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○柔道整復師免許の効力について

(昭和三一年六月一八日)

(医第四五号)

(厚生省医務局長あて佐賀県知事照会)

当管内唐津市畑島居住の山崎浦治にかかる柔道整復術免許鑑札については、去る二月二十九日付医収第五六四号をもつて貴職の御回答を得ましたが県としてはできるだけ円満な解決をはかるため、免許取消処分にさきだち、山崎浦治に対し免許鑑札の返納をすすめましたが、本人は返納の意志ほとんどなく免許取消処分をした場合は、その取消請求の訴訟を提起することを考えている現状であります。

したがって県としては法律の規定および貴職の回答に基いて免許取消処分をしたいと考えておりますが、いずれ訴訟の提起は必至の情勢でありますので、慎重を期してさらに県法制審査委員会に対しても審議せしめたところ、別紙(略)のとおりの意見でありました。

免許取消処分は新な行政処分となるものであるから、これが執行に当っては現在の情況において取消を必要とする公益上の理由の有無が必要であると思いますが、該人は治療施術について民間の評判は比較的に良く、かなり患者の多い実情であり、資格を備えていない事実のみをもって、直ちに公益上不適当と言えるかどうか、にわかに判断し難いので、なにぶんの御回示を得たく重ねてお願いいたします。

なお、判例として、医師資格無効宣言取消請求事件(東京、地方、昭和二十八年(行)第二号昭和三〇年六月一七日判決、原告石崎清茂、被告厚生大臣代理人豊水道祐外五名)(昭和三十年八月第一巻五号、法務省訴訟局発行「訟務月報」一五二頁)を参考としたが、このほか、適切な判例または資料があればあわせて御回示願います。

(昭和三一年八月二四日医収第七三四号)

(佐賀県知事あて厚生省医務局長回答)

昭和三十一年六月十八日医第四五号をもって照会のあった標記の件について、左記の通り回答する。

柔道整復の行為は、人の身体の打撲、捻挫、脱臼又は骨折の患部を整復する施術を行うものであって、その施術の如何によっては人の生命身体に危険を生ずるおそれのある行為であり、それを業としてなすことは、直接国民の保健衛生に重大な影響を及ぼすものであるから、昭和二十一年六月十九日厚生省令第二十八号「按摩術営業取締規則、鍼術灸術営業取締規則及び柔道整復術営業取締規則の特例に関する件」第一条によって、外地引揚者に対して柔道整復術営業取締規則の特例を認めるにあたっても、特に、「朝鮮、台湾、樺太又は満州その他の外国でその地の法令によって免許鑑札を得た者」に限って同省令を適用することとしているのである。従って、この資格要件は、公益上の観点から定められた極めて重要な要件であり、御照会の者が本要件を欠く以上、これに対して与えられた柔道整復師免許は重大明白な瑕疵あるものとして当然無効であり、かつ、これを取り消すことについて公益上十分な理由があるものと思料する。