アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○渇水対策について

(昭和四九年七月一九日)

(環計第三六号)

(各都道府県知事あて厚生省環境衛生局水道環境部長通知)

近年、生活水準の向上、都市化の進展等に伴つて水道水の需要は急激に増大してきており、国民生活のなかで水道の果す役割は益々重要なものとなつている。このため水道事業者は気象状況等によつて渇水が予測される場合にあつては、事前に十分な対策を講じ、断減水等によつて国民生活に支障を及ぼすような事態は極力回避し、水道水の円滑な供給に努める必要がある

今夏は、昨年と異なり、梅雨期に全国的にかなりの降雨をみたが、今後水道水の多量消費季に向かうこともあり、なお予断を許さないところである。このため、貴都道府県においても左記Ⅰに留意のうえ渇水対策の万全を期すとともに、左記Ⅱに留意して体制の整備と適切な渇水対策を講ずるよう管下水道事業体に対する指導方、格別の配慮を願いたい。

Ⅰ 渇水時における都道府県(衛生主管部局)の果すべき役割

1 状況の把握と指導

都道府県下に渇水が予想される場合には、あらかじめ気象状況、河川流況、ダム貯水量などの情報の把握に努めるとともに管下水道事業体に対し適切な指導、援助を行えるよう、渇水の程度及び範囲等渇水の水道に及ぼす影響、給水制限の必要性及びその時期ならびに給水制限に伴う問題の予測とその対策について事前に十分な検討を行い、水道事業体に対し事前に指導にあたること。

また、渇水下にあつても渇水状況の把握に努め、常に最新の情報に基づく適切な指導を期すること。

2 体制の整備

渇水の区域が広域にわたり、渇水の程度が著しい場合など都道府県における積極的な対処が必要な場合には、渇水下にある水道事業体を統括し、情報の把握ならびに必要な情報の提供を行い、各水道事業体の行う渇水対策を指導、援助していくために対策本部の設置など必要な体制の整備をはかること。

また、水道事業体間の水の融通、応援給水等について指導するとともに、必要に応じてその他の臨機の活動をとり得るよう準備しておくこと。

3 水利調整など緊急水源の確保

水道の断減水は、住民の日常生活に多大の支障をおよぼすばかりでなく、保健衛生面での事故の危険も大きく、渇水時にあつても、水道の断水は、極力、避けなければならない。このため水道事業体との密接な協力のもとに工業用水、発電用水、農業用水など他種利水の一時転用などについて関係行政機関に対し、積極的に働きかけるなど水利調整に努力すること。

また、遊休井戸の活用など緊急的な地下水源の利用、河川余剰水の一時的利用などのあらゆる手段の可能性を検討して、水源確保に努めるよう水道事業体を指導すること。なお、水源の確保に伴つて、事業の変更、認可又は給水開始前の届出が必要な場合には、手続に遺漏のないよう水道事業体を指導するとともに、これが事務処理をすみやかに行うこと。

(注1) 建設省は、昭和四十九年三月二十二日建設省河政発第二六号により「渇水対策の推進について」を河川局長より地方建設局長あて通知されているので参照のこと。

4 保健衛生対策

渇水時には、給水不良のため水道水質の安全確保に不安が考えられ、また、遊休井戸等の活用も行われるので随時、随所において採水し、水質検査を実施するほか、パトロールの強化等によつて水質管理を強化するよう水道事業体に対し特段の指導を行うこと。

また、出水不良地域の食品製造業者、飲食店等の衛生状態をチェックし、衛生状況の把握と必要な指導を行うこと。

5 厚生省への報告

都道府県は、渇水の状況、事態の推移、管下水道事業体が講じた措置、都道府県が講じた措置、その後の見通し等の情報をすみやかにその都度、厚生省に報告すること。

Ⅱ 渇水時における水道事業体の留意事項

1 渇水情報の把握等

水道事業体は関係行政機関等と連絡を密にし、気象状況、河川流況、ダム貯水量、ダム流入量、需要の予測等に関する適確な情報を常時把握するとともに、都道府県が前期Ⅰの役割を果すに必要な渇水に関する情報をその都度報告すること。

2 体制の整備

渇水の状況に応じ、水道事業体に渇水対策本部を設置するなど体制を整備し、関係行政機関との連絡調整を円滑にするとともに水道事業体内部における各種渇水対策活動に関する指揮命令系統の明確を期すこと。

3 渇水対策活動に関する計画

渇水時に予想されるすべての事態を想定して、おおむね次に掲げる渇水対策活動に関する計画をあらかじめ作成し、渇水対策活動を効果的に行えるよう備えること。

(1) 広報活動

(2) 給水制限の実施

(3) 応急給水の実施

(4) 緊急水源の確保

(5) 保健衛生対策

4 広報活動の重要性

渇水対策を進めるに当つて住民の理解と協力は不可欠のものであり、従つて効果に直接影響するものといえる。このため、渇水状況に応じ、随時適切な広報媒体を活用して広報活動を積極的に行う必要がある。(別紙1参照)

5 給水制限の基本ルール

給水の制限は水道法第十五条第二項に規定する「災害その他正当な理由があつてやむを得ない」との判断に立つて行うものであるが、その実施にあたつては、次の事項に十分留意すること。

(1) 水道が国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであることを配意し、極力断水状態を回避すること。

(2) 給水制限を回避できない場合にあつても住民の日常生活に直結する用途については優先的な取扱いをしながら、渇水状況に応じて次のように段階的に行うこと。

・ 第一段階――需要家による自主制限

・ 第二段階――第一段階及びバルブ、ポンプ操作による給配水調整

・ 第三段階――第一、第二段階及び時間給水

(3) 需要者に対し、十分に事情を説明するため広報活動を強化し理解と協力を求めること。

(4) 消防用水、医療機関において使用する水道水など直接住民の生命または財産を守るための用途に供する水道水については、緊急時の対策を十分配慮しておくこと。

6 第一段階における自主制限

需要家による自主制限は、広報活動と、これをうけての需要家の理解と協力実施に期待するものであるが、かなりの効果を得た実績もある。この場合、一般家庭ならびに各種大口需要者(官公署、ビル、工場等)に、それぞれの用途に応じた具体的な節水方法等を盛り込んで協力依頼するよう配意すること。(別紙2参照)

7 第二段階における給水制限

(1) 第二段階は、第一段階の措置に加えて給配水系統のポンプ、バルブ操作で水圧を調整し、給配水量を抑えるものであるが、これを実施するためには、配水系統が十分に整備されていることが必要であり、また、平常時の水圧についての資料を整備し、ポンプ、バルブ操作の具体的な実施計画を事前に検討しておく必要がある。この段階においても、一部、給水不良、断水区域が出現する可能性があるため、応急給水の体勢を整えておく必要がある。

(2) 止水栓操作を行う場合には、保健衛生上の危険性あるいは水使用が事業活動の本体的部分をなす需要家等についての配慮が必要であり、おおむね次のような需要を対象に行うものとし、各水道事業体は、地域の実態に合わせて、具体的な給水制限の順位をあらかじめ設定しておくこと。

(ア) レジャー用、娯楽用、冷房用、洗車用等の用途

(イ) 工場、商業ビル、官公署、事業所、駅、学校等の大口需要

(ウ) 配水調整を行つてもなお水圧の高い地域の一般需要者

止水栓の操作による制限措置は、渇水状況の度合いに応じて、協力依頼から例えば(ア)の一部については、使用中止の協力要請を行う等段階的措置を考えること。

(3) 病院、診療所等の医療機関及びこれに準じた取り扱いを必要とする社会福祉施設等については、常時給水の円滑を期すものとし、給水不良が考えられる場合は、応急給水についても優先させること。

8 第三段階における時間給水

第一、第二段階における措置によつてもしのぎ得ない場合は、時間給水の措置をとることもやむを得ないが、次の点に留意すること。

(1) 各地域の実態を十分に勘案し、区域、時間等に関する具体的計画を組んで、事前に十分なPRを行いつつ実施すること。この場合同一区域が常時断水するようなことは極力回避すること。

(2) 需要者が無駄な溜め置きをしないよう協力を求め、また水の有効利用方策についての特段のPRを行うこと。

(3) 応急給水活動は、他都市等との連けいを十分図り、医療機関等に対し十分に配慮するなど、十分な体勢と準備のもとに計画的に行うこと。

9 緊急水源の確保

遊休井戸の活用のほか、緊急的な地下水源の利用、河川余剰水の一時的利用、工業用水、発電用水、農業用水など他種利水の一時転用などについて関係行政機関に対し積極的に要請するなどあらゆる手段の可能性を検討し、水確保の努力を行うこと。

10 保健衛生対策

給水不良、断水等の時においては、水質管理の強化を図ること。また、保健所等関係機関との連絡を密にし、水道による疾病の集団発生等の予防ならびに緊急事態発生に、あらかじめ対処しておくこと。

11 消防水利の確保

断減水時の消防水利の確保について、消防機関との連絡を密にし、消防活動等について、十分な協力を行えるよう備えること。

(別紙1)

1 マスコミ(テレビ、新聞、週刊誌等)を利用するもの

(1) マスコミのニュースとして報道され得るものについては、これに十分対応して処理すること。

(2) マスコミの広告として掲載するもの

(3) 新聞折込みを利用して、チラシなど印刷物を配布する。

2 マスコミ以外のPR

(1) 広報車、広報用飛行機等の利用

(2) ポスター、ステッカー、たれ幕等の掲示

掲示効果の期待される次のような場所を重点的に選ぶこと。

(ア) 官公署、事務所、学校、デパート、電車、バスなど多数のものが使用し、又は利用する建築物又は車輛などにおける人の出入りの多い場所または人目につく場所

(イ) 工場、デパート、ガソリンスタンド、食堂など大量に水を使用する事務所の内部

(ウ) 浴場、洗面所など水を直接使用する場所

(エ) 水道事業体の使用する車輛など

(3) 印刷物配布

パンフレット、節水協力要請文書等を地域の実情と渇水状況に応じ次のような配布ルートから適宜選択し、組み合わせて配付すること。

(ア) 業界団体、町内会などへの依頼

(イ) 事務所に対し従業員への配布を依頼

(ウ) 街頭での配布

(エ) 個別訪問による配布

(別紙2)

節水方法の事例

(ア) 家庭用洗濯機(二槽式)を使用する場合、溜めすすぎ方式等の採用によつて三○~五○%の節水が可能である。(東京)

(イ) ビル用水の三○~五○%は水洗便所使用であるが、自動サイフォン型水洗便所について、夜間及び休日など非使用時に止水する措置により、ビル用水のかなりの節水ができる。(東京)

(ウ) 冷房用水、洗車、散水、噴水等の自粛

(エ) 節水コマの活用(東京・千葉)