添付一覧
○医療費適正化に関する施策についての基本的な方針
(令和五年七月二十日)
(厚生労働省告示第二百三十四号)
高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八条第一項の規定に基づき、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(平成二十八年厚生労働省告示第百二十八号)の全部を次のように改正する。
医療費適正化に関する施策についての基本的な方針
目次
はじめに
第1 都道府県医療費適正化計画の作成に当たって指針となるべき基本的な事項
一 全般的な事項
1 医療費適正化計画の基本理念
(1) 住民の生活の質の維持及び向上を図るものであること
(2) 今後の人口構成の変化に対応するものであること
(3) 目標及び施策の達成状況等の評価を適切に行うものであること
2 第四期医療費適正化計画における目標
(1) 住民の健康の保持の推進に関する目標
(2) 医療の効率的な提供の推進に関する目標
3 都道府県医療費適正化計画の作成のための体制の整備
(1) 関係者の意見を反映させる場の設置
(2) 市町村との連携
(3) 保険者等との連携
(4) 医療の担い手等との連携
4 他の計画等との関係
(1) 健康増進計画との調和
(2) 医療計画との調和
(3) 介護保険事業支援計画との調和
(4) 国民健康保険運営方針との調和
5 東日本大震災等の被災地への配慮
二 計画の内容に関する基本的事項
1 住民の健康の保持の推進に関する目標に関する事項
(1) 特定健康診査の実施率に関する数値目標
(2) 特定保健指導の実施率に関する数値目標
(3) メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率に関する数値目標
(4) たばこ対策に関する目標
(5) 予防接種に関する目標
(6) 生活習慣病等の重症化予防の推進に関する目標
(7) 高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防の推進に関する目標
(8) その他予防・健康づくりの推進に関する目標
2 医療の効率的な提供の推進に関する目標に関する事項
(1) 後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進に関する数値目標
(2) 医薬品の適正使用の推進に関する目標
(3) 医療資源の効果的・効率的な活用に関する目標
(4) 医療・介護の連携を通じた効果的・効率的なサービス提供の推進に関する目標
3 目標を達成するために都道府県が取り組むべき施策に関する事項
(1) 住民の健康の保持の推進
(2) 医療の効率的な提供の推進
4 目標を達成するための保険者等、医療機関その他の関係者の連携及び協力に関する事項
5 都道府県の医療計画に基づく事業の実施による病床の機能の分化及び連携の推進の成果に関する事項
6 都道府県における医療費の調査及び分析に関する事項
7 計画期間における医療費の見込みに関する事項
8 計画の達成状況の評価に関する事項
9 その他医療費適正化の推進のために都道府県が必要と認める事項
三 その他
1 計画の期間
2 計画の進行管理
3 計画の公表
第2 都道府県医療費適正化計画の達成状況の評価に関する基本的な事項
一 評価の種類
1 進捗状況の公表
2 進捗状況に関する調査及び分析
3 実績の評価
二 評価結果の活用
1 計画期間中の見直し及び次期計画への反映
2 都道府県別の診療報酬の設定に係る協議への対応
第3 医療費の調査及び分析に関する基本的な事項
一 医療費の調査及び分析を行うに当たっての視点
二 医療費の調査及び分析に必要なデータの把握
第4 医療費適正化に関するその他の事項
一 国、都道府県、保険者等及び医療の担い手等の役割
二 国の取組
1 国民の健康の保持の推進に係る施策
2 医療の効率的な提供の推進に係る施策
三 都道府県の取組
四 保険者等の取組
五 医療の担い手等の取組
六 国民の取組
第5 この方針の見直し
はじめに
我が国は、国民皆保険の下、誰もが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた。しかしながら、急速な少子高齢化、経済の低成長、国民生活や意識の変化等医療を取り巻く様々な環境が変化してきており、国民皆保険を堅持し続けていくためには、国民の生活の質の維持及び向上を確保しつつ、今後、医療に要する費用(以下「医療費」という。)が過度に増大しないようにしていくとともに、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図っていく必要がある。
このための仕組みとして、平成18年の医療制度改革において、医療費の適正化(以下「医療費適正化」という。)を推進するための計画(以下「医療費適正化計画」という。)に関する制度が創設された。医療費適正化計画においては、国民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進に関し、都道府県における医療費適正化の推進のために達成すべき目標を定めることとされており、具体的な政策として展開することができ、かつ、実効性が期待される取組を目標の対象として設定することが重要である。
また、医療保険制度の持続可能性を高める観点から、医療費適正化の取組の推進に当たっては、国民一人一人が「自分の健康は自ら守る」と意識して行動することが重要であり、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努める必要がある。こうした中で、国民一人一人が生きがいを持ち、若年期からの健康に対する意識の向上や健康づくりに実効的に取り組めるような環境づくりも重要である。
医療費適正化計画の実効性の確保のために、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号。以下「全社法」という。)による改正後の高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。以下「法」という。)において、都道府県は、住民の高齢期における医療費適正化を図るための取組において、保険者等(保険者(法第7条第2項に規定する保険者をいう。以下同じ。)及び後期高齢者医療広域連合(法第48条に規定する後期高齢者医療広域連合をいう。以下「広域連合」という。)をいう。以下同じ。)、医療関係者その他の関係者の協力を得つつ、中心的な役割を果たすこととするとともに、保険者協議会(法第157条の2第1項の保険者協議会をいう。以下同じ。)を必置化し、保険者協議会が都道府県医療費適正化計画(法第9条第1項に規定する都道府県医療費適正化計画をいう。以下同じ。)の作成に加えて実績評価にも関与する仕組みを導入する等の改正がなされた。こうした中で、都道府県には、都道府県医療費適正化計画の目標の達成に向けて、保険者協議会等を通じて、地域の関係者と連携・協力して取り組むことが期待される。
また、地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(平成26年厚生労働省告示第354号。以下「総合確保方針」という。)においては、「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築、サービス提供人材の確保と働き方改革、限りある資源の効率的かつ効果的な活用、デジタル化・データヘルスの推進及び地域共生社会の実現が基本的な方向性として位置づけられており、総合確保方針の別添「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」においては、全国的には令和22年頃に高齢者人口がピークを迎える中で、医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者数が高止まりする一方、生産年齢人口の急減に直面するという局面において実現が期待される医療・介護提供体制の姿が提示されている。こうした中で、医療費適正化計画においても、医療DXによる医療情報の利活用等を通じ、住民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進を図るとともに、医療・介護サービスを効果的かつ効率的に組み合わせた提供の重要性に留意しつつ、計画の目標を設定していくことが求められる。その際、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(令和5年6月16日閣議決定。以下「骨太方針2023」という。)において、一人当たり医療費の地域差半減に向けて地域の実情に応じて取り組むこととされたことを踏まえ、データに基づき医療費の地域差についてその背景も含めて分析し、医療費適正化につなげ、当該地域差の縮小を目指していくことを検討していくことも重要である。
この方針は、法第8条第1項の規定に基づき、都道府県が都道府県医療費適正化計画を作成するに当たって即すべき事項を定めるとともに、都道府県医療費適正化計画の評価並びに医療費の調査及び分析に関する基本的な事項等を定めることにより、医療費適正化が総合的かつ計画的に推進されるようにすることを目的とするものである。
第1 都道府県医療費適正化計画の作成に当たって指針となるべき基本的な事項
一 全般的な事項
1 医療費適正化計画の基本理念
(1) 住民の生活の質の維持及び向上を図るものであること
医療費適正化のための具体的な取組は、第一義的には、今後の住民の健康と医療の在り方を展望し、住民の生活の質を確保・向上する形で、良質かつ適切な医療の効率的な提供を目指すものでなければならない。
(2) 今後の人口構成の変化に対応するものであること
全国で見れば、いわゆる団塊の世代が全て75歳以上となる令和7年にかけて、65歳以上人口、とりわけ75歳以上人口が急速に増加した後、令和22年に向けてその増加は緩やかになる一方で、既に減少に転じている生産年齢人口は、令和7年以降更に減少が加速する。こうした中で、人口減少に対応した全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築していくことが必要であり、医療・介護の提供体制を支える医療保険制度・介護保険制度の持続可能性を高めていくため、限りある地域の社会資源を効果的かつ効率的に活用し、医療費適正化を図っていくものでなければならない。
(3) 目標及び施策の達成状況等の評価を適切に行うものであること
目標及び施策の達成状況等については、計画の初年度と最終年度を除く毎年度、進捗状況を公表するとともに、計画の最終年度には、進捗状況の調査及び分析の結果の公表を行い、必要に応じて対策を講ずるよう努めることとしている。また、計画の最終年度の翌年度には実績に関する評価を行うこととしている。都道府県は、目標を設定した場合は、目標の達成状況及び施策の進捗状況を評価し、必要に応じて計画の見直し等に反映させなければならない。また、国は全国での取組状況を評価し、必要に応じて計画の見直し等に反映させなければならない。
2 第四期医療費適正化計画における目標
国民の受療の実態を見ると、高齢期に向けて生活習慣病の外来受療率が徐々に増加し、次に75歳頃を境にして生活習慣病を中心とした入院受療率が上昇している。不適切な食生活や運動不足等の生活習慣の継続がやがて糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満症等の発症を招き、通院及び服薬が始まり、虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症に至るという経過をたどることになる。
このことから、医療費の急増を抑えていくために重要な政策は、一つは、若い時からの生活習慣病の予防対策である。予防・健康づくりには、健康の改善により生活の質(以下この2において「QOL」という。)を向上させ、健康寿命を延ばすだけでなく、健康に働く者を増やすことで、社会保障の担い手を増やすこと、健康格差の拡大を防止することといった多面的な意義がある。例えば糖尿病が重症化して人工透析に移行した場合、頻回な治療等のためQOLが低下することに加え、多額の医療費が必要になる。生活習慣病の発症予防として、個人の生活習慣の改善を促す取組を進めることや重症化するリスクの高い医療機関未受診者等に対して医療機関の受診を勧奨し、必要な治療を行うことなど、その重症化を予防するための取組を進めることが重要である。
生活習慣病予防の対策のため、平成20年度から、特定健康診査等(特定健康診査(法第18条第1項に規定する特定健康診査をいう。以下同じ。)及び特定保健指導(法第18条第1項に規定する特定保健指導をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)の実施が保険者に義務付けられている。特定健康診査等の実施率は、年々向上してきているとはいえ、依然として目標との乖離が大きい状況にあり、引き続き、実施率を向上させるための取組を進めることが必要である。このため、令和6年度から始まる第四期の特定健康診査等実施計画(法第19条第1項に規定する特定健康診査等実施計画をいう。以下同じ。)の計画期間においては、特定保健指導にその成果が出たことを評価する評価体系(アウトカム評価)の導入、ICTの活用等により、特定健康診査等の実施率の向上を図り、更に効果的かつ効率的な取組を進めていくことが期待される。また、糖尿病の重症化予防の取組としては、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(平成28年4月策定、平成31年4月改定)に基づき、都道府県、市町村(特別区を含む。以下同じ。)をはじめとする保険者等と地域の医師会等の関係者が協働・連携し、ハイリスク者に対する受診勧奨、保健指導等の取組が進められている。
こうした国民一人一人の健康寿命延伸と適正な医療について、民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと実効的な活動を行うために、平成27年7月には、民間主導の活動体である日本健康会議が発足しており、令和3年10月に「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」を策定して、コミュニティの結びつき、一人一人の健康管理及びデジタル技術等の活用に力点を置いた予防・健康づくりを推進している。都道府県においても、こうした産学官連携の動きと連動して、市町村や保険者等の取組を推進することが重要である。
また、要介護認定率が著しく上昇する85歳以上の人口は令和7年以降も引き続き増加し、医療・介護の複合的なニーズを有する者の更なる増加が見込まれている。高齢期には生活習慣病の予防対策に併せて、心身機能の低下に起因した疾病に対する保健指導や栄養指導等を含む予防の重要性も指摘されている。特に、発症後に介護ニーズが増大する可能性のある大腿骨骨折等の入院患者数・手術件数は、高齢者人口が減少する局面においても増加することが指摘されている。医療費適正化のための取組は、医療と介護の両方に対するアプローチの重要性や心身機能の低下に起因した疾病の予防の重要性を踏まえたものとすることも必要である。
次に、今後、急速な少子高齢化の進展が見込まれる中にあっては、患者の視点に立って、どの地域の患者も、その状態像に即した適切な医療を適切な場所で受けられることを目指すことが必要であり、医療機関の自主的な取組により、医療機関の病床を医療ニーズの内容に応じて機能分化しながら、切れ目のない医療・介護を提供することにより、限られた医療資源を有効に活用することが医療費適正化の観点からも重要である。このため、病床機能の分化及び連携の推進並びに地域包括ケアシステムの構築の推進を通じ、「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築を目指すこととする。
上記に加え、第三期医療費適正化計画では、後発医薬品の使用促進について、令和5年度に使用割合を80%以上にすることを目標として取り組んできた。その後、後発医薬品の使用割合は着実に伸び続けており、こうした状況も踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定。以下「骨太方針2021」という。)においても、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」こととされた。こうした動きを踏まえ、第四期医療費適正化計画の計画期間においては、まずは医薬品の安定的な供給を基本としつつ、この方針で示す新たな数値目標を踏まえて都道府県においても数値目標を設定し、国と一体となって、後発医薬品を使用することができる環境の整備等の取組を進めることとする。
バイオ後続品は、先発バイオ医薬品とほぼ同じ有効性及び安全性を有し、安価であり、後発医薬品と同様に医療費適正化の効果を有することから、その普及を促進する必要があるが、品目により普及割合が異なり、その要因は多様である。こうした観点から、バイオ後続品の普及促進に当たっては、医療関係者や保険者等を含めた多様な主体と連携しながら取組を進めることが必要である。
第三期医療費適正化計画の計画期間においては、重複投薬の是正や医薬品の適正使用の推進等について都道府県における目標を設定し、都道府県が適切な投薬に関する普及啓発や保険者等による医療機関及び薬局と連携した訪問指導の実施を支援する等の取組を進めてきた。こうした取組に加えて、重複投薬の是正について、電子処方箋の活用推進等により更なる取組の推進を図ることや、多剤投与の是正について、複数種類の医薬品の投与については、疾病や薬の組合せ等ごとにリスク・ベネフィットが異なるため、その適否については一概に判断できない点に留意しつつ、「高齢者の医薬品適正使用の指針」(平成30年5月策定)等を踏まえ、更なる取組の推進を図ることが重要である。
また、こうした既存の目標に加えて、第四期医療費適正化計画の計画期間においては、医療資源の効果的かつ効率的な活用のための取組を進めることも重要である。急性気道感染症や急性下痢症に対する抗菌薬処方などの効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療については知見が集積されており、白内障手術及び化学療法の外来での実施状況などの医療資源の投入量については地域差があることが指摘されている。こうした医療について、地域ごとに都道府県や関係者が地域の実情を把握するとともに、適正な実施に向けた必要な取組について検討し、実施することが考えられる。また、医療と介護の連携の推進や法第125条第3項の規定に基づく高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施(以下「一体的実施」という。)など、医療と介護にまたがるアプローチの重要性を関係者が認識し、限られた医療・介護資源を組み合わせて取り組むことも重要である。
さらに、都道府県独自の判断でその他の医療費適正化に資する取組を行うことも有効である。
こうした考え方に立ち、具体的にはおおむね以下の事項について目標を定めるものとする。また、こうした目標の設定に当たっては、ロジックモデル等のツールの活用も検討するものとする。
(1) 住民の健康の保持の推進に関し、都道府県における医療費適正化の推進のために達成すべき目標(以下「住民の健康の保持の推進に関する目標」という。)
① 特定健康診査の実施率
② 特定保健指導の実施率
③ メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率
④ たばこ対策
⑤ 予防接種
⑥ 生活習慣病等の重症化予防の推進
⑦ 高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防の推進
⑧ その他予防・健康づくりの推進
(2) 医療の効率的な提供の推進に関し、都道府県における医療費適正化の推進のために達成すべき目標(以下「医療の効率的な提供の推進に関する目標」という。)
① 後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進
② 医薬品の適正使用の推進
③ 医療資源の効果的・効率的な活用
④ 医療・介護の連携を通じた効果的・効率的なサービス提供の推進
3 都道府県医療費適正化計画の作成のための体制の整備
都道府県医療費適正化計画の目標の達成に向けては、都道府県が保険者等や医療関係者等と連携し、地域の実情を踏まえて実効的な取組を推進する必要がある。全社法により、保険者協議会が必置化され、都道府県医療費適正化計画の作成に加えて実績評価にも関与する仕組みが導入されたことも踏まえ、都道府県は、都道府県医療費適正化計画の作成に当たって、保険者協議会等の場を活用し、関係者の意見を踏まえた取組を進めていくことが重要である。
(1) 関係者の意見を反映させる場の設置
都道府県医療費適正化計画の作成又は変更に当たって、外部の専門家及び関係者(学識経験者、医療関係者、保険者等の代表者等)の意見を反映するために、保険者協議会、検討会、懇談会等を開催することが望ましい。なお、この場合においては、既存の審議会等を活用しても差し支えない。
(2) 市町村との連携
市町村は、住民の健康の保持の推進に関して、健康増進の啓発事業等を実施する立場であり、また、医療と介護の連携の推進に関しては、介護保険施設その他の介護サービスの基盤整備を担う立場の一つである。地域主権の観点からも、市町村が医療費適正化の推進に積極的に関わりを持つことが期待される。このため、都道府県は都道府県医療費適正化計画を作成又は変更する過程において、関係市町村に協議する(法第9条第7項)こと等により、市町村との連携を図ることが必要である。
(3) 保険者等との連携
特定健康診査等の保健事業の実施主体である保険者等においては、特定健康診査等やレセプト情報を活用した効果的かつ効率的な保健事業を推進することとされ、各保険者等において当該事業の実施計画(以下「データヘルス計画」という。)の策定及びそれに基づく事業の実施が進められている。
また、保険者等は、加入者の立場に立って、良質な医療を効率的に提供していく観点から、医療関係者とともに、今後の医療提供体制の在り方の検討に参画していくことが期待されているところであり、都道府県が医療計画(医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項に規定する医療計画をいう。以下同じ。)を策定する際には、保険者協議会の意見を聴かなければならない(同条第17項)こととされている。
都道府県医療費適正化計画の目標の達成に向けて、都道府県域内の保険者等による保健事業の効果的かつ効率的な実施は重要であり、そうした取組が都道府県域内の保険者等の特定健康診査等実施計画やデータヘルス計画にも反映されることが望ましい。こうした中で、法第9条第7項の規定により、都道府県は都道府県医療費適正化計画を作成又は変更する際には、保険者協議会に協議しなければならないこととされており、都道府県においては、保険者協議会を通じて保険者等との連携を図ることが必要である。
(4) 医療の担い手等との連携
医療の担い手等(法第6条に規定する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手並びに医療法第1条の2第2項に規定する医療提供施設の開設者及び管理者をいう。以下同じ。)は、国、地方公共団体及び保険者等による医療費適正化や予防・健康づくりの取組に協力するとともに、患者に対して良質かつ適切な医療を提供する役割がある。
都道府県医療費適正化計画の目標のうち、特に医療の効率的な提供の推進に関する目標の達成に向けては、都道府県域内の医療の担い手等を含む関係者が地域ごとに地域の実情を把握するとともに、必要な取組について検討し、実施することが重要であり、構成員としての参画を含め、保険者協議会への医療の担い手等の参画を促進すること等を通じて、都道府県医療費適正化計画の作成又は変更においても連携を図ることが必要である。
4 他の計画等との関係
都道府県医療費適正化計画は、「住民の健康の保持の推進」と「医療の効率的な提供の推進」を主たる柱としているところ、前者は、都道府県健康増進計画(健康増進法(平成14年法律第103号)第8条第1項に規定する都道府県健康増進計画をいう。以下「健康増進計画」という。)及び都道府県介護保険事業支援計画(介護保険法(平成9年法律第123号)第118条第1項に規定する都道府県介護保険事業支援計画をいう。以下「介護保険事業支援計画」という。)と、後者は、医療計画及び介護保険事業支援計画と密接に関連する。また、都道府県は国民健康保険の財政運営の責任主体であることから、都道府県及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の運営に関する方針(国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第82条の2第1項に規定する都道府県国民健康保険運営方針をいう。以下「国民健康保険運営方針」という。)と都道府県医療費適正化計画との調和を図ることも求められる。
このため、以下のとおり、これらの計画と調和が保たれたものとすることが必要である。なお、これらの計画を含め、都道府県医療費適正化計画と関連の深い他の計画等に定める内容について、都道府県医療費適正化計画に定める内容と重複する場合には、当該計画等の関係する箇所における記述の要旨又は概要を掲載することや、都道府県医療費適正化計画と当該計画等を一体的に作成することとしても差し支えない。
(1) 健康増進計画との調和
健康増進計画における生活習慣病対策に係る目標及びこれを達成するために必要な取組の内容が、都道府県医療費適正化計画における住民の健康の保持の推進に関する目標及び取組の内容と整合し、両者が相まって高い予防効果を発揮するようにする必要がある。このため、健康増進計画の内容を都道府県医療費適正化計画に適切に反映させることが必要である。
(2) 医療計画との調和
医療計画における良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保に係る目標及びこれを達成するために必要な取組の内容と、都道府県医療費適正化計画における医療の効率的な提供の推進に関する目標及び取組の内容とが整合し、良質かつ適切な医療を効率的かつ安定的に提供する体制が実現されるようにする必要がある。このため、医療計画の内容を都道府県医療費適正化計画に適切に反映させることが必要である。
(3) 介護保険事業支援計画との調和
介護保険事業支援計画における介護給付等対象サービス(介護保険法第24条第2項に規定する介護給付等対象サービスをいう。以下同じ。)の量の見込みに関する事項、介護保険施設等の整備等に関する取組及び医療と介護の連携等に関する取組の内容と、都道府県医療費適正化計画における医療と介護の連携等に関する取組の内容とが整合し、介護給付等対象サービスを提供する体制の確保及び地域支援事業(同法第115条の45第1項に規定する地域支援事業をいう。)の実施が図られるようにする必要がある。このため、介護保険事業支援計画の内容を都道府県医療費適正化計画に適切に反映させることが必要である。
(4) 国民健康保険運営方針との調和
都道府県は、国民健康保険の安定的な財政運営及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の広域的かつ効率的な運営の推進を図るため、国民健康保険運営方針を定めることとされている。
国民健康保険運営方針においては、国民健康保険の医療費及び財政の見通しに関する事項、医療費適正化の取組に関する事項等を定めることとされており、これらの内容と、都道府県医療費適正化計画における住民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進に関する目標及び取組の内容とが整合し、国民健康保険の安定的な財政運営及び効率的な運営の推進が図られるようにする必要がある。
また、全社法により、国民健康保険運営方針において、医療費適正化の推進に関する事項を定めることが必須とされたことを踏まえ、国民健康保険運営方針の財政見通しにおいて都道府県医療費適正化計画の医療費の見込みやその推計方法を参考にすること等により、国民健康保険運営方針と都道府県医療費適正化計画との調和を図ることが望ましい。
5 東日本大震災等の被災地への配慮
東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)等の災害により被害を受けた地域においては、目標の設定等について、被災地の実態を踏まえた柔軟な対応を行うこととしても差し支えない。
二 計画の内容に関する基本的事項
1 住民の健康の保持の推進に関する目標に関する事項
第四期都道府県医療費適正化計画における住民の健康の保持の推進に関する目標としては、以下のものを定めることが望ましいと考えられる。
これらの目標については、第5に掲げるこの方針の見直しを踏まえ、必要に応じ見直しを行う。
(1) 特定健康診査の実施率に関する数値目標
特定健康診査の実施率に関する各都道府県の目標値は、第四期特定健康診査等実施計画における全国目標を踏まえて、令和11年度における当該実施率を70%以上とすることを目標とすることが考えられる。
(2) 特定保健指導の実施率に関する数値目標
特定保健指導の実施率に関する各都道府県の目標値は、第四期特定健康診査等実施計画における全国目標を踏まえて、令和11年度における当該実施率を45%以上とすることを目標とすることが考えられる。
(3) メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率に関する数値目標
① 基本的な数値目標
メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率(特定保健指導の対象者の減少率をいう。以下この①において同じ。)に関する各都道府県の目標値は、平成20年度と比べた、令和11年度時点でのメタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率を25%以上とすることを目標とすることが考えられる。
メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率は、各都道府県における平成20年度の特定保健指導対象者の推定数(同年度の年齢階層別(40歳から74歳までの5歳階級)及び性別での特定保健指導対象者が含まれる割合を、平成20年3月31日時点での住民基本台帳人口(年齢階層別(40歳から74歳までの5歳階級)及び性別)で乗じた数をいう。以下この①において同じ。)から令和11年度の特定保健指導対象者の推定数(同年度の年齢階層別(40歳から74歳までの5歳階級)及び性別での特定保健指導対象者が含まれる割合を、平成20年3月31日時点での住民基本台帳人口(年齢階層別(40歳から74歳までの5歳階級)及び性別)で乗じた数をいう。)を減じた数を、平成20年度の特定保健指導対象者の推定数で除して算出することが考えられる。
② その他の数値目標
①に加え、特定保健指導の対象者ではなく、メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率並びに非服薬者(高血圧症、脂質異常症又は糖尿病の治療に係る薬剤を服用していない者をいう。)のうちのメタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率を算出し、それぞれの推移も①と併せて見ていくことが考えられる。なお、これらの減少率も、①と同様の手法で年齢階層別に補正して算出することが考えられる。
(4) たばこ対策に関する目標
がん、循環器疾患等の生活習慣病の発症予防のためには、予防可能な最大の危険因子の一つである喫煙による健康被害を回避することが重要である。また、受動喫煙は、様々な疾病の原因となっている。こうした喫煙による健康被害を予防するためには、国だけではなく、都道府県においても禁煙の普及啓発等の取組を行うことが重要である。
このため、都道府県においては、例えば、禁煙の普及啓発施策に関する目標を設定することが考えられる。
(5) 予防接種に関する目標
疾病予防という公衆衛生の観点及び住民の健康の保持の観点から、予防接種の適正な実施が重要である。予防接種の対象者が適切に接種を受けるためには、国や市町村だけではなく、都道府県においても、関係団体との連携や予防接種の普及啓発等の取組を行うことが重要である。
このため、都道府県においては、予防接種の普及啓発施策に関する目標を設定することが考えられる。
(6) 生活習慣病等の重症化予防の推進に関する目標
生活習慣病等の症状の進展、合併症の発症等の重症化予防のためには、都道府県、市町村、保険者等及び地域の医療関係団体等が連携を図り、関係者が一体となって取組を行うことが重要である。
このため、都道府県においては、例えば、市町村や保険者等、医療関係者等との連携を図りながら行う糖尿病の重症化予防の取組や、高齢者の特性に応じた重症化予防の取組の推進に関する目標を設定することが考えられる。
(7) 高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防の推進に関する目標
高齢者に対する疾病予防・介護予防の推進に当たっては、高齢者が複数の慢性疾患を有することや、加齢に伴う身体的、精神的及び社会的な特性を踏まえることが重要である。体重や筋肉量の減少を主因とした低栄養や、口腔機能、運動機能、認知機能の低下等のフレイルなどに着目して高齢者の保健事業と介護予防を実施することや、高齢者に係る疾病の重症化予防と生活機能維持の両面にわたる課題に一体的に対応することが重要である。
このため、都道府県においては、都道府県内の健康課題や保健事業の実施状況を俯瞰的に把握できる立場であることを踏まえ、関係団体との連携を図り、広域連合と市町村による一体的実施の推進に関する目標を設定することが考えられる。
(8) その他予防・健康づくりの推進に関する目標
上記の目標以外に、健康寿命の延伸の観点から予防・健康づくりの取組を通じた住民の健康の保持の推進を図ることが重要であり、保険者等においては、データヘルス計画に基づく種々の保健事業が実施されているところである。
都道府県においても、保険者等が実施している保健事業を踏まえ、例えば、生活習慣に関する正しい知識の普及啓発、住民に対する予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組及びがん検診、肝炎ウイルス検診等の特定健康診査以外の健診・検診に関する目標を設定すること等が考えられる。
2 医療の効率的な提供の推進に関する目標に関する事項
第四期都道府県医療費適正化計画においては、病床機能の分化及び連携の推進並びに地域包括ケアシステムの構築の推進を目指すとともに、医療の効率的な提供の推進に関する目標として、以下のものを定めることが望ましいと考えられる。
これらの目標については、第5に掲げるこの方針の見直しを踏まえ、必要に応じて見直しを行う。
(1) 後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進に関する数値目標
後発医薬品については、その使用割合は数量ベースでは現行の目標である80%に達している都道府県もある一方で、金額ベースではまだ低い水準にあることや、供給不安が続いているといった課題がある。
こうした中で、国において、令和11年度末までに医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを全ての都道府県で80%以上とする主目標並びにバイオ後続品に80%以上置き換わった成分数を全体の成分数の60%以上とする副次目標及び後発医薬品の金額シェアを65%以上とする副次目標が設定されたことを踏まえ、第四期都道府県医療費適正化計画の計画期間の最終年度の令和11年度に、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを80%以上とする目標並びにバイオ後続品に80%以上置き換わった成分数を全体の成分数の60%以上とする目標及び後発医薬品の金額シェアを65%以上とする目標を設定することが考えられる。
(2) 医薬品の適正使用の推進に関する目標
今後、医療費の増大が見込まれる中では、重複投薬や多剤投与の是正等、医薬品の適正使用を推進することが重要である。このため、都道府県においては、患者や医療機関及び薬局に対する医薬品の適正使用に関する普及啓発や保険者等による医療機関及び薬局と連携した訪問指導の実施、医療機関及び薬局における重複投薬等の確認を可能とする電子処方箋のメリットの周知等による普及促進等、重複投薬の是正に関する目標を設定することが考えられる。
また、複数疾患を有する患者は、複数種類の医薬品の投与を受けている可能性が高いが、それが副作用の発生や医薬品の飲み残しなどにつながっているとの指摘がある。都道府県において、複数種類の医薬品の投与については、疾病や薬の組合せ等ごとにリスク・ベネフィットが異なるため、その適否については一概に判断できない点に留意しつつ、例えば、適切な投薬に関する普及啓発や保険者等による医療機関及び薬局と連携した服薬状況の確認及び併用禁忌の防止の取組の実施等、複数種類の医薬品の投与の適正化に関する目標を設定することが考えられる。
(3) 医療資源の効果的・効率的な活用に関する目標
急性気道感染症及び急性下痢症の患者に対する抗菌薬の処方といった効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療や白内障手術及び化学療法の外来での実施状況などの医療資源の投入量に地域差がある医療については、個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が地域の実情を把握するとともに、医療資源の効果的かつ効率的な活用に向けて必要な取組について検討し、実施していくことが重要である。リフィル処方箋については、保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施することにより活用を進める必要がある。その際、分割調剤等その他の長期処方も併せて、地域の実態を確認しながら取り組むことも重要である。このため、都道府県においては、医療資源の効果的・効率的な活用に関する目標を設定することが考えられる。
(4) 医療・介護の連携を通じた効果的・効率的なサービス提供の推進に関する目標
高齢期の疾病は、疾病の治療等の医療ニーズだけでなく、疾病と関連する生活機能の低下等による介護ニーズの増加にもつながりやすい。
このため、医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、地域の医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護を提供することが重要であることから、市町村の在宅医療・介護連携推進事業への後方支援、広域調整等の支援に関する目標を設定することが考えられる。
また、今後更なる増加が見込まれる高齢者の大腿骨骨折についても、地域の実態等を確認した上で、骨粗鬆症の把握並びにその治療の開始及び継続のための取組を進めていくことが重要である。
3 目標を達成するために都道府県が取り組むべき施策に関する事項
第四期都道府県医療費適正化計画において、1及び2で設定した目標値の達成のために、都道府県が講ずることが必要な施策としては、以下のものが考えられる。
(1) 住民の健康の保持の推進
各都道府県は、その都道府県域内で実施される特定健康診査等をはじめとする保健事業等について、保険者等、市町村等における取組やデータ等を把握し、全体を俯瞰する立場から円滑な実施を支援するとともに、自らも広報・普及啓発など住民向けの健康増進対策を実施することが必要である。また、都道府県医療費適正化計画に基づく施策の実施に関して必要があると認めるときは、保険者等の関係者に対して、都道府県ごとに組織される保険者協議会を通じて必要な協力を求め、都道府県医療費適正化計画の目標の達成に向けて、主体的な取組を行うことが必要である。
その際、全体として医療費適正化が達成されるように、例えば、特定健康診査等について、アウトカム評価の導入、ICTの活用等により実施率の向上及び更に効果的かつ効率的な取組の実施が期待されるところ、保健所から特定健康診査等の実施主体である保険者に対して、地域の疾病状況等の情報を提供するほか、特に、被用者保険の被扶養者の特定健康診査等の実施率の向上に向けて、市町村が行うがん検診等各種検診と特定健康診査等の情報を共有し、これらの同時実施等に関する効果的な周知について技術的助言を行うことが期待される。また、特定健康診査等に携わる人材育成のための研修の実施・調整、加入者の指導等の保健事業の共同実施等を行っている保険者協議会を通じた取組の推進、幼少期からの健康に関する意識の向上や市町村における先進的な取組事例等についての情報提供、都道府県自身によるデータの分析やマスメディア等を利用した健康増進に関する普及啓発等の取組を行うことが考えられる。
また、たばこ対策としては、保険者等、医療機関、薬局等と連携した禁煙の普及啓発の促進や、相談体制の整備等の取組を行うことが考えられる。
予防接種については、住民の健康意識を高めることが医療費適正化にも資するとの観点から、接種率の向上に向け、その実施主体である市町村に加えて保険者等が普及啓発等を行うことが期待されるところであり、都道府県においては、その支援を行うことが考えられる。また、感染症の発生動向の調査及び情報の公開、医療関係者との連携、都道府県内の市町村間の広域的な連携の支援等に取り組むことが考えられる。
生活習慣病の重症化予防については、より効果的かつ効率的に取組を推進するために、都道府県が市町村や保険者等、医療関係者等と連携し、また、民間事業者の活用も図りつつ、当該都道府県内において事業を横展開していくことが期待される。また、栄養指導等の高齢者の特性に応じた保健事業についても、広域連合において取組を推進するため、国としても支援することとしており、都道府県においても保険者協議会を通じて、必要に応じて支援や助言をしていくことが考えられる。
高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防については、広域連合と市町村により、一体的実施が推進されているところであり、都道府県においては、こうした取組を支援するため、専門的見地等からの支援、好事例の横展開、広域連合や国民健康保険団体連合会(国民健康保険法第45条第5項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)と連携した事業の取組結果に対する評価・分析、都道府県単位の医療関係団体等に対する広域連合と市町村への技術的な援助の要請等に取り組むことが考えられる。
その他予防・健康づくりについては、保険者等や市町村において、加入者や住民に対して、健康情報を分かりやすく伝える取組や、個人が自主的に健康づくりに取り組んだ場合等に健康器具等に還元可能なポイントを提供する等の個人の健康づくりに向けた自助努力を喚起する取組が実施されている。都道府県としても、このような予防・健康づくりの取組を推進していくため、保険者協議会を通じて、保険者等の取組の実態を把握するとともに、効果的な取組を広げていくことについて、保険者等と協力していくことが期待されている。
(2) 医療の効率的な提供の推進
① 病床機能の分化及び連携並びに地域包括ケアシステムの構築
都道府県は、都道府県医療費適正化計画において、病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえ、医療費の見込みを定めることとされている。地域における効果的かつ効率的な医療提供体制の確保のため、各都道府県において地域医療構想(医療法第30条の4第2項第7号に規定する地域医療構想をいう。以下同じ。)の取組が行われているところであり、また、病床機能の分化及び連携の推進のため、地域連携パスの整備・活用の推進などに取り組むこととされているが、これらは第四期都道府県医療費適正化計画においても、都道府県が取り組むべき施策として考えられる。
また、その際、病床機能の分化及び連携を推進するためには、まちづくりの視点にも留意しつつ、患者ができる限り住み慣れた地域で生活を継続できる体制整備を進めることが重要である。このため、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など多様な住まいの整備、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことを可能とする観点からの医療・介護サービス等の充実など、地域包括ケアシステムの構築に関する施策を都道府県医療費適正化計画に記載することが考えられる。
② 後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進
第四期都道府県医療費適正化計画においては、各都道府県が設定する後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進に関する数値目標の達成に向け、都道府県域内における後発医薬品及びバイオ後続品の使用促進策等について記載することが考えられる。こうした施策としては、例えば、後発医薬品及びバイオ後続品を医療関係者や患者が安心して使用することができるよう、医療関係者、保険者等や都道府県担当者等が参画する後発医薬品の使用促進に関する協議会を活用して、医療関係者への情報提供など都道府県域内における後発医薬品及びバイオ後続品の使用に関する普及啓発等に関する施策を策定・実施することが考えられる。また、都道府県域内の後発医薬品の薬効別の使用割合のデータ等を把握・分析することにより、使用促進の効果が確認されている差額通知の実施等の保険者等による後発医薬品の使用促進に係る取組を支援することのほか、医薬品の適正使用の効果も期待されるという指摘もあるフォーミュラリについて、都道府県域内の医療関係者に対して「フォーミュラリの運用について」(令和5年7月)の周知をはじめとした必要な取組を進めることが考えられる。また、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」(令和6年9月。以下「ロードマップ」という。)を踏まえた取組を進めることも考えられる。
③ 医薬品の適正使用の推進
重複投薬の是正は、患者にとって安全かつ効果的な服薬に資するものであり、医薬品の適正使用につながることから、都道府県医療費適正化計画において、医薬品の適正使用のための取組を記載することが考えられる。重複投薬の是正に向けた施策としては、服用薬の一元的かつ継続的な把握ができるよう、保険者協議会を通じて保険者等による重複投薬の是正に向けた取組の支援を行うことや、医療機関及び薬局における重複投薬等の確認を可能とする電子処方箋の普及促進、処方医と連携したかかりつけ薬剤師・薬局による取組の推進等を行うことが考えられる。
このほか、複数種類の医薬品の投与を受けている患者に対して、「高齢者の医薬品適正使用の指針」等を参考に、その服薬状況の分析も踏まえ、保険者協議会を通じた保険者等による医療機関及び薬局と連携した服薬状況の確認及び併用禁忌の防止の取組を促進するなど、医薬品の適正使用に係る施策を推進することも考えられる。なお、その際、施策の推進に当たっては、複数種類の医薬品の投与についての適否については、一概には判断できないため、一律に一定種類以上の医薬品の投与を是正することを目的とした取組は適当ではないことに留意しつつ、第四期都道府県医療費適正化計画の計画期間においては、「高齢者の医薬品適正使用の指針」における取扱いを踏まえ、高齢者に対する6種類以上の投与を目安として取り組むなど、取組の対象を広げることが考えられる。
④ 医療資源の効果的・効率的な活用
医療資源の効果的かつ効率的な活用については、個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があること、地域の医療提供体制の現状を踏まえると診療行為を行うことが困難であること等の事情が考えられるため、医療関係者と連携して取り組むことが重要である。都道府県は、保険者協議会等において、地域における医療サービスの提供状況を把握するとともに、住民や医療関係者に対する普及啓発等について検討し、実施することが考えられる。
効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療については、急性気道感染症や急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化に取り組むことが考えられる。抗菌薬については、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016―2020)」(平成28年4月5日国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議決定)に基づく取組によってその使用量が減少してきており、今後は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023―2027)」(令和5年4月7日国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議決定)に基づき、その適正使用に向けて更なる取組が進められていくところである。地域の抗菌薬処方の現状及び動向については、国が提供するデータに加えて、国立健康危機管理研究機構による「薬剤耐性ワンヘルス動向調査」の結果により把握することが可能であり、これを踏まえ、都道府県においては、AMR臨床リファレンスセンターが提供する資料等を活用した住民に対する抗菌薬の適正使用等に関する普及啓発や、医療関係者に対する「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」(令和元年12月)の周知等を行うことが考えられる。
医療資源の投入量に地域差のある医療については、外来での実施状況に地域差があることが指摘されている白内障手術や外来化学療法の適正化に取り組むことが考えられる。例えば、がん患者が、病態や生活背景等、それぞれの状況に応じた適切かつ安全な薬物療法を外来でも受けられるようにすることで、患者とその家族等の療養生活の質の向上につながるとともに、結果として病床のより効率的な活用にもつながることが期待されるため、専門的な治療を実施する医療従事者や外来での治療の実施に必要な施設の不足、患者の医療機関へのアクセスといった地域の実情について分析した上で、地域医療介護総合確保基金(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)第6条の基金をいう。以下同じ。)等を活用して、不足している診療科の医師確保支援、がんの医療体制における空白地域の施設・設備整備や医療機関間の役割分担の明確化及び連携体制の整備等を行うことが考えられる。また、リフィル処方箋については、保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施することにより活用を進める必要がある。その際、分割調剤等その他の長期処方も併せて、地域の実態を確認しながら取り組むことが考えられる。
⑤ 医療・介護の連携を通じた効果的・効率的なサービス提供の推進
関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、市町村においては、介護保険法に基づいて、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を推進する在宅医療・介護連携推進事業を実施している。都道府県は、保健所とともに、こうした取組を支援するため、「在宅医療・介護連携推進事業の手引き」(令和2年9月)を踏まえ、管内の課題の把握、必要なデータの分析・活用支援、管内の取組事例の横展開、関係団体との調整等に取り組むことが考えられる。
高齢者の大腿骨骨折等の骨折対策については、早期に治療を開始するための骨粗鬆症検診の受診率の向上、機能予後等を高めるための骨折手術後の早期離床の促進、介護施設等の入所者等を含めた退院後の継続的なフォローアップ、二次性骨折を予防するための体制整備等を行うことが考えられる。
これらの施策を実施する際は、関係者等の意見の把握に努め、施策の課題を抽出し、その解決に向けた目標の設定及び施策の明示、進捗状況の評価等を実施し、必要があるときは、その結果を施策に反映していくことが有効である。特に、個々の取り組むべき施策が個別目標の達成に向けてどれだけの効果をもたらしているか、施策全体として効果を発揮しているかという観点から評価を行うことが重要である。
4 目標を達成するための保険者等、医療機関その他の関係者の連携及び協力に関する事項
3に掲げた取組を円滑に進めていくために、都道府県は、住民の健康の保持の推進に関しては保険者等及び健診・保健指導機関等と、医療の効率的な提供の推進に関しては医療機関及び介護サービス事業者等と、普段から情報交換を行い、相互に連携・協力を行えるような体制づくりに努める必要がある。
こうした情報交換の場としては、保険者協議会のほか、地域・職域連携推進協議会、医療審議会等の積極的な活用が期待されるが、会議の場だけではなく様々な機会を活用して積極的に連携・協力を図ることが重要である。
特に、都道府県においては、保険者等や医療関係者等による医療費適正化の取組と連携を深めることが必要である。このため、都道府県医療費適正化計画の作成に当たっては、第1の一の3(1)の関係者の意見を反映させる場への参画を保険者等に求めることに加えて、保険者協議会の構成員の一員として運営に参画するなど、連携を深めることが望ましい。また、保険者協議会その他の機会を活用して、必要に応じて、保険者等が行う保健事業の実施状況等を把握したり、保険者等が把握している加入者のニーズ等を聴取したりするなど、積極的に保険者等と連携することが望ましい。
法第9条第9項の規定により、都道府県は、都道府県医療費適正化計画の作成及び都道府県医療費適正化計画に基づく施策の実施に関して必要があると認めるときは、保険者等、医療機関その他の関係者に対して必要な協力を求めることができることとされている。例えば、後発医薬品の使用促進のために、使用割合が低い保険者等に対して、使用割合向上のための改善策を提出するよう求めることや、急性気道感染症及び急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化のために、都道府県域内の医療関係団体に対して、医療機関に対する「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」を基本とした抗菌薬適正使用の周知の実施を求めることが考えられる。また、同条第10項の規定により、都道府県は、こうした協力要請を行う場合、保険者協議会を通じて協力を求めることができることとされている。医療費適正化の推進に向け、保険者協議会等を積極的に活用することが期待される。
また、全社法により、社会保険診療報酬支払基金(社会保険診療報酬支払基金法(昭和23年法律第129号)による社会保険診療報酬支払基金をいう。)及び国民健康保険団体連合会の目的、業務等に係る規定に、医療費適正化に資する診療報酬請求情報等の分析等が明記されたことを踏まえ、都道府県や保険者協議会は、これらの機関との連携を図ることも期待される。
5 都道府県の医療計画に基づく事業の実施による病床の機能の分化及び連携の推進の成果に関する事項
全社法において、都道府県医療費適正化計画においては、医療費の見込みの構成要素である、計画の期間において見込まれる病床の機能の分化及び連携の推進の成果に関する事項を定めることとされた。
具体的には、医療費の見込みの算定に当たって必要となる地域医療構想における将来の病床の必要量や、病床の機能の分化及び連携の推進のための施策を記載することが考えられる。なお、病床の機能の分化及び連携について、第1の二の5以外の事項において記載する場合には、当該事項において併せて記載することとしても差し支えない。
6 都道府県における医療費の調査及び分析に関する事項
都道府県は、都道府県医療費適正化計画の内容に資するよう、医療費の伸びやその構造等の要因分析を行う必要がある。詳細は第3を参照のこと。
7 計画期間における医療費の見込みに関する事項
都道府県は、各都道府県の医療費の現状に基づき、令和11年度の医療費の見込みを算出する。第四期都道府県医療費適正化計画においては、医療費の見込みの精緻化を図り、保険者等との連携を強化する観点から、医療費の見込みを制度区分別・年度別に算出し、それを基に、令和11年度の当該都道府県における市町村国民健康保険及び後期高齢者医療制度の1人当たり保険料の機械的な試算を算出することとする。
具体的な算出方法は、別紙によるものとするが、都道府県独自の合理的な方法により算出することとしても差し支えない。入院外医療費に係る見込みについては、計画最終年度に特定健康診査等の全国目標及び後発医薬品の使用割合の全国目標を達成した場合の医療費から、なお残る地域差を縮減したものとする。国は、都道府県が別紙に示す方法により医療費の見込みを推計するためのツールを提供することとし、その中で、診療報酬改定や制度改正により医療費の見込みに影響があることが見込まれる場合には、都道府県が必要に応じて計画期間中に医療費の見込みを見直すことができるようにする。
骨太方針2023において、一人当たり医療費の地域差半減に向けて地域の実情に応じて取り組むこととされている。本方針では、数値目標を定める特定健康診査等の受診率の向上及び後発医薬品の使用促進の効果を取り除いた後の都道府県別の令和11年度の一人当たり入院外医療費について、年齢調整を行い、なお残る一人当たり入院外医療費の地域差について全国平均との差を半減することをもって、地域差半減として取り扱うこととしている。入院医療費については、医療計画に基づく事業の実施による病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえて算出することとするが、地域医療構想は第四期医療費適正化計画の計画期間中の令和7年に向けて策定されているものであるため、同年以降に係る検討状況を踏まえ、第四期医療費適正化計画の計画期間中に、算出方法を見直す。
8 計画の達成状況の評価に関する事項
都道府県医療費適正化計画の進捗状況を把握するとともに、計画の達成状況に関して評価を行い、その結果をその後の取組に活かしていくため、都道府県は、計画の初年度及び最終年度を除く毎年度、進捗状況の公表を行う。また、計画の最終年度に、進捗状況の調査及び分析を行い、次期計画に適切にその結果を反映させるとともに、同年度の翌年度に計画の実績に関する評価を行う。詳細は第2を参照のこと。
9 その他医療費適正化の推進のために都道府県が必要と認める事項
都道府県医療費適正化計画においては、都道府県独自の取組を主体的に計画に位置付けることが望まれる。その場合は、関連する事業内容等について、3に準じて定めること。都道府県独自の取組を位置付けるに当たっては、都道府県が保有するデータ又は国から提供するデータを基に課題の分析を行い、取組に反映することが望まれる。
三 その他
1 計画の期間
法第9条第1項の規定により、都道府県医療費適正化計画は6年を一期とするものとされている。
2 計画の進行管理
都道府県医療費適正化計画は、計画の実効性を高めるため、計画作成、実施、点検、評価、見直し及び改善の一連の循環により進行管理をしていくこととしている。詳細は第2を参照のこと。
3 計画の公表
法第9条第8項の規定により、都道府県は、都道府県医療費適正化計画を作成したときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に提出するほか、これを公表するよう努めるものとする。
第2 都道府県医療費適正化計画の達成状況の評価に関する基本的な事項
一 評価の種類
1 進捗状況の公表
都道府県は、計画に掲げた目標の達成に向けた進捗状況を把握するため、法第11条第1項の規定により、年度(計画最終年度及び実績評価を行った年度を除く。)ごとに都道府県医療費適正化計画の進捗状況を公表するよう努めるものとする。
2 進捗状況に関する調査及び分析
都道府県は、第五期都道府県医療費適正化計画の作成に資するため、法第11条第2項の規定により、計画期間の最終年度である令和11年度に計画の進捗状況に関する調査及び分析を行い、その結果を公表するよう努めるものとする。また、都道府県は、医療費適正化基本方針の作成に資するため、当該結果を同年度の6月末日までに厚生労働大臣に報告するよう努めるものとする。
3 実績の評価
都道府県は、法第12条第1項の規定により、第四期都道府県医療費適正化計画期間終了の翌年度である令和12年度に、保険者協議会の意見を聴いた上で、目標の達成状況を中心とした実績評価を行うものとする。また、同条第2項の規定により、都道府県は、その結果を公表するよう努めるとともに、同年度の12月末日までに厚生労働大臣に報告するものとする。なお、第三期都道府県医療費適正化計画についても、第三期都道府県医療費適正化計画終了の翌年度である令和6年度に実績評価を行うことが必要であり、その内容を公表するよう努めるとともに、同年度の12月末日までに厚生労働大臣に報告するものとする。
評価に際しては、計画に定めた施策の取組状況及び目標値の達成状況並びに令和11年度の市町村国民健康保険及び後期高齢者医療制度の1人当たり保険料の機械的な試算について分析を行うことが望ましい。
二 評価結果の活用
1 計画期間中の見直し及び次期計画への反映
毎年度の進捗状況を踏まえ、計画に掲げた目標の達成が困難と見込まれる場合又は医療費が医療費の見込みを著しく上回ると見込まれる場合には、その要因を分析し、必要に応じ、当該要因を解消するために取り組むべき施策等の内容について見直しを行った上で、必要な対策を講ずるよう努めるものとする。
また、計画期間の最終年度における進捗状況に関する調査及び分析の際に、目標の達成状況について経年的に要因分析を行い、その分析に基づいて必要な対策を講ずるよう努めるとともに、第五期都道府県医療費適正化計画の作成に活用するものとする。
2 都道府県別の診療報酬の設定に係る協議への対応
法第14条第1項の規定により、厚生労働大臣は、計画期間終了の翌年度に自らが行う実績評価の結果、全国及び各都道府県における医療の効率的な提供の推進に関する目標を達成し、医療費適正化を推進するために必要と認めるときは、一の都道府県の区域内における診療報酬について、地域の実情を踏まえつつ、適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができるものとされている。
この定めをするに当たってあらかじめ行われる関係都道府県知事との協議に際しては、都道府県は自らが行った実績評価を適宜活用して対応するものとする。
第3 医療費の調査及び分析に関する基本的な事項
一 医療費の調査及び分析を行うに当たっての視点
都道府県は、医療費が伸びている要因の分析を行う必要があることから、医療費の多くを占める高齢者の医療費を中心に、全国の平均値、他の都道府県の値等との比較を行い、全国的な位置付けを把握し、医療費又は医療費の伸びが低い都道府県や近隣の都道府県との違い、その原因等を分析する必要がある。
二 医療費の調査及び分析に必要なデータの把握
都道府県は、地域内の医療費の実態を把握するため、国保データベース(KDB)等を活用し、国民健康保険の医療費に関係するデータを入手する必要がある。
国は、都道府県が行う医療費の調査及び分析において活用しやすいよう、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から、都道府県医療費適正化計画の作成、実施及び評価に資する医療費のデータ等を提供する。
第4 医療費適正化に関するその他の事項
一 国、都道府県、保険者等及び医療の担い手等の役割
医療費適正化の取組については、国、都道府県、保険者等及び医療の担い手等がそれぞれの役割の下、推進していく必要がある。また、民間主導の日本健康会議のように、保険者等や医療の担い手等を含む産官学が連携した取組の推進は重要であり、医療に携わるそれぞれの関係者の相互理解のもとに医療費適正化の取組を進めることが必要である。
二 国の取組
医療費適正化の取組に当たっては、医療保険と介護保険の制度全般を所管する国がその役割と責任を果たすことが前提であり、国は、都道府県及び保険者等による医療費適正化の取組が円滑かつ効率的に実施されるよう必要な支援を行うとともに、国民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進を図る観点から、次に掲げる施策を推進していく役割がある。
1 国民の健康の保持の推進に係る施策
国においては、保険者等における加入者の健康課題を踏まえた保健事業全般の推進を図るため、保険者等が策定するデータヘルス計画の精度を向上させるための支援等を行うとともに、特定健康診査等の予算補助や保険者努力支援制度、後期高齢者支援金の加算・減算制度等、それぞれの保険者等に対するインセンティブ制度を保険者等の特徴に応じて見直すことなど、保険者等が保健事業を実施していくための必要な環境整備を行う。
たばこ対策については、喫煙による健康被害を最小限にするために、国においても受動喫煙対策の強化、禁煙の普及啓発及び禁煙支援等の取組を行っていく。
予防接種については、予防接種に関する啓発及び知識の普及、予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保等の必要な措置、予防接種事業に従事する者に対する研修の実施等必要な措置並びに予防接種の有効性及び安全性の向上を図るために必要な調査及び研究について着実な実施を図るとともに、副反応報告制度の運用及び健康被害の救済についても円滑な運用を行う。
生活習慣病の重症化予防については、多くの保険者等で取組が推進されるよう、日本健康会議とも連携しつつ、効果的な事例の収集、取組を広げるための課題の検証や当該取組の推進方策の検討等の必要な支援を行う。また、高齢者の特性に応じた保健事業や一体的実施を推進する観点から、事業に従事する者に対する研修の実施や効果的な事例の周知等を行う。
2 医療の効率的な提供の推進に係る施策
病床機能の分化及び連携については、医療資源の効果的かつ効率的な活用を促進する観点も含め、地域医療介護総合確保基金を通じた都道府県に対する財政支援や都道府県及び市町村が医療及び介護に係る情報の分析を行うための基盤整備を行う。
また、後発医薬品の使用促進については、患者及び医療関係者が安心して後発医薬品を使用することができるよう、医療関係者等に対する啓発資料の提供や情報提供を進めるとともに、安定供給体制の確保について、医薬品の製造販売業者への指導等を行う。バイオ後続品への移行状況については成分ごとにばらつきがあり、全体では後発医薬品ほどは使用が進んでいない。このことを踏まえて、バイオ後続品の普及促進に向けてロードマップの別添「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」(令和6年9月)を示した。残薬、重複投薬、不適切な複数種類の医薬品の投与及び長期投薬を減らすための取組などの医薬品の適正使用の推進については、医療関係者や保険者等と連携し、国民に対し、かかりつけ薬剤師・薬局の必要性の周知や、処方医との連携を通じたかかりつけ薬剤師・薬局の機能強化のための支援等を行っていく。
効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療や医療資源の投入量に地域差がある医療については、エビデンス等を継続的に収集・分析し、都道府県が取り組むべき目標等の追加を検討する。
リフィル処方箋については、第1の二の2(3)「医療資源の効果的・効率的な活用に関する目標」及び第1の二の3(2)④「医療資源の効果的・効率的な活用」において、「リフィル処方箋については、保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施することにより活用を進める必要がある。」と記載されていることを踏まえたうえで、今後、具体的な指標の設定を検討し、必要な対応を速やかに行う。
三 都道府県の取組
都道府県は、地域内の医療提供体制の確保や国民健康保険の財政運営を担う役割を有することに鑑み、都道府県医療費適正化計画の目標達成に向けて、保険者等、医療関係者その他の関係者の協力を得つつ、中心的な役割を果たすことが求められる。このため、保険者協議会等を通じて、保険者等、医療関係者その他の関係者と共同で、保健事業の実施状況、医療サービスの提供の状況等を把握するとともに、都道府県医療費適正化計画の目標達成に向けて必要な取組について検討し、必要に応じて協力を求めることが重要である。具体的な取組は第1の二の3を参照のこと。
四 保険者等の取組
保険者等は、加入者の資格管理や保険料の徴収等、医療保険を運営する主体としての役割に加え、保健事業等を通じた加入者の健康管理や医療の質及び効率性向上のための医療提供体制側への働きかけを行うなど、保険者機能の強化を図ることが重要である。
具体的には、保健事業の実施主体として、特定健康診査等について、令和6年度から始まる第四期特定健康診査等実施計画の計画期間から、特定保健指導にアウトカム評価を導入することや、ICTの活用等により実施率の向上を図ることとされることを踏まえ、効果的かつ効率的な実施を図るほか、加入者の健康の保持増進のために必要な事業を積極的に推進していく役割を担い、データヘルス計画に基づく事業を実施する。
さらにその中で、日本健康会議の取組とも連動しつつ、医療関係者と連携した重症化予防に係る取組や、加入者の健康管理等に係る自助努力を支援する取組など、効果的な取組を各保険者等の実情に応じて推進していくことが期待されている。
また、後発医薬品の使用促進のため、使用促進の効果が確認されている自己負担の差額通知等の取組を推進することや、重複投薬の是正に向けた取組を各保険者等の実情に応じて行うことも期待されている。
加えて、保険者協議会において、都道府県や医療関係者等と共同で、保健事業の実施状況、医療サービスの提供の状況等を把握するとともに、都道府県医療費適正化計画の目標達成に向けて必要な取組について検討し、必要に応じて、都道府県が医療計画や都道府県医療費適正化計画の作成等を行う際に加入者の立場から意見を出すことも期待されている。
五 医療の担い手等の取組
医療の担い手等は、国、地方公共団体及び保険者等による医療費適正化や予防・健康づくりの取組に協力するとともに、良質かつ適切な医療を提供する役割がある。
保険者等が重症化予防等の保健事業を実施するに当たって、保険者等と連携した取組や病床機能の分化及び連携を進めるために、保険者協議会や協議の場(医療法第30条の14第1項に規定する協議の場をいう。)において議論を深めるとともに、そこで示されたデータを踏まえて、自らが所属する医療機関の位置付けを確認しつつ、医療機関相互の協議により、地域における病床機能の分化及び連携に応じた自主的な取組を進めていくことが期待されている。医療の担い手等がこうした取組を進めやすいよう、保険者等や都道府県においては、保険者協議会への医療関係者の参画を促進することも重要である。
また、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応や調剤に必要な体制の整備に努めること及び医師とかかりつけ薬剤師・薬局等との連携の下、一元的・継続的な薬学的管理を通じた重複投薬等の是正等の取組を行うことが期待されている。
六 国民の取組
国民は、自らの加齢に伴って生じる心身の変化等を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、OTC医薬品の適切な使用など、症状や状況に応じた適切な行動をとることが必要である。
このため、マイナポータルでの特定健康診査情報等の閲覧等により健康情報の把握に努め、保険者等の支援も受けながら、積極的に健康づくりの取組を行うことが期待されている。また、医療機関等の機能に応じ、医療を適切に受けるよう努めることが期待されている。
第5 この方針の見直し
この方針は、第四期都道府県医療費適正化計画の作成に資するよう定めたものである。この方針については、地域医療構想の策定状況、地域包括ケアシステムの構築の推進状況、医療費適正化に関する分析や取組の状況その他の事情を勘案し、必要な見直しを行うものとする。
(令6厚労告326・令7厚労告52・一部改正)
別紙
(令6厚労告12・令6厚労告326・一部改正)
標準的な都道府県医療費の推計方法
医療費の見込みを算出する際には、以下の事項を踏まえることとする。
1 基本的事項
(1) 推計期間
第四期医療費適正化計画の計画期間の最終年度(令和11年度)までとする。
(2) 推計の対象となる医療費
住民住所地別の都道府県医療費を推計の対象とし、年度別・制度区分別に算出する。
また、制度区分別の医療費の見込みを基に、計画最終年度の当該都道府県における市町村国民健康保険及び後期高齢者医療制度の1人当たり保険料を試算する。
(3) 基礎データ
都道府県医療費の推計に使用するデータは次に掲げる統計を基礎とする。
① 患者統計(厚生労働省政策統括官)
② 病院報告(厚生労働省政策統括官)
③ 医療費の動向(厚生労働省保険局)
④ 国民医療費(厚生労働省保険局)
⑤ 後期高齢者医療事業年報(厚生労働省保険局)
⑥ 国民健康保険事業年報(厚生労働省保険局)
⑦ 健康保険・船員保険事業年報(厚生労働省保険局)
⑧ 国民健康保険実態調査(厚生労働省保険局)
⑨ 後期高齢者医療制度被保険者実態調査(厚生労働省保険局)
⑩ 都道府県別将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)
⑪ その他国勢統計(総務省統計局)、推計人口(総務省統計局)等
(4) 推計の流れ
① 医療費適正化の取組を行う前の都道府県医療費の伸び率の算出
② 医療費適正化の取組を行う前の都道府県医療費の将来推計
③ 病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえた都道府県医療費の将来推計
④ 医療費適正化の取組を行った場合の効果の算出
⑤ 都道府県医療費の将来推計
⑥ 制度区分別の都道府県医療費の将来推計
⑦ 計画最終年度の市町村国民健康保険及び後期高齢者医療制度の1人当たり保険料の試算
以下①~⑦について標準的な方法を説明する。
2 医療費適正化の取組を行う前の都道府県医療費の伸び率の算出方法
将来推計においては、基準年度(令和元年度)から推計年度までの一人当たり医療費の伸び率を、過去の都道府県別の医療費を基礎として、総人口の変動、診療報酬改定及び高齢化の影響を考慮して入院外(調剤費、訪問看護療養費、療養費等を含む。以下同じ。)及び歯科別の診療種別ごとに算出する。この一人当たり医療費の伸び率の算出の考え方は次のとおりとする。
(1) 算定基礎期間
平成27年度から令和元年度まで(5年間)を算定基礎期間とする。
(2) 一人当たり医療費の伸び率の設定の考え方
入院外及び歯科別の国民医療費の伸び率から都道府県別の総人口の変動、診療報酬改定及び高齢化の影響を除去し、医療の高度化等に起因する一人当たり医療費の伸び率を算出する。これに将来の診療報酬改定及び高齢化の影響を加味し、推計年度までの伸び率とする。具体的な一人当たり医療費の伸び率の設定方法は以下のとおりとする。
① 医療の高度化等に起因する一人当たり医療費の伸び率の設定
算定基礎期間における医療費の伸び率から、人口変動率並びに(3)及び(4)において整理される診療報酬改定及び高齢化の影響を除去したものを平均し、伸び率を設定する。
なお、算定基礎期間における医療費適正化等の効果(後発医薬品の使用促進の影響)を勘案し、令和2年度から令和5年度までは上記の算定結果に対して0.34%を、令和6年度から令和11年度までは上記の算定結果に対して0.41%を加算するものとする。
② 基準年度から推計年度にかけての伸び率の設定
基準年度から推計年度までの①で算定した医療の高度化等に起因する一人当たり医療費の伸び率の累積に、(3)及び(4)において整理される診療報酬改定の影響及び診療種別ごとに算定した基準年度から推計年度までの高齢化の影響を加えて算出する。
(3) 診療報酬改定
診療報酬改定の影響は、一律に現れるものと仮定し推計に用いることとする。
診療報酬改定は、一人当たり医療費の伸び率に対して、算定基礎期間においては、平成28年度は▲1.33%、平成30年度は▲1.19%、令和元年度は▲0.07%、基準年度から推計年度にかけての期間においては、令和2年度は▲0.46%、令和3年度は▲0.9%、令和4年度は▲0.94%の影響があるものとする。
(4) 高齢化の影響
一人当たり医療費の伸び率のうち高齢化による伸び率を算出する。
具体的には、国民医療費における年齢階級別一人当たり医療費を固定し、都道府県別の年齢階級別人口が変化した場合の一人当たり医療費の伸び率により高齢化の影響を、基準年度から推計年度にかけて、入院外及び歯科別の診療種別ごとに算出する。
3 医療費適正化の取組を行う前の都道府県医療費の将来推計の方法
基準年度(令和元年度)の都道府県別の入院外及び歯科別の国民医療費を都道府県別人口で除して算出した一人当たり医療費と、2で算出した一人当たり医療費の伸び率及び都道府県別将来推計人口を用いて、次式の考え方により算出する。
医療費適正化の取組を行う前の都道府県医療費=令和元年度の一人当たり医療費×令和元年度から推計年度までの一人当たり医療費の伸び率×都道府県別将来推計人口(推計年度)
4 病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえた都道府県医療費の将来推計の方法
医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の33の2の5各号に規定する病床の機能の区分及び在宅医療等に関する区分ごとに法第16条に基づき収集するデータを用いて算出した値に、2と同様の手法で算出した入院医療費の医療の高度化等に起因する都道府県別医療費の伸び率を乗じ、それを一人当たり医療費とする。これに、地域医療構想における令和7年時点の各区分ごとの患者数をもとに都道府県別に算出した令和11年度に見込まれる各区分ごとの患者数の見込みを乗じ、精神病床、結核病床及び感染症病床に関する医療費を加え、次式により算定する。
病床機能の分化及び連携に伴う在宅医療等の増加分については、現時点では在宅医療等に移行する患者の状態等は明らかではなく医療費の推計式は示さない。なお、都道府県が独自に医療費を推計することは可能とし、今後検討が進められる当該患者の状態等や必要な受け皿などに留意しつつ、都道府県からの求めに応じ、推計方法にかかる助言等を行っていく。
病床機能の分化及び連携の推進の成果=各区分ごとの一人当たり医療費×令和11年度の各区分ごとの患者数の見込み+精神病床、結核病床及び感染症病床に関する医療費
なお、地域医療構想は第四期医療費適正化計画の計画期間中の令和7年に向けて策定されているため、同年以降に係る検討状況を踏まえ、算出方法の見直しを検討する。
5 医療費適正化の取組を行った場合の効果の算出方法及び都道府県医療費の将来推計の方法
第四期都道府県医療費適正化計画においては、健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進により達成が見込まれる医療費適正化の効果を以下に示す考え方により推計する。
また、都道府県独自の取組を行っている場合については、その取組の効果について、都道府県において必要に応じて織り込むこととされたい。
以下の(1)から(3)まで及び都道府県独自の取組において推計した推計値をもって医療費適正化の効果とする。
なお、以下で用いる令和11年度の入院外医療費は3で算出したものを用いる。
(1) 特定健康診査及び特定保健指導の実施率の向上による効果算定
令和元年度の各都道府県における40歳から74歳までの特定健康診査の対象者について、特定健康診査の実施率が70%であり、かつ、そのうち特定保健指導の対象者が17%と仮定して、特定保健指導の実施率が45%という目標を達成した場合の該当者数(以下「特定健康診査等の目標を達成した場合の特定保健指導の該当者数」という。)から、同年度の特定保健指導の実施者数を差し引いて、特定保健指導による効果額を用いて、次式により算定する。
(令和元年度における特定健康診査等の目標を達成した場合の特定保健指導の該当者数-令和元年度の特定保健指導の実施者数)×特定保健指導による効果額(平成25年度に特定保健指導を受けた者と受けていない者の令和元年度の年間平均医療費の差を用いる。ただし、都道府県独自の効果額を用いることも可能とする。)÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
(2) 後発医薬品の使用促進による効果算定
後発医薬品の使用促進による効果について、令和3年度の後発医薬品のある先発品を全て後発医薬品に置き換えた場合の効果額及び同年度の数量シェアを用いて、①の式により数量ベースでの効果額を算定するとともに、令和3年度の後発医薬品のある先発品を全て後発医薬品に置き換えた場合の効果額及び同年度の金額シェアを用いて、②の式により金額ベースでの効果額を算定した上で、いずれか大きい方の額を後発医薬品の使用促進による効果とする。
① 令和3年度の後発医薬品のある先発品を全て後発医薬品に置き換えた場合の効果額÷(1-令和3年度の数量シェア)×(使用促進策の結果として令和11年度に見込まれる数量シェア-令和3年度の数量シェア)÷令和3年度の入院外医療費の推計値×令和11年度の入院外医療費の推計値
② 令和3年度の後発医薬品のある先発品を全て後発医薬品に置き換えた場合の効果額÷(1-令和3年度の金額シェア)×(使用促進策の結果として令和11年度に見込まれる金額シェア-令和3年度の金額シェア)÷令和3年度の入院外医療費の推計値×令和11年度の入院外医療費の推計値
また、バイオ後続品の使用促進による効果については、成分ごとに、令和3年度の先発品を全てバイオ後続品に置き換えた場合の効果額及び令和3年度の数量シェアを用いて、次式により算定する。
令和3年度の当該成分の先発品を全てバイオ後続品に置き換えた場合の効果額÷(1-令和3年度の当該成分の数量シェア)×(使用促進策の結果として令和11年度に見込まれる当該成分の数量シェア-令和3年度の当該成分の数量シェア)÷令和3年度の入院外医療費の推計値×令和11年度の入院外医療費の推計値
(3) 地域差縮減に向けた取組による効果算定
骨太方針2023において、一人当たり医療費の地域差半減に向けて地域の実情に応じて取り組むこととされている。そのため、本方針では、数値目標を定める特定健康診査等の受診率の向上及び後発医薬品の使用促進の効果を取り除いた後の都道府県別の令和11年度の一人当たり入院外医療費について、年齢調整を行い、なお残る一人当たり入院外医療費の地域差について全国平均との差を半減することをもって、地域差半減として取り扱う。
地域差縮減に向けた取組として、糖尿病の重症化予防の取組の推進、医薬品の適正使用の推進及び医療資源の効果的かつ効率的な活用による効果を①から⑤までにより算定する。
① 糖尿病の重症化予防の取組の推進については、令和元年度の当該都道府県における40歳以上の糖尿病の一人当たり医療費と全国平均の一人当たり医療費との差を用いて、次式により算定する。
なお、全国平均を下回る都道府県については、例えば、全国平均を上回る都道府県の中で全国平均に近い都道府県と同等程度の効果が期待されると仮定した推計などを行うことが望ましい。
(令和元年度の当該都道府県における40歳以上の糖尿病の一人当たり医療費-令和元年度の全国平均の40歳以上の糖尿病の一人当たり医療費)÷2×令和元年度の40歳以上の人口÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
② 重複投薬の適正化については、令和元年度の3医療機関以上から同一の成分の医薬品の投与を受けている患者数を用いて、次式により算定する。
令和元年度の3医療機関以上からの重複投薬に係る調剤費等のうち、2医療機関を超える調剤費等の一人当たり調剤費等×令和元年度の3医療機関以上から重複投薬を受けている患者数÷2÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
③ 複数種類の医薬品の投与の適正化については、令和元年度の医薬品を9種類以上投与されている65歳以上の患者数と一人当たりの調剤費等を用いて、次式により算定する。
令和元年度の9種類以上の投薬を受けている65歳以上の高齢者の薬剤数が1減った場合の一人当たり調剤費等の差額×令和元年度の9種類以上の投薬を受ける65歳以上の高齢者数÷2÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
④ 効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療の適正化については、急性気道感染症及び急性下痢症の治療において処方された抗微生物薬に係る調剤費等の適正化による効果を算定する。具体的には、令和元年度の当該調剤費等を用いて、次式により算定する。
令和元年度の当該都道府県における急性気道感染症・急性下痢症患者に係る抗菌薬の調剤費等÷2÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
⑤ 医療資源の投入量に地域差がある医療の適正化については、白内障手術や化学療法の入院での実施割合の適正化による効果を算定する。具体的には、令和元年度の当該都道府県における当該割合と全国平均の当該割合の差を用いて、次式により算定する。
なお、全国平均を下回る都道府県については、例えば、全国平均を上回る都道府県の中で全国平均に近い都道府県と同等程度の効果が期待されると仮定した推計などを行うことが望ましい。
(i) 白内障手術
令和元年度の当該都道府県における白内障手術の実施件数×(令和元年度の当該都道府県における白内障手術の入院実施の割合-令和元年度の全国平均の白内障手術の入院実施の割合)÷2×令和元年度の白内障手術の入院実施と外来実施に係る1件当たりの医療費の差額÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
(ii) 化学療法
令和元年度の当該都道府県における外来化学療法の実施件数×(令和元年度の全国平均の外来化学療法の人口1人当たり実施件数÷令和元年度の当該都道府県における外来化学療法の人口1人当たり実施件数-1)÷2×令和元年度の化学療法の入院実施と外来実施に係る1件当たり医療費の差額÷令和元年度の入院外医療費×令和11年度の入院外医療費の推計値
6 制度区分別の都道府県医療費の将来推計の方法
制度区分別の医療費の見込みについては、計画期間中の各年度の医療保険に係る都道府県医療費の推計値に、都道府県別将来推計人口等を用いて推計した制度区分別の加入者数を基に算出した制度区分別の医療費割合を乗じて算出する。具体的な算出方法は以下のとおりとする。
(1) 基準年度(令和元年度)の医療保険に係る都道府県医療費の推計
① 後期高齢者医療制度
後期高齢者医療事業年報の都道府県別のデータが住民住所地別になっているため、これを後期高齢者医療に係る都道府県医療費とする。
② 市町村国民健康保険
国民健康保険事業年報の都道府県別のデータが住民住所地別になっているため、これを市町村国民健康保険に係る都道府県医療費とする。
③ 被用者保険等(国民健康保険組合を含む。以下同じ。)
医療費の動向(医療保険医療費)の医療機関の所在地別医療費(被用者保険に係るものに限る。以下同じ。)を基に、患者統計の住民の住所地別の患者数(被用者保険に係るものに限る。以下同じ。)を医療機関の所在地別の患者数(被用者保険に係るものに限る。以下同じ。)で除した率等を用いて次式により算出する。
被用者保険に係る住民の住所地別医療費=医療機関の所在地別医療費×α(延べ患者数の変換率)×β(一日当たり医療費の変換率)
α=住民の住所地別の患者数÷医療機関の所在地別の患者数
β=住民の住所地別の一日当たり医療費÷医療機関の所在地別の一日当たり医療費
※ αは患者統計のデータ、βは市町村国民健康保険のデータを代用して算出
さらに、被用者保険に係る住民の住所地別医療費に一律の補正率を乗じて、被用者保険の医療費の総計が健康保険・船員保険事業年報と一致するように推計する。
国民健康保険組合については、国民健康保険事業年報に都道府県別のデータが無いため、医療費の動向(医療保険医療費)の国民健康保険組合の都道府県別データを基に、上式と同様に算出した国民健康保険組合に係る住民の住所地別医療費に一律の補正率を乗じて、国民健康保険組合の医療費の総計が国民健康保険事業年報と一致するように推計する。
(2) 計画期間中の各年度の医療保険に係る都道府県医療費の推計
(1)において算出した基準年度(令和元年度)の医療保険に係る都道府県医療費と、2から5までにおいて算出した各年度の都道府県医療費の推計値を用いて、医療費適正化の取組を行わなかった場合及び行った場合のそれぞれについて、次式により算出する。
令和元年度の医療保険に係る都道府県医療費÷令和元年度の都道府県医療費×医療費適正化の取組を行わなかった場合又は行った場合の各年度の都道府県医療費の推計値
(3) 各年度の制度区分別の医療費割合の推計
① 各年度の制度区分別の加入者数の推計
後期高齢者医療制度及び市町村国民健康保険の加入者数は、後期高齢者医療制度被保険者実態調査及び国民健康保険実態調査における令和4年度の都道府県別・年齢階級別の加入者数に、都道府県別将来推計人口等を用いて年齢階級別に推計した人口の伸び率を乗じて算出する。
被用者保険等の加入者数は、各年度の都道府県別将来推計人口から後期高齢者医療制度及び市町村国民健康保険の加入者数を減ずることによって算出する。
② 各年度の制度区分別の医療費割合の推計
人口構成の変化等を踏まえて推計した各年度における制度区分別の一人当たり医療費の全国平均に①で推計した各制度区分の加入者数を乗じて得た値の比により、各年度の医療保険に係る都道府県医療費の全体に対して各制度区分の都道府県医療費が占める割合を推計する。
7 計画最終年度の市町村国民健康保険及び後期高齢者医療制度の1人当たり保険料の試算の方法
各制度について、足下(令和5年度)の1人当たり保険料に、計画期間中に見込まれる1人当たり保険料の伸び率の推計値を乗じた額に、制度改正による1人当たり保険料への影響額を加えて算出する。具体的な算出方法は以下のとおりとする。
(1) 足下の1人当たり保険料
後期高齢者医療制度については、当該都道府県における令和4年度及び令和5年度の1人当たり平均保険料額を、市町村国民健康保険については、当該都道府県における令和5年度の保険料額(基礎分)を用いることとする。
(2) 計画期間中の1人当たり保険料の伸び率の推計
各制度について、計画期間中に見込まれる所要保険料の伸び率を、計画期間中に見込まれる加入者数の伸び率で除して算出する。それぞれの具体的な算出方法は以下のとおりとする。
① 所要保険料の伸び率
計画期間中の所要保険料の伸び率は、令和11年度の所要保険料の見込みを令和5年度の所要保険料の見込みで除して推計する。
各年度の所要保険料の見込みは、各年度の制度区分別の都道府県医療費の推計値に、人口構成の変化等を踏まえて推計した各年度における医療費に対する所要保険料の割合を乗じることで算出する。具体的には、後期高齢者医療制度については、令和5年度に0.0786、令和11年度に0.0942を、市町村国民健康保険については、令和5年度に0.1797、令和11年度に0.1843を乗ずるものとする。
② 加入者数の伸び率
6の(3)の①において算出した各制度の令和11年度の加入者数の推計値を令和5年度の加入者数の推計値で除して算出する。
(3) 制度改正による1人当たり保険料への影響
医療費の伸び以外の制度改正による1人当たり保険料の増減を推計する。
具体的には、令和6年度から後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みが導入されることを踏まえ、令和11年度の1人当たり保険料として後期高齢者医療制度については110円(月額)を加え、市町村国民健康保険については10円(月額)を減ずるものとする。
附 則 (令和六年一月一七日厚生労働省告示第一二号)
この告示は、令和六年四月一日から適用する。ただし、第二条の規定は、告示の日から適用する。
附 則 (令和七年三月七日厚生労働省告示第五二号) 抄
(適用期日)
1 この告示は、令和七年四月一日から適用する。