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○財団たる医療法人の解散時における残余財産の帰属について

(昭和三二年五月一三日)

(二医第五七八号)

(厚生省医務局長あて京都府知事照会)

財団たる医療法人が解散したときの残余財産の処分方法は、医療法第五十六条に規定されていますが、寄附行為中に「本財団が解散した場合の残余財産は、理事会及び評議員会の議決を経、都道府県知事の認可を得て処分するものとする。」「医療法の一部を改正する法律の施行について」(昭和二十五年八月九日医発第五二一号医務局長発都道府県知事あて)の寄附行為例第二十八条と同様な抽象的規定を持つ、財団たる医療法人が解散したときの残余財産の帰属者決定について左記のとおり疑義があり、差し迫った事例もあるので至急何分の御教示を煩したく、照会します。

1 財団たる医療法人は、社団たる医療法人と異なり、構成分子たる個人の集団をもたず設立者が医療事業を行うことを目的として出損された財産を中心として固定した組織の下に恒久不変の存在を続けうるだけで、自主的にその意思を構成して活動することができないものであるから、理事会及び評議員会の議決によるといえども財産の提供者又は、これらの関係者等に返戻を認める処分は、許されず、従って議決の範囲もそれ以外に帰属者を求めることに限定されるものと解されるが、どうか。

2 しかし、一の財団一般の原則を固執するとすれば、「医療法人等に対する相続税等の課税について」(昭和二十八年十二月二十五日直資一四一号国税庁官発各国税局長あて)及び「医療法人等に対する相続税等の特別措置を伴う課税上の取扱について」(昭和二十九年三月三十一日直資一四、直法一―三九、直所一―一三国税庁官発各国税局長あて)等の通達により財団たる医療法人を解散して社団たる医療法人設立すること又は医療法人を解散してその残余財産をその提供者に分配すること等を認めた前例からすれば、十分矛盾が考えられるが、これらの関係をどのように解すればよいか。

3 2により残余財産を、その提供者に分配することを認めることとすれば、財団たる医療法人と社団たる医療法人とは実質的には差異はなく、医療法人制度において社団と財団の二種の形態を設けている実益は殆んど存在しないように考えられるがどうか。

(昭和三二年七月一九日 医発第六○六号)

(京都府知事あて厚生省医務局長回答)

昭和三十二年五月十三日二医第五七八号をもって御照会の標記について左記の通り回答する。

医療法人に社団と財団の二形態を認めているのは、社団たる医療法人は、社員の総意による民主的且つ、柔軟性のある運営が可能であるという利点を有する一方、社員の退社による基本的財産の分散による事業の安定性、継続性の欠如のおそれがある等の欠点を有し、財団たる医療法人は、事業の安定性、継続性が設立者の意思に基く目的と組織によって保障されるという利点を有する一方、運営の民主性、柔軟性を欠くという欠点を有する等それぞれの特質に着目して法人設立者の意思に従いいずれかを選ばせようとするところにあるのであって、御照会のように、財団たる医療法人については、財団である故に解散時の残余財産の帰属に関して特段の制限を加えるのでなければ、財団を法認する意味がないということはない。

しかしながら、財団たる医療法人の形態が私益のために濫用されることを防止する趣旨から、たとえば寄附行為中に「解散時の残余財産は設立者又はその親族に帰属する」等の定めをし、あたかも財産提供者の私有財産とえらぶところのない実体の財団の如きは、そもそもその設立を許可すべきではないと解される。