添付一覧
○医療施設における火災事故の防止について
(昭和四二年一月二七日)
(医発第一〇五号)
(各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)
標記については、かねてから御指導を煩わしているところであるが、例年火災件数は別紙1のとおり相当数に達しており、また、最近神奈川県下で人身事故に及ぶ不幸な事例をみるなど、まことに遺憾に堪えないところである。とくに、今冬は悪気象条件下にあるため、さらに不測の事故が続発することも憂慮され、格段の警戒を要するところである。
貴職におかれても、医療監視及び病院経営管理指導等により防火対策の徹底に尽力されていることと思われるが、火災多発時期を迎えて、医療施設の特殊な事情を勘考し、とくに人命尊重の見地から左記事項に留意のうえ、事故防止の徹底を期するよう格別の指導方御配慮願いたい。
記
1 消防計画と避難体制の確立
(1) 医療施設は、患者収容の特殊な事情があるので、火災予防に対する十分な配慮が必要であることはいうまでもないが、火災が発生した場合は、早期発見及び通報に努めるほか患者避難に万全を期すなど人身事故を絶対に惹起しないよう常時格段の配意をすべきであること。
(2) 消防計画及び避難体制の整備にあたって、消防機関等関係機関と具体的かつ十分な協議を行ない、定期的に実地訓練を実施して、不測の事態においても敏速かつ適切な行動ができるように配意すること。なお、計画の立案及び訓練の実施にあたって、火災による人身事故が夜間とくに勤務者が比較的少ないときに多いことに留意すべきであること。
また、患者の避難誘導のため周辺医療施設等の相互応援を考慮し、地域的打合せを実施する必要があること。
(3) 重症患者、老人及び乳幼児等行動困難な患者については、できる限り避難階に収容し、止むを得ず第二階以上に収容する場合には、その避難のための措置について、十分な考慮をはらう必要があること。
また、豪雪地域においては、とくに避難通路の確保のための措置をすべきであること。
2 施設及び設備の整備と適正管理
(1) 医療施設の構造設備については、医療法に違反することのないよう医療監視等により十分な指導を行なわれたいこと。
(2) 昭和三十九年中の医療施設の火災件数のうち五九%が木造建築物で、二八%が簡易耐火建築物、一三%が耐火建築物である実情から、現在木造建築物である施設については、可能な限り早期に耐火構造に改築するよう指導願いたいこと。この指導にあたって、とくに多数の患者を収容する病院について強く行なわれたいこと。
なお、建物の内装仕上げには、可燃性の内装材料はつとめて使用しないようにするとともに、近年急速に普及している新建材や内装材料の中には、フォームラバーやウレタンホーム等燃焼の際比較的低温で有毒ガスを発散するものがあるので留意する必要があること。
(2) 消防用施設、設備及び用水については、適正な配置に努めるとともに、常時点検して消防機能の低下を来たさないようにすること。
なお、避難器具は、使用に体力を要するものを避け、患者及び施設の実情に応じた安全性の高いものを設備すること。
(3) 医療施設の出火原因として、ストーブ、コンロ及び煙突等の暖房系統に起因するものが最も多いことにかんがみ、これらの設置個所を重点的に防火構造又は電気絶縁等の整備を行なうことが望ましく、また、患者に対してもこれらの取扱い等について十分な予防教育を実施すること。
なお、遊休施設の防火管理についても十分留意すること。
(4) 火災発生に際し、毒薬、劇薬、麻薬及び診療用放射線照射器具等人命に及ぼす危険の大きいものの処理、保管について慎重かつ十分な注意をすること。
3 その他
防火管理者の責務、避難器具に関する基準等について、消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)の一部が、別紙2のとおり昭和四十一年十二月十五日政令第三百七十九号により改正されたこと。
また、同施行令の一部を改正する政令(昭和三十八年政令第三百八十号)附則第一項に定めるところにより、電気火災警報器に関する同施行令第二十二条第一項(電気火災警報器の設置場所)及び第三十四条(適用が除外されない消防用設備等)の規定が、昭和四十二年一月一日から施行されたことに留意されたいこと。
別紙1略
別紙2 略