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○環境衛生関係営業法令に関する疑義応答について

(昭和三六年六月二〇日)

(厚生省環衛第一号)

(各都道府県・各指定都市衛生主管部(局)長あて厚生省環境衛生課長通知)

今般、環境衛生関係営業法令に関する疑義応答を別添のとおりまとめたので、送付するから、事務執行上の参考に供されたい。

(問一)相当広い土地に、便所・炊事場・バンガロー又は天幕がそれぞれ散在して設置される場合、経営者別に一団地一件として申請させるべきか、或いは、バンガロー又は天幕の個々の施設ごとに申請させるべきか。(青森県照会)

(答)旅館業法の適用にあたつては、当該対象施設について一体性を認め得るならば、必ずしも、個々の施設ごとに、これを一営業単位として取り扱うことを要しないものであつて、お尋ねの事例のように、山岳地、海岸等の季節的行楽地において、バンガロー、天幕その他これに類する宿泊施設及びその附帯施設が、一定地域内に相互に比較的接近して二個以上設置される場合にあつては、この種の施設の性質にかんがみ、個々のバンガロー、天幕等の施設を、それぞれ通常の宿泊施設における客室、その他の設備に相当するものとみなし、これらの施設によつて複合的に構成される営業施設の存在を認め、これを一営業単位として取り扱うことは許されるものとみてさしつかえないが、なお、具体的事例に即して、施設の構造設備、配置及び管理の状況等をも勘案の上、遺憾のないよう処せられたい。

(問二)ヌードスタジオに関し、次のような解釈をとつてよろしいか。

① ヌードスタジオとは、通常会員制でヌードモデルの姿態を写真撮影又はデツサンさせる等いわゆる芸術研究を目的としたものであるから「観せ物」とは解せられない。

② 興行場法にいう「観せ物」とは、動植物、人形、模型などの展示、幻燈その他これに類するものであり、人体のモデルは該当しないものと解される。

③ ヌードモデルが静止せず、又は、動作を伴なうときは善良な風俗を害する行為であつて、他の法律によつて取り締るべきと解される。

以上の見解によつて、ヌードスタジオは興行場法第一条第一項の施設ではないと解される。

(和歌山県照会/石川県/愛媛県/三重県/福島県類似照会)

(答)ヌードスタジオ又はこれに類似の名称をもつて、全裸の婦人のモデルの姿態及びその動作を観覧させる施設(以下「ヌードスタジオ」という。)に対する興行場法の適用の当否は、(1)当該ヌードスタジオにおけるいわゆる「モデル」の姿態及びその動作について、これを同法第一条第一項に掲げる「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物」のうちいずれかの種別に該当するものとすることができるか否か、(2)当該ヌードスタジオは、「モデル」の姿態及びその動作を「公衆に対して見せる」ものであるか否か、及び(3)当該ヌードスタジオの経営者は、かかる施設を「業として」経営するものであるか否かの三点から判断されなければならないのであつて、当該ヌードスタジオが、以上の三つの要件のすべてを積極的に満す場合においては、当然興行場法の適用範囲内にあるものとすべきである。

しかるに、御設問の趣旨は、ヌードスタジオに対しては、一律に同法を適用すべきものであるかどうかというものであるが、現実におけるこの種の営業の形態が極めて多種多様であるため、その定義づけすらも困難とされる現在、御設問において要求されているような画一的な判断を行なうことは、法理上許されないのであつて、それぞれの具体的事例に応じ、貴職において、適宜御判断の上、処理されたい。

なお、参考までに付記すれば、ヌードスタジオにおけるモデルの姿態及びその動作が「映画、………、観せ物」のうちのいずれかの範ちゆうに属するものとみなし得るか否かは、当該施設の状態、すなわち、その営業方法、モデル及び客の態度等を総合的に勘案の上社会通念によつて、判断すべきものであつて、経営者及びモデル等の意思又は主張、会員制度をとるか否か、モデルがある種の動作を行なうか否か等の事実は、いずれも、これが判断を行なうにあたつての決定的なメルクマールとなるものではないことに留意されたい。また、「観せ物」とは、民法第八十五条に規定する「物」に限られないのであつて、人体であつても、それが公衆に見せるために陳列された状態にあれば、これを観せ物として取り扱うべきである。

さらに、興行場法は、もつぱら対象施設について、公衆衛生の見地から必要な規制を行なおうとするものであつて、その興行内容についての風俗的見地からする規制は、本法の目的外であるから、お見込みのとおり、本法の適用にあたつては、当該興行場における興行の内容が公序良俗に反するか否かを顧慮すべきではないが、警察当局等と必要な情報の交換等を行なうことは、当該事務処理の円滑化に資するものと考えられ、なんらさしつかえないところである。

(問三)旅館業者が国民金融公庫に対して融資の申込をする際には、その申請書に所轄保健所長の証明書を添付すべきこととされている。ところで、旅館業者が旅館業法第八条各号に規定する罪を犯したことはあるが、その後一定期間を経過した者、あるいは改悛の情が顕著の者であつて、今後の営業が十分堅実に行なわれることが明らかに見通される場合で、保健所長が適当と認める者については、証明書を交付して差し支えないか。

もし差し支えないとすれば、証明書の様式中この事項については「………………罪を犯したことはあるがその後改悛の情が顕著で、今後は堅実な経営を営むことが確実であると認める。」

等記載して差し支えないか。(北海道照会)

(答)旅館業者が国民金融公庫に対して融資の申込をする際に、その申請書に所轄保健所長の証明書を添付すべきこととしたのは、風俗的見地から好ましくない営業者を融資対象より除外したいためであつて、しかも該証明書の様式を、昭和三十五年六月二十四日衛環発第一八号各都道府県指定都市衛生主管部(局)長あて通知別記様式のごとく定めたのは、保健所長の把握しうる範囲を考えて、それ以上詳細な部分にわたる証明を行なわせることは困難であるとみたからであるので、お尋ねの場合のように、保健所長が、旅館業法第八条各号に規定する罪を犯した営業者について、その後一定期間を経過したか、あるいは改悛の情が顕著であるかにより、今後の営業が十分に堅実に行なわれることが明らかに見通すことができるから、証明書を交付するに適当であると認めたような場合には、お示しのような文言を証明書に記載して、それを該営業者に交付することは差し支えない。

ただ、改悛の情が顕著であるというような認定を行なうことはそう容易ではないと考えられるので、そのような営業者に証明書を交付する場合にあたつては、十分に調査の上、真に適当と認められる者に対してのみ、証明書を交付するように配慮されたい。

(問四)次のような態様の浴場施設に対して、公衆浴場法を適用すべきか。

① 住宅の一部を改造し「ラヂウム温泉の素」と称する看板を掲げ、男女別に家族風呂式の浴槽を設け、主として病人を対象に会員制(会員には会員券を発行する。現在三十名ほどいる会員は主として病人であるから病気が治癒すれば会員ではなくなる。すなわち、会員は固定したものではなく、たえず増減をきたす。)により入浴させている。

② 料金は浴場の諸経費を会員が負担することとし、一会員月額で一五○○円、日額ならば入浴の都度五○円を納入する規約となつている。

③ 普通浴場と同じく反覆継続して営業している。

④ 二メートル四方の浴場内に一メートル四方の浴槽を設け、浴槽の底に五○センチメートル四方のラヂウム鉱石と称するものを入れている。(石川県照会)

(答)お尋ねの施設は、公衆浴場法第一条第一項に規定する公衆浴場に該当することはもちろん、反覆継続の意思をもち、かつ、社会性をもつて経営されているものと認めざるを得ないので、公衆浴場法の適用を受けるべきものである。

すなわち、お尋ねの施設について、公衆浴場法の適用を除外すべき事由の有無を検討してみるに、貴職から提示された資料によつて判断する限り、当該施設に関しては、その利用者を特定人(この場合は病人)に限定するといういわゆる会員制度をとり、もつぱら会員の病気の療養のために使用されるものであるという経営形態及び利用形態における特殊性が認められるほかは、一般の公衆浴場との間になんらの差異をも見出し得ないのである。しかしてこの経営形態及び利用形態における特殊性も、次に掲げる理由によつて当該施設を公衆浴場法の適用外とすべき事由としては認めがたいところである。

1 当該施設が会員制度をとることは、その営業の社会性を否定する事由とはならないこと。このことは、昭和二十四年十月十七日付け、衛発第一、○四八号各都道府県知事あて公衆衛生局長通知「公衆浴場法等の営業関係法律中の「業として」の解釈について」によつて御承知のとおりであること。

2 公衆衛生法規たる公衆浴場法の本質にかんがみ、同法は、対象施設の経営者の経営目的及び利用者の利用目的のいかんを問うことなく、ひとしく適用さるべきものであるから、当該施設が会員の病気療養を目的として、設置・経営・利用されることは、当該施設に対する同法の適用の当否の問題とは無関係であること。

(問五)売春防止法違反により罰金刑に処せられた旅館営業者が同人を代表者とする法人に経営者名儀を変更した場合(本件は、行政処分を脱がれるための作為が多分に疑われる。)は、先の旅館営業者の違反事実につき、後の法人に対し旅館業法第八条により行政処分を行なうことはできないものと解してよろしいか。(福島県照会)

(答)旅館業法(以下「法」という。)第八条後段の規定に基づいて行政処分を行なうことができるのは、旅館業の営業者(営業者が法人である場合におけるその代表者を含む。)又はその代理人、使用人その他の従業者が当該営業に関し同条各号に掲げる罪を犯したときであり、当該犯罪行為と当該営業との間に相当の因果関係が存する場合に限られるが、お尋ねの場合においては、当該旅館営業者はその経営者名儀を法人に変更しており、この法人は新たな営業許可を受けたことによつて先の旅館営業者とは営業が別個のものとなつておるのであるから、したがつて、先の旅館営業者の犯した売春防止法違反の行為と後の法人の行なう営業との間には、相当の因果関係は存しないと解すべきであるので、この法人に対して法第八条に基づく行政処分を行なうことはできない。

なお、法第八条においては、行政処分を行なうことができる要件として、営業者が法人である場合におけるその代表者…………が当該営業に関し同条各号に掲げる罪を犯したときと規定しているが、これはいうまでもなく、営業が許可された後に前記の罪が犯されたときに行政処分を行なうことが許されるという趣旨であつて、いつたん法人に対し許可を与えておいて、その後に、許可前に当該法人の代表者が犯した売春防止法違反の行為を理由に、当該法人に対し行政処分を行なうことはできないと解さざるを得ない。

(問六)旅館業法第九条に基づく運用上、左記事項に疑義がある。

1 旅館業法第三条第一項の許可を受けた営業者(以下「A」という。)が売春防止法第二章に規定する罪を犯したが、旅館業法第八条に基づく行政処分前にその営業を譲渡し、現在、当該旅館において従業員として勤務(同居)している場合、Aに対して旅館業法第九条第一項に基づく聴問を行ない、行政処分できるか。

2 旅館業法第三条第一項の許可を受けた営業者(以下「B」という。)が売春防止法第二章に規定する罪を犯したが、旅館業法第八条に基づく行政処分前にその営業を廃止し、再度、Bが当該施設でもつて旅館営業許可申請をした場合許可すべきか。

3 2において許可すべき場合、Bに対して旅館業法第九条第一項に基づく聴問を行ない、行政処分できるか。(岐阜県照会)

(答)

1 旅館業法(以下「法」という。)第八条後段の規定に基づく行政処分は、同条各号に掲げる罪を犯した旅館営業者に対しその営業について行なうことができるのであるが、お尋ねの場合においては、すでにAはその営業を譲渡しており現在は営業を行なつていないので、これに対して法に基づく聴問ならびに行政処分を行なうということは考えられない。

2 都道府県知事は、法第三条第二項各号の規定のいずれかに該当する申請者から旅館営業の許可の申請があつた場合においては許可を与えないことができるが、法第八条各号に掲げる罪を犯したということを理由に、申請者に対し許可を与えないことはできない。

3 いつたん営業者に対し許可を与えておいて、その後に、許可前に当該営業者が犯した売春防止法違反の行為を理由に、当該営業者に対し、法第九条第一項に基づく聴問を行ない、行政処分を行なうことはできないと解される。

(問七)公衆浴場法の運用上、左記事項に疑義がある。

1 当県内観光地Aに、地元甲市が国民宿舎を新設し、その敷地内に温泉を引いた露天の岩風呂を新設し、広くAに遊ぶ人々を対象として無料で自由に利用させる計画をたてておるが、このような施設に対し、公衆浴場法を適用すべきか。

2 適用されるとした場合公衆浴場法第二条第三項により県が制定した条例で規定した設置場所の配置の基準の適用外としてよいか。また風紀等に必要な措置として少なくとも次の措置を講ずる必要があると考えるがどうか。

A 浴槽は男女別とすること。

B 男女双方見透しがきかないこと。

C 外部から見えないこと。

D 鍵のかかる衣類箱及び下足箱を相当数設けること。

E 脱衣場を設けること。(島根県照会)

(答)

1 浴場施設に対する公衆浴場法の適用の当否は、(1)当該浴場が公衆浴場法第一条第一項に規定されている「公衆浴場」に該当するか否か、(2)「業として」当該浴場を経営するのか否か、(3)当該浴場を「経営」するのか否かの三点から判断されなければならないのであつて、当該浴場が以上の三つの要件のすべてを積極的に満足する場合においては、当然公衆浴場法の適用範囲内にあるものとすべきである。

さて、お尋ねの施設は、温泉を使用して公衆を入浴させる施設であり、かつその利用は反覆継続して社会性をもつて行なわれているものと判断されるから、前記の第一点及び第二点は積極的に満足していると解される。

結局、お尋ねの施設について主として問題となるのは第三の「経営」についてであるが、これは、公衆浴場の場合についていえば、当該施設を存続させる意思をもつて、その維持管理に関する最少限度必要なる行為を継続的に行なうことをひろく含めてよいものと考えられるので、お尋ねの施設についても、このような様態が認められるかぎり「経営する」に該当するものと解して公衆浴場法を適用して差し支えない。

2 お尋ねの施設は一般の公衆浴場と異なつた営業形態をとるものではなく、したがつて、一般の公衆浴場と競争関係を生じないものではないから、貴県の条例で定めた配置の基準の適用外とすることはできないと解される。

また、貴県の条例で定めた入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講ずべきことは極めて当然のことである。この場合において、貴県条例中、特殊の事情がある場合に、当該措置の基準の全部又は一部についてその適用の特例を設ける規定がある場合には、その範囲内において、当該規定を活用することができることはいうまでもないところである。