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○食品又は添加物の製造又は加工の過程における有毒な又は有害な熱媒体の混入防止のための措置の基準の制定について
(昭和四九年一二月二六日)
(環食第二八六号)
(各都道府県知事・各指定都市・各政令市市長あて厚生省環境衛生局長通知)
熱媒体の混入防止措置に関する関係業者への指導については、かねてより格別の御配意を願つているところであるが、昭和四十九年十二月四日厚生省告示第三百三十九号をもつて食品又は添加物の製造又は加工の過程における有毒な又は有害な熱媒体の混入防止のための措置の基準(以下「基準」という。)が制定され、昭和五十年四月一日から施行されることとなつたので、左記事項に留意し、本基準の遵守について関係者に対し一層の周知徹底を図られたい。
記
1 一般的事項
(1) 基準制定の趣旨
本基準は、各種の食品又は添加物の製造方法、過去の事故例等を検討のうえ、当面、食品衛生法第十九条の十八第一項の規定に基づく具体的な措置基準が必要であると考えられるものとして、食用油脂製造業又はマーガリン若しくはショートニング製造業(以下「食用油脂製造業等」という。)において有毒な又は有害な熱媒体を使用する場合を主に考慮して必要な基準を定めたものであること。従つて、基準の適用を受ける対象は、実質的には食品衛生法施行令第五条第十九号及び第二十号の食用油脂製造業等の許可対象者の範囲内であると考えられること。
(2) 基準の対象となる場合
基準の対象となる有毒な又は有害な熱媒体を使用する場合としては、主として、食用油脂製造業等の製造工程中の脱臭工程においてジフェニル・ジフェニルエーテルその他の有機系物質を熱媒体として使用する場合が考えられること。従つて、当該工程において近年若干数の施設においてみられる電気式脱臭装置又は水蒸気式脱臭装置を用いているような場合は、基準の適用の対象外となるものであること。
なお、基準の対象となる熱媒体としては、具体的には次のようなもの等が考えられること。(かつこ内は食用油脂製造業実態調査の結果現に使用されている商品名である。)
ア ジフェニル・ジフェニルエーテル系熱媒体(ダウサムA、サームエス―300)
イ メチルナフタリン系熱媒体(Neo SK―oi1 240、SK―oi1 240)
ウ ジメチルナフタリン系熱媒体(Neo SK―oi1 260、SK―oil 260)
エ イソプロピルナフタリン系熱媒体(KSK―oi1 260)
オ ジイソプロピルナフタリン系熱媒体(KSK―oi1 280)
カ アルキルジフエニル系熱媒体(サームエス―600)
キ 水素化トリフェニル系熱媒体(サントサーム66、サームエス―900)
ク トリアリルジメタン系熱媒体(ジベンジルトルエン系熱媒体)(マーロサームS)
2 熱媒体を使用する場合の措置の基準
(1) 日常点検
ア 熱媒体の減損量の確認(第一項第一号)
熱媒体が熱媒体加熱コイルから漏えいした場合には、熱媒体の減損量が通常減損量より増大し、その結果熱媒体ボイラー等の熱媒体の液面が下降することが考えられるので、熱媒体の液面の高さを示す計測器を備えて、その減損量を常に確認することとしたものであること。従つて、この確認を行うためには、熱媒体の通常減損量を的確に把握しておくとともに、計測器は目盛りを付したもの等熱媒体の減損量を正確にかつ容易に確認できるものであることが必要であること。
イ ホットウェル等の確認(第一項第二号)
熱媒体はそれぞれ特有の臭気等を有するものが多く、熱媒体が熱媒体加熱コイルから漏えいした場合には、脱臭装置のホットウェル及び溜出スカムに熱媒体が濃縮されて流出し、ホットウェル及び溜出スカムに臭気等の異常が認められることが考えられるので、その異常がないことを常に確認することとしたものであること。
なお、ホットウェルとは、脱臭塔に付属する排水槽であつて、脱臭塔から排出された水蒸気が途中のバロメトリックコンデンサー(大気脚凝縮器)で凝縮されて液体となり貯留されるものであること。
また、溜出スカムとは、ホットウェルの表面に浮上した残渣であること。
(2) 製品の試験(第一項第三号)
ア 熱媒体の食品等への混入を防止するために最も確実な措置は、製品の試験の実施であるので、製品についてロットごとに基準別表に定める試験法により試験を行い、熱媒体が混入していないことを確認することとしたものであること。
イ この基準は、すべての製品油(脱臭工程経過後の油脂)について試験によるスクリーニングが行われ、スクリーニングを経ないものは出荷されない仕組みが担保されることを目的としたものであること。従つて、連続した同一工程により製造される同一種類の製品を一ロットとし、ロットごとに試験を行うものであるが、具体的には次のいずれかの方法によること。
(ア) 製品油を貯蔵する製品タンクの製品油ごとに一ロットとし、当該ロットごとに試験を行うこと。この場合の試料のサンプリングの方法は、原則として、製品タンクの上部、中部及び下部から製品油を採取し、これを混合して試料とすること。
(イ) (ア)の方法により難い場合は、脱臭機系統別に、八時間を超えない間隔で製品油のサンプリングを行い、これを保存し、サンプル数が二一を超えない範囲で最終サンプルについて試験を行うこと。
(3) 定期点検等(第一項第四号)
ア (1)及び(2)による確認のほか、脱臭機の構造的欠かんの有無の確認のため、毎年二回以上定期的に、熱媒体加熱コイルの変形、摩滅又は損傷の有無についての点検及び圧力試験を行うこととしたものであること。
イ 定期点検等は、脱臭機の作動を止め、脱臭塔を分解し、熱媒体加熱コイルの変形、摩滅等の外部点検及び熱媒体加熱コイルのピンホール、ひびわれ等の有無の検査のための圧力試験を実施すること。圧力試験は、熱媒体加熱コイルに係るトレイ内を十分に洗浄した後、清浄な水を張り、窒素ガス又は空気により熱媒体使用圧力+2kg/cm2Gの圧力を加えて熱媒体加熱コイルよりの気泡発生の有無を確認することにより行うこと。
なお、定期点検等は、過去の事故例がいずれも熱媒体加熱コイルの損傷を原因として生じたことから、熱媒体加熱コイルの点検等を行うこととしているが、点検等の際には当然その他の関連部分の点検も併せて実施することが望ましいこと。
3 熱媒体を保管する場合の措置の基準(第二項)
熱媒体を保管する場合に、熱媒体が容器からもれ、または飛散して食品等に混入すること等を防止するため、熱媒体を堅牢な容器に入れ、食品等に混入するおそれのない隔離された場所に保管することとし、さらに誤つて熱媒体を食品等に混入することを防止するため、保管用の容器に熱媒体の名称、「熱媒体」の文字及び当該熱媒体を取扱う場合の注意事項を記載することとしたものであること。
なお、熱媒体を取り扱う場合の注意事項としては、製造等の工程における熱媒体の使用箇所等の使用方法、もれ、飛散等の防止及びその場合の措置、特別の作業衣の着用、作業衣等に熱媒体が附着した場合の処理方法等があること。
4 帳簿の備付(第三項)
(1) 熱媒体を使用する製造所等ごとに、帳簿を備え付け、2の確認、点検及び試験の結果等を記載することとし、その確実な実施を担保する等により熱媒体の食品等への混入を防止し、さらに食品衛生監視員の指導及び監督の便宜にも資することとしたものであること。
(2) 帳簿の記載事項及び保存期間は次のとおりであること。
ア 五年間保存しなければならないもの
(ア) 使用している熱媒体の名称、購入の年月日及び数量並びに使用の状況
(イ) 基準第一項第四号の規定により行つた点検及び試験の結果
イ 二年間保存しなければならないもの
(ア) 基準第一項第一号から第三号までの規定により行つた確認の結果
5 運用上の留意事項
(1) 基準第一項の規定により行った確認、点検又は試験の結果により、脱臭機内に破損部分が発見された場合、その他熱媒体が食品中に混入し又は混入するおそれのある状態を発見したときは、ただちに関連部分の操業を停止するとともに、当該製造所等の管轄保健所の長に報告し、その指示に従い必要な措置を講じることとするよう指導されたいこと。
(2) 各都道府県及び政令市の衛生研究所等においても、基準別表に定める試験法に熟練し、関係営業者等に対する指導等にあたられたいこと。
(3) 本基準の施行は、昭和五十年四月一日からとされているが、熱媒体の混入防止措置については従来から関係営業者に対する指導をお願いしているところであり、基準の施行前においても引き続き本基準に則して指導にあたられたいこと。
(4) 近年油脂製造業等の脱臭工程において熱媒体を使用せず水蒸気式脱臭装置又は電気式脱臭装置に切り換える例が増加しているが、今後ともこの方法に沿って適切な指導を行うことが望ましいこと。