添付一覧
○美容業及びクリーニング業に関する適正化規程の取扱い方針について
(昭和五五年一〇月二八日)
(環指第一九〇号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省環境衛生局指導課長通知)
美容業及びクリーニング業の適正化基準の認可については、さきに昭和五十五年八月二十三日環指第一四九号厚生省環境衛生局長通知「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律第九条第四項に規定する判断基準の告示並びに美容業及びクリーニング業の適正化基準の認可について」(以下「環境衛生局長通知」という。)により通知されたところであるが、これら二業種の適正化基準の適切なる実施を図るとともに、適正化規程の内容が各都道府県間で著しい不均衡が生じないようにするため、今般、次の取扱方針を定めたので、今後適正化規程の認可及び指導に当たつては、この取扱方針に従い、遺憾のないよう処理されたい。
美容業及びクリーニング業の適正化規程の取扱方針
第一 適正化規程の設定について
適正化規程を設定しうる状態にあるか否かの判断は、昭和五十五年三月四日厚生省告示第二十九号(環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律第九条第四項に規定する判断基準を定める件。以下「告示」という。)及び環境衛生局長通知に従つて行われるべきものであるが、なお次の諸点に留意すること。
(1) 適正化規程の設定は、原則として当該環境衛生同業組合(以下「組合」という。)の地区の全域を対象としてなされるものであるが、競争の実態からみて当該地区の全域に及ぶこととならない場合もありえ、その場合には、適正化規程の適用除外地域が設けられうること。
その際の判定に当たつては、当該除外地域に告示第一号に掲げる過度の競争の事態が存在せず、かつ地理的条件、交通手段、社会的、経済的つながり等からみて組合の地区内の他地域の競争の影響を受けるおそれが少ないか否かという観点から総合的に判定すべきものであること。
(2) 告示第一号イ及び第二号における「相当数」とは、必ずしも過半数の営業者たることを要せず、当該組合の地区内における当該業界に一般的に影響を及ぼす程度のことをいうものであること。
(3) 告示第一号ハにおける「正常な商慣習に照らして不当と認められる取引方法」の事例の例示は以下のものであること。
(イ) 不当に多額な又は著しく射幸的な景品、不当に多額なきようおう等の利益を相手方に供与して、役務の提供又は物の販売(以下「役務の提供等」という。)をすること。
(ロ) 誇大な又はぎまん的な宣伝を用いて役務の提供等をすること。
(ハ) 虚偽の品質を表示して役務の提供等をすること。
(ニ) 正当な理由がないのに原価以下で役務の提供等をすること。
(ホ) 不当に相手方を差別して異なつた価格で、又は不当に長期の信用を相手方に供与して役務の提供等をすること。
(4) 告示第一号ニにおける「取引の相手方が正常な商慣習に照らして不当と認められる取引方法を使用する」事例の例示は、以下のものであること。
(イ) 不当に差別して高い価格で物の販売をすること。
(ロ) 当該営業者の購買先若しくは購買条件又は販売先若しくは販売条件を不当に拘束することを条件として物の販売をすること。
(ハ) 物の購買を強制すること。
(ニ) 不当に取引条件を変更すること。
(5) 告示第二号イ、ロ及びハにおける「正常な状態」とは、現在の中小企業における平均的な状態ということであり、例えばイ及びロにあつては当該業界において平均的又は慣行的なものとして存在している「売上高」及び「売上利益の売上高に対する割合」等を考慮すべきであること。
(6) 告示の判断基準を適用する場合には、単に一定時点における静態的分析にとどまることなく、参考資料の許す限り、できるだけ以前からの推移をは握し、業界の現状を経過的に分析していくよう留意すること。たとえば、料金が近年ほとんど変動がみられない事態があつても、需要と供給とがバランスのとれた状態にあるために生じた場合もあろうし、また、過去における需要と供給との著しいアンバランスの結果既に料金が営業を継続できる最低の線まで低下し、その状態が現在まで続いている場合もあると考えられるのであつて、一定の期間の経過的な分析を行うことによつてはじめて妥当な結論を得られるものであることに留意すること。
第二 料金の制限
一 料金制限種目
(1) 料金の制限を行うことのできる種目は、各業種の適正化基準に規定された種目に限られるものであること。
(2) (1)に掲げた種目から適正化規程において料金の制限を行おうとする種目を選定する場合には、各地域ごとの過度の競争の実情を基礎としてその克服のために必要な最小限度の種目に制限すべきであるが、一般的には、一部の種目について過度の競争の現象があらわれないとは考えられないので、当該地域においてほとんど取り扱われていない種目がある場合及び明らかに一部の種目についてのみ過度の競争状態にあると認められる場合を除き、(1)に掲げた全部の種目について料金の制限が行われるものと考えられること。
二 基準料金の算定
(一) 基準料金の算定の考え方
(1) 基準料金を算定するには、適正化基準の規定に従い、経営規模、操業度、能率等の諸前提につき標準的な数値を設定して基準料金計算を行い、更に現行の料金水準を勘案して決定すること。
(2) 基準料金の算定の方式は、適正化基準の基準料金算定準則に規定したところによらなければならないものであること。
(二) 経営規模の定め方
(1) 経営規模は、資本的企業においては、総資本額、経営資本額等により定められるのが一般的であるが、環境衛生関係営業の如く生業的色彩の濃い業種にあつては、従事者数、施設の大きさ、営業に必要な設備の内容等によつて定めるのが妥当と考えられるので、美容業にあつては、従事者数及びセットいす台数により、クリーニング業にあつては、従事者数及び機械器具の設置状況により、それぞれ経営規模を定めるべきものとされており、適正化規程においても必ずこれらのメルクマールによらなければならないものであること。
(2) 経営規模は、各業種とも従事者構成及び設備構成の二面から最もふくらみの大きい構成をとることとなるが、この場合それぞれの最もふくらみの大きい構成を全施設数から別々には握するのではなく、先ず、最もふくらみの大きい従事者構成を全施設数からは握し、次にその最もふくらみの大きい従事者構成にあたる施設数の中から最もふくらみの大きい設備構成をは握するものとすること。
(3) (1)の考え方にたつて、経営規模を決定するに当たつては、単に経営規模別施設数の単純平均をとることなく、最もふくらみの大きい経営規模をとるものとされていることに留意すること。
(4) 美容業の適正化基準では、標準的経営規模として、美容師二名(うち一名は管理美容師)の従事者を有し、セットいす三台を備える美容所(以下(4)及び(5)において「標準的経営規模」という。)を設定しているが、適正化規程においても、原則として、この標準的経営規模をとることとし、ただ地域によつて当該地域における最もふくらみの大きい経営規模が標準的経営規模と著しく異なる場合には当該地域における最もふくらみの大きい経営規模をとるものとすること。
(5) (4)において地域により当該地域における最もふくらみの大きい経営規模が標準的経営規模と「著しく」異なる場合とは、その地域ごとに経営規模の分布状況に応じ個別的に判断すべきものであるが、一応次の基準によるのが妥当であると考えられること。
(イ) 従事者数については、原則として二名(美容師二名で、うち一名は管理美容師)とするが、地域によつてその規模の実態がこれと異なり、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数の美容所数が標準的経営規模である従事者数二名の美容所数の二倍以上であつて、かつ、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数の美容所数が全美容所数の五割を超えているか、又は従事者数二名の美容所数が一割未満である場合には、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数をとるものとすること。
ただし、最もふくらみの大きい従事者数が一名の場合にあつてはこれをとらず、従事者構成二名を最もふくらみの大きい従事者構成とみなして経営規模を設定するものとすること。
(ロ) セットいす台数についても原則として三台とすることとするが、地域によつてその規模の実態がこれと著しく異なる場合には、(イ)における基準に従い、当該地域における最もふくらみの大きいセットいす台数をとるものとすること。
(6) 美容業の従事者中に補助者が存在する場合の扱いについては、(5)の(イ)により定められた従事者数が三名以上の場合であつて、当該従事者数の規模の美容所のうち過半数の美容所が有している補助者数――例えば補助者数二名以上の美容所が過半数ならば二名と算定する。――を従事者数中の補助者数として算定することが認められること。
(7) クリーニング業の適正化基準では、標準的経営規模として、全国的にみて最もふくらみの大きい経営規模をとり、従事者数が二名で、ランドリー用洗たく機、脱水機及びエリ・カフスプレス機を各一台、ドライクリーニング用洗たく機、脱液機、乾燥機及び卓上ボイラーを各一台並びに有気圧ボイラーを一台有するクリーニング所(以下(7)及び(8)において「標準的経営規模」という。)を設定しているが、適正化規程においても原則としてこの標準的経営規模をとることとし、ただ地域によつて当該地域における最もふくらみの大きい経営規模が標準的経営規模と著しく異なる場合には、当該地域における最もふくらみの大きい経営規模をとるものとすること。
(8) (7)において地域により当該地域における最もふくらみの大きい経営規模が標準的経営規模と「著しく」異なる場合とは、その地域ごとに経営規模の分布状況に応じ個別的に判断すべきものであるが一応次の基準によるのが妥当であると考えられること。
(イ) 従事者数については、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数のクリーニング所数が標準的経営規模である従事者数二人のクリーニング所数の二倍以上であつて、かつ、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数のクリーニング所数が全クリーニング所数の五割を超えているか、又は従事者数二人のクリーニング所数が全クリーニング所数の一割未満である場合には、当該地域における最もふくらみの大きい従事者数をとるものとすること。
ただし、最もふくらみの大きい従事者数が一名の場合にあつてはこれをとらず、従事者構成二名を最もふくらみの大きい従事者構成とみなして経営規模を設定するものとすること。
(ロ) 地域によつては(7)に掲げる機械のうち、ある機械を設置していないクリーニング所が多い場合があつても、経営合理化のため時代のすう勢に応じた機械化を促進していくことの必要性にかんがみ、適正化基準における標準経営規模たる機械を有するものとして取り扱うものとすること。
(ハ) (7)に掲げる機械のうち、ある機械が二台以上あるクリーニング所が著しく多い場合にあつては、(イ)の例にならつて、その機械についての規模台数を定めること。
(ニ) (7)に掲げる機械以外の機械について、それを有するクリーニング所数が、経営規模としてとつた従事者数のクリーニング所のうちの著しく多数を占めている場合には、当該機械を備えたクリーニング所を基準となる経営規模として取り扱うものとすること。
(9) 経営規模の決定に当たつて従事者数をは握する場合に、家族従事者については、営業上の業務と家事とが明確に区分することが困難な場合が多いため、その取扱如何によつては従事者数にも相当影響を与えるのでこれがは握には十分留意すること。この場合、営業上の業務と家事とのいずれにも従事する者の取扱については、いずれを主としているかによつて区別することが妥当であると考えられること。
(三) 操業度
(1) 操業度を定める際のメルクマールとしては、各業種ともサービス業に属し、しかもそのサービスの内容が手作業を中心としているものであるため、従事者の作業時間により操業度を定めるべきものとされており、したがつて適正化規程においても必ず作業時間によらなければならないこと。
(2) 操業度については、最適操業度をとることを原則とするが、美容業にあつては、その営業が顧客の来訪を前提とするため、一般的に最適操業度をとることが困難であるという特殊事情もあり、最適操業度と平均操業度との隔差が著しい現状にあることにかんがみ、両者の中間的な操業度(基準操業度)をとることとされ、クリーニング業にあつては、外交活動等による顧客の獲得が可能であるという性格から最適操業度をとることが比較的容易であるため、最適操業度をとることとされていること。
(3) 美容業の操業度の算定は次の基準によること。
(イ) 最適操業度は、適正化基準の基準料金算定準則(以下「算定準則」という。)に定めるところにより算定するものとし、従つて美容師数、営業時間数、休日数等の諸条件が適正化基準における数値と変らない限り最適操業度も適正化基準における数値と一致するものであること。
(ロ) 平均操業度は、各地域における現実の顧客数を前提とし、これに施術種目別単位当たりの直接作業時間を乗じて算定するものとすること。
(ハ) 基準操業度は、算定準則に定めるとおり、最適操業度と平均操業度との比率を五対五として算定するものとすること。
(4) クリーニング業の操業度の算定は、クリーニング業の適正化基準の基準料金算定準則に定めるところにより行うものとし、従つて従事者数、営業時間数、休日数等の諸条件が適正化基準における数値と変らない限り、この操業度も適正化基準における数値と一致するものであること。
(5) 美容業において平均操業度算定の前提となる顧客数は、基準操業度を通じて基準料金の額に大きく影響するものであるため、その決定には特に留意すること。特に、実態調査を基礎として判断する場合には、時期、曜日、天候等の顧客数に対する影響を考慮し、できるだけ長期間における平均的な数値をは握するように努めることが妥当であること。
(四) 原単位の定め方
(1) 役務に直接使用する物量の単位――例えば、美容業にあつては、一人に必要なシャンプー等、クリーニング業にあつては処理重量一キログラム当たりの石鹸等--(以下「原単位」という。)の種類及び数量は、適正化基準の算定準則の定めるところにより、その価格は当該組合の当該地域の実情によることとされていること。これは、原単位の種類及び数量が全国的にほとんど差異が認められず、また本来差異のないのが当然であるという事情に基づくものであつて、地域によつてこれと若干差異のある場合が生じても適正化基準における種類及び数量をそのままとるべきものであること。
なお、原単位の銘柄については、当該地域において一般的に使用されているもの(適正化基準における原単位の種類に属しないものを含めないよう留意すること。)をとるものとすること。この場合において、一般に使用されているものが二以上あるときは、その最も低廉なものをとることとすること。
(2) 原単位の価格は、各地域ごとの平均的な価格によることとなるが、これが決定に当たつても、原単位についての業務用小売価格表等を基礎とするものとし、この場合一般的な値引率の実情も十分考慮すること。
(五) 作業の工程及び時間の定め方
作業の工程及び時間は、本来全国的に標準的な規格で統一されるべきものであるため、各業種とも、全国一率に適正化基準に定める作業標準規格によるべきこととされ、したがつて、美容業にあつては、地域により差異のある場合はもちろん、経営規模が異なる場合でもこの適正化基準の規格をとるべきこととされており、また、クリーニング業にあつては、地域により差異のある場合にも適正化基準の規格をとるべきこととされているが、ただ、美容業にあつては、従事者のうちに補助者が存するとした場合、クリーニング業にあつては、設備構成面で(二)の(7)に掲げる機械以外の機械を有する経営規模をとる場合については、作業の工程及び時間が実質的に異なると考えられるのでその場合における一般的な作業の工程及び時間をとるべきものとされていること。
(六) 労働時間の定め方
(1) 労働時間については、美容業及びクリーニング業ともに九時間以内に定められているので、適正化規程ではこの制限を超えることはできないが、この制限の範囲内にあつては短縮して差し支えないものであること。この場合、クリーニング業にあつては、労働時間の現状を前提としつつできるだけ労働基準法の規定(八時間)に近づけることを基本的態度とすべきものであること。
(2) ここに労働時間とは、実労働時間をいうのであり、拘束時間から休憩時間を控除したものであること。
(七) 人件費の定め方
(1) 賃金については、適正化基準において地域ごとの実情によるものとされているが、賃金を定める場合には、一応各業界の当該地域における平均実収賃金を基準とし、これが著しく低いときはその地域の一般中小企業なみの額をも参酌して決定するものとすること。
なお、美容業及びクリーニング業の適正化基準における賃金額は、両業種の平均実収賃金が著しく低かつたので一般中小企業等の賃金水準を参酌して調整したものであるので、この点に留意して賃金を定めるものとすること。
(2) 家族従事者の賃金については、当該地域の雇入従事者の賃金をよりどころにして決定するものとし、したがつて、雇入従事者の賃金の決定要因--例えば美容業にあつては資格の有無及び資格取得後年数、クリーニング業にあつては従事者の年齢--に対比させつつ、家族従事者の賃金を決定していくものとすること。
(3) 業主の賃金については、技術労働、経営労働に対する報酬として当該地域の中小企業者の社会的生活に必要な水準の額を見込んで決定するものとすること。この場合地域の事情によつて賃金額の異なるのは当然であるが、また経営規模の大きさによつても異なるものであることに留意すること。
(4) 賃金の決定に当たつては、組合の提出した当該地域における賃金の実態を基礎とすべきはもちろんであるが、公的機関の調査結果をできる限り蒐集し、十分活用することが妥当であること。特に適正化基準における賃金額を目安として利用する場合には全国的にみた各都道府県の賃金水準等がその前提条件となるので、公的機関による都道府県別調査を十分活用することが望ましいこと。
(5) 退職給与引当金及び福利厚生費(社会保険料、慰安費等)の決定に当たつては、適正化基準の数値を考慮しつつ、地域の実情に基づいて決定すべきものであること。
(八) 経費の定め方
経費については、算定準則に定めるところを基準とすることとされているが、その費目の性格によつて基準とする程度も異なるべきものと考えられること。すなわち、(イ)適正化基準において、経営の改善向上を促進する意味で標準化させた費目及び数値の具体的なは握が困難なために標準化させた費目については、経営規模が異ならない限り、原則として適正化基準における数値をそのままとり、(ロ)その他の費目については、適正化基準における数値を目安としつつその地域の実情をも十分に考慮して定めることが妥当であること。
右の区分に従つて、各業種の適正化基準における費目を分類すれば、次表のとおりとなると考えられること。
費目分類表
種類 |
クリーニング業 |
美容業 |
|
加工間接費 |
管理販売費 |
||
(イ)の費目 |
|
① 研究費 ② 通信費 ③ 広告宣伝費 ④ 補償費 ⑤ 諸会費 ⑥ 雑費 |
① 衛生費 ② 研究費 ③ 通信費 ④ 広告宣伝費 ⑤ 接待交際費 ⑥ 諸会費 ⑦ 雑費 |
(ロ)の費目 |
① 消耗品費 ② 燃料費 ③ 光熱費 ④ 水道料 ⑤ 減価償却費 ⑥ 租税公課 ⑦ 火災保険料 |
⑦ 消耗品費 ⑧ 減価償却費 ⑨ 修繕費 ⑩ 支払利子 ⑪ 租税公課 |
⑧ 消耗器具備品費 ⑨ 事務用消耗品費 ⑩ 水道光熱費 ⑪ 減価償却費 ⑫ 地代、家賃 ⑬ 損害保険料 ⑭ 修繕費 ⑮ 旅費交通費 ⑯ サービス(接客)費 ⑰ 支払利子 ⑱ 租税公課 |
注1 租税公課、減価償却費及び火災保険料については、算出の基礎となる数値は、地域の実情によるが、その算出は適正化基準に示す内容によるものとすること。
注2 経費の決定に当たつて基礎的条件となる地域の実情をは握する場合には、基準料金の性格から、単にその地域における平均的なものとしては握するのではなく、平均以下のものも含めて一般的に認められる事情であるかどうかによつて判断すべきものであること。この場合、一般的に認められる事情が数種類あるときは、その最も低いものをとるのが妥当であると考えられること。ただし、法令(都道府県の条例、規則を含む。)により必要とされている衛生措置のために要する経費については、この法律の目的に照らして、一般的に行われていない場合であつても、積極的にこれを含めて取り扱うものとすること。
(九) 利潤率の定め方
利潤率は、全国一率に売上高の五%(売上原価に対しては、五・二六%)とすることとされており地域の実情によつてもこれを変えることはできないものであること。
(十) 現行料金との調整の仕方
(1) 以上の諸前提に基づき算定された基準料金の額がその地域における現行料金水準に比し著しく異なつている場合にはその料金水準を参酌して必要な調整を行うこととすること。この場合の調整の基本的態度としては、(イ)計算カルテル的方式における基準料金は、それ以下であつても原価プラス正常利潤を下まわらない限り営業することができることとされているが実際問題としてその額の如何は消費者に大きな影響を与えることとなるので、消費者に不当に不利益を与えることとならないものであること、(ロ)適正化規程の設定は料金の過度競争による衛生措置阻害又は健全経営阻害の事態を克服するために行われるものであり、従つて、過度競争の一態様たる料金の一般的低下の現状を背景としているのであるから、基準料金を単に現行料金に一致せしめることであつてはならないものであること。等の要件を総合的に判断して行うものとすること。
(2) 現行料金との調整は、基準料金計算により算出された基準料金の額が現行料金水準に比し高い場合にのみ行うものであること。従つて、この調整によつて算定額以上に基準料金を定めることはできないこと。
(3) 調整に当たつて参酌すべき現行料金水準は、単に調整時における現行料金水準のみでなくそれに至る推移も調査し沿革的、総合的に判断すべきものであること。
(4) 基準料金は各組合の地区ごとに算定されるものであるから、現行料金水準を参酌して行う調整もその地区ごとに行われるのが原則であるが、地区内に部分的にこれと著しく異なる料金水準が存しているときは、その地域のみについて必要な調整を行いうるものであること。この場合には、同一地区内であつても、地域により数個の基準料金が設定されるものであること。
(十一) 基準料金の額の定め方
基準料金の額は、現行の料金の額がラウンドナンバーとなつている場合でも、原則として円単位まで計算するものとすること。料金計算により銭単位まで算出されたときにはこれを四捨五入して円単位にすることが妥当と考えられること。
なお、現行の料金水準と調整を行つてラウンドナンバーとなることは差し支えないこと。
三 審査委員会の構成
組合に設置される審査委員会は、適正化基準において学識経験のある者及び組合員のうちから七名を基準として組織することとされているが、この審査委員会の中立公正な立場も確保するため人選についてあらかじめ都道府県担当部局の意見を聴くとともに学識経験ある者として任命された委員の数が組合員として任命された委員の数より少なくならないよう指導すること。この場合において学識経験ある者として任命する委員は、審査委員会における審議内容の性格から経営学、会計学等の原価計算に専門的な知識を有する者であることが望ましいこと。
四 審査委員会における審査
審査委員会における審査は、計算カルテル的方式の運用に当たつて最も重要かつ困難な問題であるので、この審査の実施に当たつては計算カルテル的方式の趣旨に反することとならないよう十分指導すること。
五 福利厚生施設に対する取扱
消費生活協同組合、農業協同組合、水産業協同組合、購買会等の福利厚生施設が環境衛生同業組合に加入している場合には、その組合の設定した適正化規程の適用を当然受けることとなるが、その性格の特殊性を十分考慮して運用を行うよう指導すること。特に、割引又は割戻等の取扱については、過度競争を激化せしめないかぎりでできるだけその実情に適合せしめることが望ましいこと。
第三 営業方法の制限
一 営業方法の制限の種類
(1) 営業方法の制限を行うことができる種類の範囲は、各業種の適正化基準に規定された種類に限られるものであること。
(2) 適正化基準に掲げられた営業方法の制限は、組合員の機能なり活動を不当に制限することとならないものについては、適正化規程の設定要件に合致する限り積極的に認めていくことが妥当であると考えられること。
二 休日及び営業時間の定め方
(1) 休日及び営業時間については、過度の競争による顧客の争奪のため著しく悪化した状況にある場合は、これを正常化することは望ましいところであるが、この内容の決定に当たつては、従業者の労働条件の改善をも考え労働基準法の規定に近づけるべきであるとともに反面急激な短縮が利用者に著しく不利益を与えることも予想されるので、これらの事情を考慮しつつ漸次正常な状態に改善していくことが妥当であること。
(2) 休日については、美容業及びクリーニング業ともに適正化基準において一週間に一日と定められているので、適正化規程ではこの制限日数を下まわることはできないが、その設定に当たつては利用者の実情に配慮するよう努めるものとすること。
(3) 営業時間については、美容業にあつては一日につき一○時間以内とし、かつ午後七時を超えてはならないこと。ただし、施術を行つている者についてはこれを超えて営業することは差し支えないこと。
三 物品の供与等
物品の供与等の制限は、本来の業務に附随するサービス及び業界の従来からの慣行その他一般社会通念からみて妥当なサービスを超えたような過剰サービスを制限する趣旨のものであるから、その内容が不当な制限とならぬよう留意すること。
四 不当な広告その他の表示
不当な広告その他の表示の制限は、公正な競争の確保に役立ち、また消費者保護の観点からも重要であるので、その実効が十分図られるよう指導すべきものであること。
第四 その他
一 過怠金
適正化規程の違反行為に対しては過怠金を課することが認められているが、この過怠金の額は、あまりに過重又は過少とならないよう留意すること。一応標準的には、実体的規定の違反に対して二○万円以下、手続的規定の違反に対して一○万円以下において組合の実状に照らして定めることが妥当であると考えられること。
二 実施期間
適正化規程の実施期間は、適正化規程の設定が過度の競争による衛生措置阻害又は健全経営阻害の事態に対する応急措置的な性格を有することにかんがみ、三年以内を妥当とすること。
三 経営措置
適正化規程の実施に当たつては、現在、基準料金以下の料金で営業を行つている組合員について、基準料金以下ではあるが原価に正常利潤を加えた額を下まわらないことの審査を行うために必要な経過期間を設けるものとすること。この期間は、基準料金の現行料金水準に占める位置等から予想される審査件数を考慮して決定するものとするが、最小限二月程度は必要であると考えられること。
なお、当該審査の申請に当たつては、適正化規程認可の日から一月以内に申請書を組合に提出させることが適当であること。
四 適正化規程の設定の認可等に関する公正取引委員会との協議については、従前通り昭和三十五年六月二十一日衛発第五五五号厚生省公衆衛生局長通知によるものであること。
五 昭和三十四年十二月二十八日衛発第一、二八七号厚生省公衆衛生局長通知及び昭和三十五年八月一日衛環発第二四号厚生省環境衛生部長通知のうち、美容業及びクリーニング業に関する部分は、これを適用しないこととすること。
六 以下に、添付する適正化規程例は、適正化規程設定に当たつて準拠すべきものであること。