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○国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針

(令和五年五月三十一日)

(厚生労働省告示第二百七号)

健康増進法(平成十四年法律第百三号)第七条第一項の規定に基づき、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(平成二十四年厚生労働省告示第四百三十号)の全部を次のように改正し、令和六年四月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針

国民誰もが、より長く元気に暮らしていくための基盤として、健康の重要性はより高まってきており、平時から個人の心身の健康を保つため、健康づくりの取組を更に強化していくことが求められる。

我が国では、基本的な法制度の整備や仕組みの構築、地方公共団体、保険者、企業、教育機関、民間団体等の多様な主体による取組に加え、データヘルス・ICTの利活用、社会環境整備、ナッジやインセンティブ等の新しい要素を取り入れた取組等の諸活動の成果により、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいう。以下同じ。)は着実に延伸してきた。

一方で、平成25年度から令和5年度までの「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本21(第二次))」(以下「健康日本21(第二次)」という。)においては、主に一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病(NCDs(非感染性疾患をいう。以下同じ。))の発症を予防することをいう。)に関連する指標が悪化している、一部の性・年齢階級について悪化している指標が存在する等の課題が指摘され、また、健康増進に関連するデータの見える化・活用や国及び地方公共団体におけるPDCAサイクルの推進が不十分であること等の課題が指摘されている。

また、少子化・高齢化による総人口・生産年齢人口の減少、独居世帯の増加、女性の社会進出、労働移動の円滑化、仕事と育児・介護との両立、多様な働き方の広まり、高齢者の就労拡大等による社会の多様化、あらゆる分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、次なる新興感染症も見据えた新しい生活様式への対応の進展等の社会変化が予想されている。

これらを踏まえ、この方針は、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現に向け、誰一人取り残さない健康づくりの展開(Inclusion)とより実効性をもつ取組の推進(Implementation)を通じて、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な事項を示し、令和6年度から令和17年度までの「二十一世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本21(第三次))」を推進するものである。

第一 国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向

一 健康寿命の延伸と健康格差の縮小

全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現のため、個人の行動と健康状態の改善に加え、個人を取り巻く社会環境の整備やその質の向上を通じて、健康寿命の延伸及び健康格差(地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差をいう。以下同じ。)の縮小を実現する。その際、個人の行動と健康状態の改善とそれらを促す社会環境の質の向上との関係性を念頭に取組を進める。なお、個人の行動と健康状態の改善のみが健康寿命の延伸・健康格差の縮小につながるわけではなく、社会環境の質の向上自体も健康寿命の延伸・健康格差の縮小のための重要な要素であることに留意が必要である。

二 個人の行動と健康状態の改善

国民の健康増進を推進するに当たっては、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠、飲酒、喫煙及び歯・口くうの健康に関する生活習慣の改善(リスクファクターの低減)に加え、これらの生活習慣の定着等による生活習慣病(NCDs)の発症予防及び合併症の発症や症状の進展等の重症化予防に関し、引き続き取組を進める。

一方で、生活習慣病(NCDs)に患せずとも、日常生活に支障を来す状態となることもある。ロコモティブシンドローム(運動器症候群をいう。以下同じ。)、やせ、メンタル面の不調等は生活習慣病(NCDs)が原因となる場合もあるが、そうでない場合も含めてこれらを予防することが重要である。また、既にがん等の疾患を抱えている人も含め、「誰一人取り残さない」健康づくりの観点から、生活習慣病(NCDs)の発症予防及び重症化予防だけではない健康づくりが重要である。これらを踏まえ、生活機能の維持・向上の観点も踏まえた取組を推進する。

三 社会環境の質の向上

健康日本21(第二次)の期間中の動向も踏まえ、関係省庁とも連携しつつ、取組を進める。

就労、ボランティア、通いの場等の居場所づくりや社会参加の取組に加え、各人がより緩やかな関係性も含んだつながりを持つことができる環境整備や、こころの健康を守るための環境整備を行うことで、社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上を図る。

健康な食環境や身体活動・運動を促す環境をはじめとする自然に健康になれる環境づくりの取組を実施し、健康に関心の薄い者を含む幅広い対象に向けた健康づくりを推進する。

誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備として、保健・医療・福祉等へのアクセスの確保に加え、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)をはじめとする自らの健康情報を入手できるインフラの整備、科学的根拠に基づく健康に関する情報を入手・活用できる基盤の構築や、周知啓発の取組を行うとともに、多様な主体が健康づくりに取り組むよう促す。

四 ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり

社会がより多様化することや、人生100年時代が本格的に到来することを踏まえれば、一から三までに掲げる各要素を様々なライフステージ(乳幼児期、青壮年期、高齢期等の人の生涯における各段階をいう。以下同じ。)において享受できることがより重要であり、各ライフステージに特有の健康づくりについて、引き続き取組を進める。

加えて、現在の健康状態は、これまでの自らの生活習慣や社会環境等の影響を受ける可能性や、次世代の健康にも影響を及ぼす可能性があるものである。これらを踏まえ、ライフコースアプローチ(胎児期から高齢期に至るまでの人の生涯を経時的に捉えた健康づくりをいう。以下同じ。)について、健康づくりに関連する計画等とも連携しつつ、取組を進める。

第二 国民の健康の増進の目標に関する事項

一 目標の設定と評価

国は、全国的な目標を設定し、広く国民や関係者に対してその目標を周知するとともに、継続的に指標の推移等の調査及び分析を行い、その結果に関する情報を国民や関係者に還元することにより、関係者をはじめ広く国民一般の意識の向上を図り、及び自主的な取組を支援するものとする。

国が具体的な目標を設定するに当たっては、健康に関する科学的根拠に基づくこととし、実態の把握が継続的に可能なものとする。

また、具体的な目標は、計画期間における諸活動の達成状況の評価を目的として設定すべきであり、かつ、評価を行う時点で実際に到達したかどうか確認できるものが望ましいことから、具体的な目標については、計画開始後のおおむね9年間(令和14年度まで)を目途として設定することとする。

計画開始後6年(令和11年度)を目途に全ての目標について中間評価を行うとともに、計画開始後10年(令和15年度)を目途に最終評価を行うことにより、目標を達成するための諸活動の成果を適切に評価し、その後の健康増進の取組に反映する。中間評価及び最終評価の際に用いる比較値(以下「ベースライン値」という。)については、令和6年度までの最新値とする。

中間評価や最終評価等の事後的な実態把握のため、具体的な目標の設定に当たっては、公的統計等をデータソースとする。

二 目標設定の考え方

1 健康寿命の延伸と健康格差の縮小

健康寿命については、学術的に概念や算定方法が一定程度確立していること、令和22年までの健康寿命の延伸目標が定められていること、国民の認知度が高いこと等を踏まえ、健康日本21(第二次)から引き続き健康寿命の延伸を実現されるべき最終的な目標とする。また、社会環境の質の向上等を通じて、各生活習慣等についての格差を縮小することで、健康寿命の地域格差の縮小も目指す。具体的な目標は、別表第一のとおり設定する。

2 個人の行動と健康状態の改善

(一) 生活習慣の改善

栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する目標は、それぞれ次の考え方に基づき、別表第二のとおり設定する。

栄養・食生活は、生活習慣病(NCDs)の予防のほか、生活機能の維持・向上の観点からも重要である。目標は、適正体重の維持に加え、適切な食事として、バランスの良い食事を摂っている者の増加、野菜摂取量の増加、果物摂取量の改善及び食塩摂取量の減少について設定する。

身体活動・運動は、生活習慣病(NCDs)の予防のほか、生活機能の維持・向上の観点からも重要である。目標は、次世代を含む運動習慣の定着及び身体活動量の増加について設定する。

休養・睡眠については、これらを日常生活に適切に取り入れることが、心身の健康の観点から重要である。目標は、十分な睡眠による休養の確保、睡眠時間の確保及び労働時間の縮減について設定する。

飲酒は、生活習慣病(NCDs)をはじめとする様々な健康障害のリスク要因となり得るのみならず、事故等の社会的な問題の要因となり得る。目標は、生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量を飲酒している者の減少及び20歳未満の者の飲酒の防止について設定する。

喫煙は、がん、循環器病、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患をいう。以下同じ。)等の予防可能な危険因子であり、喫煙による健康被害を回避することが重要である。目標は、20歳以上の者の喫煙の減少、20歳未満の者の喫煙及び妊娠中の喫煙の防止について設定する。

歯・口腔の健康については、これが社会生活の質の向上に寄与すること等の観点から、歯科疾患の予防や口腔機能の獲得・維持・向上等の歯・口腔の健康づくりが重要である。目標は、歯周病予防、よく噛んで食べることができる者の増加及び歯科検診の受診者の増加について設定する。

(二) 生活習慣病(NCDs)の発症予防・重症化予防

高齢化に伴い生活習慣病(NCDs)の有病者数の増加が見込まれており、その対策は国民の健康寿命の延伸を図る上で引き続き重要な課題である。このため、生活習慣の改善等により多くが予防可能であるがん、循環器病、糖尿病及びCOPDに関する目標を別表第二のとおり設定する。なお、国際的には、これら4つの疾患は重要なNCDsとして捉えられ、予防及び管理のための包括的な対策を講ずることが重視されている。

がんは、我が国の主要な死因であり、禁煙等の生活習慣の改善を通じた予防等に取り組むことで、罹患率・死亡率の減少を目標とする。加えて、早期発見を促すために、がん検診の受診率の向上を目標とする。

循環器病は、我が国の主要な死因であり、脳血管疾患及び心疾患の発症の危険因子となる高血圧の改善、脂質高値の減少、これらの疾患による死亡率の減少等を目標とする。

糖尿病は、患者数が多く、重大な合併症を引き起こすおそれがあり、発症予防や重症化予防が重要である。このため、有病者の増加の抑制、血糖値の適正な管理、治療中断者の減少及び合併症の減少を目標とする。

また、循環器病及び糖尿病の発症予防・重症化予防のため、メタボリックシンドローム、特定健康診査及び特定保健指導に関する目標を設定する。

COPDは、喫煙が最大の発症要因であるため、禁煙による予防が効果的であるとともに、早期発見が重要である。予防・早期発見を通じ、死亡率の減少を目標とする。

(三) 生活機能の維持・向上

健康寿命の延伸を実現するには、生活習慣病(NCDs)の予防とともに、心身の健康を維持し、生活機能を可能な限り向上させることが重要である。身体の健康に関連し、ロコモティブシンドロームの予防や骨粗しよう症検診についての目標を、こころの健康に関連し、うつや不安の軽減に関する目標を設定する。

これらの具体的な目標は、別表第二のとおり設定する。

3 社会環境の質の向上

以下に示す各目標の達成を通じて、個人の行動と健康状態の改善を促し、健康寿命の延伸を図る。具体的な目標は、別表第三のとおり設定する。

(一) 社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上

社会とのつながりについては、ソーシャルキャピタルの醸成が健康に影響するとされている。このため、地域の人々とのつながりや様々な社会参加を促すことを目標として設定する。

また、関連する栄養・食生活分野の目標として、地域等で共食している者の増加を設定する。

加えて、こころの健康について、地域や職域等様々な場面で課題の解決につながる環境整備を行うことが重要である。このため、メンタルヘルス対策に取り組む事業場や心のサポーターに関する目標を設定する。

(二) 自然に健康になれる環境づくり

自然に健康になれる環境づくりとして、栄養・食生活、身体活動・運動、喫煙をはじめとする分野で取組が進められており、これらの取組の推進に関する目標を設定する。具体的には、「健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブ」、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくり等による身体活動・運動に取り組みやすい環境整備及び受動喫煙環境に関する目標について設定する。

(三) 誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備

誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備には、地方公共団体だけでなく、企業、民間団体等様々な主体が自発的に健康づくりに取り組むことが重要である。このため、地方公共団体、企業、民間団体等が参画するプラットフォームや健康経営に関する目標を設定する。また、栄養・食生活分野での取組として、特定給食施設(特定かつ多数の者に対して継続的に食事を供給する施設をいう。以下同じ。)に関する目標を設定する。加えて、各事業場において必要な産業保健サービスを提供している事業場に関する目標を設定する。

4 ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり

ライフステージに特有の健康づくりやライフコースアプローチの取組を進める必要がある。特にこども、高齢者及び女性に関する目標を設定する。

幼少期からの生活習慣や健康状態は、成長してからの健康状態にも大きく影響を与えるため、こどもの健康を支える取組を進める必要がある。こども自身に加え、妊婦の健康増進を図ることが重要である。こうした観点から、こどもの頃からの運動習慣の獲得、適正体重のこどもの増加並びに20歳未満の者の飲酒及び喫煙に関する目標を設定する。

高齢期に至るまで健康を保持するためには、高齢者の健康を支えるだけでなく、若年期からの取組が重要である。こうした観点から、適正体重の高齢者の増加、ロコモティブシンドロームの予防及び社会参加の促進に関する目標を設定する。

女性については、ライフステージごとに女性ホルモンが劇的に変化するという特性等を踏まえ、人生の各段階における健康課題の解決を図ることが重要である。このため、女性に多いやせ、骨粗鬆症等の健康課題、男性とは異なる傾向にある女性の飲酒及び妊婦に関する目標を設定する。

これらの具体的な目標は、別表第四のとおり設定する。

第三 都道府県健康増進計画及び市町村健康増進計画の策定に関する基本的な事項

一 健康増進計画の目標の設定と分析・評価等

都道府県健康増進計画及び市町村健康増進計画の策定に当たっては、地方公共団体は、人口動態、医療・介護をはじめとする各分野の統計やデータベース等の地域住民に関する各種指標を活用しつつ、地域の社会資源等の実情を踏まえ、独自に必要な課題を選択し、その到達すべき目標を設定し、定期的に分析・評価を行った上で、改定を実施することとする。

国は、地方公共団体における都道府県健康増進計画及び市町村健康増進計画の策定の支援を行う。

二 都道府県の役割と都道府県健康増進計画

都道府県は、庁内の関連する部局が連携して都道府県健康増進計画を策定することとし、当該計画において、国が設定した目標を勘案しつつ、具体的な目標を設定する。また、区域内の市町村ごとの健康状態や生活習慣の状況の差の把握を行い、地域間の健康格差の是正に向けた取組を位置付けるよう努めるものとする。

都道府県は、地域・職域連携推進協議会等も活用し、市町村や医療保険者、企業、教育機関、民間団体等の関係者の連携強化のための中心的役割を担い、データの活用や分析を積極的に行い、市町村における市町村健康増進計画の策定の支援を行う。

保健所は、地域保健の広域的、専門的かつ技術的な拠点として、健康づくりに関する情報を収集・分析し、地域の住民や関係者に提供するとともに、地域の実情に応じ、市町村における市町村健康増進計画の策定の支援を行う。

都道府県健康増進計画の策定に当たっては、都道府県が策定する医療法(昭和23年法律第205号)に規定する医療計画、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に規定する都道府県医療費適正化計画、介護保険法(平成9年法律第123号)に規定する都道府県介護保険事業支援計画、がん対策基本法(平成18年法律第98号)に規定する都道府県がん対策推進計画、都道府県が定める歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)に規定する基本的事項、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成30年法律第105号)に規定する都道府県循環器病対策推進計画に加え、データヘルス計画、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号)に規定する成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針その他の都道府県健康増進計画と関連する計画等との調和に配慮する。

三 市町村の役割と市町村健康増進計画

市町村は、都道府県や保健所とも連携しつつ、また、庁内の関連する部局が連携して市町村健康増進計画の策定に努めるものとする。

市町村は、国や都道府県が設定した目標を勘案しつつ、具体的な目標を設定するよう努めるものとする。

市町村は、市町村健康増進計画を策定するに当たっては、医療保険者として策定する高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定健康診査等実施計画、市町村が策定する介護保険法に規定する市町村介護保険事業計画に加え、データヘルス計画その他の市町村健康増進計画と関連する計画との調和に配慮する。

また、市町村は、健康増進法(平成14年法律第103号)に基づき実施する健康増進事業について、市町村健康増進計画において位置付けることが望ましい。

第四 国民健康・栄養調査その他の健康の増進に関する調査及び研究に関する基本的な事項

一 調査及び研究の活用

国は、国民健康・栄養調査等の企画を行い、効率的に実施する。あわせて、個人の行動と健康状態の改善及び社会環境の質の向上に関する調査研究についても推進する。

国、地方公共団体、独立行政法人等においては、国民健康・栄養調査、都道府県等による健康・栄養調査、国民生活基礎調査、健康診査(いわゆる「健診」と「検診」の両方を含むものとする。)等に関する各種統計・データベース、その他の収集した情報等に基づき、現状分析を行うとともに、健康増進に関する施策の評価を行い、それらの結果等を踏まえ、必要に応じて施策の見直しを行う。

また、これらの調査等により得られた分析・評価の結果については、積極的な公表に努める。

さらに、国及び地方公共団体は、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の利活用を更に進めるとともに、保健医療情報に関するビッグデータをはじめとする情報の収集・分析を行い、その結果等を踏まえ、国民や関係者が効果的な健康増進施策を実施することができる仕組みを構築するよう努める。

二 研究の推進

国、地方公共団体、独立行政法人等においては、社会実装も見据えつつ、国民の社会環境や生活習慣と生活習慣病(NCDs)との関連等に関する研究を推進し、研究結果に関して的確かつ十分な情報の提供を国民や関係者に対して行う。また、新たな研究成果については、効果的な健康増進の実践につながるよう支援を行っていくことが必要である。

第五 健康増進事業実施者間における連携及び協力に関する基本的な事項

健康増進事業をより効果的に進めるためには、健康増進事業実施者間で連携・協力を進めることが不可欠である。

例えば、健康増進事業のうちの健康診査の場合、健康診査に関するデータについて、健康増進事業実施者間で共有を図ることで、転居や転職、退職等があっても効果的な健康づくりを行うことが可能となる。また、受診率向上に向けて健康増進事業実施者間で連携し、複数の健康診査を同時に実施することも考えられる。

なお、健康診査の実施等に係る健康増進事業実施者間の連携については、これらのほか、健康増進法に基づく健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針の定めるところによる。

第六 食生活、運動、休養、飲酒、喫煙、歯の健康の保持その他の生活習慣に関する正しい知識の普及に関する事項

一 基本的な考え方

健康増進には、国民の意識と行動の変容が重要であることから、国民の主体的な取組を支援するため、国民に対する十分かつ的確な情報提供が必要である。このため、情報提供を行う際には、科学的知見に基づき、分かりやすく、国民の健康増進の取組に結び付きやすい魅力的、効果的かつ効率的なものとなるよう工夫する。さらに、個人の生活習慣に関する情報に加え、社会環境の重要性についても認識を高めるよう工夫する。また、正しい知識の普及を通じて、健康増進に係るスティグマの解消に努める。

情報提供に当たっては、マスメディア、ホームページやSNS、学校教育、健康相談等多様な経路を活用するとともに、対象者の特性に応じた効果的な働きかけを、複数の方法を組み合わせて行うことが重要である。あわせて、国民に対して様々な媒体で流布されている情報には、誤った情報や著しく偏った不適切な情報が含まれ得ることについて注意喚起を行う。また、情報取得や意思疎通に配慮が必要な者を含めあらゆる国民が正しい情報にアクセスできるような環境整備に努める。

国は、地方公共団体、企業、民間団体等が参画するプラットフォームも活用し、正しい知識の普及に努める。地方公共団体は、地域の実情に応じた取組を行う。

二 健康増進普及月間等

9月を健康増進普及月間とし、国、地方公共団体、企業、民間団体等が行う様々なイベントや広報活動等の普及啓発活動等を通じ、国民の自覚を高めるほか、社会全体で健康づくりを支え合う環境を醸成するための健康増進の取組を一層促進することとする。

また、当該取組が一層効果的となるよう、併せて、食生活改善普及運動を9月に実施する。

加えて、女性の健康問題に対する意識を高めるため、3月1日から同月8日までを女性の健康週間とし、たばこ・受動喫煙対策を更に推進するため、5月31日から6月6日までを禁煙週間とする。

健康増進普及月間、食生活改善普及運動、女性の健康週間及び禁煙週間(以下「健康増進普及月間等」という。)の実施に当たっては、地域の実情に応じた課題を設定し、健康に関心の薄い者も含めてより多くの住民が参加できるように工夫するよう努めることが必要である。また、地域における活動のほか、国、地方公共団体、企業、民間団体等が相互に協力して、健康増進普及月間等の重点的かつ効果的な実施を図る。

第七 その他国民の健康の増進の推進に関する重要事項

一 多様な主体による連携及び協力

誰一人取り残さない健康づくりを効果的に展開するためには、行政だけでなく、地域の関係者や民間部門の協力が必要である。保健、医療、福祉の関係機関及び関係団体並びに大学等の研究機関、企業、教育機関、NPO、NGO、住民組織等の関係者が連携し、効果的な取組を行うことが望ましい。地方公共団体は、これらの関係者間の意思疎通を図りつつ、協力を促していくことが望ましい。

二 関係する行政分野との連携

健康増進の取組を推進するには、国と地方公共団体のいずれにおいても、様々な分野との連携が必要である。医療、食育、産業保健、母子保健、生活保護、生活困窮者自立支援、精神保健、介護保険、医療保険等の取組に加え、教育、スポーツ、農林水産、経済・産業、まちづくり、建築・住宅等の分野における取組と積極的に連携することが必要である。

三 具体的な方策の策定

国民の健康の増進に関する目標達成のために、国と地方公共団体のいずれにおいても、予算・人員の確保に努めることが必要である。国は、地方公共団体の取組に資するよう、具体的な方策(アクションプラン)等の策定に取り組む。

四 デジタル技術の活用

デジタル技術を積極的に活用することで、より効果的・効率的に健康増進の取組を進めることが望ましい。こうした中で、オンラインやアプリケーション、ウェアラブル端末等のICTを用いたサービスを活用した健康づくりを検討し、その際、民間事業者との連携も視野に入れて取組を推進する。あわせて、事務手続のデジタル化等も検討することが必要である。加えて、人工知能等、今後実用化が進むことが予想されるデジタル技術についても、科学的根拠を踏まえつつ、健康づくりにおける活用を検討する。

なお、デジタル格差により必要な健康増進の取組が受けられない等の格差につながらないよう留意する必要がある。

五 人材の育成

健康増進の取組には、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士等の様々な専門職等が携わっており、国及び地方公共団体は、これらの人材の確保及び資質の向上に努めるものとする。また、これらの人材が自己研さんに励むことができるような環境整備を行う。加えて、これらの人材の連携(多職種連携)が進むよう支援を行う。

六 その他考慮すべき事項

計画期間中には、様々な社会における変化が発生し得る。国、地方公共団体等は、地球温暖化をはじめとする気候変動、災害、新興・再興感染症の拡大、孤独・孤立の深刻化等による健康影響についても考慮しながら、健康増進に関する施策を進めることが必要である。

別表第一 健康寿命の延伸と健康格差の縮小に関する目標

目標

指標

目標値

① 健康寿命の延伸

日常生活に制限のない期間の平均

平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加

(令和14年度)

② 健康格差の縮小

日常生活に制限のない期間の平均の下位4分の1の都道府県の平均

日常生活に制限のない期間の平均の上位4分の1の都道府県の平均の増加分を上回る下位4分の1の都道府県の平均の増加

(令和14年度)

別表第二 個人の行動と健康状態の改善に関する目標

1 生活習慣の改善

(1) 栄養・食生活

目標

指標

目標値

① 適正体重を維持している者の増加(肥満、若年女性のやせ、低栄養傾向の高齢者の減少)

BMI18.5以上25未満(65歳以上はBMI20を超え25未満)の者の割合(年齢調整値)

66%

(令和14年度)

② 児童・生徒における肥満傾向児の減少

児童・生徒における肥満傾向児の割合

令和5年度から開始する第2次成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(以下「第2次成育医療等基本方針」という。)に合わせて設定

③ バランスの良い食事を摂っている者の増加

主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合

50%

(令和14年度)

④ 野菜摂取量の増加

野菜摂取量の平均値

350g

(令和14年度)

⑤ 果物摂取量の改善

果物摂取量の平均値

200g

(令和14年度)

⑥ 食塩摂取量の減少

食塩摂取量の平均値

7g

(令和14年度)

(2) 身体活動・運動

目標

指標

目標値

① 日常生活における歩数の増加

1日の歩数の平均値(年齢調整値)

7,100歩

(令和14年度)

② 運動習慣者の増加

運動習慣者の割合(年齢調整値)

40%

(令和14年度)

③ 運動やスポーツを習慣的に行っていないこどもの減少

1週間の総運動時間(体育授業を除く。)が60分未満の児童の割合

第2次成育医療等基本方針に合わせて設定

(3) 休養・睡眠

目標

指標

目標値

① 睡眠で休養がとれている者の増加

睡眠で休養がとれている者の割合(年齢調整値)

80%

(令和14年度)

② 睡眠時間が十分に確保できている者の増加

睡眠時間が6~9時間(60歳以上については、6~8時間)の者の割合(年齢調整値)

60%

(令和14年度)

③ 週労働時間60時間以上の雇用者の減少

週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合

5%

(令和7年)

(4) 飲酒

目標

指標

目標値

① 生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量を飲酒している者の減少

1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者の割合

10%

(令和14年度)

② 20歳未満の者の飲酒をなくす

中学生・高校生の飲酒者の割合

0%

(令和14年度)

(5) 喫煙

目標

指標

目標値

① 喫煙率の減少(喫煙をやめたい者がやめる)

20歳以上の者の喫煙率

12%

(令和14年度)

② 20歳未満の者の喫煙をなくす

中学生・高校生の喫煙者の割合

0%

(令和14年度)

③ 妊娠中の喫煙をなくす

妊婦の喫煙率

第2次成育医療等基本方針に合わせて設定

(6) 歯・口腔の健康

目標

指標

目標値

① 歯周病を有する者の減少

40歳以上における歯周炎を有する者の割合(年齢調整値)

40%

(令和14年度)

② よく噛んで食べることができる者の増加

50歳以上における咀嚼そしやく良好者の割合(年齢調整値)

80%

(令和14年度)

③ 歯科検診の受診者の増加

過去1年間に歯科検診を受診した者の割合

95%

(令和14年度)

2 生活習慣病(NCDs)の発症予防・重症化予防

(1) がん

目標

指標

目標値

① がんの年齢調整罹患率の減少

がんの年齢調整罹患率(人口10万人当たり)

減少

(令和10年度)

② がんの年齢調整死亡率の減少

がんの年齢調整死亡率(人口10万人当たり)

減少

(令和10年度)

③ がん検診の受診率の向上

がん検診の受診率

60%

(令和10年度)

(2) 循環器病

目標

指標

目標値

① 脳血管疾患・心疾患の年齢調整死亡率の減少

脳血管疾患・心疾患の年齢調整死亡率(人口10万人当たり)

減少

(令和10年度)

② 高血圧の改善

収縮期血圧の平均値(40歳以上、内服加療中の者を含む。)(年齢調整値)

ベースライン値から5mmHgの低下

(令和14年度)

③ 脂質(LDLコレステロール)高値の者の減少

LDLコレステロール160mg/dl以上の者の割合(40歳以上、内服加療中の者を含む。)(年齢調整値)

ベースライン値から25%の減少

(令和14年度)

④ メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少

メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の人数(年齢調整値)

令和6年度から開始する第4期医療費適正化計画(以下「第4期医療費適正化計画」という。)に合わせて設定

⑤ 特定健康診査の実施率の向上

特定健康診査の実施率

第4期医療費適正化計画に合わせて設定

⑥ 特定保健指導の実施率の向上

特定保健指導の実施率

第4期医療費適正化計画に合わせて設定

(3) 糖尿病

目標

指標

目標値

① 糖尿病の合併症(糖尿病腎症)の減少

糖尿病腎症の年間新規透析導入患者数

12,000人

(令和14年度)

② 治療継続者の増加

治療継続者の割合

75%

(令和14年度)

③ 血糖コントロール不良者の減少

HbA1c8.0%以上の者の割合

1.0%

(令和14年度)

④ 糖尿病有病者の増加の抑制

糖尿病有病者数(糖尿病が強く疑われる者)の推計値

1,350万人

(令和14年度)

⑤ メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少(再掲)

メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の人数(年齢調整値)

第4期医療費適正化計画に合わせて設定

⑥ 特定健康診査の実施率の向上(再掲)

特定健康診査の実施率

第4期医療費適正化計画に合わせて設定

⑦ 特定保健指導の実施率の向上(再掲)

特定保健指導の実施率

第4期医療費適正化計画に合わせて設定

(4) COPD

目標

指標

目標値

COPDの死亡率の減少

COPDの死亡率(人口10万人当たり)

10.0

(令和14年度)

3 生活機能の維持・向上

目標

指標

目標値

① ロコモティブシンドロームの減少

足腰に痛みのある高齢者の人数(人口千人当たり)(65歳以上)

210人

(令和14年度)

② 骨粗鬆症検診受診率の向上

骨粗鬆症検診受診率

15%

(令和14年度)

③ 心理的苦痛を感じている者の減少

K6(こころの状態を評価する指標)の合計得点が10点以上の者の割合

9.4%

(令和14年度)

別表第三 社会環境の質の向上に関する目標

1 社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上

目標

指標

目標値

① 地域の人々とのつながりが強いと思う者の増加

地域の人々とのつながりが強いと思う者の割合

45%

(令和14年度)

② 社会活動を行っている者の増加

いずれかの社会活動(就労・就学を含む。)を行っている者の割合

ベースライン値から5%の増加

(令和14年度)

③ 地域等で共食している者の増加

地域等で共食している者の割合

30%

(令和14年度)

④ メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加

メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合

80%

(令和9年度)

⑤ 心のサポーター数の増加

心のサポーター数

100万人

(令和15年度)

2 自然に健康になれる環境づくり