アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○精神衛生法の運用上の疑義について

(昭和四三年八月三日)

(衛精第三七号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省精神衛生課長通知)

標記のことについて、文書、口頭、電話等により各県から寄せられた疑義に対し検討の結果、その質疑及び回答の要旨を条文ごとに取りまとめて別紙のとおり通知するので事務処理上の参考とされたい。

なお、本通知内容に関することで照会中のむきにあつては、本通知をもつて回答にかえることとしたいので御了知ありたい。

別紙

精 神 衛 生 法 関 係 質 疑 応 答

〔十八条関係〕

(経験年数)法第十八条に「精神障害の診断又は治療に関し少くとも三年以上の経験……」とあるが、三年とは実際の従事日数が365日×3であると解すべきか。

実質的に三年以上という意味である。

(参考)三二・二・二一衛発第一二五号

〔二十条関係〕

(選任)次の場合、家裁の選任を受けなければならないか。

 

1 両親なく兄弟三人の同順位扶養義務者がおり、うち二人(女)はすでに嫁入して他県におり、兄一人が入院患者のめんどうをみているとき。

選任を受けるべきものと解される。

2 母親と兄の扶養義務者がいる場合(入院患者は成人)

同右

3 扶養義務者間で合意をみた場合

同右

(選任)保護義務者の選任を必要とする場合病院が手続をすることになつているが、これに要する費用は誰が負担すべきか。


保護義務者の選任は必らずしも精神病院の管理者が行うべきものとされていないが親族の依頼を受けて行なつた場合は当該親族が支払うべきものと解される。

(資格)精神障害者である夫を妻(精神障害者であるが確定診断を受けていない)が同意入院させることができるか。

精神障害の程度の問題であり、場合によつては同意者になりうる。

(〃)内縁関係にある者を法第二十条に定める配偶者と解してよいか。

精神衛生法においては、内縁関係にある者を配偶者として扱つていない。

〔二十六条の二関係〕

(届出)法第二十六条の二及び第三十六条の届出は、もよりの保健所長を経て知事に届出なければならないことになつているが、もよりの保健所とは患者の住居地を管轄する保健所を指すか又は病院の所在地を管轄する保健所を指すか。なお、患者の住所地を管轄する保健所であるとすれば、保健所における管内の患者把握について好都合である。

患者の居住地及び保健所の管轄区域に関係なく病院のもよりの保健所と解する。

なお、訪問指導等のために必要な保健所管内の患者の把握については、保健所間相互の事務連絡の強化により解決されたい。

〔二十七条関係〕

(立合吏員)立合吏員は保健所における保健婦であつてもよいか(自宅鑑定時における患者の暴力行為等が憂慮されるため)

当該吏員として都道府県知事が任命することは差支えない。

(〃)政令市の職員は鑑定立合できるか。

当該吏員として道府県知事の任命がなければ立合はできない。

(調査)事前調査はただ単に障害者の所在確認程度でよいか。或いは症状の内容事実調査(実地確認)まで行なう必要があるか。

所在の確認のみならず必要に応じて実地調査も行なうべきである。

(参考)三二・三・一九衛発第二〇八号

(事務委任)政令市保健所長に対し鑑定命令権限を委譲できるか。

できない。

(診察)精神病院内において鑑定を行なう場合、最初の鑑定医は当該病院の鑑定医とすべきか、逆に当該病院の鑑定医はさけるべきか。

さけるように指導されたい。

〔二十九条関係〕

(措置)鑑定の結果要措置となつた場合は入院させることにつき、予め決裁を受けて鑑定終了と同時に要措置の場合は、入院措置してよい。

事前決裁は不可

(〃)知事が意思表示をしてから措置入院させるのであるが、知事の意思表示(決裁)は文書による表示が必要であると思われるが、その具体的方法、最も簡易にして法にふれない程度の方法如何。

文書によることは法律上の必要要件ではないが、文書によることが行政運用上望ましい。意志決定の方法は県における規則等で定めているのが通例である。

(措置)二人以上の鑑定医の診断名は必ずしも一致しなくてよいか、又要措置入院の期間にかなりの不一致があつた場合どのように取扱うべきか。

診断名は必ずしも一致しなくてもよろしい。又要措置期間の不一致も同様であるが病状報告書は短い期間により徴するようにされたい。

(〃)法第二十九条は本人にとつて医療及び保護を目的とするものであるから、不利益処分でないと解されないか。

不利益処分と解される。

(〃)法第二十九条による精神病質者を病棟内の他の患者に悪影響があることが明らかでも入院を続けさせるべきか。(法律上当然のことだが、現実には問題があるように思う。)

(護送)鑑定の結果措置入院と決定した場合、患者を病院に入院させるまでの知事の責任範囲として、知事が必ず病院まで送り届ける義務があるか。

当然入院を継続すべきである。患者護送の義務がある。

(合併症)らい患者でらい療養所入所中に措置症状を生じた場合の措置如何。

らい療養所間の移送によられたい。

〔二十九条の二関係〕

(合併症)伝染病患者が隔離施設に収容されている間に、法第二十九条の措置患者となつた場合の措置及びこれに伴う公費負担の方法(精神病院に措置されている患者が伝染病にり患した場合については三十六年十一月十三日付公衆衛生局防疫課長通知が出されている。)また、精神病院に措置入院させた場合伝染病予防法による清潔方法、消毒方法が必要となつた場合(当然しなければならない)とき。

直ちに精神病院の伝染病室に移送するものとする。この場合における費用の負担は精神衛生法により行なう。伝染病予防法による清潔方法、消毒方法に要した費用は伝染病予防法によるものとする。

〔二十九条の四関係〕

(解除)措置入院者が自傷他害のおそれがなくなつた場合「直ちにそのものを退院させなければならない。」とあるが、なお入院継続の必要(治療上)がある場合、同意入院への切替をもつて措置入院者の退院とみなしてよろしいか。

貴見のとおり

(参考四〇・八・二四衛精第二七号)

(〃)措置解除は寛解でなく、軽快でも自傷他害のおそれがなければ解除して良いか。

自傷他害のおそれがなくなれば、すみやかに措置を解除すべきである。なお、引続き医療の必要があれば同意入院、通院医療等の制度を活用すべきである。

〔二十九条の五関係〕

(病状報告)法第二十九条の五第二項による病状報告はどこまで活用してよいか。例えば同条第一項による措置症状消退届が病院の管理者から出ない場合参考に利用してよいか。

可能なかぎり十分活用されたい。

〔三十一条関係〕

(認定)資力調査に当り、生計を一にする絶対的扶養義務者の「生計を一にする」の解釈及び家族構成の調査方法如可

生計同一とは、社会生活において収入と支出を共同にして消費生活を営んでいることをいい、(①同居の事実、②消費物資の共同購入の事実、③炊事の共同家具什器の共同使用等。(注)出稼、留学、未婚の兄弟姉妹も対象)県(又は保健所)が市町村等について調査すべきものと解される。

(〃)認定の原則に当該患者と生計を一にする絶対的扶養義務者の前年分とあるが、直系血族が死亡して居ない場合、保護義務者が義父母、義兄弟姉妹の場合、収入があつても費用徴収はしなくてもよいと解されるがよいか。

民法上の扶養義務との関連もあり、個々のケースについて調査のうえ決定すべきものと解する。

(認定基準)現行の認定基準は昭和三十八年に改正され今日に至つているが、実状にそわないと思われるので、もつと合理的に改正される考えはないか。

目下検討中である。

(調定)調定時期はいつが適当か。

(〃)現行の徴収方法は事務量が多く徴収も困難であるので、結核のように病院における窓口徴収を行なうようにできないか。

(徴収)過年度の徴収未済のある絶対的扶養義務者が死亡し、保護義務者が変つた場合未済分の支払義務があるか。

医療費の請求があつた時点で調定すべきものと解される。

検討中である。

民法における相続の規定に準拠すべきものと考えられるが、実情をよく調査したうえ費用徴収をするかどうかを決定すべきである。

(〃)歳入欠損の期限を五年とする根拠(民法では十年と思うが。)

都道府県の条例により決められているものと思われる。

(減免)徴収額の減免はどのような場合に認められるか。例えば前年に所得を有し、所得税を課されていた者が退職のため現在は所得がないといつた場合、減免の対象として差支えないか。

設問の場合と逆の場合もあるので、このような状態のみで直ちに減免の対象とすることは適当でない。

(仮退院中の費用徴収)仮退院期間中の費用徴収は行なわなくともよいか。

現在のところ費用徴収を行なつているが、今後の問題として検討中である。

〔三十二条関係〕

(疾病名)通院医療費公費負担承認の病名を統一又は制限することはできないか。

病名を統一するよう検討中である。

(医療費)再診の際の内科加算は公費負担の対象となるか

健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法に基づき内科加算の認められる場合は公費負担の対象となる。

(〃)住診医療は公費負担の対象となるか。対象となる場合、住診料も算定できるか。

往診医療も公費負担の対象となる。

往診料も算定できる。

(四一・二・八衛精第七号)

(合併症)精神障害に附随する軽易な傷病は公費負担の対象になり、取扱要領によると、総合病院にあつては当該診療料、他にあつては通院医療を担当する医療担当者によつて行ない得る通院医療とあるが、精神障害とは直接関係のない傷病、例えば「風邪」などはこれに該当するか。

通院医療を担当する医療担当者(総合病院にあつては当該診療科)において行ない得る医療であれば、公費負担の対象となる。(四一・二・八衛精第七号)

(合併症)合併症の事後承認の可否

合併症(精神障害に附随する軽易な傷病)は、承認事項とはなつていない。

(手続)申請書における申請者の印は、拇印でよいか。

印鑑を使用されたい。

(変更申請、届出)承認後、住所、姓名等が変つた場合、届出書だけでよいか、(事実を証する添付書類は必要とするか。)

届出書により事実が確認できればよい。

(〃〃)治療の種類で検査の項に追加、変更等が生じた場合変更申請を必要とするか。

必要とする。

(意見書)治療の予定期間は六か月を限度とすべきか。

貴意のとおり

(外国人)外国人の場合は、外国人登録証明書を必要とするか。

法的には必要ないが、居住地、保護者等をはつきりさせておく必要がある。

〔三十九条関係〕

(軽快患者の無断離院)法第三十九条の対象者は措置患者全部に及ぶか。

入院中の患者であつて自身を傷つけ他人に害を及ぼすおそれのある者を対象とする。

(医療費)無断離院の場合、当該患者の病床が空床であり、全病床の利用率が一〇〇パーセント以下のとき、探索の結果一四日以内に発見して再収容すれば、空床中の入院時基本診療料は請求できるか。(三八・七・一八衛発第五六八号公衆衛生局長通知により一四日以内の仮退院については認められている。)

入院中の精神病患者が当該医療機関の責に帰せられないやむを得ない事情により、無届外泊又は脱走した場合で、直ちに所轄警察署に捜査保護を依頼し数日中に所在を発見して連れ戻り継続療養しているような場合には入院料を算定して差支えない。

(参考)二七・九・二九保険発二三七号二八・五・一六〃九九号

〔四十条関係〕

(許可権)知事に対する許可申請を、病院管理者の届出制にする考えはないか。

ない。

(申請)現在仮退院は、症状だけでなく家族の面会の機会をとらえて行なつているケースが多く、申請が事後になる場合の取扱如何

事前に必ず知事の許可をうけさせるよう指導すべきである。

(医療費)一四日以内に病院に復帰することが明らかな仮退院であり、当該患者の病床を空床にし、かつ、全精神病床の利用率が一〇〇パーセント以下の場合は、三十八年七月十八日付衛発第五六八号公衆衛生局長通知により空床中の入院時基本診療料は請求できることになつているが、一四日を超える仮退院許可をした場合の取扱如何。

請求できない。

〔四十一条関係〕

(引取義務)仮退院の場合など、どうしても保護義務者が引取に来ない場合、知事の許可した期日に患者を単独に院外に出してもよいか。

仮退院させることはできない。なお、引取義務を履行するよう保護義務者に対し指導されたい。

〔四十二条関係〕

(資格)現在保健所における精神衛生業務は他の事業との兼任吏員一名が相談、医療保護事業、家庭訪問を行なつている現状で、専任の保健婦とかケースワーカーを配置することは五年~一○年先の夢物語としか考えられない。そこで、応急策として現に数年の経験ある事務吏員の短期(一○~一五日)講習により資格を与え、本事業の充実をはかる考えはないか。

現行の認定講習会以外の講習は考えていないが、今後検討いたしたい。

〔四十三条関係〕

(対象者)四十年八月二十五日事務次官通知の中の訪問指導制度について、保健所長が必要と認める対象者の内、イの通院医療をうけている者(法第三十二条に該当しない者)とは、具体的にどういう対象か。又、訪問の優先順序は特に定められていないと考えてよいか。

公費負担をうけないで精神障害の通院医療をうけている者(例えば健保本人、家族等)で主治医から依頼のあつた者である。又、訪問指導の優先順序は特に定めていないが、医療を受けていない精神障害者に医療を受けさせることを優先的に公衆衛生局長通知(昭和四一年二月一一日衛発第七六号)の別紙第二の三の(1)の順序によられたい。

(対象者)同意入院退院者に対して、医師及び家族等の依頼がなくとも訪問指導の対象とすることができるか。

保健所長が特に必要と認めた場合は、訪問指導の対象とすることができる。

〔五十条の二関係〕

(対象の範囲)県及び保健所の担当職員及び精神衛生センターの職員は五十条の二に該当するか。

五十条の二には該当しない。しかしながら地方公務員法第三十四条の規制は当然うけるものであるから念のため。

(事例)警察、裁判所より照会(文書、口答)があつたとき、県及び病院は資料として提供することは法第五十条の二に抵触するか。

抵触するものと解する。ただし、法律根拠のあるもので特定者に対する文書照会についてはこの限りでないと解する。

(〃)患者が脱走し、一般に危害を加えるおそれが強いとき、一般住民に周知することは法第五十条の二に抵触するか。

設問については、警察官署等において行なうべきであると解する。

(〃)警察より措置解除者ならびに同意入院退院者の通報を求められた場合、拒否すべきであると考えられるがよろしいか。

貴見のとおり解する。

〔作業療法関係〕

(収入)作業療法の収入の帰属と処理方法について

作業療法は精神科医療の一部であり、その収入は患者に帰属するものではないと解される。

〔優生保護法関係〕

(適用範囲)外国人にも適用されるか。

適用される。

(優生手術)十二条の優生手術が「適」とされた場合、実施の期限はいつか、又いつまで有効か。

実施時期、期限等については明確に定めてないが、事柄の「重要性」からして、なるべく早く実施した方が好ましいものと解する。

(保護義務者)十二条に「精神衛生法第二十条又は二十一条の保護義務者の同意」とあるが、これは保護義務者の範囲のみをいったもので順位は医師の判断にまかされたと解せられ不都合ではないか。

設問では保護義務者の範囲のみと解されているようであるが、精神衛生法第二十条第二項には順位をも定めてある。

追加分

〔四十条関係〕

(医療費)現在仮退院中の経過観察は通院及び往診等により行ない、これに要する費用は再診料を除き公費負担の対象となっているが、より密接な経過観察を行なうため、ナイトホスピタル形式の医療行為は認められるか、又費用についてはどう算定すべきか。

現行の仮退院(法第四十条)の制度ではナイトホスピタル形式の医療行為は認められない。