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○厚生大臣の所管に属する公益信託の引受許可審査等の基準について

(昭和五三年九月四日)

(厚生省総第二四二号)

(各内部部局の長あて厚生大臣官房長通知)

公益信託については、信託法(大正十一年法律第六十二号)が制定されて以来具体的事例は無く、このため引受けの許可及び監督の権限並びに手続きについての規定も整備されていなかつたところであるが、最近、本制度の活用の気運が高まつてきたことにかんがみ、これらの規定を整備することとし、厚生省関係許可認可等臨時措置令施行規則の一部を改正する省令が別添1のとおり厚生省令第五十九号をもつて、また、厚生大臣の所管に属する公益信託の引受けの許可及び監督に関する規則が別添2のとおり厚生省令第六十号をもつて、それぞれ本日公布、施行されたところである。

これら省令の施行に際し、「厚生大臣の所管に属する公益信託の引受許可審査等の基準」を別添のとおり定め、厚生大臣が信託法による許可及び監督を行う公益信託について適用することとしたので、その事務処理については、これにより遺憾なきを期されたい。

〔別添〕

厚生大臣の所管に属する公益信託の引受許可審査等の基準

第一 引受許可審査基準

公益信託の引受けの許可に当たつては、申請に係る公益信託が少なくとも次の各項の趣旨に沿うものであることを確認しなければならない。

1 目的について

(1) 目的とする事業が厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の規定に基づく厚生省の所管事務の範囲に属するものであること。

(2) 公益信託は、信託法第六十六条に規定する公益に関する信託であり、積極的に公益(不特定多数の者の利益)の実現を目的とするものであること。

2 事業について

公益信託の事業は、次の事項のすべてに適合していなければならないこと。

ア 当該公益信託の目的に照らし、適切な内容の事業であること。

イ 事業内容は、原則として、助成金、奨励金、寄附金等の支給又は物品の配布のような資金又は物品の給付事業であること。

ウ 事業内容が信託行為上明確にされていること。

エ 営利事業として行うことが適当と認められる性格及び内容のものでないこと。

3 名称について

公益信託の名称は、その目的及び実態を適切に表現した社会通念上妥当なものであること。したがつて、次のような名称は適当でないこと。

ア 国又は地方公共団体の機関と誤認させるおそれのある名称

イ 既存の公益法人又は公益信託と誤認させるおそれのある名称

ウ 当該公益信託の事業の範囲とかけはなれた名称

4 信託財産について

公益信託は、その目的を達成するため、健全な事業活動を継続するに必要な確固とした財政的基礎を有していること。

したがつて、信託財産については、少なくとも次の事項に適合していなければならないこと。

ア 信託期間の定めがなく、永続的に存続されようとする公益信託にあつては、引受け当初の信託財産の運用益により、その目的達成に必要な事業が遂行できること。

イ 信託財産の取崩しを内容とする公益信託にあつては、引受け当初の信託財産及びその運用益により、その目的の達成に必要な事業が存続期間を通じて遂行できること。

ウ 価値の不安定な財産又は過大な負担付財産が、相当部分を占めていないこと。

5 信託報酬について

公益信託の引受けに係る受託者への報酬については、信託行為に明確に定めるものとし、その額は、信託事務の処理に要する人件費その他必要最小限度の費用を超えないものであること。

6 機関について

(1) 公益信託は、その適正な運営を確保するため、信託管理人を置き、及び当該公益信託の事務を適正に処理するため必要な機関(以下「運営委員会等」という。)が原則として設置されなければならないこと。

(2) 受託者、信託管理人及び運営委員会等は、当該公益信託の健全かつ継続的な管理運営を可能とするようなものでなければならないこと。

したがつて、それぞれ、その職務の内容が明確にされているとともに、少なくとも次の事項に適合していなければならないこと。

ア 受託者

当該公益信託の健全かつ継続的な管理運営を行うことができる能力を有するもので、社会的信用力を有し、かつ、高度の専門知識を有するものであること。

イ 信託管理人

(ア) 当該公益信託の目的に照らして、これにふさわしい学識経験及び信用を有する者であること。

(イ) 委託者又は受託者と親族、使用人等特別の関係を有する者でないこと。

ウ 運営委員会等

(ア) 構成員は、当該公益信託の目的とする事業又は信託財産の運用について十分な学識経験を有する個人であること。

(イ) 構成員の総数の過半数が同一親族で占められていない等適切な運営が確保されるものであること。

(ウ) 構成員の多数の意思が適切に反映されるよう会議の成立要件及び議決案件が定められていること。

7 公益信託の終了の際に残存する信託財産の帰属について

公益信託の終了の際に残存する信託財産の帰属権利者を定めているときは、その規定が公益に反しないものであること。帰属権利者は、特定個人あるいは営利法人であつてはならず、国、地方公共団体又は当該公益信託と類似の目的をもつ公益信託若しくは公益法人であること。

第二 信託条項の変更認可審査基準

所管部局においては、次の事項に適合しているかどうかに留意して審査するものとする。

ア 信託条項の変更が信託行為の当時予見することができなかつた特別の事情によるものであり、かつ、当該変更に係る公益信託の目的を達成するため真にやむを得ないものであること。

イ 信託条項の変更が行われてもこの「厚生大臣の所管に属する公益信託の引受許可審査基準」の各項の趣旨に反することとならないこと。

第三 監督基準

(1) 所管部局においては、受託者が行うべき厚生大臣に対する届出及び報告について、事前に十分周知するよう指導を行うとともに、所定の期間経過後もこれらの手続きを怠つている受託者に対しては直ちにその励行を督促するものとすること。

(2) 所管部局においては、公益信託管理台帳を常備するとともに、届出、報告等のあつた事項について遅滞なく記載を行い、所管公益信託の現況が常時把握できるようにするものとすること。

(3) 所管部局においては、できるだけ定期的、計画的に所管公益信託の事務の処理及び財産の状況について実情の把握に努めるとともに、所管公益信託の適正な業務運営について必要な監督指導を行うものとすること。

(4) 受託者に信託法第四十七条に規定する解任の事由に該当する事実があると認められるときは、必要に応じた改善について行政指導を行い、その後解任期日を予告した上解任すること。この場合において、必要に応じて新受託者選任まで、信託財産の管理人を選任し、信託財産の保管及び信託事務の引継ぎに必要な行為を行わせること。