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○平成六年度の医療監視・経営管理及び衛生検査所の指導の実施について

(平成六年五月二四日)

(健政発第四三五号)

(各都道府県知事・各政令市市長あて厚生省健康政策局長通知)

標記については、毎年度格段の御配慮を煩わしているところであるが、平成六年度においては次の事項に留意のうえ遺憾のないよう実施されたい。

Ⅰ 医療監視について

1 実施方針について

医療監視については「医療監視要綱」に基づき実施するものとするが、本年度においては特に2に掲げる事項に重点を置くとともに、3に掲げる事項についても留意のうえ医療機関の適正な運営が確保されるようその実施に当たられたい。

2 重点項目

(1) 医療従事者の確保

ア 医師、看護婦等について標準人員の充足状況の検査は、次の方法により行うこと。

(ア) 職員名簿、出勤簿、タイムカード、勤務割り表その他の帳簿書類を照合すること。

(イ) 保険担当部局と連絡を密にし対処すること。

(ウ) 複数の医療施設を開設している医療法人等の病院及び複数の都道府県にまたがって医療施設を開設している医療法人等の病院については、医療監視を同日に実施する等工夫し、病院間で名簿を照合し、医療従事者の実態の把握に努めること。

イ 医療従事者が著しく不足している病院に対しては、具体的な改善計画を提出させ改善状況を追跡調査する等により指導するとともに、新規入院の抑制、医療従事者に見合った範囲に入院患者をとどめる等強力に指導すること。

また、看護婦について標準数を著しく下回っている(充足率が七○%未満)医療機関に対しては、看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づき、看護婦等の配置及び業務の改善に関する計画を行う看護婦確保推進者を設置するよう指導すること。

ウ 無資格者による医療行為の防止については、医療機関に対し採用時における免許証原本の確認の励行を指導するとともに、無資格診療等に係る通報等があった場合にはただちに検査を実施し、関係機関に連絡する等迅速な対応を図られたいこと。

エ 病室の超過収容、または病室外での収容等ただちに是正する必要のある事項がある場合には、医療機関に改善計画を提出させるとともに、履行されない場合は医療法に基づく改善命令等により厳正に対処すること。

オ 老人特例許可病院で許可準則に定める医療従事者を確保していない病院については速やかに充足するよう指導すること。

なお、充足の見込みが立たない場合においては「老人病棟に置くべき医師その他の従業者の定数の取扱いについて」(昭和五十八年一月二十八日医発第八四号)に基づき届出の手続きを行うよう指導すること。

(2) 開設者の確認

病院の運営に第三者が関与している疑いがあると報道される事例が発生している。これは医療法の根幹にかかわる重大な問題であり、このような事例にかかる通報等があった場合には、「医療機関の開設者の確認及び非営利の確認について」(平成五年二月三日総第五号・指第九号)に基づき厳正に対処すること。

(3) 院内の事故防止

医療従事者の過誤による事故等の防止については、従来から従事職員の教育、または研修の実施を指導しているところであるが、これらの実施が遺漏なく行われるよう防止策の強化について指導すること。

なお、過去において患者の血液型の確認を怠り不適合輸血を行うという事故が生じており、「輸血療法の適正化に関するガイドライン」の周知徹底を図るとともに、このような事故の再発防止について指導すること。

また、医療用ガスの保安管理については、平成五年度における総務庁行政監察局の行政監察の結果、不適切な事項が多く見られたことからも「診療の用に供するガス設備の保安管理について」(昭和六十三年七月十五日健政発第四一○号)により指導すること。

(4) 医療廃棄物の適正処理

医療廃棄物のうち感染を生ずる恐れがある感染性廃棄物については廃棄物処理及び清掃に関する法律を遵守するとともに、「感染性廃棄物の適正処理について」(平成四年八月十八日指第六一号)別添「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」により適正に処理するよう指導すること。

(5) 診療用放射線の管理体制

診療用放射線照射器具等の保管管理については、紛失等の事故が起きていることから、医療監視時に貯蔵庫の施錠、使用・保管に係る記帳、使用後の数量の確認及び定期的な数量の点検が実施されているか確認し、その使用、管理について現行法令の遵守を指導すること。また、放射線関係職員の教育訓練の実施についても指導すること。

なお、指導に当たっては「診療用放射線照射器具等の管理の徹底について」(平成元年三月三日指第一四号)を参考にされたい。

(6) 職員の健康診断の実施

職員の健康管理のため、医療機関が定期健康診断を実施するとともに、職員が全員受診するよう指導すること。

3 留意事項

(1) 救急病院、救急診療所の点検

都道府県知事により告示を受けている救急病院、救急診療所が「救急病院等を定める省令」(昭和六十二年一月十二日一部改正)の基準に適合しているかどうかについて点検するとともに、不適合の場合にあっては、所用の措置を講ずるよう指導すること。

(2) 総合病院における患者輸送用車輛の保有

総合病院については、医療法施行規則第二十二条に定める救急用又は患者輸送用自動車(患者が仰臥状態のまま輸送できるもの)の保有の有無を確認し、当該車輛を有しない場合は確保するよう指導すること。

(3) 防火対策について

医療施設の防火、防災安全対策は患者を入院させている等施設の特有な事情を考慮し、特に人命尊重の見地から「医療施設における防火・防災対策要綱の制定について」(昭和六十三年二月六日健政発第五六号)により指導すること。

(4) MRSA等の院内感染対策について

MRSA等の院内感染対策については、感染予防に関する原則的な注意事項を実行することが必要であり、その管理体制、職員・患者の教育、手洗いの励行、清掃の徹底及び器具器材の定期的な清掃・消毒による清潔保持等がその中心である。

近年問題となっているMRSA、B型肝炎及びHIV等に対する対応については、「医療施設における院内感染の防止について」(平成三年六月二十六日指第四六号)、「B型肝炎医療機関内感染予防対策ガイドライン」(昭和五十六年)、「HIV医療機関内感染予防対策指針」(平成元年)を参考に医療機関が適正に対処するよう指導すること。

4 その他

(1) 医療監視員の資質の向上等について

都道府県は、講習会などにより医療監視員の資質の向上を図るとともに、医療監視結果の把握・分析を行いその結果に基づき統一的な検査・指導を行うこと。

また、放射線関係業務の適正な指導を行う必要があることから、放射線技師などの資格を有する医療監視員の確保について特段の配慮をお願いする。

(2) 統一医療監視及び重点医療監視

本年度も引き続き、厚生大臣の所管する医療法人の開設する病院については、監視日を統一して実施するとともに、医療従事者の数が標準数を著しく不足している病院については、重点医療監視を実施することとしているので御協力をお願いする。

5 医療監視結果に対する対策等

(1) 医療監視結果の不適合事項に対する対策

医療監視の結果、不適合事項を確認したときは、不適合事項、根拠法令及び不適合理由を文書で指示し、その改善の時期、方法等を具体的に記した改善計画書を提出させ、その改善状況を逐次把握すること。

特に悪質な事案に対しては法令に照らし厳正に対処すること。

なお、都道府県知事が医療法上の処分をする場合は、事前に健康政策局指導課長に協議すること。

(2) 報告

医療機関内において、重大な医療関係法規違反若しくは管理上重大な事故(多数の人身事故、院内感染の発生、診療用放射線器具等の紛失等)があった場合又は軽微な事故であっても今後の行政指導上の参考になると判断される事案については、速やかに事故の概要について健康政策局指導課長に報告すること。

Ⅱ 経営管理指導について

1 実施方針

病院の経営管理指導については、「病院経営管理指導要領」に基づき、公的医療機関を中心に実施するものとするが、引き続き病院経営者の経営管理に関する自覚と認識を一層深め、健全な病院運営が図られるよう、次の事項に重点をおいて指導されたい。

なお、公的医療機関以外の医療機関についても、その申出に基づき実施されたい。

2 重点項目

(1) 病院管理体制

ア 病院の職員については、免許・資格を有する職種が多く、業務内容が区々であるが、業務を一体として遂行するためには相互の密接な協力が必要である。このため、日頃から、管理者と職員間及び職員相互間の十分な意思の疎通、各部門間の密接な連絡調整が極めて重要であることに鑑み、病院の内部組織として設置されている運営会議、各種委員会の機能の再点検を励行し効果的に運営されるよう、また、職員の業務遂行に関し、各部門の監督の責任が明確にされ、適正な病院管理体制が確立されるよう必要な指導をすること。

イ 職員の服務の規律については、従来から不正な取引きや経理の根絶、厳正な勤務体制の確立等の指導を願っているところであるが、この趣旨の徹底を図り特に、高額医療機器等の購入に当たって問題の生じないよう引き続き指導を強化されたいこと。

(2) 経営・財務管理の強化

ア 経営管理の改善

良質な医療を安定的に提供するという医療機関本来の目的を十分発揮するためには、医療機関の経営基盤の安定化を図ることがもっとも重要である。

また、「経営」とは、その病院の機能を最大限に生かす働きであり、その結果だけを評価することは適切でない。

地域の医療事情等を踏まえ、病院の方向性を明確にした経営戦略を策定し、その戦略のもとに計画とその評価を軸に、経営管理の改善を図るよう指導されたいこと。

イ 管理者の経営に対する関心の薄さ、または財務管理に対する理解の不足、あるいは一部の管理者等による専行等は、病院の経営を悪化させる要因となっている場合が少なくない。

近年、診療報酬債権を第三者に譲渡するなど経営上好ましくない事例も増えてきているが、内部監査等の実施、経営及び財務に関する講習会・研修会等への管理者及び事務担当責任者等の積極的参加、更には、経営状況の分析を行うなど、病院自体が経営の合理化、健全化に努めるよう指導を強化されたいこと。

なお、財務管理の改善向上を図るため、病院を開設する医療法人にあっては、「病院会計準則」(昭和五十八年八月二十二日医発第八二四号)によることを原則としているので、これを踏まえて一層の指導を願いたいこと。

(3) 人事・労務管理の指導

ア 看護婦などについては、「看護婦の人材確保に関する法律」に基づく指針を踏まえて夜勤回数、労働時間の改善に配慮し離職防止策を含めた確保対策を講じるよう指導されたいこと。

イ 健全な病院経営のためには、平常時における正常な労使慣行の確立が重要であり、管理者は、その点に十分な関心と注意を払うよう指導されたいこと。

なお、労働争議が発生した場合には、患者の医療の確保に支障をきたすことのないよう適切な指導を行うことはもとより、労働関係部署とも十分な連携をとりながら、必要に応じて、労働委員会に斡旋を依頼する等により、早期に解決が図られるよう指導されたいこと。

また、労働争議の発生に際しては、速やかに健康政策局指導課あて、その実情について連絡願いたいこと。

3 その他

(1) 医療機関に対する経営管理指導については、従来、公的医療機関を中心に実施しているところであるが、民間医療機関についても、地域医療の確保のために重要な役割を担っていることに鑑み、医療法人については、毎年度提出される決算書により多額の負債がないか等について審査し、その他の民間医療機関についても、できる限り情報収集に努め、その健全な経営管理が行われているかどうかを把握し、経営上必要な指導を行うよう配慮されたいこと。

(2) 医療機関の倒産等は、地域医療の確保に支障を来すばかりでなく、継続した医療を必要とする入院患者等の処遇上も大きな問題となるので、経営悪化の情報等を知り得た場合は、速やかにその実状を把握し、適切な指導を行うとともに、倒産等の概要について健康政策局指導課あて連絡願いたいこと。

4 病院機能評価マニュアルの活用について

病院において、医療の質の向上と運営管理の合理化等を図るために自主的に機能評価を行うためのマニュアルとして「病院機能評価マニュアル」(平成元年六月二十三日指第三三号)が示されており、これを活用しできるだけ多くの病院において自己評価されるよう普及に努められたいこと。

Ⅲ 衛生検査所について

1 実施方針

(1) 衛生検査所の立入検査については、「衛生検査所に対する指導監督の強化及び実態調査について」(昭和六十二年二月二日付医事第八号)により、少なくとも二年に一回以上実施することとしているが、都道府県によりその実施率に著しい差が見られるので、未実施の衛生検査所に対しては、本年度中に一巡されたい。

なお、衛生検査所の立入検査を実施する職員には、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律第二十条の五第二項の規定による当該職員の証を発行し、立入検査の際、必ず携帯するよう指導願いたい。

また、衛生検査所の登録及び登録の変更を行う場合には、申請書の審査を十分に行うとともに、必ず実地調査を行い申請内容と相違ないかを調査のうえ確認すること。

(2) 衛生検査所の立入検査については、「衛生検査所指導要領」に基づき実施するほか、「衛生検査所立入検査実施要綱」及び各県で作成しているチェックリスト等の活用により遺憾のないよう実施されたい。

なお、精度管理等については、都道府県医師会、大学、都道府県衛生研究所等の専門家を「精度管理専門委員」として委嘱し、立入検査に同行させ、既知検体等を活用し、詳細に点検、指導するよう特段の配慮をされたい。

2 重点事項

(1) 管理組織について

ア 管理者、指導監督医及び精度管理責任者の勤務状況について確認するとともに、それぞれの職責を十分果たすべく指導すること。

イ 職員の研修については、研修内容に配慮するとともに、検体の受領搬送等の業務の従事者についても研修を実施するよう指導すること。

ウ 衛生検査所の営業所、出張所、検体の搬送中継所等と称する場所に関しても管理が十分になされるよう指導すること。

エ 検査業務に従事する臨床検査技師及び衛生検査技師の数並びに氏名、精度管理責任者の氏名、組織運営規定が変更された場合は、速やかに変更の届出を行うよう指導すること。

(2) 検査業務について

ア 検体の保存状況については、温度管理、遮光、検査までの時間等が適切となっているよう、また、検査終了後も医療機関等からの問合せ、再検査等に対応出来るよう検体保存を行うよう指導すること。

イ 異常データが発生した場合については、原因究明を速やかに行い医療機関に対し適切な対応を図るよう指導すること。また、その記録等を適正に管理するよう指導すること。

ウ 検査案内書に記載すべき事項に関して、その記載された内容が登録事項及び実際に行われている業務内容と一致するよう指導すること。

エ 検査機器保守管理標準作業書及び検査機器保守管理作業日誌が作成され検査機器及び情報処理装置の保守管理が徹底して行われるよう指導すること。

(3) 検査精度の向上について

ア 各検査項目ごとに統計学的精度管理が正しく行われているか確認すること。

また、その資料を常時活用するよう指導すること。

イ 定期的に内部ブラインド調査を行い、その結果を業務上に活用するよう指導すること。

ウ 都道府県、日本医師会、日本臨床衛生検査技師会等が行う外部精度管理調査に年一回以上参加しているかの確認を行い、調査に参加していない場合は、調査に参加するよう指導すること。また、結果の悪い項目について原因究明が適切に行われ、改善されているか確認し、改善されていない場合は適切な措置をとるよう指導すること。

エ 試薬の使用は、用法に従い適切な方法で行われていること。また、各試薬の使用保管にあっては、試薬ごとに検査精度を適正に保つために必要な事項が表示され、適切な保管がなされているか確認するとともに、試薬管理台帳を作成し、数量管理を行っているか確認すること。

(4) 職員の健康管理について

職員の健康管理体制を確立し、定期健康診断により異常が発見された職員に対しては、必要な措置がとられるよう指導すること。

(5) 検体検査用放射性同位元素(RI)の管理について

RIの使用及びRI廃棄物の管理について、現行法令の遵守を強力に指導すること。

(6) 医療廃棄物の適正処理について

医療廃棄物のうち感染を生ずる恐れのある感染性廃棄物については、廃棄物処理及び清掃に関する法律を遵守するとともに、「感染性廃棄物の適正処理について」(平成四年八月十八日付指第六一号)別添「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」により適正に処理するよう指導すること。