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○福祉入浴援助事業を行う公衆浴場の設備に関する基準について

(平成六年三月二日)

(衛指第三三号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)

公衆浴場業など環境衛生関係営業の振興については、平素より種々御配意を煩わしているところであるが、公衆浴場は、これを利用する国民にとっては日常生活上欠くことのできない施設であるに関わらず、減少傾向が続いており、昭和五十六年に制定された「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」においても、国及び地方公共団体は住民の公衆浴場の利用機会の確保に努めることとされている。

このような中で、虚弱老人等が利用しやすいよう公衆浴場の設備に一定の改造を加えた上で、その施設を利用して、入浴介助等を伴う入浴援助事業を実施する、いわゆる公衆浴場における福祉入浴援助事業は、老人の福祉の向上とともに、公衆浴場の確保を図る上でも意義の大きい事業であると考えている。

今般、同事業の円滑な実施に資するため、同事業を行う公衆浴場が最低限備える必要がある設備について、全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会の設置した「福祉入浴サービス事業検討委員会」(委員長:竹内孝仁日本医科大学教授)から、別添のとおり「福祉入浴援助事業を行う公衆浴場の設備に関する基準」が報告されたので、公衆浴場業の振興に加えて、既存の民間施設等の社会資本を有効に活用する観点からも、左記の事項に留意の上、貴管下関係行政機関に対し周知を図り、市町村等における公衆浴場を活用した福祉入浴援助事業等の実施の指針として活用され、同事業の普及・実施に対して福祉部局と十分連携を図つて積極的な支援をお願いする。

1 本基準は、福祉入浴援助事業実施浴場の設備に係る基準であるにとどまらず、高齢化社会の到来を間近に控え、公衆浴場の利用者も高齢者の割合が今後さらに高まっていくことに鑑み、一般の公衆浴場においても望ましい設備の基準を示したものであり、一般の公衆浴場を指導する際には十分配慮されたいこと。

2 福祉入浴援助事業を実施する場合は、対象となる公衆浴場が基準を満たしているかどうか、地方公共団体等が事前に調査・把握する制度を整備する必要があること。

3 貴管下関係行政機関で福祉入浴援助事業を企画・実施する場合には、同事業を実施する公衆浴場業者に対して介助等の福祉事業の講習会等を行うこと及び公衆浴場業者と医療機関等との連携体制の整備を図ることが望ましいこと。

(別添)

福祉入浴援助事業を行う公衆浴場の設備に関する基準

1 目的

この基準は、老人等の健康増進、疾病予防等を図るため、公衆浴場の施設を利用した入浴介助等を伴う入浴サービス事業(以下「福祉入浴援助事業」という。)を実施する公衆浴場が最低限備える必要がある設備について定めるものである。これにより、利用者の安全に配慮するとともに、同業業の円滑かつ積極的な実施の促進を図ることを目的とする。

2 設備の基準

虚弱老人等が公衆浴場を安全かつ円滑に利用できるようにするため、次の基準をすべて(※印を付したものを除く。)満たしていること。

これは、厚生省の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」によるランクA程度の者が安心して入浴できるのに必要な設備の基準を定めるものであり、障害を持つ者を対象に含めて事業を行う場合には、必要に応じて、さらに、設備の設置や改善等を行う必要がある。

(1) 玄関

ア 段差をなくし、歩行しやすくするために、玄関ポーチ及び上がり框に表面を滑りにくく加工したスロープを設けること。

イ 下足を着脱するとき、腰掛けた安定した姿勢を保てるように、椅子、スツール又はベンチ等を配置すること。

ウ 転倒を防ぐために、玄関・上がり框周辺に、利用者の全体重を支えるのに十分な支持強度をもった手すりを設けること。

なお、手すりの設置・維持管理に際しては、安全性の確保のために専門家の指導を受けることが望ましい(以下、手すりに関する事項においても同様)。

(2) 脱衣室

ア 歩行や立ち座りのとき、体を支え、転倒の危険性を防ぐために、手すりを設けること。

イ 衣服を着脱するとき、腰掛けた安定した姿勢を保てるように、椅子、スツール、ベンチ、ソファー、ベッド等を配置すること。

ウ 転倒を防ぐため、床に滑り止めマットを配置するか、又は床の滑り止め加工を行うことが望ましい。※

(3) 便所

ア 段差をなくし、歩行しやすくするために、入口に、表面を滑りにくく加工したスロープを設けること。

イ 虚弱老人等の使用に配慮して、上置き用便座等の洋式便器及びトイレ用簡易手すりを設けること。

(4) 洗い場

ア 段差をなくし、歩行しやすくするために、入口に、表面を滑りにくく加工したスロープを設けること。

イ 歩行や立ち座りのとき、体を支え、転倒の危険性を防ぐために、手すりを設けること。

ウ 転倒を防ぐため、洗い場内の床(特に出入口付近及び浴槽付近)には、滑り止めマットを配置するか、又はノンスリップタイル等の滑りにくい材質のタイルを用いること。

エ 体を洗うとき、腰掛けた安定した姿勢を保てるように、バスマット、シャワーシート、シャワーチェアー等を配置すること。

オ 握力や腕力が弱い者の操作を容易にするために、レバーハンドル式カラン等に取り替えることや、適切な位置にシャワーを設定できるシャワーヘッドスライドバーを設けることが望ましい。※

(5) 浴槽

ア(ア) 浴槽への出入りや浴槽内での移動及び姿勢の安定のために、浴槽回り及び浴槽内に手すり又は簡易手すりを設けること。

(イ) 浴槽への出入りをさらに容易にするために、浴槽横にベンチを設置すること、又は浴槽改造により浴槽の縁を広くしたステージを設置することが望ましい。※

イ 転倒を防ぐため、浴槽内の床(特に足を踏み入れる場所付近)には、滑り止めマットを配置するか、又は、ノンスリップタイル等の滑りにくい材質のタイルを用いること。

ウ 浴槽内の足場を確保し、浴槽内での安定した座り型を確保するために、浴槽改造によりステップを設置することが望ましい。※

エ 浴槽の深さはあまり深くならぬよう、また、浴槽の縁はあまり高くならぬよう注意すること。※

(6) その他

ア 車椅子による通行を容易にするため、各所の出入口幅は八○cm以上とすることが望ましい。※

イ 介助等の福祉事業の講習会等の事業を実施するのに十分なスペースを確保することが望ましい。※