添付一覧
○旅館業法関係における「業として」の解釈について
(昭和三三年一月二二日)
(三三環第一六二号)
(厚生省公衆衛生局長あて神奈川県衛生部長照会)
「業として」の解釈については、環境衛生関係営業三法のものとして昭和二十四年七月二十八日法制意見第一局長通牒、同年十月十七日衛発第一、〇四八号公衆衛生局長通牒「公衆浴場法等の営業関係法律中の「業として」の解釈について」及び昭和二十五年四月二十六日衛発第三五八号公衆衛生局長通牒「営業三法の運営について」並びに昭和二十七年十月六日広公第四七三号広島県衛生部長照会「旅館業法に関する疑義について」に対する回答文昭和二十七年十月二十九日衛環第九二号厚生省公衆衛生局環境衛生部環境衛生課長通牒「同題」等をもつて示されておりますが、旅館業法関係については、昭和三十二年六月十五日法律第百七十六号による改正以前のものであり、その後情勢の変化も見られ、特に本県の如き観光県にあつては、厚生施設として温泉地には寮等が、海岸地には海の家等の特殊施設が多数存在しており、これら施設では、利用者から宿泊料の名目でなく他の名目をもつて金銭を徴収しております関係上従来御示しを願つています「業として」の解釈にては、取扱いに疑義を生じておりますので次の事項につき何分の御教示を頂きたく照会いたします。
記
一 旅館業法関係の「業として」の解釈は、対象は特定人と不特定人とに関係がなく、宿泊料を受けて寝具を使用して宿泊させる行為が反覆継続して行われ社会性を有していることと了解しているが、貴職の通牒によれば、極く低廉な食事代として徴収している寮、その他特定人を対象とする宿泊施設は、本法の適用を受けぬとされている。
この場合「極く低廉な食事代」とは、客観的に見てどの程度までのものをいうのか、これが決定の要件は何によってなすべきや。又「寝具を使用して」とは、利用者が自己の寝具を持参して使用した場合も含まれるや。
二 「寮」又は「海の家」等は、主として会社、工場、官公庁等の厚生施設として設置されているのが普通であるが、構造設備等は、一般の旅館営業と何等異なるところがなく、宿泊料という名称を用いず、寺院等における房あるいは宗教法人の宿泊施設等における「おこもり料、奉納金寄附金、供物料又は御札料」等の如く「使用料、利用料又は食事代」等の名称にて金銭を徴収しているのが見受けられるのである。しかしながら、これら厚生施設は、厚生組合員又は利用対象者等から平素厚生費を徴収しているか又は会社、工場、官公庁等より維持費、経営費、借用料、契約金その他これに類する名目の出費がされているのが通例であつて、この費用の一部又は全部が宿泊施設の経営面へ支出されることにより維持されているのが実態であり、宿泊時の徴収金は、前記既徴収費分を控除した額と思考されるのである。従つて厚生費等を更に増額するならば、使用料等の費用の徴収は、無用となるか、極く低廉な額又は整理費等を徴収するだけでも支障をきたさないこととなる。斯くすれば「業として」の解釈に該当しないようにも解される。
この場合「業として」の解釈は如何に解すべきや。又房等の取扱いは、如何にすべきや御貴見を承りたい。
(昭和三三年三月一〇日 衛環発第二九号)
(神奈川県衛生部長あて厚生省環境衛生部長回答)
昭和三十三年一月二十二日付三三環第一六二号をもつて照会のあつた標記について、左記のとおり回答する。
記
一 旅館業とは、旅館業法第二条第二項から第五項までに規定されているとおり、「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」をいうのであるから、名称の如何をとわず客観的にみて宿泊料にあたるものを全然徴収しない場合、すなわち、食事代として徴収しても宿泊料にあたるものをそのうちに含むときは旅館業の許可を要するが、食事の実費相当額又は社会通念上食事代と考えられる額しか徴収しないときは、旅館業法の適用対象とはならないものである。
なお、旅館業法第二条第六項に規定する「寝具を使用して」には、利用者が自己の寝具を持参して使用した場合も、当然含むものである。
二 前項の「宿泊料を受けて」とは、当該宿泊に関し、宿泊者又はその代理人等から名称或いは金銭又は現物のいかんをとわず、宿泊の代価にあたるものを徴収することをいうのであるから、宿泊の代価全額を会社、工場、官公庁等が支出し、又は平素徴収ずみの厚生費等をもつてあてている場合はともかく、当該宿泊に関し宿泊の代価の全部又は一部を徴収する場合は、すべて旅館業法の適用を受けるものである。
なお、寺院の房についても、「おこもり料、奉納金、寄附金、供物料、御札料、使用料、利用料又は食事代」の名称をもつて徴収しているものが、客観的にみて宿泊の代価にあたるかどうかを判断のうえ、右により取り扱われたい。