添付一覧
○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律の施行に伴う医療分野における外国人労働者等の受入れにおける留意事項等について
(平成二年九月二五日)
(健政発第五七六号・薬発第九七四号)
(各都道府県知事あて厚生省健康政策・薬務局長連名通知)
「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」(平成元年法律第七十九号。以下「改正法」という。)が別添2のとおり昨年十二月十五日付けで、また、「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令」(平成二年法務省令第十五号)及び「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(平成二年法務省令第十六号。以下「基準省令」という。)がそれぞれ別添3及び別添4のとおり本年五月二十四日付けで公布され、いずれも本年六月一日に施行されたところである。
これらの改正のうち医療分野に関係するものの概要及び医療分野での外国人労働者、就学生、研修生等の受入れにおける留意事項等は左記のとおりであるので、了知されるとともに、関係方面に対する周知方及び指導方お願いする。
なお、医療分野での外国人を対象とした長期にわたる研修の実態を把握するため、別添1のとおり「外国人医療研修実施状況調査要綱」を定めたので、趣旨を御理解の上、貴管下の病院に対する周知及び施行に遺憾なきを期されたい。
おって、関係団体に対しては別途通知済みであるので、申し添える。
記
第一 改正の概要
1 改正の趣旨
近年の国際交流の活発化、我が国経済社会の国際化の進展等に伴う訪日する外国人の増加、訪日目的の多様化、不法就労外国人の増加等の情勢に的確に対処できる出入国管理体制を確立するため、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「法」という。)の一部が改正されたものである。
2 主な改正内容
(1) 本邦への入国・在留を認める外国人の類型を示す在留資格について、種類や範囲を全般的に見直すとともに新たな在留資格が創設され、従来の一八種類が二八種類とされた。
(2) 本邦に上陸しようとする外国人に関し、一定の在留資格に関する審査の基準を、法務省令で定めることとされた。
(3) 就労できる外国人について、その求めに応じ就労資格証明書を交付することとするとともに、不法就労助長罪の新設など、不法就労外国人の悪質な雇用主やブローカーに対する罰則が強化された。
3 医療分野における扱い
(1) 日本で医療に従事する場合
ア 必要な在留資格
医師、歯科医師等(日本の免許を有する者に限る。)で、日本で医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事しようとするものは、永住資格その他在留活動に制限のない在留資格又は今回新たに設けられた「医療」の在留資格が必要となる。
イ 上陸許可により「医療」の在留資格を付与する基準
基準省令の表「法別表第一の二の表の医療の項の下欄に掲げる活動」の項(以下「医療の項」という。)下欄に掲げる基準に適合することであり、具体的には次のとおりである。
なお、平成二年六月一日現在において、適法に医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に報酬を得て従事している者(永住資格その他在留活動に制限のない在留資格を有する者を除く。)については、「定住者」の在留資格を有するものとみなされる。(施行規則附則第二項)
(ア) 医師又は歯科医師
① 日本人と同等以上の報酬を受けること。(医療の項第一号)
② 業務が、次のいずれかに該当すること。(医療の項第二号)
○ 本邦の大学の医学部又は歯学部を卒業後六年以内に、大学の医学部・歯学部等の附属病院、臨床研修指定病院又は法務大臣の告示する病院で行う研修
○ 医師又は歯科医師の確保が困難な地域にある診療所で法務大臣が告示したもので行う診療(本邦の大学の医学部又は歯学部の出身者、平成二年六月一日現在において医師又は歯科医師の免許を有する者等に限る。)
(イ) 保健婦、助産婦、看護婦(士)又は准看護婦(士)
① 日本人と同等以上の報酬を受けること。(医療の項第一号)
② 学校養成所を卒業又は修了後四年以内に研修として業務を行うこと。(日本の看護婦等学校養成所の出身者に限る。)(医療の項第三号)
(ウ) 薬剤師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療養士、視能訓練士、臨床工学技士又は義肢装具士
① 日本人と同等以上の報酬を受けること。(医療の項第一号)
② 医療機関又は薬局に招へいされること。(医療の項第四号)
(エ) 歯科技工士、臨床検査技師又は衛生検査技師
医療に係る業務に従事する目的での上陸は許可されない。
ウ 在留期間の更新
「医療」の在留資格に係る在留期間は一年又は六か月とされており、在留期間が経過した後も在留しようとする場合は、基本的には、なお基準省令の要件を満たす場合に限り在留期間の更新を受けることができる。
ただし、平成二年六月一日現在において適法に医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に報酬を得て従事している者の在留期間の更新については、その実績を配慮して行われる。
エ その他
「医療」の在留資格は、医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事しようとする者に限って付与され、免許資格がなくとも業務に従事できる衛生検査技師や看護助手として就労しようとする者に対しては付与されない。このため、外国人は、永住資格その他在留活動に制限のない在留資格を有する者でない限り、衛生検査技師、看護助手等の業務に従事する目的で本邦に上陸することはできない。
(2) 看護婦その他の医療関係者の養成施設に留学又は就学する場合
ア 必要な在留資格
日本の看護婦その他の医療関係者の養成施設(文部省所管に係るものは含まない。以下「看護婦養成所等」という。)に留学(専修学校の専門課程等の場合)又は就学(専修学校の高等課程若しくは一般課程、各種学校等の場合)しようとする者は、永住資格その他在留活動に制限のない在留資格又は「留学」若しくは「就学」の在留資格が必要となる。
イ 上陸許可により「留学」又は「就学」の在留資格を付与する基準
基準省令の表「法別表第一の四の表の留学の項の下欄に掲げる活動」の項(以下「留学の項」という。)下欄又は「法別表第一の四の表の就学の項の下欄に掲げる活動」の項(以下「就学の項」という。)下欄に掲げる基準に適合することであり、具体的には次のとおりである。
なお、平成二年六月一日現在において、適法に留学又は就学している者については、「留学」又は「定住者の」の在留資格を有するものとみなされる。
(ア) 専修学校又は各種学校の場合
① 生活費用を支弁する手段を有すること。(就労という手段は認められない。)(留学の項第二号及び就学の項第二号)
② 所定の日本語教育を受けていること。(留学の項第四号イ及び就学の項第四号イ)
③ 帰国後、修得した技術、技能又は知識を要する業務に従事することが予定されていること。(保健婦養成所、助産婦養成所、看護婦養成所又は准看護婦養成所の場合については、帰国後特別な教育を受けることなく母国の相当資格を取得できること。)(留学の項第四号ロ及び就学の項第四号ロ)
④ 当該専修学校に、外国人学生の生活の指導を担当する常勤職員が置かれていること。(留学の項第四号ハ及び就学の項第四号ハ)
(イ) 設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関の場合
当該教育機関が法務大臣が告示をもって定めるものであること。(就学の項第六号)(なお、医療関係者の養成施設に関しては、本告示を行う予定はない。)
ウ 在留期間の更新
「留学」の在留資格に係る在留期間は一年又は六か月、「就学」の在留資格に係る在留期間は一年、六か月又は三か月とされており、在留期間が経過した後も在留しようとする場合は、基本的には基準省令の要件を満たす場合に限り在留期間の更新を受けることができること。
エ その他
(ア) 上陸に際し、留学又は就学を名目に主として就労することを目的とする者については、留学又は就学に該当しないことから、留学又は就学の在留資格は付与されないものであること。
(イ) 留学生又は就学生が教育を受ける活動を阻害しない範囲内で報酬を受ける活動を行おうとする場合については、法務大臣が相当と認めるときは、法務大臣から資格外活動の許可を受けて申請に係る活動を行うことができること。
ただし、看護婦養成所又は准看護婦養成所に留学又は就学する者に関しては、原則として医療機関において報酬を受ける活動を行うために法務大臣から資格外活動の許可を受けることはできず、したがって医療機関において報酬を受ける活動を行うことはできないこと。
(3) 医療機関において研修を受ける場合
ア 必要な在留資格
医療機関において研修を受けようとする者は、永住資格その他在留活動に制限のない在留資格又は「研修」の在留資格が必要となる。
イ 上陸許可により「研修」の在留資格を付与する基準
基準省令の表「法別表第一の四の表の研修の項の下欄に掲げる活動」の項(以下「研修の項」という。)の下欄に掲げる基準に適合することであり、具体的には次のとりである。
なお、平成二年六月一日現在において、適法に研修に従事している者については、「研修」の在留資格を有するものとみなされる。
(ア) 申請人が一八歳以上であり、かつ、帰国後本邦において修得した技術、技能又は知識を要する業務に従事することが予定されていること。
(イ) 申請人が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技術、技能又は知識を修得しようとすること。
(ウ) 修得しようとする技術、技能又は知識について五年以上の経験を有する常勤の職員の指導の下に行われること。
(エ) 研修の中に実務研修が含まれている場合は、受入れ機関が次の要件に適合すること。(ただし、受入れ機関が我が国の国又は地方公共団体の機関である場合その他法務大臣が告示で定める場合は、当該要件は不要。)
① 研修生用の宿泊施設を確保していること。
② 研修生数が受入れ機関の常勤の職員の総数の二○分の一以内であること。
③ 外国人研修生の生活の指導を担当する職員が置かれていること。
(オ) 研修の中に実務研修が含まれている場合は、申請人が次のいずれかに該当する外国の機関の常勤の職員であり、かつ、当該機関から派遣される者であること。(ただし、受入れ機関が我が国の国又は地方公共団体の機関である場合その他法務大臣が告示で定める場合は、当該要件は不要。)
① 国若しくは地方公共団体の機関又はこれらに準ずる機関
② 受入れ機関の合併企業又は現地法人
③ 受入れ機関と引き続き一年以上の取引の実績又は過去一年間に一○億円以上の取引の実績を有する機関
(カ) 実務研修を受ける時間が、本邦において研修を受ける時間全体の三分の二以下であること。
また、前記(エ)及び(オ)の基準に関しては、別添5及び6のとおり、国際協力事業団の事業として行われる研修、民法上の公益法人の事業として行われる研修のうち一定の要件を満たすもの等について特例が設けられているので留意されたい。
ウ 在留期間の更新
「研修」の在留資格に係る在留期間は一年、六か月又は三か月とされており、在留期間が経過した後も在留しようとする場合は、基本的には基準省令の要件を満たす場合に限り在留期間の更新を受けることができること。
第二 留意事項
1 医療機関に対する事項
(1) 外国人を医療に係る業務に従事させる場合
ア 医療の業務に従事できない在留資格を有する者を雇用した場合は、雇用した者が不法就労助長罪(法第七十三条の二)で処罰されることがあるので、雇用に当たっては在留資格を確認すること。また、確認の結果、在留資格が永住資格その他在留活動に制限のない在留資格でなかった場合については、実際に業務に従事させるまでに所要の在留資格を取得したことを確認すること。
なお、歯科技工士、臨床検査技師又は衛生検査技師については、「医療」の在留資格は付与されないので、留意すること。
イ 看護助手として就労しようとする者に対して就労が認められる在留資格が付与されることはないので、留意すること。
ウ 外国人医師・歯科医師については、一定の病院(卒後六年間の研修に限る。)又は法務大臣が告示する診療所において診療に従事する場合(日本の大学の医学部又は歯学部の出身者、平成二年六月一日現在において医師又は歯科医師の免許を有する者等に限る。)に限り「医療」の在留資格が付与されることとなっており、他の医療機関において報酬を支払って外国人医師、歯科医師を診療に従事させることは、エの場合を除きできないので、留意すること。
なお、へき地診療所等において、外国人医師・歯科医師(永住資格その他在留活動に制限のない在留資格を有する者を除く。)を診療に従事させることができるのは、基準省令の表「法別表第一の二の表の医療の項の下欄に掲げる活動」の項第二号ロにより法務大臣から告示されている診療所に限られるので、へき地診療所等において、外国人医師・歯科医師(永住資格その他在留活動に制限のない在留資格を有する者を除く。)を診療に従事させようとするときは、当該診療所の開設者又は関係市町村長は、あらかじめ都道府県を経由して厚生省健康政策局医事課に申し出られたいこと。
おって、法務大臣の告示した診療所において診療に従事する外国人医師・歯科医師が、短期間へき地中核病院等で研修として業務に従事することは差し支えないので、留意されたいこと。
エ ア及びウにかかわらず、平成二年六月一日現在において適法に医療に係る業務に従事している者については、在留期間の更新がその実績を配慮して行われることから、引き続き従来通り業務に従事できるものであること。
(2) 研修生を受け入れる場合
ア 研修を目的として本邦に入国・在留するためには、永住その他在留活動に制限のない在留資格又は「研修」の在留資格が必要であるので、研修に先立ち在留資格を確認されたいこと。
イ 外国人に対する研修については、必要な能力を有する者を指導者とするなど、研修の実が上がるよう配慮されたいこと。
なお、研修の内容が実質的に就労にほかならず研修手当等の名目で報酬が支払われている場合など、実質的に就労であると判断される場合には、不法就労とされ、研修生及び受け入れた者の両者とも処罰されることがあるので、申し添える。
ウ なお、外国人を対象として医療に係る技術、技能又は知識を修得するための実習を含む研修であって、研修期間が一か月以上のもの(外国医師又は外国歯科医師が厚生大臣の許可を受けて行う臨床修練を除く。)を行った病院については、別添の「外国人医療研修実施状況調査要綱」を定めるところにより、毎年四月末日までに、前年度において受け入れた外国人研修生の数を各都道府県まで報告されたいこと。
2 学校養成所に対する事項
(1) 留学又は就学を目的として本邦に入国・在留するためには、永住その他在留活動に制限のない在留資格又は「留学」若しくは「就学」の在留資格が必要であるので、外国人の留学生又は就学生を受け入れようとする場合は、選考に先立ち在留資格を確認されたいこと。また、確認の結果、在留資格が永住その他在留活動に制限のない在留資格でなかった場合については、速やかに在留資格について所要の手続きを行うよう指導されたいこと。
(2) 留学生・就学生がアルバイト等報酬を受ける活動を行う場合は、法務大臣から資格外活動の許可を受ける必要があり、許可を受けることなく報酬を受ける活動を行ったときは、不法就労として雇用者ともども処罰されることがあるので、適切に指導されたいこと。
なお、看護婦養成所又は准看護婦養成所に就学する者については、医療機関に就労する場合には原則として資格外活動の許可を受けることはできないので、留意されたいこと。
別添1
外国人医療研修実施状況調査要綱
1 目的
この調査は、医療分野での外国人を対象とした長期にわたる研修の実態を把握することを目的とする。
2 調査対象
専ら又は主として外国人を対象として、病院において行われる医療に係る技術、技能又は知識を修得するための実習を含む研修であって、研修期間がのべ一か月以上のもの。ただし、外国医師又は外国歯科医師が厚生大臣の許可を受けて行う臨床修練を除く。
3 調査方法
(1) 外国人を対象として医療に係る技術、技能又は知識を修得するための研修を行った病院は、別紙1により毎年四月末日までに、前年度において受け入れた外国人研修生の数を各都道府県まで報告する。
(2) 各都道府県知事は、(1)を別紙2により集計し厚生省健康政策局医事課まで報告する。
別紙1
別紙2
別添2~4 略