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○衛生事務に関する権限委任について

(昭和二八年四月九日)

(衛発第二七六号)

(各都道府県知事あて厚生省公衆衛生局長通知)

右に関する疑義について、岩手県知事から別紙1のとおり照会があつたので別紙2のとおり回答し、且つ照会事項中保健所法第三条の解釈については、法制局の意見を求めたところ別紙3のとおり回答があつたので参考までに通知する。

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別紙1

(昭和二八年二月二一日 二八医第一三六号)

(厚生省公衆衛生局長あて岩手県知事照会)

衛生事務に関する権限委任について

このことについて左記のとおり疑義を生じたので御繁忙中恐縮ながら御高見を賜わりたくお願いします。

本県においては昭和二十五年六月十五日付厚生省発衛第九十四号厚生事務次官通牒の次第もあり昭和二十四年岩手県規則第九十四号(別紙一。以下「規則」という。)をもつて制定公布した「保健所長に対する委任事項」を数次にわたり改正し現在に至つている。

(現行規則別紙二)

而して、前記次官通牒においては、委任の根拠法令として地方自治法第百五十三条第二項及び保健所法第三条を挙げているが、地方自治法第百五十三条第二項の規定は、政令市を有する都道府県知事が、その政令市の設置せる保健所に保健所法第二条に規定する事項に関する事務を委任しようとする場合にのみ適用せられるものと解せらせ、従つて政令市のない本県の場合は専ら保健所法第三条の規定に基いて委任すべきものと解している。

然るに、たまたま今回本県において食品衛生法に関する行政訴訟が提起せられ一部においては保健所法第三条の規定は明らかに「保健所」に対する委任であるとして従つて「保健所の長」のとつた行為は無効であるとの見解をもつている。

然しながら、保健所は、他の合議制の執行機関等で機関自身が自らの意志を決定し、自己の名において行為をなし得る場合と異なり、保健所がその名において行政行為をなし得る機関とも認められないから保健所法第三条の趣旨は「その長」に対してのみ保健所法第二条に規定せられた事項に関する権限を委任し得る規定であると解せられ若し前記一部の見解が正しいものとすればこれまで保健所長のとつた行政行為は一切無効となることになる。

右に対する貴局の御見解を伺いたくおつて前記訴訟事件の次回公判は来たる三月十五日なので折り返し至急御回示願います。

別紙2

(昭和二八年三月一三日 衛発第一九一号)

(岩手県知事あて厚生省公衆衛生局長回答)

衛生事務に関する知事の権限委任について

昭和二十八年二月二十一日二八医第一三六号をもつて照会の右の件について左記のとおり回答する。

1 前段について

御見込みのとおりである。

政令市を有する道府県においては、保健所法第二条に規定する事項に関する知事の事務を政令市の設置する保健所長に委任する場合は、まず地方自治法第百五十三条二項の規定に基いて当該知事から政令市長に、更に保健所法第三条の規定に基いて当該市長から保健所長に委任しなければならないからである。

政令市を有しない県において知事の権限を保健所長に委任する場合には、保健所法第三条の規定によるべきである。

2 後段について

御見込みのとおりである。

保健所法第五条は、受任者を保健所長及びその補助機関その他施設を全体として呼称する保健所と規定しているが、保健所は独任制の機関であるから、その長のみが単独に機関を構成するものである。従つて保健所法第三条の趣旨は、保健所長に対して委任し得る規定であると解すべくである。

なお、本件については目下法制局にも照会中であるから回答を得れば通知する。

別紙3

(昭和二八年三月二五日 法制局一発第二七号)

(厚生省公衆衛生局長あて内閣法制局第一部長回答)

保健所法第三条の解釈について

三月二日付衛発第一三八号をもつて照会にかかる標記の件に関し、左のとおり意見を回答する。

1 問題

都道府県知事は、保健所法第三条の規定に基いてその職権に属する事務を保健所長に委任することができるか。

2 意見

お尋ねの問題は積極に解する。

3 理由

保健所法第三条は、都道府県知事は、「その職権に属する……事務を保健所に委任することができる」と規定している。

同法によれば保健所は、地方における公衆衛生の向上及び増進を図るために設置され(第一条)、同法第二条に掲げる保健事務の指導及びこれに必要な事業を行う機関であつて、一種の営造物機関であるというべく、これをいわゆる行政庁とみることはできないから(地方自治法第百五十三条第二項参照)、保健所自体が職権委任の対象となることは、法理上考え得られないものといわなければならない。従つて保健所法第三条が、特に保健所に対する職権委任を規定した趣旨は、保健所の長たる職を占める者に対して職権委任を認めたものと解するのが相当である。