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○墓地、埋葬等に関する法律第十三条の解釈について

(昭和三五年三月八日)

(衛環発第八号)

(各都道府県・各指定都市衛生主管部(局)長あて厚生省公衆衛生局環境衛生部長通知)

最近、宗教団体の経営する墓地について、その墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の請求に対し、請求者が他の宗教団体の信者であることを理由に、これを拒むという事例が各地に生じているが、この問題が国民の宗教的感情に密接な関連を有するものであるとともに、公衆衛生の見地から好ましからざる事態の生ずることも予想されることにかんがみ、これについての墓地、埋葬等に関する法律第十三条の解釈をこの際明確ならしめるため、先般、別紙(1)により内閣法制局に対し照会を発したところ、このたび別紙(2)のとおり回答があつた。従つて、今後はこの回答の趣旨に沿つて解釈運用することとしたので、貴都道府県(指定都市)においても遺憾のないよう処理されたい。

なお、これに伴い、墓地、埋葬等に関する法律第十三条について(昭和二十四年八月二十二日衛環第八八号東京都衛生局長あて厚生省環境衛生課長回答)は廃止する。

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〔別紙(1)〕

(昭和三四年一二月二四日 衛発第一二八○号)

(内閣法制局第一部長あて厚生省公衆衛生局長照会)

標記について次のとおり疑義があるので意見を問う。

墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第十三条においては、墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたとき、正当の理由がなければ、これを拒んではならない旨規定されているが、最近にいたり、宗教団体の経営する墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の請求に対し、請求者が他の宗教団体の信者であることを理由に、これを拒むという事例が各地に生じている。この場合当該管理者の行つた埋葬又は埋蔵の請求に対する拒否は、正当の理由に基くものと解してさしつかえないか。また、埋葬又は埋蔵の請求者が、当該墓地の区域内に、先祖伝来の墳墓を有しているときと、これを有しないときとでは、その解釈上相違があるか。

〔別紙(2)〕

(昭和三五年二月一五日 法制局一発第一号)

(厚生省公衆衛生局長あて内閣法制局第一部長回答)

昨年十二月二十四日付け衛発第一、二八○号をもつて照会にかかる標記の件に関し、左記のとおり回答する。

墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号。以下単に「法」という。)第十三条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければ拒んではならない。」旨を規定するとともに、本条の規定に違反した者は、法第二十一条第一号の規定により刑に処するものとされている。墓地、納骨堂又は火葬場の管理者に対してこのような制限が課されているのは、管理者がこのような求めをみだりに拒否することが許されるとすれば、埋葬(法第二条第一項)、埋蔵、収蔵又は火葬(法第二条第二項)の施行が困難におちいる結果、死体の処理について遺族その他の関係者の死者に対する感情を著しくそこなうとともに、公衆衛生上の支障をきたし、ひいては公共の福祉に反する事態を招くおそれのあることにかんがみ(法第一条参照)、このような事態の発生を未然に防止しようとする趣旨に基づくものであろう。このような立法趣旨に照らせば、お示しのように、宗教団体がその経営者である場合に、その経営する墓地に、他の宗教団体の信者が、埋葬又は埋蔵を求めたときに、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当の理由」によるものとはとうてい認められないであろう。

ただ、ここで注意しなければならないのは、ここにいう埋葬又は埋蔵とは、その語義に徴しても明らかなように(法第二条第一項参照)、死体又は焼骨を土中に埋める行為-この行為が社会の常識上要求される程度の丁重さをもつてなされることは、当然であるが-を指す趣旨であつて、埋葬又は埋蔵の施行に際し行われることの多い宗派的典礼をも、ここにいう埋葬又は埋蔵の観念に含まれるものと解すべきではない。すなわち、法第十三条はあくまでも、埋葬又は埋蔵行為自体について依頼者の求めを一般に拒んではならない旨を規定したにとどまり、埋葬又は埋蔵の施行に関する典礼の方式についてまでも、依頼者の一方的な要求に応ずべき旨を定めたものと解すべきではない。いいかえれば、このような典礼の方式は、本条の直接関知しないところであつて、もつばら当該土地について、権原を有する者としての資格における墓地の経営者と依頼者との間の同意によつて決定すべきことがらである。したがつて、宗教団体が墓地を経営する場合に、当該宗教団体がその経営者である墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の方式について当該宗派の典礼によるべき旨を定めることはもちろん許されようから、他の宗教団体の信者たる依頼者が、自己の属する宗派の典礼によるべきことを固執しても、こういう場合の墓地の管理者は、典礼方式に関する限り、依頼者の要求に応ずる義務はないといわなければならない。そして、両者が典礼方式に関する自己の主張を譲らない場合には、結局依頼者としては、いつたん行つた埋葬又は埋蔵の求めを撤回することを余儀なくされようが、このような事態は、さきに述べたように法第十三条とは別段のかかわりがないとみるべきである。