添付一覧
○トリハロメタン生成能に係る水質の検査の方法について
(平成六年七月四日)
(衛水第二〇三号)
(各都道府県知事あて厚生省生活衛生局水道環境部長通知)
水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律施行規則(平成六年厚生省令第三十六号)第二条第二号の規定に基づき「水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項以外の事項に係る水質の検査の方法」(平成六年厚生省告示第二百十九号)により、クロロホルム生成能、ジブロモクロロメタン生成能、ブロモジクロロメタン生成能、ブロモホルム生成能及び総トリハロメタン生成能(以下「トリハロメタン生成能」という。)に係る水質の検査の方法を定めたところであるが、その詳細は別表によることとしたので、貴管下水道事業者等に周知徹底されたい。
別表
検査方法
トリハロメタン生成能に係る水質の検査の方法は、検水に次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、硫酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH約7.0に調整した後、20℃で約24時間静置し、遊離残留塩素が1mg/l以上2mg/l以下となるようにしたものについて、パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ―質量分析法、ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ―質量分析法、パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ法、ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ法又は溶媒抽出―ガスクロマトグラフ法により試験溶液のクロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン及びブロモホルム(以下「トリハロメタン」という。)のそれぞれの濃度を一斉に測定し、それらをもとに試料のトリハロメタン生成能を求めることにより行うものとする。その詳細は次のとおりとする。
1 試薬
(1) 水酸化ナトリウム溶液[(0.4W/V%)及び(4W/V%)]
(2) 硫酸[(1+4)及び(1+40)]
(3) 遊離残留塩素測定用試薬
「水質基準を補完する項目に係る測定方法について」(平成5年3月31日付衛水第104号厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長通知。以下「課長通知」という。)の別添1の「3 残留塩素」の例による。
(4) 次亜塩素酸ナトリウム溶液
次亜塩素酸ナトリウム溶液(5W/V%ないし12W/V%)をガス発生瓶に入れ、スターラーで撹拌しながら、ガス発生瓶の上部に接続した分液ロートから硫酸(1+4)を徐々に加え、発生した塩素を水酸化ナトリウム溶液(4W/V%)に吸収させ、硫酸(1+4)を加えてpH値を約8とし、塩素濃度が約2000mg/lとなるように精製水で希釈したもの。
この溶液は、冷暗所に保存し、使用の都度塩素濃度を測定する。
(5) アスコルビン酸ナトリウム
(6) 塩酸(1+10)
2 器具及び装置
(1) 恒温槽
温度を20℃に保持できるもの。
(2) 遊離残留塩素測定用器具及び装置
課長通知の別添1の「3 残留塩素」の例による。
3 試料の採取及び保存
試料は、精製水で洗浄したガラス瓶に採取し、直ちに試験する。直ちに試験できない場合は、1ないし5℃の暗所に保存し、24時間以内に試験する。
4 試験操作
(1) 塩素注入率の算定
水温を20℃とした検水200mlを数個のビーカーに採り、次亜塩素酸ナトリウム溶液を段階的に加える。次に硫酸[(1+4)又は(1+40)]又は水酸化ナトリウム溶液[(4W/V%)又は(0.4W/V%)]を加えてpH値を7.0±0.2とし、細口試験瓶に移して、20℃の恒温槽内に1時間静置した後、課長通知の別添1の「3 残留塩素」の例により遊離残留塩素を測定し、遊離残留塩素が約1mg/lとなる塩素注入率(mg/l)を次式により算定する。
塩素注入率(mg/l)=(注入した次亜塩素酸ナトリウム溶液の遊離残留塩素濃度(mg/l)×次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量(l))/(検水の量(l))
(2) 塩素処理
水温を20℃とした検水200mlを数個のビーカーに採り、(1)で求めた塩素注入率に0、1、2、3、4及び5を加えた値の塩素注入率となるよう次亜塩素酸ナトリウム溶液をそれぞれ加え、直ちに硫酸[(1+4)又は(1+40)]又は水酸化ナトリウム溶液[(4W/V%)又は(0.4W/V%)]を加えてpH値を7.0±0.2とする。これらの溶液を細口試薬瓶又はバイアルに満水に採り、密栓して20℃の恒温槽内に24±2時間静置した後、課長通知の別添1の「3 残留塩素」の例によりそれぞれの溶液の遊離残留塩素を測定し、遊離残留塩素が1ないし2mg/lの溶液を試験溶液とする。
(3) 分析
(2)で得られた試験溶液に、遊離残留塩素1mgに対しアスコルビン酸ナトリウムを0.01ないし0.02gを加えて遊離残留塩素を除去した後、pH値が約2となるように塩酸(1+10)を試験溶液10mlにつき1滴程度加える。この試験溶液について、別添に掲げる分析方法(パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ―質量分析法、ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ―質量分析法、パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ法、ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ法又は溶媒抽出―ガスクロマトグラフ法)のいずれかの方法により、試験溶液のトリハロメタンのそれぞれの濃度を求め、それらを試料のトリハロメタン生成能とする。なお、総トリハロメタン生成能は、クロロホルム生成能、ジブロモクロロメタン生成能、ブロモジクロロメタン生成能及びブロモホルム生成能の総和として求める。
別添
分析方法
1 パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ―質量分析法
「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日付衛水第264号厚生省生活衛生局水道環境部長通知。以下「部長通知」という。)の別表1の「別添1 パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ―質量分析計による一斉分析法」の例による。
2 ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ―質量分析法
部長通知の別表1の「別添2 ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ―質量分析計による一斉分析法」の例による。
3 パージ・トラップ―ガスクロマトグラフ法
部長通知の別表1の「別添3 パージ・トラップ―ガスクロマトグラフによる一斉分析法」の例による。
4 ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ法
(1) 試薬
① 再精製水
精製水3lを三角フラスコに採り、これを激しく沸騰させて1時間で容積を3分の1程度に減じ、直ちに対象物質の汚染のない場所に静置して冷却したもの。この水はその都度調製する。
② メタノール
測定対象物質を含まないもの。
③ トリハロメタン標準原液(注)
クロロホルム0.200g、ジブロモクロロメタン0.400g、ブロモジクロロメタン0.100g及びブロモホルム2.000gをあらかじめメタノール60mlを入れたメスフラスコに採り溶かした後、更にメタノールを加えて全量を100mlとしたもの。この溶液1mlはクロロホルム2mg、ジブロモクロロメタン4mg、ブロモジクロロメタン1mg及びブロモホルム20mgを含む。
(注) これらの標準物質の混合割合は、カラム充てん剤DC―550を用いた場合に、ガスクロマトグラフによるそれぞれのピーク高さがほぼ同程度になるように調製したものである。したがって、キャピラリーカラムや別のカラム充てん剤を使用する場合には、その混合割合を適宜変えることが必要である。
④ トリハロメタン標準液
トリハロメタン標準原液をメタノールで5ないし200倍に段階的に薄めたもの。この溶液1mlは、クロロホルム0.01ないし0.4mg、ジブロモクロロメタン0.02ないし0.8mg、ブロモジクロロメタン0.005ないし0.2mg及びブロモホルム0.1ないし4mgを含む。
この溶液は、使用の都度調製する。
(2) 器具及び装置
① 恒温水槽
② バイアル
容量10ないし100mlのガスクロマトグラフ用のもの。
③ セプタム
バイアルを密栓できるもの。
④ ポリテトラフルオロエチレンシート
厚さ0.05mm以上のもの。
⑤ アルミキャップ
バイアルとセプタムを固定できるもの。
⑥ アルミキャップ締め器
アルミキャップをバイアルに締めて固定できるもの。
⑦ マイクロシリンジ
容量1ないし10μlのもの。
⑧ ガスタイトシリンジ
容量50ないし1000μlのもの。
⑨ ガスクロマトグラフ
ア 試料導入部
150ないし250℃にしたもの。
イ 分離管
内径0.53mm、長さ70ないし110mmの溶融シリカ製又はホウ硅酸ガラス製のもので、内面にジメチルポリシロキサンを0.25μmの厚さで被覆したもの、25%フェニルシリコンと75%ジメチルシリコンを1.0μmに被覆したもの又はこれと同等以上の分離性能を有するもの。担体にシリコンDC―200、シリコンDC―550又はこれと同等以上の分離性能を有する液相を10ないし20%被覆した充てんカラムを用いても良い。
ウ 分離管の温度
トリハロメタンの最適分離条件を設定する。
エ 検出器
電子捕獲型検出器(ECD)で、その温度を150ないし250℃にしたもの。
オ キャリアーガス
純度99.999V/V%以上のヘリウムガス又は純度99.999V/V%以上の窒素ガス。
カ メイクアップガス
純度99.999V/V%以上の窒素ガス。
(3) 試験操作
試験溶液をバイアルに試験溶液の採取量とバイアル容量の比が0.70ないし0.85になるように採り、直ちにポリテトラフルオロエチレンシート及びセプタムをバイアルにのせ、その上からアルミキャップをのせ、アルミキャップ締め器で固定する。次いで、バイアルを振り混ぜたのち、バイアルを、原則として、25±0.5℃の恒温水槽に入れて1時間以上静置する。ここで得られた気相の一定量をセプタムを通してガスタイトシリンジを用いて採り、直ちにガスクロマトグラフに注入し、ガスクロマトグラムを記録する。他の物質と重なり合いのないピークについて、トリハロメタンのそれぞれの保持時間が標準物質と一致することを確かめ、保持時間に相当する位置のピーク高さ又はピーク面積を求め、(4)により作成した検量線から試験溶液のトリハロメタンのそれぞれの濃度を求める。
(4) 検量線の作成
再精製水をバイアルに再精製水の採取量とバイアル容量の比が0.70ないし0.85になるように採り、直ちにポリテトラフルオロエチレンシート及びセプタムをバイアルにのせ、その上からアルミキャップをのせ、アルミキャップ締め器で固定する。次にセプタムを通して段階的に調製したトリハロメタン標準液を、再精製水10mlに対して1μlの割合で、マイクロシリンジ(液体用)を用いて注入する。以下(3)と同様に操作して、トリハロメタンのそれぞれの量とピーク高さとの関係を求める。
5 溶媒抽出―ガスクロマトグラフ法
(1) 試薬
① ヘキサン
測定対象成分を含まないもの。
② トリハロメタン標準原液(注)
クロロホルム1.000g、ジブロモクロロメタン0.400g、ブロモジクロロメタン0.250g及びブロモホルム2.000gをあらかじめヘキサン60mlを入れたメスフラスコに採り溶かした後、ヘキサンを加えて全量を100mlとしたもの。この溶液1mlは、クロロホルム10mg、ジブロモクロロメタン4mg、ブロモジクロロメタン2.5mg及びブロモホルム20mgを含む。
(注) これらの標準物質の混合割合は、カラム充てん剤DC―550を用いた場合に、それぞれのピーク高さがほぼ同程度になるように調製したものである。従って、別のカラム充てん剤を使用する場合には、その混合割合を適宜変えることが必要である。
③ トリハロメタン標準液
トリハロメタン標準原液をヘキサンで1000倍に薄めた後、これを段階的にヘキサンで100ないし2000倍に薄めたもの。この溶液1mlは、クロロホルム5ないし100ng、ジブロモクロロメタン2ないし40ng、ブロモジクロロメタン1.25ないし25ng及びブロモホルム10ないし200ngを含む。
この溶液は、使用の都度調製する。
(2) 器具及び装置
① 共栓付メスシリンダー
容量50mlのもの。
② マイクロシリンジ
「4 ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ法」の例による。
③ ガスクロマトグラフ
「4 ヘッドスペース―ガスクロマトグラフ法」の例による。
(3) 試験操作
試験溶液40mlを共栓付メスシリンダーに採り、ヘキサン10mlを加えて密栓し、10ないし20秒間激しく振り混ぜたのち静置し、得られたヘキサン層の一定量をマイクロシリンジを用いて直ちにガスクロマトグラフに注入し、ガスクロマトグラムを記録する。他の物質と重なり合いのないピークについて、トリハロメタンのそれぞれの保持時間が標準物質と一致することを確かめ、保持時間に相当する位置のピーク高さ又はピーク面積を求め、(4)により作成した検量線からトリハロメタンのそれぞれの量a(ng)を求め、次式により試験溶液のトリハロメタンのそれぞれの濃度を算定する。
トリハロメタン濃度(mg/l)=(a/注入量(μl))×(ヘキサン層の量(ml)/試験溶液量(ml))
(4) 検量線の作成
段階的に調製したトリハロメタン標準液の一定量をマイクロシリンジを用いてガスクロマトグラフに注入し、以下(3)と同様に操作してトリハロメタンのそれぞれの量(ng)とピーク高さ又はピーク面積との関係を求める。