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○生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支援事業及び生活困窮者居住支援事業の全国的な実施及び支援の質の向上を図るための体制の整備等に関する指針

(令和七年三月三十一日)

(厚生労働省告示第百三十三号)

生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号)第七条第六項の規定に基づき、生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支援事業及び生活困窮者居住支援事業の全国的な実施及び支援の質の向上を図るための体制の整備等に関する指針を次のように定め、令和七年四月一日から適用することとしたので、同項の規定により、公表する。なお、生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業の適切な実施等に関する指針(平成三十年厚生労働省告示第三百四十三号)は、同年三月三十一日限り廃止する。

生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支援事業及び生活困窮者居住支援事業の全国的な実施及び支援の質の向上を図るための体制の整備等に関する指針

生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況などの多様な状況に応じた支援を行うことが必要であるところ、生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号。以下「法」という。)第七条第一項において、都道府県、市(特別区を含む。)及び福祉事務所(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所をいう。)を設置する町村(以下「都道府県等」という。)は、生活困窮者及び特定被保護者(生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十五条の十一第一項に規定する特定被保護者をいう。以下同じ。)に対し就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う生活困窮者就労準備支援事業並びに生活困窮者及び特定被保護者に対し収入、支出その他家計の状況を適切に把握すること及び家計の改善の意欲を高めることを支援するとともに、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う生活困窮者家計改善支援事業並びに生活困窮者に対する宿泊場所の供与及び食事の提供等の便宜の供与並びに生活困窮者及び特定被保護者に対する訪問による必要な情報の提供及び助言等の便宜の供与を行う生活困窮者居住支援事業のうち必要があると認めるものを行うよう努めることとされている(以下生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支援事業及び生活困窮者居住支援事業を「三事業」と総称する。)。

三事業については、生活困窮者の生活困窮状態からの脱却に向けて、その収入及び支出の両面並びに生活の基盤である住まいの面から生活を安定させるための支援を行う重要な事業であるところ、三事業の対象となる生活困窮者は都道府県等の人口の多少を問わず存在することから、その居住地にかかわらず生活困窮者が必要な支援を受けることが可能となるように体制を整備する必要がある。

生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(令和六年法律第二十一号。以下「改正法」という。)により、厚生労働大臣は、三事業の全国的な実施及び支援の質の向上を図る観点から、三事業の実施に必要な体制の整備に関する指針を公表するものとされたことを受け、本指針においては、三事業の全国的な実施に向けて、生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業(以下「両事業」という。)の全ての都道府県等における実施並びに生活困窮者居住支援事業の実施率の向上に向けた方法を示すとともに、三事業の支援の質の向上に向けて、両事業の効果的かつ効率的な実施のための方法並びに三事業におけるアウトリーチの強化及び特定被保護者に対する三事業を活用した支援等に関する留意点を示すこととする。

都道府県は、法第四条第二項第一号の規定により、市等(同条第一項に規定する市等をいう。以下同じ。)が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給、三事業並びに子どもの学習・生活支援事業その他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業(以下「各事業」と総称する。)が適正かつ円滑に行われるよう、市等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う責務を有する。特に、三事業の全国的な実施及び質の向上を目指すに当たって、都道府県においては、当該責務及び法第十条第一項に規定する事業に基づき、広域的な見地に基づく市等に対する支援の一層の促進を行うことが期待されることから、本指針においては、都道府県が市等に対する支援を行うに当たっての基本的な考え方及び方法についても示すこととする。

なお、本指針において示す事業実施の方法については、参考事例として示すものであり、都道府県等においては各々の実情に合わせた方法の個別の検討が必要であることについて留意されたい。

また、国は、法第四条第三項の規定により、都道府県等が行う各事業が適正かつ円滑に行われるよう、都道府県等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う責務を有する。各都道府県等においてその実情に応じて各事業を充実させていくため、国は、都道府県等の状況を把握するとともに、都道府県等における各事業を実施するための体制の整備及び支援の質の向上に関し、具体的な事例を含む情報の提供を行うなどの支援を行う。

第一 三事業の全国的な実施等

三事業について、都道府県等によっては、支援ニーズの多少や地域資源の偏在といった個別の事情により、事業の実施が困難として実施に至っていない実態も見受けられることから、各都道府県等において三事業の実施体制の整備等を行う際の考え方について以下のとおり示す。

一 三事業の立上げ等に当たっての考え方

1 三事業のいずれか又は全てを実施していない都道府県等においては、生活困窮者自立相談支援事業を実施する機関(以下「自立相談支援機関」という。)を始めとした関係機関等と連携し、三事業の実施に係るニーズ及び地域資源の状況について適切に把握を行うこと。

2 支援ニーズの少なさやマンパワーの不足、地域資源の不足等の事情を抱える都道府県等においても、三事業について、以下のような地域の実情に応じた柔軟な方法や既存の地域資源を活用した方法により実施することも考えられることから、これらの方法によることも含め、三事業の立上げについて積極的に検討を行うこと。また、既に三事業のいずれか又は全てを実施している都道府県等においても、支援実績が低調である場合やマンパワーが不足している場合等は、持続的な事業運営を行うため、以下のような方法に移行することも考えられる。

(1) 単一の市等による事業の実施が困難である場合は複数の市等で、更に、単一の都道府県による事業の実施が困難である場合は複数の都道府県で連携する等、広域的な事業の実施体制を整備すること。なお、広域的な事業の実施体制を整備した場合であっても、事業の実施主体はあくまで個々の市等又は都道府県であって、事業実施の判断は個別に行われるべきことに留意すること。

(2) 特定曜日のみの実施や巡回による実施、生活困窮者自立相談支援事業を始めとした他の各事業の実施体制を活用した支援、生活困窮者居住支援事業における委託料の実績払い(同事業の実施者(法第七条第三項において準用する第五条第二項の規定に基づき同事業の委託を受けた者に限る。)が生活困窮者の宿泊のための施設を借り上げる場合に、当該施設の利用の実績に応じて委託料を支払う方法をいう。)など、ニーズの多少に応じた実施方法により、限りある人員や予算の下で効率的に実施すること。

(3) 障害福祉サービス事業を行う者、消費生活相談における家計に関する相談を行う者、住宅確保要配慮者居住支援法人(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成十九年法律第百十二号)第四十条に規定する住宅確保要配慮者居住支援法人をいう。第二の三において同じ。)等に事業を委託することも含め、これらの地域資源との連携により事業を実施すること。

二 都道府県による支援

市等では、地域資源やマンパワーの不足等の事情により、単独での事業実施が困難な場合があることから、広域自治体である都道府県においては、当該都道府県の区域内においてあまねく事業が実施されるため、市等における三事業を始めとした各事業の立上げや運営に対して積極的な支援を行うことが必要である。具体的には、以下のような方法による支援が考えられる。

1 管内の市等による取組状況を把握し、好事例等について管内の他の市等に共有を図ること。

2 事業の広域的な実施体制の整備に当たっては、都道府県が中心となって複数の市等の間の調整を行うこと。その際、訪問等による実態の把握等を行うこと。

3 管内の地域資源の把握及び開拓を行い、管内の市等への共有を図ること。

第二 三事業による支援の質の向上

三事業による支援の質の向上のためには、複雑かつ複合的な課題を抱える生活困窮者に対し、包括的な支援を提供すること、また、そのために、当該生活困窮者の抱える課題や支援のニーズに応じて、関連事業や地域資源と連携しながら支援を行うことが重要であることから、その体制整備等に当たっての考え方を以下のとおり示す。

一 三事業と生活困窮者自立相談支援事業との連携に当たっての考え方

生活困窮者の抱える複雑かつ複合的な課題への対応に当たっては、生活困窮者自立支援制度の中核を担う生活困窮者自立相談支援事業が中心となり、両事業と連携しながら実施する体制を確保することが必要であり、また、生活困窮者居住支援事業を生活困窮者自立相談支援事業と連携して実施することが有効であるところ、連携に当たっての考え方を以下のとおり示す。

1 両事業及び生活困窮者自立相談支援事業の一体的な実施

両事業及び生活困窮者自立相談支援事業については、改正法により、これらの事業を一体的に行う体制を確保し、効果的かつ効率的に行うものとされた。都道府県等がこれらの事業を一体的に実施することにより、事業間の相互補完的かつ連続的な支援が可能となり、生活困窮者の自立に向けた支援をより効果的かつ効率的に行うことができる。その方法については生活困窮者自立支援法施行令(平成二十七年政令第四十号)第一条及び生活困窮者自立支援法施行規則(平成二十七年厚生労働省令第十六号)第十八条の二において規定しており、地域の実情に応じた方法により一体的な実施を確保する必要があるところ、その具体例としては以下のような方法が考えられる。都道府県等はこのような方法により、効率的な制度の運用及び支援を実施すること。なお、両事業及び生活困窮者自立相談支援事業の一体的な実施に当たっては、以下の全ての方法によらなければならないものではない。

(1) 自立相談支援機関による相談対応や法第三条第二項第三号に規定する計画((4)において「自立支援計画」という。)の作成に当たり、両事業の支援員も参画し、きめ細かな課題の洗い出しや必要な情報提供及び助言、多角的な支援方針の検討等を行うこと。

(2) 支援開始後も、生活困窮者自立相談支援事業の支援員が中心となり、両事業及び生活困窮者自立相談支援事業の支援員同士が緊密に連携し、支援対象となっている生活困窮者(以下「支援対象者」という。)の状態や支援の実施状況に関する情報を共有し、その後の支援に活かすこと。また、これらの事業の支援員が相互に支援に参画すること。

(3) 両事業における支援を行う中で、支援対象者が他の各事業又は福祉サービスその他の関連施策等による支援を利用することが望ましいと考えられる場合に、当該支援対象者を自立相談支援機関に誘導し、さらに、自立相談支援機関から他の支援の利用につなげることが可能となるよう、連携体制を整備すること。

(4) 支援会議(法第九条第一項に規定する支援会議をいう。二及び三において同じ。)又は生活困窮者自立相談支援事業において、個々の生活困窮者の自立支援計画の決定等を行い、その後の支援につなげることを目的に行う会議(三において「支援調整会議」という。)等を活用し、両事業及び生活困窮者自立相談支援事業の支援員間で情報共有等を行うこと。

2 生活困窮者居住支援事業及び生活困窮者自立相談支援事業の連携

生活困窮者居住支援事業及び生活困窮者自立相談支援事業の間においても、支援対象者に関する情報を共有する体制を確保すること等による連携が重要であり、その具体例としては以下のような方法が考えられる。

(1) 一定の住居を持たない生活困窮者に対して、法第三条第六項第一号に掲げる事業により衣食住に係る支援を行うとともに、生活困窮者自立相談支援事業と連携して就労等に向けた支援を実施すること。

(2) 現に一定の住居を有する生活困窮者であって、居住に困難を抱える者に対して、生活困窮者自立相談支援事業による相談支援を行うとともに、法第三条第六項第二号に掲げる事業により居住を安定して継続するための支援を実施すること。

(3) 生活困窮者居住支援事業による支援を行う中で、支援対象者がその他の各事業又は福祉サービスその他の関連施策等による支援を利用することが望ましいと考えられる場合に、当該生活困窮者を自立相談支援機関に誘導し、さらに、自立相談支援機関から他の支援の利用につなげることが可能となるよう、連携体制を整備すること。

二 生活困窮者を三事業の利用につなげる取組に当たっての考え方

生活困窮者に対する支援の開始に当たっては、生活困窮者からの相談を前提とするのではなく、生活困窮者の状況の把握を積極的に行い、早期かつ確実に支援につなげることが求められる。都道府県等は、改正法により新設された法第八条第一項の規定に基づき、関係機関及び関連施策との連携、支援会議の開催、居場所としての地域住民相互の交流を行う拠点との連携並びに訪問等により、潜在的な生活困窮者の積極的な把握(アウトリーチ)に努めること。また、法第八条第二項の規定に基づき、その所掌事務に関する業務の遂行に当たって生活困窮者を把握したときは、当該生活困窮者に対し、法に基づく事業の利用及び給付金の受給の勧奨等に努めること。そのため、都道府県等の各所掌事務の担当部局間での日常的な連携を図ること。

三 関連機関等との連携及び地域づくりに当たっての考え方

生活困窮者自立支援制度の基本理念である包括的な支援のためには、複雑かつ複合的な課題を抱える生活困窮者に対し、当該生活困窮者が抱える課題やニーズに応じて必要な支援を組み合わせること等によりきめ細かな支援を提供するため、三事業に限った支援を行うのではなく、各事業及び民間団体等による支援も含む関連事業と連携しながら支援を行うことや、各事業による支援の終了後も、必要な支援を地域全体で継続的に行うことが重要である。また、前述のとおり、法第八条第二項において、都道府県等が生活困窮者を把握した場合の利用勧奨等の努力義務を規定している。このように、包括的な支援の提供を行うこと及び生活困窮者を各事業の利用につなげること等の観点から、都道府県等の各所掌事務の担当部局間及び都道府県等と関係機関等との間の連携体制の構築を図ること。なお、当該連携に当たっては、他制度における支援員等による支援会議及び支援調整会議への参画や、各事業の支援員による他制度における会議体等への参画も有効である。特に、居住支援に当たっては、地域における住まいに関する専門機関と連携しながら住まいの確保につなげることが必要であることから、住宅確保要配慮者居住支援協議会(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第五十一条第一項に規定する住宅確保要配慮者居住支援協議会をいう。)への参画等による住宅部局及び福祉部局間の連携や、地域における住宅確保要配慮者居住支援法人との連携を図られたい。さらに、日頃から、地域において活動する様々な人材も含めた地域資源を把握し、必要に応じて連携が可能となるような関係構築を行うことも重要である。特に、生活困窮者就労準備支援事業においては、関係機関等とともに、就労先や就労体験先の開拓にも努めること。

四 特定被保護者に対して三事業を活用した支援を行うに当たっての考え方

生活保護制度と生活困窮者自立支援制度との間では、一方の制度から他方の制度へ移行する者が一定数存在するが、当該者に対する切れ目のない連続的な支援を可能とすることや、両制度の実施に当たり地域資源を有効に活用した事業内容の設計を行うことも、三事業による支援の質の向上のためには重要である。

このことから、改正法により、三事業について、その対象に特定被保護者を追加したところである。このため、改正法の趣旨を踏まえ、都道府県等の生活困窮者自立支援制度の担当部局及び生活保護制度の担当部局の間において、あらかじめ、三事業における特定被保護者の受入れ方法等について協議の上取決めを行うこと。また、特定被保護者による事業の利用開始後も、事業を実施する都道府県等及び保護の実施機関(生活保護法第十九条第四項に規定する保護の実施機関をいう。以下この四において同じ。)の間で十分に連携を図り、保護の実施機関は継続的にその支援に関与すること。

五 委託先選定に当たっての考え方

法において、各事業の実施は委託によることも可能としているところ、委託により事業を行う場合には、委託を受けた事業者が、事業の質の維持及び継続性の確保のために必要な能力を有することが必要であることから、委託先の選定に当たっては、以下のような点に留意すること。

1 契約期間について、事業の継続性の確保や支援の質の向上を図る観点から、複数年度にわたる契約を行うことも考えられること。

2 価格のみに限らず、応募事業者の事業内容や支援実績、支援員等の処遇に係る状況、制度及び地域の実情への理解の状況等を踏まえて選定を行うことが望ましいこと。例えば、企画提案等による評価プロセスを経て選定を行うこと等が考えられる。

なお、事業の委託先が替わった場合には、事業者間で適切な引継ぎが行われるよう、必要な支援を行うこと。

六 都道府県による研修及び支援手法に関する助言等を通じた支援員等の資質の向上等の支援に当たっての考え方

三事業を含めた各事業による支援の質の向上のため、都道府県は、各事業における支援員等に対する研修の事業を積極的に実施すること。また、支援困難事例に関する支援手法の共有など、市等の圏域を超えた支援員間の関係性作りに対する支援を行うほか、情報共有の推進、事業実施者や支援員等に対する個別のヒアリングの実施による助言にも努めること。その際、事業実施者同士の連携により事業実施者や支援員等に対する支援を行う組織の立上げを行うこと等も考えられる。