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○理容師美容師法の一部を改正する法律の施行に関する件
(昭和三〇年一〇月三日)
(厚生省発衛第三二四号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
さる第二十二回国会において成立をみた理容師美容師法の一部を改正する法律は昭和三十年法律第百二十六号をもつて八月五日に公布施行され、これに伴つて理容師美容師法施行規則の一部を改正する省令が昭和三十年厚生省令第二十号をもつて九月二十一日に公布施行された。
この改正は、近時における理容所、美容所の増加及びこれらの施設における従業者の激増という実態に即応して、施設に対する衛生措置の確保及び開設者の従業者に対する適切な業務管理を図るために、現行法を整備して理容、美容業の適正な運営を期したものであるので、この趣旨を普及徹底するは勿論、これが運用にあたつては、特に左記事項に御留意の上、改正法の所期する目的達成につとめられたく、命によつて通知する。
記
第一 改正の要旨
理容師美容師法の改正の主要点及びその趣旨は、次のとおりであること。
1 従来、理容所、美容所の開設は届出のみをもつて行い得たが、これらの施設について開設の当初から充分な衛生措置を確保するとともに、施設に対する衛生的管理の強化を期するために、施設の開設者に対しその施設を使用するに際しては、その構造設備に関し都道府県知事の検査を受けさせその確認を得なければならないようにしたこと。
2 理容所、美容所において理容、美容の業務に従事する従業者に対して、開設者が適正な業務管理を行うことによつて公衆衛生上の措置の確保を図るために、開設者が当該施設内で無免許者若しくは業務停止を受けている者に業務を行わせた場合又は当該施設内で業務を行う者が法定の措置を講じなかつたときに開設者が必要な管理を怠つていた場合は、当該施設の閉鎖を命ずることができるようにしたこと。
3 都道府県知事が免許取消、業務停止又は閉鎖命令の処分を適正に行うために、処分を受ける者に弁明の機会を与えるようにしたこと。
理容師美容師法施行規則の改正の主要点及びその趣旨は、次のとおりであること。
1 理容所、美容所の開設について、施設の公益性の確保と業務管理の徹底とを図るために、施設の開設者の実態に応じ届出の内容を整備したこと。
2 理容師養成施設、美容師養成施設の指定及び運営について、養成施設本来の教育機能を完全に保持しその適正な管理を図るために、経営方法、実習のモデル等について必要な規制を加えたものであること。
3 理容師養成施設、美容師養成施設の通信教育について、現状に即応した態勢を整えるとともに、通信教育の合理化を図るために、定員、面接授業の場所及び時間数にわたり現行省令を整備したこと。
第二 運用上留意すべき事項
1 検査の実施に関する事項
(1) 施設の使用開始を検査による確認後とした所以は、公衆衛生上の適切な措置を使用開始当初から確保し、もつて近時の理容所、美容所の設置の増大に伴う衛生措置の低下を未然に防止しようとするものであるから、この趣旨の徹底には特に意を用いるようにされたいこと。
(2) 検査に当つては、当該施設が構造設備において所定の基準に合致するかどうかの点についてのみ実施するものとし、爾余のことに関し過重な検査を行うことのないよう留意するとともに、いやしくも所定の検査については、その厳正な執行を図るようにされたいこと。
(3) 検査の実施にあたつては、その効果を考慮の上、能率的にすみやかに行うことを旨とし、いたずらに遅延して正当な営業の開始をさまたげる事態を招ぜしめないようされたいこと。
(4) 法第十二条の衛生措置は、検査の基準となるものであるから、特にこの際併せて再検討を行い、もつて検査が営業施設における衛生措置の全般にわたつて必要かつ充分な限度においてなしえられるよう措置せられたいこと。
2 開設者の業務管理に関する事項
(1) 理容師美容師法の規制の対象は、従来個々の業務を行う理容師、美容師に限られ、理容所、美容所の開設者は直接その対象とならなかつたのであるが、これらの営業施設における衛生措置の確保は、結局開設者の経営管理方針の如何によつて左右されるものであることに鑑みて、今次の改正が行われたものであるから、特に営業者に対しこの本旨を徹底するよう啓蒙につとめられたいこと。
(2) 開設者が適正な業務管理を行つているかどうかは、もつぱら常時の監視及び検査の総合的判断に基いて決せられることが多いので、これら監視及び検査については従前以上に厳にその励行を図られるよう措置されたいこと。
(3) 開設者の業務管理に関する規定の違反については、当該施設の閉鎖処分を命ずることができるようになつたが、この場合にあつては、その実態に則する程度を勘案して適切な運用を図るようつとめられたいこと。
3 その他一般的事項
(1) 理容師美容師法の運用にあたつては、その公衆衛生上における重要度と行政の多様性にかんがみ、都道府県においてできる限り審議会制度を採用するようにし、単独の審議会の設置が困難なときは、既存の営業関係審議会等を活用し、衛生措置基準の設定、養成施設の指導育成、適正料金の検討等にわたり問題の適切な処理につとめられるよう考慮せられたいこと。
(2) 理容師美容師法の所期する目的の達成は、殊に業界の積極的な協力と認識とに俟つところが極めて大きいので、業界に対する指導はこれを更に強化するとともに、業界において自主的にして統一ある措置を積極的に推進せしめ、もつて、効率的な行政効果を確保しうるよう留意せられたいこと。
(3) 理容師養成施設及び美容師養成施設の運用については、近時施設数の増加とともに、学校教育本来の機能を著しく逸脱する向きもあるので、今次改正省令の趣旨にそい、特に養成施設の適正な経営、教育内容の充実及び教育に適した施設の運営について厳正な指導監督を行い、その資質向上につとめられるとともに、指定基準に適合しなくなつた場合等養成施設として不適当なものについてはすみやかにその処分を講じられるよう措置されたいこと。