添付一覧
○精神衛生法の一部改正について
(昭和二九年九月七日)
(衛発第六三九号)
(各都道府県知事あて厚生省公衆衛生局長通知)
標記については、本年九月七日厚生省発衛第二六八号厚生事務次官通達(以下「次官通知」という。)をもつて改正の趣旨が示達されたところであるが、法の施行については、昭和二十五年六月十九日厚生省発衛第一一八号事務次官通達(以下「旧通知」という。)によるの外、特に左記の点に御留意の上、今後の運用に遺憾なきを期せられたい。
記
1 一般事項について
今回の改正の趣旨は、次官通知において示されたとおり精神衛生法の保護の対象を覚せい剤、麻薬若しくはあへんの慢性中毒者(以下「慢性中毒者」という。)又はその疑のある者に及ぼしたものであり、これは現在慢性中毒者のまん延が社会問題として論ぜられている事情において緊急に採り上げられたものであるから、精神障害者の医療及び保護と同様に慢性中毒者特に覚せい剤の慢性中毒者の医療及び保護についても格段の配意を願いたいこと。
2 慢性中毒者について
慢性中毒者とは、自発的には覚せい剤、麻薬若しくはあへんの使用を止めることができないようなものをいうこと。
但し、これらの者でも精神衛生法第三条の規定による精神障害者である場合は、精神障害者として取り扱うものであること。
なお、医療及び保護を加える必要がある場合の判定は、精神衛生鑑定医又は精神専門医の診断によるものであることはいうまでもないこと。
3 通報の取扱について
精神衛生法第二十四条から第二十六条までの規定による通報がなされた場合においては、速かに第二十七条の規定による所要の措置を講ずる外、必要に応じ、本人の引取、事後の保護等につき保護義務者を指導する等適宜の措置をとられたいこと。
4 慢性中毒者の収容について
覚せい剤の慢性中毒者の収容については、病院管理の面から分散して収容することが適当であること。
5 措置入院について
慢性中毒者の措置入院の要件である「自身を傷つけ又は他人に害を及ぼす」行為の意義については、精神障害者入院措置取扱要領(昭和二十八年七月二十四日衛発第五七七号)第一を参照されたいこと。
6 非営利法人に対する補助について
非営利法人の設置する精神病院の設置費及び運営費については、今般新たにその二分の一以内を補助することとなつたが、補助はさしあたり公益法人に重点をおいて行われるものであること。
7 児童福祉法との関係
精神衛生法と児童福祉法は、旧通知において明らかなように極めて密接な関係にあるから、両法律の施行に当る行政機関、施設等が相互に協力することが最も必要であるが、特に保護指導、施設収容等については、児童福祉の面から充分考慮がなされるべきであること。
従つて、年少者で慢性中毒の比較的軽症のものについては、必要に応じ児童福祉法上の措置をとり、慢性中毒が甚だしい場合には精神病院への措置入院等精神衛生法による医療及び保護をあたえるようにされたいこと。