添付一覧
○学校周辺の旅館業の許可の取扱いについて
(昭和四〇年一一月四日)
(四○衛公環収第二四一三号)
(厚生省環境衛生局長あて東京都衛生局長照会)
このことについては、昭和三十二年八月五日付、厚生省衛発第六五○号・文部省国施第四五号(各都道府県知事、各都道府県教育委員会あて、厚生省公衆衛生局長、文部省管理局長事務代理名)および同年十一月一日付、衛環発第五八号(岡山県衛生部長あて、厚生省環境衛生部長回答)ならびに昭和三十三年三月十日付衛環発第二八号(北海道衛生部長あて厚生省環境衛生部長回答)の各通達等により取扱つてきたところですが、近時、青少年健全育成の見地からする環境浄化運動が強力に推進されている状況を反影して、学校周辺の旅館の設置について、地域団体および教育委員会、区議会等の強い反対運動が起つています。
つきましては、これが許可の取扱いについてさらに慎重を期するため、左記により貴見を承りたいので照会します。
記
Ⅰ 申請旅館等の構造および位置等の状況
東京都荒川区日暮里四丁目九六○番地
(1) 当該旅館の施設(未着工)と学校(荒川区立第八中学校)との間の距離は約七五メートルであつて、現状では学校の建物が高層化(五階建の計画がある)したとしても、学校から当該旅館の各室内部を見透すことは困難である。
(2) 当該旅館の構造設備は、軽量型鋼防水モルタル三階建、四・五帖一四室であつて、各室にバス、トイレはなく、構造設備上、既存の旅館施設と特に差異は認められないが、旅館の構造および経営者の意思等から見て、旅行者および団体宿泊等を主体とするものとは思われない。
(3) 当該旅館の地域は、準工業地区であり一部商業地区である。なお当該学校の周囲一○○メートル以内には、旅館業の施設はない。
(4) 当該旅館の前面道路は通学路であるが生徒の通行は少い。
(5) 現在この地域の旅館の状況からは教育環境を著しく害する具体的な事実は見受けられない。
(6) 下谷、鴬谷地区の区画整理等に伴い、日暮里地区へ旅館が進出する傾向がある。(本件を含めて三件であるが、うち二件は地域団体等の反対もなく、すでに許可を与えている)
(7) 保健所長の諮問機関たる営業三法運営協議会においては、許可は好ましくないとする意見が多い。
(なお知事の諮問機関たる本部三法運営協議会にはいまだ付議していない)
(8) 教育委員会および地域団体等からは強い反対意見、反対陳情がある。
(別紙のとおり)略
Ⅱ 許可に対する意見
学校周辺にこの種の施設があることは好ましくないとする住民感情は理解できるが、従来の運用通達によつて判断する限り、Ⅰの状況からは、当該旅館の設置によつて「清純な教育環境が著しく害されるおそれがあることが相当確実に認められる」とはいい難いと思われるがいかがか。
(昭和四一年二月二四日 環衛第五○二一号)
(東京都衛生局長あて厚生省環境衛生局環境衛生課長回答)
昭和四十年十一月四日付四○衛公環収第二、四一三号をもつて照会のあつた標記については、左記のとおり回答する。
記
当該旅館の位置が単に学校に近いという理由のみをもつて不許可とすることは適当でないが、その設置場所、構造設備等を具体的にかつ総合的に判断して、当該旅館の営業の実体が通常旅行者、団体客等を対象として営業を行なうものでないことが十分に推定される等清純な教育環境が著しく害されるおそれがあると認められるときは不許可として差し支えない。
なお、この場合において、清純な教育環境を著しく害されるおそれがあるかどうかについては、教育委員会の意見が単に旅館の位置が学校に近いという理由で不許可とすべきであるという場合、理由が明確でない場合等を除いては、その意見を十分に尊重されたい。