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○裁判用診断書に関する件

(昭和二三年一二月一三日)

(医第六五四号)

(各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)

従来精神又は身体上の疾病を理由として裁判期日の変更を求めるために被告人から裁判所に提出されていた医師の診断書については、特にその形式が定められていないため、単に病名及び症状を記載するのみのものが多く、期日変更の裁判をなす資料としては不十分のものが多かった。特に最近の事例に鑑みても、診断書の内容が不備のために裁判の円滑な運営に種々の支障を生じている情況である。そのため当省においても最近最高裁判所事務局及び日本医師会と種々協議した結果、期日の変更を求めるため被告人が裁判所に提出すべき診断書は別紙第1の様式によることが適当であるとの結論に達したので、爾今右の目的のために要求される診断書については右の様式によるよう貴管内の医師及び医療機関の長に対し周知徹底方御配慮願いたい。

追而本件に関しては日本医師会長からも同会会員に対し示達ずみであり、又最高裁判所事務総長から各高等裁判所長官及び各地方裁判所長に対しても別紙第2の通り通牒されたので念のため申し添える。

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(別紙1)

(別紙2)

公判期日変更申請に際し提出される被告人に対する医師の診断書について

(昭和二三年一一月一○日 最高裁判所刑事第九八六六号)

(高等裁判所長官・地方裁判所長あて最高裁判所事務総長通知)

従来被告人から精神又は身体上の疾病を理由として期日の変更を求めるとき提出されていた医師の診断書には、通例単に病名及び症状を記載するのみで簡に失するものが多く、裁判長において期日変更の裁判を為す資料としては不十分の場合が多かった。

よって、今後被告人又は弁護人から、被告人の精神又は身体上の疾病を理由として期日の変更を求めるときは、従来のような簡単な診断書の提出のみに止まらず、その理由を記載した書面及びその事由を疎明すべき医師の診断書を提出させ、この診断書には被告人の病名、症状の記載のみならず、(1)被告人の精神又は身体状況に照らし被告人が公判の期日に出頭できるかどうか、(2)被告人の精神又は身体状況に照らし、被告人が自ら正当に防禦できるか、又弁護人の防禦を助けることができるかどうか、(3)審理の続行により被告人の生命に危険があるか、健康状態が甚だしく害われるかどうか、の三点についても、具体的な意見が記載されていなければならないものとし、尚必要があるときは二人以上の医師の右診断書を提出せしめるよう措置することが適当と思料される。

診断書が右の様式をそなえていないときは、裁判所においては被告人又は弁護人等に対して、審理遅延の実情と本通達の趣旨を十分に説明し納得せしめて、診断書に前記所要事項を明らかならしめるように措置し、又診断書が右の様式をそなえていてもその内容等につき疑問の存するときは、裁判所はその診断書を作成した医師の出頭を求め、その医師の適格性及び診断書の内容につき質す等適宜の措置をとり、更に以上の場合においても必要と認めるときは裁判所自ら公共の病院における医師その他公正にして資格ある医師を被告人に対して指定し、被告人の費用において該医師の作成した診断書を提出せしめ、或いはその専門的意見を徴する等の措置を講ずることが適切と思料される。尤もこれらの場合に被告人において医師に対し費用を支弁できないときは、裁判所は、自ら適当な医師を選び被告人に対する診断書の作成を嘱託し、この費用は、裁判費(手当及び給与金)の中から支弁して差し支えない。裁判所は、医師が故意に右の様式をそなえないか若しくは故意に不明瞭な診断書を作成し、その他医師として不徳義な行為をしたものと思料するときは、厚生省又は日本医師会において自ら適切な処置を執ることができるよう、同省又は同会に対して、右の事実を通知して差し支えないものと考えられる。

尚明年一月一日施行される新刑事訴訟法第二百七十八条によれば、公判期日に召喚を受けた被告人が病気のため出頭できないときは、裁判所規則の定めるところにより、医師の診断書を提出すべき旨裁定し、最高裁判所において目下この規則の立案準備中であるが、取り敢えず右の如く命により通達する次第である。この依命通達は管内の各裁判官にもれなく伝達せられるよう御配慮せられたい。

追って、本通達の内容に関しては厚生省、日本医師会及び日本弁護士会連合会と連絡済であって、厚生省及び日本医師会においては全国の医師が本通達の実施につき裁判所側と協力できるよう適切な措置を講ずることとなっている。