の下に、製造管理に係る部門の責任者として製造管理責任者を、品質管理に係る部門の責任者として品質管理責任者を置かなければならない。
2 品質管理に係る部門は、製造管理に係る部門から独立していなければならない。
3 製造管理責任者は、品質管理責任者を兼ねてはならない。
(医薬品製造管理者)
第四条 医薬品製造管理者は、次の各号に掲げる業務を行わなければならない。
一 製造管理責任者及び品質管理責任者を統括すること。
二 製造管理及び品質管理の結果を適正に評価して、製品の製造所からの出荷の可否を決定すること。
2 原薬の製造業者は、医薬品製造管理者が業務を遂行するに当たつて支障を生ずることがないようにしなければならない。
(製品標準書)
第五条 原薬の製造業者は、製造所における原薬の製造管理及び品質管理を適切に行うため、原薬の品目ごとに、製造承認事項、製造手順その他必要な事項について記載した製品標準書を当該原薬の製造に係る製造所ごとに作成しなければならない。
第二章 製造管理
(製造管理基準書及び製造衛生管理基準書)
第六条 原薬の製造業者は、製造所における原薬の製造管理を適切に行うため、製造所ごとに、原料等の保管、製造工程の管理その他必要な事項について記載した製造管理基準書を作成するとともに、製造作業を行う場所(以下「作業所」という。)ごとに、構造設備(試験検査に関する設備及び器具を除く。以下同じ)の衛生管理、作業員の衛生管理その他必要な事項について記載した製造衛生管理基準書を作成しなければならない。
(製造管理責任者の業務)
第七条 原薬の製造業者は、製造管理責任者に、製品標準書、製造管理基準書又は製造衛生管理基準書に基づき、次の各号に掲げる原薬の製造管理に係る業務を適切に行わせなければならない。
一 製造工程における指示事項、注意事項その他必要な事項を記載した製造指図書を作成すること。
二 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した責任者に行わせること。
イ 製造指図書に基づき原薬を製造すること。
ロ 原薬の製造に関する記録をロットごとに作成すること。
ハ 製品の表示及び包装についてロットごとにそれが適正である旨を確認し、その記録を作成すること。
ニ 原料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。第九条第二号イにおいて同じ。)についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに適正に保管し、及び出納を行い、並びにその記録を作成すること。
ホ 構造設備の清掃を確認し、その記録を作成すること。
ヘ 作業員の衛生管理を行い、その記録を作成すること。
ト 構造設備を定期的に点検整備し、その記録を作成すること。
チ その他必要な業務
三 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録により製造管理が適正に行われていることを確認し、その結果を医薬品製造管理者に対して文書により報告すること。
四 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録を記録の日から原則として三年間保存すること。
第三章 品質管理
(品質管理基準書)
第八条 原薬の製造業者は、製造所における原薬の品質管理を適切に行うため、製造所ごとに、検体の採取方法、試験検査結果の判定方法その他必要な事項を記載した品質管理基準書を作成しなければならない。
(品質管理責任者の業務)
第九条 原薬の製造業者は、品質管理責任者に、製品標準書又は品質管理基準書に基づき次の各号に掲げる原薬の品質管理に係る業務を適切に行わせなければならない。
一 試験検査実施計画書を作成すること。
二 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じて指定した者に行わせること。
イ 試験検査実施計画書に基づき、原料及び製品についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに試験検査を行うのに必要な検体を採取し、その記録を作成すること。
ロ 試験検査実施計画書に基づき、採取した検体について、ロットごと又は管理単位ごとに試験検査を行い、その記録を作成すること。
ハ 製品について、ロットごとに所定の試験に必要な量の二倍以上の量を参考品として製造された日から原則として三年間、適切な保管条件のもとで保存すること。
ニ 試験検査に関する設備を定期的に点検整備し、その記録を作成すること。
ホ その他必要な業務
三 試験検査結果の判定を行い、その結果を医薬品製造管理者及び製造管理責任者に対して文書により報告すること。
四 試験結果に関する記録を記録の日から原則として三年間保存すること。
第四章 雑則
(苦情処理)
第十条 原薬の製造業者は、原薬の品質等に関して苦情があつたときは、その苦情に係る事項が当該製造所に起因するものでないことが明らかな場合を除き、その製造所の医療品製造管理者に、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。
一 苦情に係る事項の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講ずること。
二 苦情の内容、原因究明及び改善措置を記載した苦情処理記録を作成し、その作成の日から三年間保存すること。