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○乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の施行について
(昭和二七年一月一九日)
(厚生省発衛第四号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
昭和二十六年十二月二十七日厚生省令第五十二号をもつて乳及び乳製品の成分規格等に関する省令が公布され一月一日から施行された。
さきに乳及び乳を使用したすべての食品を対象として、乳、乳製品及び類似乳製品の成分規格等に関する省令(昭和二十五年十月十六日厚生省令第五十八号)が公布施行されていたが、その後各種事情の変化等もあつたので、この省令の内容に対し、再検討を加えた結果、専ら乳幼児及び病弱者の必需品として考えられる乳製品のみを対象とした新省令を制定し、乳及び乳製品の特殊性に基いてその衛生を保持し公衆衛生の向上増進を図ることとしたのである。よつて特に左記事項に留意の上、これが運営に遺憾のないようにされたい。
記
1 改正の要点について
(1) この省令制定の趣旨に基き旧省令による対象を整理し、クリーム、はつ酵乳、バター、チーズ、冷凍乳菓及び類似製品は、一般食品と同様の取扱をすることとしたこと。
(2) れん粉乳、乳等の販売用の容器で直接食品にふれるものについて、金属かん以外のものを認めたこと。
(3) 標示について、輸入品に対する標示の義務を輸入業者に負わせるとともに、輸出品についてはその義務を免除し、その他標示要領を簡略化したこと。
(4) 乳、乳製品等の監視の際の検査に関する規定を削除したこと。
(5) 山羊乳の処理業を牛乳の処理業と同様に要許可営業としたこと及び集乳業の範囲を拡張したこと。
(6) 乳等に関し法第五条に規定する疾病を定めたこと。
(7) 搾取基準は乳等の製造の方法の一般基準に改め、分娩前の搾取の禁止規定を削除する等若干緩和したこと。
(8) 生乳及び生山羊乳を使用する場合の成分規定を緩和し、特に保存規定を削除したこと。
(9) 市乳、殺菌山羊乳、脱脂乳、乳飲料の保存の基準について特例を設け、特別な事情がある場合には都道府県知事の承認を受けて摂氏一〇度以下に冷却しなくともよいこととしたこと。
(10) その他、乳製品の規格基準について例えば酸度等若干の緩和を行つたが、一方大腸菌群の規定等必要なものについては、新たな規定を設け乳等の衛生保持の万全を期したこと。
2 運営について
(1) 容器について
第四条第二項に規定する容器を使用しようとする者は、当該容器を使用しようとする地の都道府県知事の承認を受けなければならないこととしたのは、例えば酷寒地においては、硝子びんでは破損が多く起るので地方の事情に適した容器を使用することが必要である等を考慮したものであること。この場合は乳等に影響を与えない物質で完全に密栓でき、且つ、滅菌もできるものであることを要し、例えば陶磁器又は金属かん等の如きものについて承認するようにされたいこと。
尚以上の如き場合のほか、透明度、内容物の保存力等が硝子びんと同等以上のものがある場合には、この規定により、これが使用承認して差し支えないこと。
(2) 標示について
輸出する予定のものが、国内で販売されるときは、当然この省令に従つて標示すること。
乳飲料については、その外観が極めて市乳に類似しているものも考えられるから、第七条第二項第三号により標示すべき種類別、混合物の名称等の明示を特に厳重に指揮すること。
(3) 営業について
山羊乳の処理営業は、衛生上重大な影響を有するものであるから、市乳と同様許可営業としたので、施設の基準も市乳に準じて規定されたいこと。
クリーム、はつ酵乳、バター、チーズ、冷凍乳菓その他乳を主要原料とする食品及びマーガリンは、この省令でいう乳製品から除外し、一般食品と同様の取扱としたのであるが、その製造方法の適否は衛生上重大な影響があるので、これらの営業については乳製品の製造業に準じて施設の基準を定められたいこと。
(4) 規格について
市乳の大腸菌群は、消化器系汚物による汚染度を示すものであるので、常時従業員の衛生教育に努められたいこと。
市乳の製造基準のうち、圧を加えて短時間で加熱殺菌する方法というのは、いわゆる瞬間殺菌方法(例えば摂氏八五度 一五秒間)のことをいうのであるから、殺菌効果をも十分検討の上承認するようにされたいこと。
市乳及び殺菌山羊乳の保存の方法の基準については、新たに摂氏一〇度以下に冷却して保存することについて例外規定を設けたのであるが、これは市乳及び殺菌山羊乳を殺菌後直ちに摂氏一〇度以下に冷却しておく方法をとらせるという根本方針には変わりはないが、わが国の現状においてはこれを全国一律に行うことは困難であり、若干の例外を認めざるを得ない状態にあるので、かくの如く改正されたのであること。よつてこれが承認に際しては、近くに消費地を有しない新興酪農地帯及び僻すうの地のもののうち特別な事情があるものにつき考慮することとし、それ以外は冷却する方法をとらせることは勿論承認されたものについてもでき得る限り冷却して保存するよう指導されたいこと。乳飲料の保存基準で、保存性ある容器に入れ摂氏一一五度以上一五分間で、加熱殺菌するというのは、高圧滅菌方法をいうのであること。
調製粉乳については、貯蔵期間中に若干変化して減量する栄養素もあると思われるが、かかる場合、申請に際しては量に若干ゆとりをもたらせる等の如き方法をとらせるよう指導されたいこと。
その他
都道府県知事の承認事項中他府県に関連性あるものについては、相互に十分連絡をとるようにされたいこと。