アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針

(令和五年三月二十九日)

(厚生労働省告示第百十一号)

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和四年法律第五十二号)第七条第一項の規定に基づき、困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針を次のように定めたので、同条第五項の規定により公示する。

困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針

目次

はじめに

第1 困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な事項

1 女性相談支援センター(旧婦人相談所)の設置状況

2 女性相談支援センター(旧婦人相談所)の利用者の状況や推移

3 女性相談支援員(旧婦人相談員)の委嘱及び配置の状況

4 女性相談支援員(旧婦人相談員)が実施する相談支援の現状

5 女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の設置状況

6 女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の入所者の現状

7 まとめ

第2 困難な問題を抱える女性への支援のための施策の内容に関する事項

1 法における施策の対象者及び基本理念

2 国、都道府県及び市町村の役割分担と連携

3 支援の基本的な考え方

4 支援に関わる関係機関等

(1) 女性相談支援センター

(2) 女性相談支援員

(3) 女性自立支援施設

(4) 民間団体等

(5) その他関係機関

5 支援の内容

(1) アウトリーチ等による早期の把握

(2) 居場所の提供

(3) 相談支援

(4) 一時保護

(5) 被害回復支援

(6) 生活の場を共にすることによる支援(日常生活の回復の支援)

(7) 同伴児童等への支援

(8) 自立支援

① 医学的又は心理的支援

② 生活支援

③ 日中活動の支援

④ 居住支援

(9) アフターケア

6 支援の体制

(1) 連携の基本的考え方

(2) 三機関の連携体制

(3) 民間団体との連携体制

(4) 関係機関との連携体制

(5) 配偶者暴力防止等法に基づく施策との関係

7 支援調整会議

(1) 支援調整会議の設置・構成員等

(2) 支援調整会議の目的・議論内容・構成等

(3) 支援調整会議の招集や留意点等

8 教育・啓発

9 人材育成

10 調査研究等の推進

11 基本方針の見直し

第3 都道府県等が策定する基本計画の指針となるべき基本的な事項

1 計画策定に向けた手続

(1) 基本計画の期間

(2) 他の計画との関係

(3) 基本計画策定前の手続

2 計画に関する評価と公表

(1) 評価

(2) 評価結果の公表

(3) 次の基本計画の策定

3 基本計画に盛り込むことが望ましい施策

(1) 困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な方針

(2) 困難な問題を抱える女性への支援のための施策内容に関する事項

(3) その他困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する重要事項

はじめに

1.これまでの経緯

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和4年法律第52号。以下「法」という。)の成立以前は、我が国において、対象者が「女性であること」に着目した福祉的な支援のための施策は、法による改正前の売春防止法(昭和31年法律第118号。以下「旧売春防止法」という。)第4章の規定に基づく婦人保護に関する施策が中心であり、法に基づいて婦人相談所の設置、婦人相談員の委嘱、婦人保護施設の設置等の婦人保護事業が進められてきた。しかしながら、法に基づく婦人保護事業は、法第34条第3項において「性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子」と定義される「要保護女子」の「保護更生」を目的とするものであり、困難な問題に直面している女性の人権の擁護・福祉の増進や自立支援等の視点は不十分なものであった。

時代が下るにつれ、社会経済状況の急激な変化とともに、女性の高学歴化が進み、就業率が上昇した。また、婚姻に関する意識や家族関係の変化により、女性の支援ニーズも多様化したにもかかわらずそのような変化に対応するための法改正は行われないまま、婦人保護施策は、その対象者を拡大する対応にとどまった。「売春」以外の、生活困難や家庭環境の問題等のさまざまな課題を抱えた女性が婦人保護事業の現場において増加したこと等も受け、昭和45年には、「昭和45年度婦人保護事業費の国庫負担及び補助について」(昭和45年厚生省社会局長通知)において、「婦人相談所又は婦人相談員がその受け付け時点において転落のおそれなしと認めた婦女子については、当該婦女子が正常な生活を営むのに障害となる問題を有しており、かつ、その障害となる問題を解決すべき機関が他にないと認められる場合に限り、転落未然防止の見地から当該障害となる問題が解決されるまでの間、婦人保護事業の対象者として取り扱って差し支えない」旨が示され、婦人保護事業の対象が「売春を行うおそれのある女子」以外にも拡大された。

また、平成13年に施行された配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止等法」という。)においては、法第3条から第5条までにおいて、婦人相談所、婦人相談員及び婦人保護施設が、配偶者からの暴力を受けた者の支援を行う機関として位置づけられ、配偶者暴力防止等法が、婦人保護事業の根拠法のひとつとなった。

さらに、日本に入国した外国人女性が監禁されたり、「売春」を強要されたりといった人身取引の被害報告が増加したことを背景に、平成16年に「人身取引対策行動計画」(人身取引対策に関する関係省庁連絡会議決定)が策定された。警察署等において人身取引被害者を発見した場合の対応として婦人相談所等に当該女性の保護を依頼すべきこととされたことを踏まえ、厚生労働省からも、人身取引被害者の保護を実施する機関として婦人相談所が留意すべき事項を地方公共団体に向けて通知した。

加えて、累次の改正により、現行のストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第9条では、ストーカー行為等の相手方(被害者)に対する支援が明確に位置づけられたことから、婦人相談所等によるストーカー行為の被害者への適切な支援についても通知がなされている。

このように、女性達が直面している問題も多様化し、また複合的な困難な問題を抱える女性の増加も指摘されてきたと同時に、婦人保護事業の対象者も拡大してきたが、旧売春防止法における婦人保護に関する規定が抜本的に見直されることはなかった。これらの状況を受けて、旧売春防止法に婦人保護事業の根拠を置くことそのものの制度的限界が指摘されるようになり、女性活躍加速のための重点方針2018(平成30年6月12日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)においては、「婦人相談所等における支援について実施した実態把握の結果等を踏まえ、課題の整理を行い、社会の変化に見合った婦人保護事業の見直しについて有識者等による検討の場を設ける。その議論を踏まえつつ必要な見直しについて検討する」旨が決定された。

平成30年7月には、厚生労働省子ども家庭局長が有識者等の参集を求めた「困難な問題を抱える女性への支援の在り方に関する検討会」が開催され、婦人保護事業の将来的な在り方等について検討を行った。本検討会が取りまとめた「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会中間まとめ」(令和元年10月11日)においては、婦人保護事業の支援対象者像の拡大や、旧売春防止法を制度的根拠とすることの限界が改めて指摘され、「人権の擁護と男女平等の実現を図ることの重要性に鑑み、様々な困難な問題に直面する女性を対象とした包括的な支援制度が必要である」こと、「(略)女性が抱える困難な問題は、近年、複雑・多様化、かつ、複合的なものとなっており、旧売春防止法を根拠とした従来の枠組みでの対応は限界が生じている。このような認識のもと、女性を対象として専門的な支援を包括的に提供する制度について、法制度上も旧売春防止法ではなく、新たな枠組みを構築していく必要がある」こと、また「旧売春防止法に基づく「要保護女子」としてではなく、若年女性への対応、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害からの回復支援、自立後を見据えた支援など、時代とともに多様化した困難な問題を抱える女性を対象として、相談から保護・自立支援までの専門的な支援を包括的に提供できるようにすることが必要である」ことや「行政・民間団体を通した多機関における連携・協働を通じて、支援が行き届きにくい者も対象とし、早期かつ、切れ目のない支援を目指すことが必要である」ことが指摘された。

このような状況の中で、国会においても、婦人保護事業の旧売春防止法からの脱却を目指す動きが強まり、令和4年5月、議員立法である法が成立した。法は令和6年4月1日から施行されるものであり、法の施行に伴い、旧売春防止法のうち、補導処分及び婦人補導院について規定した第3章並びに婦人保護事業について規定した第4章は廃止されることとなった。なお、婦人補導院については、以下の理由から廃止することとしており、当該廃止に伴い、関係法令(婦人補導院法(昭和33年法律第17号)、婦人補導院処遇規則(昭和33年法務省令第8号)及び婦人補導院組織規則(平成13年法務省令第5号))についても廃止されることとなった。

・ 女性を婦人補導院に強制的に収容して矯正する補導処分の仕組みは、法の趣旨に合致しないこと

・ 法で新設する、困難な問題を抱える女性に関する包括的な支援体制により、従来の制度では婦人補導院における補導処分の対象となるような女性も含めて、支援可能となること

・ 近年の補導処分の件数が極めて低い水準で推移していること

2.方針のねらい

旧売春防止法第4章に基づく婦人保護事業は、困難な問題に直面している女性の人権の擁護・福祉の増進や自立支援等の視点は不十分なものであった。また、婦人保護事業による支援の対象者が拡大してきた中においても、なお、制度や施設等の利用に円滑につながりにくい場合があること、旧売春防止法下での支援内容が実際の支援対象者のニーズに合わないこと、婦人保護事業の存在等に関する周知が不足していること、地方公共団体によって制度の利用に独自のルールが設けられている場合があること等を背景として、婦人保護事業は困難な問題を抱える女性への支援が重要な課題となっているにもかかわらず十分に活用されてこなかった。さらに、女性への支援に取り組む民間団体も現れてきているが、活動基盤が脆弱な状況が見られる。

法は、「売春を行うおそれのある要保護女子」の「保護更生」を目的とした旧売春防止法第4章とは異なり、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により、日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える、あるいは抱えるおそれのある女性を施策の対象とし、それらの女性が自らの意思を尊重されながら、その置かれた状況に応じてきめ細やかで、支援対象者に寄り添いつながり続ける支援を受けることにより、その福祉が増進され、自立して暮らすことができる社会を実現することを目的としている。

法のもとで実施される女性支援事業に関しては、これまで婦人保護事業の中核を担ってきた婦人相談所、婦人相談員及び婦人保護施設が、名称を女性相談支援センター、女性相談支援員及び女性自立支援施設と変更した上で引き続き事業の中心となる。一方で、困難な問題を抱える女性に対しては、独自の支援を実施している民間団体が存在しており、これらの民間団体の特色である柔軟性のある支援や、これまでの活動の中で蓄積された知見や経験、育成されてきた人材等は、困難な問題を抱える女性への支援を進める上で有効である。この点を踏まえ、困難な問題を抱える女性への支援に当たっては、行政機関と民間団体は、双方の特色を尊重し、補完し合いながら対等な立場で協働していくことが求められる。また、女性支援に当たっては、関係地方公共団体相互間の緊密な連携と合わせて、女性支援を行う機関と、他の施策に関連する様々な機関が緊密に連携しながら、支援対象者の置かれた状況に応じてきめ細やかな、つながり続ける支援を実施する必要がある。

こうした地域での支援体制の構築に際しては、大きな地域格差が生じることのないよう、国において全国の支援体制の状況等の把握や課題分析等を行うとともに、都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)が中心となり、困難な問題を抱える女性の人権の擁護、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害からの心身の健康の回復、生活再建等に必要となる支援体制の強化や地域福祉との連携の強化を図っていく必要がある。

さらに、旧売春防止法における旧婦人相談所、旧婦人相談員及び旧婦人保護施設は、配偶者暴力防止等法第1条に規定する配偶者からの暴力等及び配偶者暴力防止等法第28条の2に規定する関係にある相手からの暴力を受けた被害者(以下「配偶者暴力被害者」という。)への支援の受け皿として位置づけられてきた経緯があり、法施行後も引き続き、法の支援の対象者として配偶者暴力被害者が含まれることとなる。一方、配偶者暴力被害者については、配偶者暴力防止等法及び法の下位法令等に基づき支援を行う必要があることから、これまでも、困難な問題を抱える女性への支援の枠組の中において、配偶者暴力被害者への支援とそれ以外の者への支援が併存している状況が続いてきたところである。法の施行に当たっては、配偶者暴力防止等法と法の関係性を整理した上で、例えば、必要に応じて近隣自治体とも連携しつつ、配偶者暴力被害者をはじめとする所在地の秘匿性の必要性が高い場合と、地域に開かれた社会生活等が重要である場合、それぞれに適切な支援を提供できるような施設や支援の在り方の検討に努める必要がある。

また、法の施行に当たっては、地域によって困難な問題を抱える女性への対応に大きな格差が生じるべきではなく、支援対象者が全国どこにいたとしても、必要十分な支援を受ける体制を全国的に整備していく必要がある。一方で、困難な問題を抱える女性を巡る状況は地域の特性によって異なることも踏まえ、法は、困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の策定を都道府県に義務づけるとともに、市町村に対しても努力義務として基本計画の策定を求めている。困難な問題を抱える女性への支援体制の構築を着実に進めるに当たっては、本基本方針に則って各地方公共団体が基本計画を定めることが重要である。

この基本方針は、法第7条第1項の規定に基づき、困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な事項、困難な問題を抱える女性への支援のための施策の内容に関する事項及び都道府県等が策定する基本計画の指針となるべき基本的な事項について、法の趣旨や困難な問題を抱える女性の実態、支援対象者に対する支援の実態や課題等を踏まえて定めることにより、困難な問題を抱える女性の福祉の増進及び自立に向けた施策が国及び地方公共団体において総合的かつ計画的に展開され、個々の支援対象となる女性に対して効果的に機能することを目指すものである。国及び地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施及び制度運営に関する予算等の検討に当たっては、この基本方針を十分に踏まえる必要がある。

3.方針の対象期間

この基本方針の対象期間は、令和6年度から令和10年度までの5年間とする。なお、法その他の関係法令に改正があった場合は、その都度見直しを行うものとする。

第1 困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な事項

以下の記述について、特に記載がないものは、厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課(令和4年度当時)の調査による。

1.女性相談支援センター(旧婦人相談所)の設置状況

令和3年4月1日時点で、女性相談支援センター(旧婦人相談所)は全国に49カ所存在する。また、女性相談支援センター(旧婦人相談所)は、配偶者暴力防止等法第3条第1項の規定により配偶者暴力相談支援センターとしての役割も担っている(配偶者暴力相談支援センターは全国で308カ所設置されている(令和4年9月1日現在))。

2.女性相談支援センター(旧婦人相談所)の利用者の状況や推移

令和2年度に女性相談支援センター(旧婦人相談所)に相談に訪れた者の人数は10,591人(実人数)であり、その相談内容の内訳は夫等(配偶者(事実婚を含む。))からの暴力を受けた者(配偶者からの暴力を受けた後婚姻を解消した者であって、当該配偶者であった者から引き続き生命又は身体に危害を受けるおそれがある者・生活の本拠を共にする交際をする関係にある相手を含み、身体的暴力を受けた者に限らず、心身に有害な影響を及ぼす言動を受けた者を含む。)からの暴力に関する相談が60.1%と最多、暴力以外の家族・親族との問題(離婚問題を含む。)に関する相談が12.7%と2番目に多い結果となった。また、夫等以外の、子、親、親族等からの暴力に関する相談が9.3%、交際相手等からの暴力に関する相談が2.7%であり、夫等からの暴力に関する相談と合わせると、近しい者からの暴力に関する相談が72.1%を占めている。さらに、住居問題(帰住先なしを含む。)が6.4%等と続く。また、相談者の年齢層は、40歳以上が48.0%、20歳以上40歳未満が48.0%、18歳以上20歳未満が2.5%、18歳未満が0.4%である。女性相談支援センター(旧婦人相談所)への来所相談人数は、平成15年度の21,195人から、一貫して減少傾向にある。夫等からの暴力に関する相談人数は、平成21年度の9,882人が最多であったが、その後減少している。

女性相談支援センター(旧婦人相談所)により一時保護された女性は令和2年度で3,514人、その同伴家族は2,851人で、合計すると6,365人である。同伴家族の内訳としては、60.6%が乳児・幼児、28.3%が小学生、97.7%が18歳未満の児童となっている。一時保護所の利用率は全国平均で見ると14.1%(同伴家族を除く。)であるが、地域間の差が大きく、最も低い都道府県で2.0%、最も高い都道府県で64.3%となっている。一時保護の平均在所日数は17.1日であり、1~5日が最多の26.4%である一方、31日以上在所する者も15.3%存在する。また、令和2年度中の退所者3,454人の内訳をみると、一時保護後の行き先としては、9.5%が女性自立支援施設(旧婦人保護施設)、11.6%が母子生活支援施設、11.8%がその他の社会福祉施設、8.4%が民間団体となっている。そのほか、実家等に帰郷した者が14.4%、帰宅した者が15.4%、自立した者が13.2%等となっている。一時保護された女性の人数は、平成21年度の6,625人が最多であり、その後減少傾向にある。また、平成14年度に一時保護委託制度を創設しており、各都道府県の委託契約先となる施設数は令和3年4月1日現在で333施設存在する(同一施設が複数都道府県の委託契約先となる場合があるため、重複がある。)。一時保護された女性のうち、委託先施設で保護された人数は、令和2年度で1,136人、その同伴家族は1,178人で、合計すると2,314人である。

3.女性相談支援員(旧婦人相談員)の委嘱及び配置の状況

令和3年4月1日時点で、女性相談支援員(旧婦人相談員)の人数は1,594人、うち474人が都道府県(義務設置)、1,120人が市から委嘱されている(任意設置)。女性相談支援員(旧婦人相談員)は毎年わずかずつ増加しているが、特に市における増加率が高く、平成21年度の598人から522人増加している。女性相談支援員(旧婦人相談員)のうち約16.3%にあたる260名が常勤職員であり、それ以外の約83.7%は非常勤職員である。女性相談支援員(旧婦人相談員)の在職年数としては、3年未満が都道府県では40.5%、市では43.5%を占めている。女性相談支援員(旧婦人相談員)が配置されている場所としては、都道府県では女性相談支援センター(旧婦人相談所)や福祉事務所、県支庁など、市では福祉事務所や市本庁が多い。

4.女性相談支援員(旧婦人相談員)が実施する相談支援の現状

女性相談支援員(旧婦人相談員)が受け付ける相談件数(女性相談支援センター(旧婦人相談所)に配置された女性相談支援員(旧婦人相談員)への相談を除く。)は増加傾向であり、来所相談や電話相談等の合計実人員は、平成21年度で126,118人であったのが、令和2年度で164,622人となっており、延べ相談件数は平成21年度の266,611件から令和2年度には433,250件となっている。また、平成21年度の来所相談のうち、夫等からの暴力に関する相談をした人数が17,301人、来所相談全体に対する割合が26.4%であったことと比べると、令和2年度に受け付けた来所相談人数71,289人のうち、夫等からの暴力に関する相談をした人数は32,001人で、全体の44.9%を占めており、年々増加している。

5.女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の設置状況

令和3年4月1日時点で、女性自立支援施設(旧婦人保護施設)は、全国に47施設設置されているが、女性自立支援施設(旧婦人保護施設)が設置されていない県も7県ある。47施設のうち、公設公営の施設が22施設(46.8%)、民設民営の施設が16施設(34.0%)、公設民営の施設が9施設(19.1%)ある。公設公営の施設については、女性相談支援センター(旧婦人相談所)に女性自立支援施設(旧婦人保護施設)を併設する形をとっているところが多い。女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の入所者数及び定員に対する定員充足率は減少傾向にあり、平成21年度の年間平均入所者数が505人、定員充足率が35.9%であったのに対し、令和2年度の年間平均入所者数は244人、定員充足率は19.8%であるが、定員充足率が一番高い自治体は44.6%、一番低い自治体は0.2%となっている。また、令和2年度の入所者の実人数は643人となっており、この他に入所者の同伴家族が261人入所していた。単身での入所者は502人、家族を伴う入所者は141人であった。

6.女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の入所者の現状

令和2年度の女性自立支援施設(旧婦人保護施設)入所者の入所理由は、夫等からの暴力が258人、40.1%と最多であり、続いて住居問題(帰住先なしを含む。)が181人(28.1%)、子、親、親族等からの暴力が88人(13.7%)、交際相手等からの暴力が58人(9.0%)等となっている。夫等や子、親、親族、交際相手等からの暴力被害を入所理由とする者の割合は全体の62.8%を占めている。平均在所日数は138.6日である。入所者の年齢層は、40歳以上が46.7%、20歳以上40歳未満が47.4%、18歳以上20歳未満が5.3%、18歳未満が0.6%である。入所者の同伴家族261人の内訳としては、69.7%が乳児・幼児、23.0%が小学生であり、18歳未満の児童が約98%を占める。

令和2年度の入所者のうち12.4%が精神障害者保健福祉手帳を所持しており、10.2%が療育手帳を、4.0%が身体障害者手帳を所持している。また、17.7%が通院、入院歴がある者及び常備薬を服用している者であり(手帳所持者は含まない。)、入所者のうち半数近くの女性が何らかの障害や疾病を抱えている。

7.まとめ

女性相談支援センター(旧婦人相談所)への相談や女性相談支援センター(旧婦人相談所)における一時保護、女性自立支援施設(旧婦人保護施設)への入所等、いずれの場面においても、支援対象者のニーズは多様化、複雑化、複合化し、個別専門的な対応を必要とするケースが多いなど、旧売春防止法を根拠として婦人保護事業が創設された時点から、状況が根本的に変化していることが改めて浮き彫りになっており、法はこのような状況を踏まえて創設されたものである。何らかの形態による暴力の被害者が制度利用者の多数を占めるという状況に加え、女性自立支援施設(旧婦人保護施設)への入所者のうち半数近くの女性が何らかの障害や疾病を抱えているという状況は、これらの女性達への支援において、カウンセリング等による精神面の支援をはじめとする心理的・医療的側面からの支援が極めて重要であることを意味している。さらに、一時保護や女性自立支援施設(旧婦人保護施設)への入所の際、児童をはじめとする同伴家族がいる場合も多いことから、同伴家族の生活にも配慮した支援が必要である。女性相談支援センター(旧婦人相談所)以外に配置された女性相談支援員(旧婦人相談員)への相談件数は、平成21年度と令和2年度を比べると実人員では1.3倍、延べ件数から見ると1.6倍となっており相談者の増加が顕著に現れている。一方で女性相談支援センター(旧婦人相談所)や女性自立支援施設(旧婦人保護施設)の利用は年々減少している状況である。背景には、困難な問題を抱える女性自身が、女性相談支援センター(旧婦人相談所)や女性自立支援施設(旧婦人保護施設)が提供する支援を受けようと考えていないことや、そもそもこれらの支援策の存在を知らないこと、支援を必要としていながら、女性相談支援センター(旧婦人相談所)等における支援対象として十分に発見されていない女性が一定数存在すること、地方公共団体によっては、女性相談支援センター(旧婦人相談所)において支援対象者が配偶者暴力被害者等に限定されている場合があること、一時保護所への入所のハードルが高いこと、同伴児童と一緒に入所できない、携帯電話の使用制限など、支援対象者に支援を受けることを躊躇させる要因があること、女性側のニーズに対して支援内容や制度が不十分であることが指摘されており、課題となっている点を検証し、支援を必要とする者に確実に支援が届く体制をつくることが重要である。

また、困難な問題を抱える女性への支援については、民間団体が独自にSNS等も活用しつつアウトリーチや相談支援、居場所やシェルター、ステップハウスの提供や医療機関・行政機関等への同行支援等、生活再建に向けた様々な支援策を展開しているが、一方で、民間団体の多くが、人材や資金等の面での困難や脆弱さを抱えている現状もある。民間団体による支援活動の特長を生かし、行政と民間団体が協働しながら女性支援を推進していくことが必要と考えられる。

第2 困難な問題を抱える女性への支援のための施策の内容に関する事項

1.法における施策の対象者及び基本理念

法第2条は、法に基づく支援等の対象となる困難な問題を抱える女性について、「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)」と規定している。法は、そもそも、女性が、女性であることにより、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害に、より遭遇しやすい状況にあることや、予期せぬ妊娠等の女性特有の問題が存在することの他、不安定な就労状況や経済的困窮、孤立などの社会経済的困難等に陥るおそれがあること等を前提としたものであり、このような問題意識のもと、法が定義する状況に当てはまる女性であれば年齢、障害の有無、国籍等を問わず、性的搾取により従前から婦人保護事業の対象となってきた者を含め、必要に応じて法による支援の対象者となる。特に、女性の尊厳を傷つけ、女性の人権を軽視するものである性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害を受けた者に対する支援は重要であり、被害による心的外傷から回復し、安定的な生活を営めるようになるための中長期的な支援を行うことが重要である。また、妊娠に関連する支援については、妊娠・出産・中絶等のどの段階においても相手との関係性や支援対象者の年齢、家庭状況、就労・経済状態などにより、支援のニーズが多様であることや、今後の支援対象者の生活設計への影響が大きいこと、性暴力や性的虐待、性的搾取などの性的な被害経験や母体の危険性、緊急な対応の必要性などに配慮し、支援対象者の意思決定過程を支えながら、適切な専門機関や民間団体、支援施策と緊密に連携して支援を行う必要がある。加えて、「困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)」とは、現に問題を抱えている者のみならず、適切な支援を行わなければ将来的に問題を抱える状況になる可能性がある者を含んでいることに留意が必要である。

性自認が女性であるトランスジェンダーの者については、トランスジェンダーであることに起因する人権侵害・差別により直面する困難に配慮し、その状況や相談内容を踏まえ、他の支援対象者にも配慮しつつ、関係機関等とも連携して、可能な支援を検討することが望ましい。

法の基本理念を規定している法第3条のうち、第1号は、「女性の抱える問題が多様化するとともに複合化し、そのために複雑化していることを踏まえ、困難な問題を抱える女性が、それぞれの意思が尊重されながら、抱えている問題及びその背景、心身の状況等に応じた最適な支援を受けられるようにすることにより、その福祉が増進されるよう、その発見、相談、心身の健康の回復のための援助、自立して生活するための援助等の多様な支援を包括的に提供する体制を整備すること」を規定している。困難な問題を抱える女性には、自身の国籍や出自、疾病や障害、過去の経験に起因する、様々な複合的な差別や社会的排除に直面し、抱えている問題自体が複合化・複雑化していることが多い。こうした複合化・複雑化した問題の解決には、それぞれの問題に関わる多様な関係機関との連携が重要である。

また、支援対象者の多くが精神や身体等を傷つけられていることも踏まえつつ、支援対象者本人が自らの意思や意見を決定し、表明できるように支援する体制を整え、本人の意思に寄り添った支援を行うことが必要である。とりわけ、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害により、尊厳を著しく傷つけられた女性には、これらの搾取等の構造から離れ、安心できる安定的な生活を確立し、心身の健康の回復を時間をかけて図っていくことが必要である。こうした困難な問題を抱える女性は、過去の経験の影響等によって持続的な信頼関係の構築が困難である、性的搾取等の構造に再度取り込まれやすい状況に置かれる等の様々な困難を抱えており、安定的に支援を提供し続けることが困難である場合があるが、そうした場合に支援が途切れても繰り返しつながり支えていく姿勢をもって、支援に当たることが重要である。また、性的搾取による被害が「性非行」として捉えられやすい若年女性(児童である場合や妊産婦を含む。)については、その背後にある虐待、暴力、貧困、家族問題、孤立、障害などの問題を十分に踏まえつつ、児童相談所等の関係機関と連携しつつも、困難な問題を抱える女性への支援として、制度の狭間に落ちることのないよう対応する必要がある。

同条第2号は、「困難な問題を抱える女性への支援が、関係機関及び民間団体の協働により、早期から切れ目なく実施されるようにすること」を基本理念として規定しており、都道府県を基本とする広域的な実施主体と、市町村を基本とした身近な実施主体、困難な問題を抱える女性を多様な観点及び手法で支援している民間団体や専門機関等の多数の機関が連携して、包括的かつ切れ目のない支援体制を整備することを求めている。また、地域によって困難な問題を抱える女性への対応に大きな格差が生じるべきではなく、支援対象者が全国どこにいたとしても必要十分な支援を受ける体制を全国的に整備していく必要がある。

さらに、同条第3号は「人権の擁護を図るとともに、男女平等の実現に資することを旨とすること」を規定しており、困難な問題を抱える女性の人権を擁護するとともに、その性に起因して困難な状態に陥りやすい女性を支援することにより、男女平等の実現に資することを求めている。

地方公共団体は、これらの理念に基づき、支援対象者の多様なニーズに応じた、地域の関係機関等の連携・協働による、支援対象者への包括的かつ継続的な「つながり続ける」支援、行政機関のみでは実施が難しい支援を行っている民間団体との協働に努める。また、国及び地方公共団体は、人材の育成、国民への教育・啓発、広域連携体制の構築などに取り組み、全国において困難な問題を抱える女性への支援が適切に実施されるよう努める。

2.国、都道府県及び市町村の役割分担と連携

女性支援事業は、法第4条に則り、国及び地方公共団体の責務として実施されるものである。困難な問題を抱える女性に対しては、法第9条第1項に規定する女性相談支援センター、法第11条第1項に規定する女性相談支援員、法第12条第1項に規定する女性自立支援施設が3本の柱として中核となり、女性が抱えている問題の種別に応じて関係機関と密接に連携を取りながら支援を展開することとする。その際、国、都道府県及び市町村も、適切に役割を分担しながら、互いに連携することが必要である。

国は、困難な問題を抱える女性への支援に係る施策や制度の企画・立案を行う。また、困難な問題を抱える女性への支援に関する状況の現状や課題を分析し、より効果的な施策を展開するための調査研究や、困難な問題を抱える女性への支援に係る施策の普及・啓発、関係者の研修等に努める。さらに、都道府県や市町村における、困難な問題を抱える女性への支援に関する施策を効果的かつ効率的に実施するための課題や方策の検討について、地域の実情に応じて支援する体制を整備するとともに、都道府県や市町村の基本計画、施策及び取組について情報提供を行う等、都道府県及び市町村に対する支援を行う。基本計画の策定が義務づけられている都道府県に対しては、全ての都道府県において円滑な策定が進むよう必要な支援を行うとともに、策定が努力義務である市町村に対しては、国が助言等を行い、積極的な策定を支援する。国の補助事業については、都道府県及び市町村によって実施状況のばらつきがみられるが、都道府県及び市町村がこれらの事業を積極的に活用して、地域のニーズに応じた施策を展開していくことができるよう、支援を行う。

国及び地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援を行う民間団体が安全かつ安定的に運営を継続するに当たっての支援や、女性支援を行う意向のある団体の立ち上げに関する支援等を検討し、実施するよう努める。

都道府県は、困難な問題を抱える女性への支援に関して中核的な役割を果たすものとして、法第8条第1項の規定により、この基本方針に即して基本計画を策定すること等を通じて、地域の実情に応じて、それぞれの地域特性を考慮しながら、計画的に、地域のニーズに応じた施策を検討・展開していくことが必要である。都道府県は、法第3条の規定の趣旨を踏まえ、困難な問題を抱える女性への支援の積極的かつ計画的な実施及び周知並びに支援を行う者の活動の連携及び調整を図ることとする。

都道府県は、段階的・重層的な支援を行っていくため、行政機関と民間団体それぞれの特性を生かした支援の在り方を検討するとともに、地域内の女性支援の実施状況や実施体制を把握し、女性相談支援センターの設置、女性相談支援員の配置、女性自立支援施設の設置状況を検証することが望ましい。また、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間団体との協働による女性支援を通じ、困難な問題を抱える女性がそれぞれの意思を尊重されながら、抱えている問題及びその背景、心身の状況等に応じた最適な支援を受けられる体制を整備するものとする。

都道府県は、広域的な観点から、市町村が実施する困難な問題を抱える女性への支援が円滑に進むよう、市町村における基本計画の策定状況や各種施策の取組状況等についての情報提供、市町村のニーズを踏まえた包括的な支援の展開等、市町村に対する支援を行うとともに、市町村の取組状況を把握し、格差が生じないよう必要な取組(女性相談支援員の配置状況の見える化や、未配置市町村に対する女性相談支援員の配置等)を促していく役割を有する。

市町村は、支援対象者にとって最も身近な、支援の端緒となる相談機能を果たすとともに、困難な問題を抱える女性の支援に必要となりうる児童福祉、母子福祉、障害者福祉、高齢者福祉、生活困窮者支援、生活保護等の制度の実施主体であり、支援の主体でもあることから、支援に必要な制度を所管する庁内関係部署はもとより、幅広い部署がそれぞれに主体性を発揮し、相互に連携の上、支援対象者が必要とする支援を包括的に提供するとともに、必要な場合は適切に当該市町村が所在する都道府県や他の市町村、関係機関等につなぎ、かつ、つないだ先の都道府県や他の市町村等と連携して支援を行う等、関係機関との緊密な連携が図られるよう配慮しなければならない。また、庁内での情報連携及び支援方針の決定が円滑に行われるよう、関連部署が参加する会議の開催等の工夫に努める。市町村は、法第8条第3項及び第11条第2項の規定により、この基本方針に即して基本計画を策定するよう努めるとともに、女性相談支援員を置くよう努めるものとする。

また、市町村は市町村内における、困難な問題を抱える女性への支援窓口の周知等に努めるほか、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間団体と協働しての女性支援を積極的に担うことに努める。

都道府県及び市町村は、単独で又は共同して、困難な問題を抱える女性への支援を適切かつ円滑に行うため、困難な問題を抱える女性への支援に従事する者その他の関係者により構成される支援調整会議を組織するよう努めるものとする。

都道府県及び市町村は、国による調査研究や研修等、予算事業等も活用しつつ、困難な問題を抱える女性への支援に係る施策の普及・啓発、効果的な支援の手法等に関する調査研究の推進、支援に係る人材の確保や養成及び資質の向上及び女性支援を行う民間団体の安全かつ安定的な運営の援助に努めるものとする。

3.支援の基本的な考え方

旧売春防止法においては、婦人保護事業の対象者はあくまで「保護更生」を必要とする者として位置づけられており、支援対象者本人の意思の尊重や、本人の状況に応じた自立支援の重要性については明確に謳われてこなかった。法に基づく困難な問題を抱える女性への支援は、旧売春防止法に基づく「保護更生」の考え方とは大きく異なり、法第3条に規定する基本理念に基づいて行われるべきであり、困難な問題を抱える女性本人の心身の安全・安心の確保等に留意しつつ最大限にその意思を尊重し、本人の立場に寄り添って、相談やアウトリーチ等による発見から相談へつないでいくことが重要である。また、一人ひとりのニーズに応じて、施設等への入所、生活支援や被害からの回復支援を行い、地域生活への移行や自立支援まで、地域の関係機関等が連携・協働して包括的な支援を実施するものとする。

なお、支援に際しては、次の点に十分留意する必要がある。

① 支援対象者が目指すべき自立は、経済的な自立のみを指すものではなく、個々の者の状況や希望、意思に応じて、必要な福祉的サービス等も活用しながら、安定的に日常生活や社会生活を営めることを含むものであり、「本人の自己決定」及び「自己選択」が重要な要素である。支援に当たっては、支援対象者が自己決定できるよう十分な情報提供に基づく、丁寧なソーシャルワークを行い、支援対象者に寄り添い一緒に考えていく姿勢が求められること。

② 支援に当たっては、多様な困難な問題を抱えた若年世代から子育て世代、中年・高齢世代と、幅広い年齢層の女性それぞれのライフステージに合わせて、各関係機関や民間団体等とも連携し、支援対象者の立場に寄り添った支援を行うことが必要であること。

③ 多様で複合的な困難な問題を抱える支援対象者の自立に向けての支援は、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害に遭った者をはじめとする支援対象者の多くが精神や身体を傷つけられ、自らの意思や希望等を表出することが難しい状況に置かれている場合も多く、自立を困難にしている諸要因を理解し、問題解決に向けて包括的に対応していく必要があること。

④ 支援対象者の属性や課題にかかわらず、幅広く相談を受け止め、支援対象者と寄り添い、つながり続ける支援を行うとともに、各関係機関につなぐ支援が重要であること。

⑤ 各関係機関や民間団体等が十分に協働・連携を図りながら継続し、寄り添いながら支援を行うことが重要であり、支援が途切れても繰り返しつながり支えていく姿勢を持って、支援に当たることが重要であること。

⑥ 特に、行政機関に支援を求めることができない、あるいは求めない女性の存在に留意し、アウトリーチ等を積極的に行う民間団体とも連携した支援対象者の早期発見への取組を進めることが必要であること。若年女性については、児童相談所等の関係機関とも連携しながら、制度の狭間に落ちないよう、留意して対応する必要があること。

⑦ 支援に関わる者は、相談や保護の日時、相談先や支援対象者の氏名等を含む支援対象者の安全に関わる情報の取扱いに万全を期するものとし、支援対象者のプライバシーを尊重し、その個人情報について適切に取り扱うこと。また、関係機関が連携して支援を行う場合には個人の情報について共有することが必要となるため、支援調整会議を柔軟かつ機動的に活用するほか、共有する情報の取扱いについてあらかじめルールを決めることが望ましい。

4.支援に関わる関係機関等

(1) 女性相談支援センター

女性相談支援センターの前身は、旧売春防止法において「婦人相談所」として規定され、「要保護女子」の「保護更生」に関し、①相談に応じること、②必要な調査や判定、指導を行うこと、③「要保護女子」の一時保護を行うこととされていた。法における女性相談支援センターは、困難な問題を抱える女性を支援するため、①支援対象者の立場に立って相談に応じることや、相談を行う機関を紹介すること、②支援対象者及び同伴家族の安全確保及び一時保護を行うこと、③支援対象者の心身の健康の回復を図るため、医学的又は心理学的な援助等を行うこと、④支援対象者の自立を促進するための情報提供、助言、関係機関との連絡調整を行うこと、⑤支援対象者が居住して保護を受けることができる施設の利用について、情報提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこととされている。女性相談支援センターは都道府県に設置義務があるほか、指定都市が設置することができる。

女性相談支援センターは、支援対象者が抱える問題やその背景、心身の状況等を適切に把握するためのアセスメントを踏まえ、本人の希望と意思を最大限に尊重しながらその時点において最適と考えられる支援を検討、決定し、実施する。アセスメントは一時保護の有無にかかわらず、支援の方針を決定するために必要なことであり、その際には、本人の同意を得た上で可能な限り市町村等の女性相談支援員や民間団体によるアセスメント結果の活用などの関係機関からの情報収集や分析、センター内のケース検討会議や支援調整会議等を活用した状況分析や支援内容の検討を行うことが重要である。また、一時保護を実施した場合や、女性自立支援施設への入所による自立支援が必要である場合、各種の社会福祉サービス等を組み合わせながら支援を行う必要がある場合等を中心とする個別ケースについては、健康状態が許さない場合等の例外を除き、本人の参画を得た上で、具体的な個別支援のための計画を策定する必要がある。なお、法の施行により、旧売春防止法に基づき制定された「婦人保護事業実施要領」は廃止され、従来の同実施要領に基づく「保護更生」を目的に行われてきた「判定」や「行動観察」は今後実施しない。さらに、女性相談支援センターは、関係機関と連携して支援を行う際の主たる調整機能を果たすことが望ましい。

女性相談支援センターの所長は、女性相談支援センターに関する政令(令和5年政令第85号)第1条において、「所長の職務を行うに必要な専門的な知識経験及び女性の人権に関する識見を有するもののうちから任用しなければならない」とされているが、女性相談支援センターの所長は、困難な問題を抱える女性への支援又はその関連分野に取り組んだ相当年数の実績を持ち、高い人権意識とともに支援対象者の保護、被害回復支援、自立支援等に関する専門知識を有するものであることが望ましい。

これまで一時保護される者は、配偶者等からの暴力を受け、安全確保が必要なものが中心となっていたが、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律施行規則(令和5年厚生労働省令第37号(以下「法施行規則」という。))第1条各号に規定する多様な一時保護の対象者に対応するためにも、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律第九条第七項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(令和5年厚生労働省告示第109号)を満たす者への委託も積極的に検討することが望ましい。

(2) 女性相談支援員

女性相談支援員の前身は、旧売春防止法において「婦人相談員」として規定され、「要保護女子」の発見、相談への対応、必要な指導等を行うこととされていた。法における女性相談支援員は、地方公共団体において、困難な問題を抱える女性の発見に努め、その立場に立って相談に応じ、及び専門的技術に基づいて必要な援助を行う職員である。都道府県及び女性相談支援センターを設置する指定都市は女性相談支援員を置くものとし、指定都市以外の市町村は女性相談支援員を置くよう努めるものとする。女性相談支援員は支援対象者が適切な支援を受けられるよう、丁寧なヒアリングによるアセスメントを行い、支援対象者の意思決定を支援し、必要に応じて関係機関と連絡調整を行う。市町村等の女性相談支援員は、支援対象者にとって最も身近に相談できる支援機関に属する者として、支援への入り口の役割を果たすとともに、支援対象者に寄り添いながら、支援に必要となりうる児童福祉、母子福祉、障害者福祉、高齢者福祉、生活困窮者支援、生活保護等の制度の実施機関と連携して、本人のニーズに照らし、戸籍や住民票の発行、転出入手続、各種手当の受給に係る手続、公営住宅への入居、児童の養育に関する支援、各種福祉サービスの調整等のコーディネート及び同行支援を行い、関係部署と連携して支援対象者を適切な支援につなげる役割を有し、継続した支援を行うものである。なお、女性相談支援員が設置されていない市町村においては、女性相談を担当する部署において必要な支援を行う。また、一時保護や女性自立支援施設の利用等を要する者に関しては、都道府県との連絡調整を行う。都道府県の女性相談支援員は、困難な問題を抱える女性への支援の中核を果たす機関に属する者として、支援対象者にとって適切な生活の場で適切な支援が受けられるよう、支援対象者の意思決定を支援し、関係機関と連絡調整を行う。また、生活の場となる施設の目的、役割及び支援の内容について支援対象者に説明した上で、本人の同意を得て一時保護や女性自立支援施設等の利用の調整を行う。

女性相談支援員の任用に当たっては、その職務を行うのに必要な能力及び専門的な知識経験を有する人材の任用に特に配慮するとともに、女性相談支援員は支援対象者と継続的な信頼関係を構築することが極めて重要であり、長期的な支援が必要なケースも多数存在することに留意することが必要である。また、支援に当たり、女性相談支援員が孤立することのないよう、各都道府県又は市町村においては、個々の女性相談支援員の業務を十分にサポートする必要があるとともに、女性相談支援員が支援に必要な情報等へのアクセスを制限されていることや、支援に活用すべき他部署のサービス・給付等との連携が図りづらい状況に置かれることは、女性相談支援員の役割を果たすに当たって支障となるため、その役割を十分に果たすことができるよう、必要な情報等へのアクセスや支援ツールの利用、他部署連携等について、当該支援員が所属する部署の長が十分に配慮することが必要である。

女性相談支援員は、困難な問題を抱える女性にとっての相談窓口となり、必要に応じて関連施策や制度等の活用、関係機関との連携等を図りつつ支援を行う者であるため、社会福祉に関する知識や、相談支援に関する専門的な技術・経験を持ち、任用後も研修や勉強会等を通じて継続的に支援のための能力向上に努めるとともに、女性相談支援員をサポートする体制を整備することが望ましい。

また、女性相談支援員は、個別の相談者が抱える障害や疾病、暴力や虐待被害等の経験等にも配慮しつつ、相談者の意思を勘案した支援ができるよう、アセスメントを行い、個別の支援計画の策定に参画する。

(3) 女性自立支援施設

女性自立支援施設の前身は、旧売春防止法において、「要保護女子」を収容保護するための「婦人保護施設」として規定されていた。法における女性自立支援施設は、①「困難な問題を抱える女性を入所させて、その保護を行う」こと、②入所者の「心身の健康の回復を図るための医学的又は心理学的な援助を行う」こと、③「自立の促進のためにその生活を支援」すること、④「退所した者について相談その他の援助を行うこと」とされている。また、女性自立支援施設においては、入所者が同伴した児童に対する学習及び生活に関する支援を行うこととされている。

女性自立支援施設は法において必置とはされていないが、様々な課題を抱えて他に居場所を見つけることが困難であるような者を含め、困難な問題を抱える女性が中長期に滞在できる落ち着いた環境で心身の健康の回復を図り、個々の自立に向けた準備をするための重要な機関であり、各都道府県に設置されることが望ましい。また、女性自立支援施設の広域利用を進め、支援対象者が必要に応じて入所できる体制をつくることが望ましい。

女性自立支援施設への入所決定は都道府県(女性相談支援センター)が行うが、施設への入所決定前に、支援対象者本人が施設の見学や体験宿泊を行い、事前説明を受ける機会を設けるとともに、入所前に何らかの支援を受けていた経緯のある支援対象者については、当該支援(入所前の民間団体による支援を含む。)の内容を都道府県において十分に把握した上で、当該支援の提供主体と積極的・継続的に連携することを検討することとする。また、入所前及び入所後においても、支援対象者の意向を丁寧に確認し、施設内で支援対象者が適切な支援を受けられているかどうかも含めて、入所決定を行った都道府県(女性相談支援センター)と女性自立支援施設が継続的に協議・確認する必要がある。さらに、女性相談支援センターにおける一時保護を経なくとも、同センターによる女性自立支援施設への入所決定及び入所手続きは可能であるため、都道府県においては、女性自立支援施設への入所に関する手続を積極的に整備することとする。

女性自立支援施設に入所する者は、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害から逃れ、それまでの居場所を失ったり、経済的に困難な状況を抱える等により、今後の生活に大きな不安を感じている場合が多い。そうした入所者の日常生活を回復していくためには、支援者が丁寧に寄り添い、傷ついた心のケアや今後の生活の不安へのケアを専門性をもって行っていくことが重要である。とりわけ性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害からの回復の支援に際しては、心理職等による専門的なケアが重要である。

女性自立支援施設において自立に向けた支援を行うに当たっては、施設の次の生活の場も視野に、都道府県及び市町村が長期的に関わっていくことや、必要に応じて(入所前に支援を行っていた団体・機関を含め)外部の機関・団体との継続的な連携を図っていくことが望ましい。

なお、女性自立支援施設には配偶者暴力被害者など加害者が探索することにより、危害を加えられる危険性のある支援対象者も生活していることから、事前の施設見学、体験宿泊の実施に当たっては施設の秘匿性の維持に十分留意して行うものとする。

(4) 民間団体等

法第13条においては、都道府県が民間団体と協働して支援を行うことが規定され、同条第2項では市町村が民間団体と協働した支援ができる旨が規定されている。困難な問題を抱える女性に対しては、独自の支援を実施している民間団体等が存在しており、これらの民間団体等の特色である柔軟性のある支援や、これまでの活動の中で蓄積された知見、育成されてきた人材等は、困難な問題を抱える女性への支援を進める上で重要である。困難な問題を抱える女性に対し、訪問や巡回、居場所の提供、SNS等を活用した相談支援やアウトリーチによる早期発見、女性相談支援センターや児童相談所、医療機関や警察等の支援に関係する機関への同行、一時保護の受託、地域における生活の再建等の自立支援など、各団体の特色を生かした活動により、行政機関のみでは対応が行き届きにくい支援を行っている民間団体との協働が重要である。

民間団体は、都道府県及び市町村と対等な立場で協働し、互いの活動を補完しながら、困難な問題を抱える女性への支援を行う存在として捉えるべきものであり、都道府県及び市町村は、当該団体の自主性を尊重しつつ、当該団体がそれまでの活動の中で築いてきたネットワークや支援手法などを最大限に活用できるような支援体制の構築を検討するものとする。

人材や運営資金の確保が困難な民間団体があることや、民間団体が少ない地域もあることから、国及び地方公共団体は、民間団体が安全かつ安定的に運営を継続するに当たっての支援や、女性支援を行う意向のある既存の民間団体及び新規の民間団体の立ち上げに関する支援等を検討し、実施することが必要である。その際、若年女性や中高年女性など、支援が届きにくい人たちを支援につなげることを十分考慮しながら、幅広い年代の困難な問題を抱える女性の支援に取り組む団体が育成されるよう留意する。

(5) その他関係機関

女性が抱え得る困難な問題は、性的な被害、配偶者や親族からの暴力や虐待、経済的な困難、障害、住居問題等多岐に渡っており、最初にたどり着く可能性のある支援窓口も様々であることが想定され、さらにひとりの女性が様々な問題に複合的に直面しているケースも多数であると想定される。また、女性が自らの住所地から離れた場所で保護されるケースもある。そのため、支援を行う地方公共団体相互間の緊密な連携が必要であるとともに、地方公共団体は、女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設、児童相談所、児童福祉施設、保健所、精神保健福祉センター、市町村保健センター、医療機関、職業紹介機関、職業訓練機関、教育機関、保育園、都道府県警察、裁判所、日本司法支援センター、弁護士等、配偶者暴力相談支援センター、都道府県及び市町村の女性支援担当部局、障害保健福祉部局及び男女共同参画主管部局等、障害に係る相談支援事業所、生活困窮者自立相談支援機関、福祉事務所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、男女共同参画センター、社会福祉協議会、民間団体、民生委員・児童委員、その他社会福祉サービス関係者等、必要な関係機関の間で、十分な連携が図られるよう、配慮しなければならない。また、保健師、民生委員・児童委員、保護司、人権擁護委員等は、女性相談支援センターや女性自立支援施設等による支援が適当と考えられる者を発見した場合は、女性相談支援センターをはじめ、各自治体の女性相談支援員、女性相談窓口と積極的に連携することが望ましい。

5.支援の内容

(1) アウトリーチ等による早期の把握

困難な問題を抱える女性が、できる限り早期に相談支援を行う窓口につながり、必要な支援を受けることができるよう、国、都道府県及び市町村は、女性相談支援センターや女性相談支援員、民間団体に相談や支援を求めることが可能であることについて広く周知を行う必要がある。また、来所や電話による相談支援だけでなく、SNS等を活用した多様な相談支援に取り組んでいくことが重要である。

都道府県及び市町村においては、4(5)に掲げた関係機関等において把握した情報について、必要な場合には支援に携わるべき関係機関の間で速やかに情報共有が行われるよう、本人同意等の個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、連携体制を普段から築いておく必要がある。

女性相談支援センターや女性相談支援員は、支援の入口の段階は可能な限り幅広い者を対象とし、本人の意向を十分に尊重し、背景事情や心身の状況に応じた最適な支援を行うために、適切な機関や団体等との連携を図る。

さらに、インターネットの活用や巡回等によるアウトリーチは、困難な問題を抱える女性がいると想定される場所へ直接出向き、探し、声をかけ、問題解決を焦らずに根気強く信頼関係を築く中で支援につなげていくものであり、支援を必要としながらも相談につながりにくい幅広い年齢層の対象者の早期把握に有効かつ重要である。都道府県及び市町村においては、民間団体への委託等により、こうしたアウトリーチによる早期把握を通じた適切な支援に努めることが必要である。

また、相談に至っていないが支援が必要な女性に対し、民間団体等による気軽に立ち寄れる場や一時滞在場所において支援対象者に寄り添い、つながり続ける支援を行うことは、女性達との信頼関係の構築にとって重要であり、公的支援を必要とする女性への支援の提供に向けても有効であると考えられる。なお、相談に至っていないが支援が必要な女性には、女性自身が困難に気付いているが他者に言えない場合や、女性自身が気付いていない又は気付きを避けている場合、厳しい精神状態にある場合など様々であり、女性自身の状態に配慮しつつ適切に対応していくことが重要である。

(2) 居場所の提供

困難な課題を抱えていても、過去に支援を求めた際の二次被害等の経験から、行政機関に相談することのハードルが高く相談窓口にたどり着けない女性や、支援を受けられることに気づかない女性もいる。民間団体や地方公共団体による、気軽に立ち寄り、安心して自由に自分の気持ちや悩みを話すことができ、必要な場合は支援者と話すことや、他の女性達とも交流することができ、場合によっては宿泊できるような場は、相談のきっかけ作りに有効である。

巡回等によるアウトリーチや気軽に立ち寄れる居場所から、支援が必要な女性を把握した場合、本人の希望や必要性に応じ、女性相談支援センター等の必要な支援機関へ同行してつなぎ、支援機関につないだ後も、それまで支援を行ってきた民間団体等も面会の同席や支援調整会議への参加等により、支援の継続性を保つことで、女性が安心して支援を受けられるようにすることが重要である。

(3) 相談支援

困難な問題を抱える女性に対する相談支援に当たっては、従前の婦人保護事業の根拠規定であった旧売春防止法の目的が「保護更生」であったのに対し、法は「困難な問題を抱える女性の福祉の増進」等を目的とするものであり、この法目的に沿った「本人中心」の相談支援を進めることが何よりも重要である。

相談支援は、困難な問題を抱える女性自身と支援者との間の信頼関係を築きながら、女性が必要とする支援に適切につなげるために重要な過程でもある。

女性相談支援員(都道府県・市町村)や女性相談支援センターで相談支援に当たる職員は、相談支援に係る専門的な技術を持ち、本人の立場に寄り添って、本人の課題や背景等の内容を本人とともに整理し、的確なアセスメントに基づき、最大限に本人の意思を尊重しながら支援方針等を検討し、支援に必要な関係機関の調整等を進めていく必要がある。

一時保護が必要な場合や、女性自立支援施設への入所が必要である場合、各種の社会福祉サービス等を組み合わせながら支援を行う必要がある場合等を中心に、健康状態が許さない場合等の例外を除き本人の参画を得て個別支援のための計画の策定に努めるとともに、計画策定後も、女性が置かれている状況に応じて柔軟な対応を行っていくことが必要である。

とりわけ、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害により、尊厳を著しく傷つけられた女性には、これらの暴力等の構造から離脱し、安心できる安定的な生活を確立し、心身の健康の回復を時間をかけて図っていくことが必要である。各種の社会福祉サービス等の調整等を担当する市町村等の女性相談支援員とも連携を図りながら、相談支援・関係者調整の中心を女性相談支援センターが担い、支援を進めていくことが必要である。

市町村等の女性相談支援員は、庁内においては、各種の社会福祉サービス等に係るコーディネーター機能を果たし、庁外に対しては、当該市町村等における支援策の調整窓口として全体を統括する役割を有している。

また、今まで支援を受けてきた経験から民間団体による相談支援等のほうが利用しやすいと考える支援対象者については、行政による支援が必要な場合には、初期段階の支援をした民間団体及び本人が参画する形で必要な個別支援のための計画の策定に努めることが重要である。

さらに、女性相談支援センターや女性相談支援員(都道府県・市町村)においては、支援に関する記録を適切に保存し、繰り返し相談のある者への対応や他機関への連携等に可能な限り活用できるようにすることが必要である。

なお、こうした女性相談支援員による相談支援に関しては、別途策定する「女性相談支援員相談・支援指針」に示された事項を基本として相談支援に当たることが重要である。同指針については、法施行後も状況変化に応じた適切な改訂が行われていくことが必要である。

(4) 一時保護

女性相談支援センターにおいては、法第9条第7項の規定に基づき、以下の場合に、一時保護を自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。

① 性暴力や性的虐待、性的搾取等による性的な被害等を防ぐために、支援対象者を緊急に保護することが必要と認められる場合(法第9条第7項)

② 配偶者暴力防止等法第1条第1項に規定する配偶者からの暴力から保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第1号)

③ ②に該当する場合以外で、同居する者等からの暴力から保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第2号)

④ ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条第1項に規定するつきまとい等又は同条第3項に規定する位置情報無承諾取得等から保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第3号)

⑤ 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第2条第7号に規定する人身取引等により他人の支配下に置かれていた者として保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第4号)

⑥ 支援対象者が定まった住居を有さず、又は心理的虐待など何らかの理由で帰宅することで心身に有害な影響を与えるおそれがあると認められる場合であって、保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第5号)

⑦ 支援対象者について、その心身の健康の確保及び関係機関による回復に向けた支援につなぐために保護することが必要と認められる場合(法施行規則第1条第6号)

⑧ その他、一時保護を行わなければ、支援対象者の生命又は心身の安全が確保されないおそれがあると認められる場合(法施行規則第1条第7号)

なお、一時保護は本人同意の下で行うものであるが、従来、一時保護すべき状況であるにも関わらず、例えば、①一旦一時保護しなければ心身の安全が確保されないおそれがあるが、かつて通知で掲げられていた「他法他施策優先」として、他施策への調整までの間も一時保護が行われない場合、②一時保護所の退所後の見通しが立っていないと一時保護が行われない場合、③本人の希望や意思のできる限りの尊重を行わずに、希望や意思に反する条件提示を行う等により本人が同意しない状況に至る等、一時保護が必要な場合であっても一時保護が行われない場合があった旨の指摘があることに十分留意し、必要な一時保護(一時保護委託を含む。)を適切に実施する必要がある。

一時保護は、女性相談支援センターに設置される一時保護所において行うほか、本人の状況等に応じて、厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うことも、個々の支援対象者の状況に応じた適切な保護を行う観点から効果的である。

とりわけ、女性自立支援施設や民間団体等の一時保護委託先において、緊急に一時保護すべき状況が把握され、本人が保護を希望する場合など速やかに一時保護すべき状況を想定し、あらかじめ、女性相談支援センターとして一時保護委託先に対して円滑に一時保護委託ができるように連絡体制等を整備しておくことが重要である。

支援対象者の状況は、例えば、暴力を振るう配偶者等から避難中である、医療的ケアが必要である、妊娠している、児童を同伴している、高齢である、学生であり可能な限り通学の機会を確保する必要がある、何らかの事情で帰宅が困難であるなど、多様である。また、居所等の厳重な秘匿を要する場合と、居所等を秘匿する必要性は薄く、むしろ社会とのつながりを維持することが必要な場合とがあり、必要とする支援の性格も前者と後者では大きく異なる。さらに、配偶者からの暴力等の秘匿を要する背景事情が一時保護の途中で判明する場合等も想定される。

このため、支援対象者の状態に応じた複数の一時保護所や委託先を検討しておくことが望ましい。

さらに、虐待等の家庭環境を背景とする若年女性のうち未成年の一時保護に際しては、困難な問題を抱える女性であると同時に児童でもあり、当該女性を一時保護することは、当該女性の親権者の監護教育権との関係等を考慮する必要があることから、民間団体等から一時保護の相談が入った際には、地域の実情に応じて市町村等の女性相談窓口及び女性相談支援員に相談・連携するとともに、女性相談支援センターが児童相談所と連携し、児童相談所から女性自立支援施設や民間団体等に対して児童福祉法の規定に基づく一時保護委託を行うことも含め、あらかじめ女性相談支援センターと児童相談所の間で、児童福祉法又は法による一時保護の際の具体的な手続等の連携方法を、ケースの状況に応じて十分に協議しておく必要がある。

また、困難な問題を抱える女性が、居所が一定しない、あるいは、居住地に戻ること自体に困難を抱える場合もある。こうした場合、未成年である若年女性に関しては保護者の居住地を管轄する児童相談所が一時保護を行う(女性自立支援施設や民間団体に対する一時保護委託を含む。)こととなっているが、成人女性に関しては女性の現在地(一時保護を要する状況で女性が所在する地)の女性相談支援センターが一時保護の判断を行う(一時保護委託等を行う)ことを原則とする。

なお、女性相談支援センターが民間団体に一時保護を委託した場合でも、一時保護した者に対する委託者としての責任は引き続き女性相談支援センターが負っており、一時保護委託先及び市町村等の女性相談支援員と十分に連携しながら支援方針の検討を行うことが必要である。特に配偶者からの暴力等からの緊急避難として一時保護を実施する場合には、必要に応じて警察等とも連携して、保護に至るまでの安全確保を行うこととする。

一時保護中は、支援対象者の精神的な安定等に配慮しつつ、支援対象者が置かれている状況の整理と支援対象者の意向確認を行い、その際、法第15条第1項に規定する支援調整会議における個別ケース検討会議が開催された場合はその議論も踏まえ、本人の希望・意思を最大限に尊重して今後の支援方針の検討及び決定を行う。

また、一時保護期間中に自立に必要な様々な情報提供を行い、支援対象者と共に考えながら、自立について本人の意思を確認し、生活再建策など自立支援の方策について検討することが重要である。

一時保護は、支援の方針が決定し、必要に応じて施設への入所等の手続が終了するまでの短期間実施することが想定されているが、一定期間を過ぎたことを理由に機械的に一時保護を終了することはあってはならず、終了後の支援対象者の生活の安定の確保が図られるまで一時保護を継続するものとする。

女性相談支援センターにおいては、一時保護を終了する場合は、支援対象者が安定した状態で終了後の生活の場に移行し、定着することができるよう、終了後も含めた相談支援等を市町村等の女性相談支援員と連携しながら実施するとともに、支援対象者が終了後に異なる地方公共団体に居住する場合は、移住先の地方公共団体の女性相談支援センターや女性相談支援員等と十分に連携することが必要である。

一時保護期間における支援対象者の通学・通勤について、加害者の追及がないなど安全上問題がなく、本人が通学・通勤を希望しており、現在の就学・就労の確保が将来の自立した生活に有益である場合は、通学・通勤が可能な施設等に一時保護委託を行うことを含め、できる限り、通学・通勤できるよう配慮することが重要である。

(5) 被害回復支援

困難な問題を抱える女性の中には、性的な被害や、配偶者、親族等からの身体的、心理的、性的な暴力等の被害を受け、心的外傷を抱えている者や、差別や社会的排除等の経験に起因する困難や生きづらさ等を抱えている者も多く含まれる。このような経験からの心身の健康の回復には一定の期間を要することも想定されるため、支援に当たっては、医療機関等の専門機関にも相談・連携しつつ、心身の健康の回復のための医学的又は心理学的な援助を行うと同時に、10の調査研究等の結果も踏まえつつ、生活の中での被害回復に中長期的に寄り添い続ける支援を行うことが必要である。

被害回復支援には支援者にも専門性が求められ、また、被害によって奪われてきた、あるいは育てられてこなかった生活する力の獲得に向けた支援や、人との距離の取り方を含めた人間関係の再構築に対する支援が求められる。こうした支援が適切に届けられるよう、女性相談支援センター及び女性自立支援施設においては、心理療法担当職員や個別対応職員等の措置費の加算も活用しつつ、被害回復に向けた専門的な支援を担っていくことが重要である。

また、被害回復途上ではフラッシュバック等が繰り返されるが、被害回復には当然のプロセスであり、支援者は本人の置かれている状況を理解し、本人の気持ちを尊重しつつ、本人に寄り添う丁寧な支援を行うことが必要である。

(6) 生活の場を共にすることによる支援(日常生活の回復の支援)

困難な問題を抱える女性に対しては、一時保護等の後に、中長期的に利用可能な住まいを提供し、本人の状況や意思を十分理解した女性相談支援員のサポートを受けながら、安全かつ安心できる環境の下で生活できるようにすることで、被害からの心身の健康の回復や、その人らしい日常生活を取り戻せるように支援していくことが重要である。

特に、支援につながるまでの間に、安心できる生活環境や信頼できる人間関係の中に置かれてこなかった支援対象者に対しては、安心できる生活環境と信頼できる人間関係の中で、支援者や他の入所者と共に生活を送る日々を重ねることにより、その人らしく生きることへの希望につなげていくことが重要である。

また、こうした女性に対する支援の実施に向けては、女性自立支援施設が民間団体と連携して施設の有効活用を図ることや、都道府県や市町村が、場所を提供して民間団体に運営を委託すること、若年女性等向けのシェアハウス等の社会資源を増やすことも有効と考えられる。

(7) 同伴児童等への支援

同伴児童への支援は、学習支援に限らず、同伴児童本人の状況を児童本人や保護者等からよく聞き取った上で、必要に応じて医療機関や児童相談所、市町村の児童福祉主管課、教育機関等とも連携しつつ、心的外傷へのケアや相談支援等も合わせて実施し、一人の児童として尊重されるようにすることが求められる。特に、保護者である困難な問題を抱える女性の心身のダメージが強く、同伴児童に対する養育が十分に行えない状況の場合は、保育やショートステイ、社会的養育等の適切な支援につなげていく必要がある。

また、児童の就学については、住民基本台帳への記録がなされていない場合であっても、その児童が住所を有することに基づいて就学を認める扱いがなされている。一時保護を実施した地方公共団体においては、一時保護の対象者の同伴児童が一時保護中でも児童の教育を受ける権利が保障されるよう、通学時の安全確保や一時保護所内での学習支援等を含め、教育委員会や学校等と連携するとともに、本人及び保護者に対して必要な情報提供を行うものとする。同伴児童が年長の男児等である場合、一時保護に当たって母子分離が行われるケースもあることから、母子分離を防ぐため、親子で入所可能な施設等に一時保護を委託することも検討すべきである。

一時保護の対象者が児童以外の者(例えば高齢の親族等)を同伴する場合には、当該者の状況をよく確認し、本人の意思を十分踏まえた上で、必要に応じて他機関とも連携しながら支援を行う。中長期的な入所を伴う支援が必要と判断された場合には、女性自立支援施設への入所も含め検討するものとする。

(8) 自立支援

困難な問題を抱える女性への支援において、自立とは経済的な自立のみを指すものではなく、個々の支援対象者の状況や希望、意思に応じて、必要な福祉的サービス等も活用しながら、安定的に日常生活や社会生活を営み、その人らしい暮らしを実現することを含むものである。

女性相談支援センターや市町村において個別のケースにおける自立支援の方針を検討するに当たっては、本人の希望や意思を引き出すための十分な情報提供に基づく丁寧なソーシャルワークを行った上で、支援調整会議における個別ケース検討会議の場も活用し、検討を行う。

また、女性自立支援施設においては、支援調整会議における個別ケース検討会議で議論された内容等も踏まえつつ、本人の希望や意思を最大限に尊重するため、健康状態が許さない場合等の例外を除き本人の参画を得て個別支援のための計画を策定する。

困難な問題を抱える女性の自立に向けては、例えば以下のような観点から検討されることが重要である。

① 医学的又は心理的支援

自立支援に向けた第一歩として、まず健康支援が重要である。困難な状況下で必要な医療の受診ができなかった人が多く、嘱託医等による必要な医療の受診を勧める。特に、性暴力、性的虐待、性的搾取等の被害からの回復には心理的ケアが第一に行われる必要がある。

心の深い傷の回復には長い時間が必要となる。医療機関等の専門機関と連携して、個々の支援対象者の状況の違いに応じた専門的な支援を通じて、丁寧に回復につなげていくことが、自立へのステップとしても重要である。

(5)の内容も踏まえつつ、心理療法担当職員の加算の活用による配置や、精神科医療機関との連携体制を整備し、必要に応じて精神科受診につなぐことも重要である。

② 生活支援

困難な問題を抱える女性の中には、日常生活に必要な基礎的な知識や習慣を身につける機会が少なかった者や、日常生活に何らかの介助が必要な者が含まれることが想定される。女性相談支援センターの一時保護や女性自立支援施設では、そのような女性に対して、日常生活の支援の目的が生活の回復にあることを認識し、人権尊重の理念の下、個別の背景やこれまでの生活習慣に配慮し、一般的な生活の力を身につけるための支援や、市町村と連携し保育等の子育て支援のためのサービスや障害福祉サービスを活用するための手続支援を行い、支援対象者が日々の生活を安定して送ることができるようにするための環境を整える必要がある。

なお、金銭管理は生活支援の重要な課題である。女性自立支援施設に入所中の女性に対しては、今までの生活の中での配偶者等からの経済的支配や借金などの本人の状況に応じて、信頼関係を構築しながら本人の尊厳に配慮して、金銭管理の支援を行うことが必要である。

③ 日中活動の支援

就労等の日中活動の支援に際しては、女性本人に精神障害、知的障害、発達障害等の障害がある場合や、本人に就労経験が乏しい場合等、様々な課題が存在することが想定される。女性相談支援センター、女性相談支援員及び女性自立支援施設(当該女性自立支援施設に入所している場合)は、支援対象者に寄り添って意向を丁寧に聞き取り、就労意欲がある場合は、就労支援を行っている行政機関や民間団体との連携を図り、本人への求人情報の提供、職業相談の実施や職業能力開発の支援等につなげる。また、障害により一般就労が困難な者については、女性自立支援施設における日中活動や、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に規定する就労継続支援等の活用等も含め、日中活動の確保を検討する。

女性自立支援施設における日中活動に際しては、内職等にとどまらず、それまでの生活経験や社会経験の中で得られなかった経験を積むことに資するようなプログラムを検討することも重要である。

④ 居住支援

支援対象者が地域社会において安定的な生活を営むためには、住まいの確保が重要である。女性相談支援センター、女性相談支援員及び女性自立支援施設(当該女性自立支援施設に入所している場合)は、支援対象者が住まいを確保できるように、地方公共団体や住宅確保要配慮者居住支援法人(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第40条に規定する住宅確保要配慮者居住支援法人をいう。)等と連携する必要がある。住まいの確保に当たっては、公営住宅、UR賃貸住宅等の活用を図ることも有効と考えられる。また、民間賃貸住宅への入居に際して必要な保証人が確保できない場合、女性相談支援センター、女性相談支援員及び女性自立支援施設は、民間の保証会社等に関する情報提供を行う等により支援する。

(9) アフターケア

地域生活への移行に際しては、万全の状態が整ってからよりも、一部の課題がありつつも自立した生活へ移行する場合が多い。自立がすなわち孤立とならないように、地域での生活再建を支えるアフターケアが重要である。

特に、障害や疾病を抱えている支援対象者には、地域移行後も切れ目なく、必要な医療や心理的ケアが継続して確保されるように留意することが重要である。

女性自立支援施設に入所した者は、退所した後についても、仕事や生活で行き詰まりを感じたり、悩みを抱えたりするなど、断続的な支援を必要とする可能性もある。そのため、退所後も安定して自立した生活が営めるよう、女性自立支援施設は市町村とも連携しつつ退所した者と定期的に連絡を取る等の継続的なフォローアップや相談支援、居場所の提供等を行うことが望ましい。国及び地方公共団体は、女性自立支援施設が退所者のアフターケアを行うための人員配置をはじめとする体制整備の支援に努めるものとする。

また、退所後に再び困難な状況に陥った際に、できる限り早く状況を察知し、再度の支援を円滑に実施できるよう、アフターケアに関わる女性相談支援センターや女性自立支援施設、女性相談支援員等は緩やかにつながり続ける支援が重要である旨を十分意識する必要がある。

6.支援の体制

(1) 連携の基本的考え方

困難な問題を抱える女性への支援に関わるすべての関係機関・団体が、対等な関係性の下、女性本人を中心に、連携・協働することが重要である。支援調整会議の個別ケース検討会議をはじめとする本人中心の会議及び個別ケースの支援を必要に応じて重ねていくことで、相互に情報を共有し、それぞれの機関・団体の支援についての考え方や特徴について理解を深め、連携・協働の体制を強化することにつながっていく。

(2) 三機関の連携体制

女性相談支援センター、都道府県及び市町村の女性相談支援員、女性自立支援施設の三機関は、困難な問題を抱える女性への支援の中核の機関である。これらの三機関は、対等な関係性のもとで協働して女性への支援を実施するものであり、三機関の間で、定期的な意見交換の実施により、日常的な連携関係を深めることが望ましい。

都道府県及び市町村の女性相談支援員又は女性相談支援センターでの相談の受付から女性相談支援センターにおける一時保護、女性自立支援施設への入所、地域生活への移行、地域生活の継続の支援まで、近隣の地方公共団体における各機関も含む三機関による連携により、包括的・継続的な支援を行う。

また、女性自立支援施設への入所に際しては、一時保護を前置することは制度上必須ではなく、必要に応じ女性相談支援センターで入所決定手続きを行い、一時保護を経なくとも直接女性自立支援施設に入所し、三機関による情報連携のもとで支援が受けられる体制を整備する。また、女性自立支援施設への入所に際しては、施設への直接の相談や、見学、体験宿泊等を可能とすることを検討し、安心して利用しやすい配慮を行うことが重要である。

なお、女性相談支援センターと女性自立支援施設の両者が併設されている場合が多いが、秘匿性の高い者の一時保護等に重点が置かれがちで、それぞれの機能が十分に発揮されていないという指摘もあることから、併設されている場合も、女性自立支援施設としての中長期的な専門的支援が行いうるようその在り方を検証することが重要である。

(3) 民間団体との連携体制

困難な問題を抱える女性への支援に関する施策を支援対象者に確実に届けるためには、独自の知見や経験、支援技術を持つ民間団体との協働が重要であり、個人情報の適正な取扱いを確保した上で支援調整会議を活用しつつ、行政機関による広範な分野の多様な支援施策と、民間団体による支援のそれぞれの強みを生かした相互連携が重要である。一方、人材確保や運営資金の確保が困難な民間団体もあることや、民間団体が少ない地域もあることから、国は、民間団体相互間で情報共有や意見交換、連携した支援ができるための全国的なネットワークの構築に努めるとともに、国及び地方公共団体において、各地域における支援の実質的な担い手となる、女性支援を行う意向のある民間団体の立ち上げ、民間団体が運営を継続するに当たっての支援や、人材育成の支援を行う。また、国は、行政機関と民間団体の協働事例の調査や、横展開に向けた取組を推進する。

なお、多様な民間団体の中には、必ずしも困難な問題を抱える女性への支援として適切でない団体もあるとの指摘もあり、国及び地方公共団体は、支援対象者や民間団体等からの情報を注意深く収集し、現場における支援に支障をきたすことのないよう適切な対応に努めるものとする。

また、連携に当たっては、幅広い年代の困難な問題を抱える女性の支援に取り組む団体が育成されるよう留意するとともに、困難な問題を抱える女性が、性暴力や性的虐待、性的搾取等の困難の原因・背景となっている構造に依存しないで生活することができるよう支援することの重要性に対する十分な理解が関係者に共有されるよう留意する。

(4) 関係機関との連携体制

支援対象者は、福祉、保健医療、子育て、住まい、教育その他、多岐にわたる分野における支援を必要としている場合が多く、三機関を中心としつつ、行政の他の分野との連携も必要不可欠である。

支援対象者が確実に次の段階の支援へと繋がるためにも、地方公共団体は、支援調整会議の場に関係機関が参画することによる連携体制の構築及び研修等を通じた日頃からの認識共有等に取り組む。また、特に支援対象者が児童を同伴している場合や、支援対象者本人が児童養護の対象者である場合においても、的確なアセスメントを踏まえて支援の方針が決定され、支援体制が整えられるよう、児童相談所や市町村の児童福祉主管課等との協力が必要である。さらに性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害による心的外傷等を抱えている者の場合は同被害の対応について専門的な知見を有し、被害直後からの支援を総合的に行う性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等の支援機関とも早期に連携し、心的外傷の被害回復支援に取り組みながら、日常生活の回復の支援等につなげていくことが重要である。

日常的に連携することが想定される関係機関の例としては、以下が挙げられる。

都道府県/市町村(福祉事務所、女性支援担当部局、障害保健福祉部局、男女共同参画主管部局等)

民間団体

警察/裁判所/日本司法支援センター/弁護士等

学校(幼稚園を含む)/教育委員会/保育園

保健所/精神保健福祉センター/市町村保健センター

職業紹介機関/職業訓練機関

児童相談所

医療機関/障害福祉サービス事業所/その他社会福祉サービス関係者等

配偶者暴力相談支援センター/性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター/男女共同参画センター

生活困窮者自立相談支援機関

母子生活支援施設

社会福祉協議会

民生委員・児童委員 等

(5) 配偶者暴力防止等法に基づく施策との関係

配偶者暴力被害者については、困難な問題を抱える女性として法の支援の対象に含まれる者であり、女性相談支援センターは配偶者暴力相談支援センターとしての役割も果たす。さらに、女性相談支援員は、配偶者暴力被害者の相談に応じ、必要な支援を行うことができる。女性自立支援施設は、配偶者暴力被害者の保護を行うことができる施設として位置づけられている。

配偶者暴力被害者については、加害者が探索することにより危害を加えられる危険性が高いなどの特有の事情も踏まえつつ、配偶者暴力防止等法及び配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針(平成25年内閣府、国家公安委員会、法務省、厚生労働省告示第1号)を踏まえて支援を行う必要がある。配偶者暴力被害者である入所者が居所の秘匿等を必要としていることが、他の入所者の自立に向けた社会生活等の活動に支障をきたす可能性もある等、法が配偶者暴力防止等法よりさらに広範な者を対象としていることから生じる課題もある。

国及び地方公共団体は、例えば、必要に応じて近隣自治体とも連携しつつ、配偶者暴力被害者をはじめとする所在地の秘匿性の必要性が高い場合と、地域に開かれた社会生活等が重要である場合とに対象を分けた上で、それぞれの支援に特化した施設の設置等それぞれの課題を踏まえた対応策や支援の在り方の検討に努める必要がある。

7.支援調整会議

(1) 支援調整会議の設置・構成員等

法においては、地方公共団体が支援調整会議を組織することを努力義務としている。支援調整会議は、困難な問題を抱える女性に早期に円滑かつ適切な支援を行うため、地方公共団体が、関係者を集めて組織する会議体である。支援調整会議においては、構成員となる地方公共団体や法人の役職員又は役職員であった者、構成員となる個人又は構成員であった個人に対して罰則のある守秘義務を設けることで、支援を必要とする女性の個人情報を含む情報を共有できることとしている。

支援調整会議は、地域の支援関係者の連携等を深めるとともに、個別の対象者について情報共有を行い、支援内容や支援の方向性の協議を行うものであることから、都道府県又は市町村が単独で、又は地理的な事情や地域資源の量など、地域の実情に応じて共同して組織することが想定される。その際は、近接分野の関係機関の連携を図るための会議で、構成員が共通的なものについては、それぞれの議論すべき事項が適切に議論されるのであれば、双方の会議を兼ねて開催すること等、既存の会議体を活用することを妨げるものではない。

支援調整会議の構成員としては、地方公共団体(都道府県・市町村)の女性支援担当部局、他の関連部局、福祉事務所、女性相談支援センター、女性相談支援センターから一時保護の委託を受けている者をはじめとする民間団体、都道府県や市町村に配置されている女性相談支援員、地域の女性自立支援施設、困難な問題を抱える女性に関し、訪問や巡回、居場所の提供、SNS等を活用した相談支援やアウトリーチ、関係機関への同行等の支援を実施している民間団体、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、支援に関係する福祉関係機関、就労支援機関等が考えられるが、必要に応じて、これに限らず幅広い適切な者を構成員とすることが望ましい。

(2) 支援調整会議の目的・議論内容・構成等

支援調整会議においては、困難な問題を抱える女性への支援を適切かつ円滑に行うために必要な情報の交換を行うとともに、困難な問題を抱える女性への支援の内容に関する協議を行うものとされている。その目的としては、①支援調整会議の構成員が地域における困難な問題を抱える女性の実態や、地域で活用できる資源を把握し、多機関間の連携強化を図るとともに地域資源の創出、開発を進めること、②支援対象者が個々に抱える問題や本人の意向、支援の実施における留意事項を共有し、支援に関わる各機関の役割や責任及び連携の在り方を明確化すること、③個別ケースについての支援調整会議では、健康状態が許さない場合等の例外を除き本人の参画を得た上で、アセスメントを踏まえた支援方針の決定等について協議し、本人の状況や意向等に合わせたより良い支援の選択肢を提供し本人が選択できるよう、様々な視点から検討し協議すること、④行政機関と民間団体等が協働してあるいは平行して支援を行う際に、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ効果的な支援を行うため、支援対象者についての情報を共有することがあげられる。

支援調整会議を運営する際には、①困難な問題を抱える女性への支援体制の地域における全体像及び調整会議全体の評価等を行う代表者会議、②個別ケースの定期的な状況確認や支援方針の見直し、支援対象者の実態把握等を行う実務者会議、③一時保護が必要な場合や、女性自立支援施設への入所による自立支援が必要である場合、各種の社会福祉サービス等を組み合わせながら支援を行う必要がある場合等の個別ケースについて詳細な支援方針を議論する個別ケース検討会議に段階を分けて実施することが考えられる。

(3) 支援調整会議の招集や留意点等

さらに、会議の主催者は都道府県又は市町村が想定されるが、関係者においても必要と考える場合は主催者に開催を要請できるようにすること、状況に応じて情報共有のための個別ケース検討会議を柔軟かつ機動的に開催することや、調整を担当する者を例えば市町村等の女性相談支援員とする等、地域の実情を踏まえつつ都道府県単位で明確にし、特に緊急に新たな個別ケース検討会議を招集する必要がある場合等に関係機関間の連絡調整が円滑に進むようにすることが重要である。また、オンライン等の活用については、高度な個人情報を取り扱うことについての十分な留意が必要である。

また、困難な問題を抱える女性への支援体制の評価を行う代表者会議においては、地域の支援機関における支援に対する苦情の状況等も踏まえて実施体制の評価を行うとともに困難な問題を抱える女性への支援に係る関係機関の共通認識の醸成を図っていくことが望ましい。

なお、支援調整会議で取り扱う個人情報については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の規定に基づいて取り扱われる必要があり、とりわけ、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる情報や、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報の取扱い等について十分に留意することが求められる。

支援調整会議については、地域ごとの実施状況や要保護児童対策地域協議会、DV対策地域協議会等の運用の状況を踏まえ、効果的、効率的な設置、運用の在り方についてさらに検討を進めることとする。

8.教育・啓発

国及び地方公共団体は、女性が困難な問題を抱えた場合に相談できる窓口や活用できる施策について、積極的な周知に努めるとともに、自己がかけがえのない個人であること、困難に直面した場合は支援を受けることができること等という意識の醸成を図るため、女性支援担当部局及び教育委員会等との連携による性暴力被害、性暴力や性的搾取等の加害防止等に関する教育・啓発等に努める。また、女性支援施策に関する一般市民に対する教育・啓発、広報等に努める。

9.人材育成

国及び地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援に関する研修を実施し、女性相談支援センターの職員や女性相談支援員(都道府県・市町村)、女性自立支援施設の職員、民間団体の職員等の専門的知識の習得及び資質の向上を図るものとする。

国は、職務の内容に応じた研修の内容の充実及び均てん化を図るため、都道府県等が活用することができる標準的な研修のカリキュラムの構築を検討するものとする。併せて、全国の関係機関の職員(女性相談支援センター、女性相談支援員(都道府県・市町村)、女性自立支援施設)に加え、地域の民間団体の職員等が、地域間格差の状況や優れた支援事例等について、互いの経験を共有し、共に学び合う機会の在り方を検討する。さらに、困難な問題を抱える女性自身が、身近な地域の支援機関を知ることができ、また、全国の支援機関が相互に連携を図りやすくなるよう、困難な問題を抱える女性支援に係る全国的なポータルサイトを構築し、リスク管理を十分に行った上で、同サイトにおいて支援に係るマニュアルや調査研究事業の成果等の有益な情報が得られるようにする。

都道府県及び市町村は、女性支援が自治体内の様々な部門に関係し得るものであることを踏まえ、男女共同参画や児童福祉等に関わる自治体職員に対しても、情報共有等を行い、女性支援に関連する部局間における理解を促進する。

国は、困難な問題を抱える女性への支援に従事する職員等に対して適切な処遇が確保されるための措置を講ずるよう努めることとするほか、地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援に従事する職員等に対し適切な処遇を行い、人材の確保に努めることとする。また、民間団体の職員も含め、困難な問題を抱える女性への支援に関わる者が研修に参加しやすいよう、職場の配慮や職場環境の整備に努める。

10.調査研究等の推進

国は、支援主体において対応した困難な問題を抱える女性について、直面している問題の内容や年齢層、支援内容や実績、一時保護及び女性自立支援施設等における支援内容や一時保護及び女性自立支援施設の退所後の状況、自治体の取組状況等に関する定期的な実態調査を行い、公表する。

特に、女性自立支援施設への入所措置がなされない場合、性暴力等の被害からの心身の健康の回復に向けた支援や、安定的な日常生活を営んでいくための専門的な相談支援等を継続的に受けることが難しいとの指摘もあることから、例えば通所により、女性自立支援施設等の支援担当者の専門性を活かした支援を受ける等、入所措置に至らない場合の新たな専門的支援の在り方について、検討を深めていくことが必要である。

また、専門的な人材の育成、被害回復支援に向けた有効な方法等や、市町村と連携した施設からの地域移行や女性相談支援員を中心とする市町村の体制の在り方、支援調整会議の効果的な設置・運営の在り方、地域の中での居住機能を備えた新たな支援の在り方等の国内外の支援施策の先進事例等について調査研究を行うことを検討する。

さらに法附則第2条に定められた支援対象者の権利擁護の仕組み及び支援の質の評価の仕組みの検討に資するための調査研究を行う。

11.基本方針の見直し

基本方針策定後の全国の施行状況の検討については、女性相談支援センター、女性相談支援員(都道府県・市町村)、女性自立支援施設、それぞれの全国団体や、民間団体を中心に、困難な問題を抱える女性への支援に携わる関係者が、定期的にそれぞれの現場の取組状況や課題を報告し合い、連携を深めていくためのプラットフォームを設けることについて、9の全国の関係機関等の職員が互いの経験を共有し共に学び合う機会の在り方と併せて検討する。

基本方針の見直しに当たっては、見直し前に、基本方針に定めた施策の評価を行い、当該評価により得られた結果を参考にする。この評価は、第1に掲げた困難な問題を抱える女性の動向に関して可能な限り定量的な調査を実施するほか、支援に携わる関係者の意見を聴取すること等により実施する。また、本評価により得られた結果は公表する。

基本方針の見直しに当たっては、女性相談支援センター関係者、女性相談支援員、女性自立支援施設関係者、NPO法人等民間団体、都道府県や市町村等からの意見を幅広く聴取するとともに、パブリックコメントを求める。

第3 都道府県及び市町村が策定する基本計画の指針となるべき基本的な事項

都道府県及び市町村が基本計画を策定する場合には、次に掲げる指針を踏まえ策定することが適当である。

1.計画策定に向けた手続

(1) 基本計画の期間

基本計画の運営期間は原則5年間とするが、政策的に関連の深い他の計画と一体のものとして策定する場合等、自治体における個別の事情や実態等を考慮した上で適切な期間を設定すること。

(2) 他の計画との関係

基本計画は、他の法律の規定による困難な問題を抱える女性への支援に関する事項を定める計画との調和を保つよう努めなければならない。また、基本計画は、政策的に関連の深い他の計画(配偶者暴力防止等法第2条の3第1項に規定する都道府県基本計画若しくは同条第3項に規定する市町村基本計画又は男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第14条第1項に規定する都道府県男女共同参画計画若しくは同条第3項に規定する市町村男女共同参画計画等)と一体のものとして策定することができる。その際は、法第3条第3号はその基本理念として「人権の擁護を図るとともに、男女平等の実現に資することを旨とすること」を規定しており、困難な問題を抱える女性の人権を擁護するとともに、女性であることに起因して日常生活及び社会生活上において困難な状態に陥りやすい女性を支援することにより、男女平等の実現に資することを求めている趣旨に従い、本基本指針に基づく記載事項が適切に盛り込まれるよう留意することが必要である。

(3) 基本計画策定前の手続

① 基本計画を策定するに当たっては、まず、次の事項について調査し、活用可能な既存のデータ等を基に評価・分析し、当該地域における困難な問題を抱える女性の現状における課題を把握する。

ア 管内の女性相談支援センター(旧婦人相談所)への相談数、相談者の年代等の属性及び相談内容の種別

イ 管内の女性相談支援センター(旧婦人相談所)において一時保護を行った者の人数、対象者の年代等の属性及び保護理由

ウ 管内の都道府県及び市町村の女性相談支援員(旧婦人相談員)への相談数、相談者の年代等の属性及び相談内容の種別

エ 管内の女性自立支援施設(旧婦人保護施設)への入所者数、入所者の年代等の属性、入所理由の種別、入所期間の分布等

オ 管内の母子生活支援施設や女性を対象とした更生施設等、困難な問題を抱える女性を支援している、他施策における女性の支援状況

カ 困難な問題を抱える女性への支援に当たり協働が可能な民間団体及びその活動の状況

キ 関係機関等からのヒアリング等により把握した実情

ク 配偶者からの暴力防止対策等に係る施策の相談、保護等の状況

ケ その他当該地域における困難な問題を抱える女性への支援に当たり有用と思われるデータ

② ①の調査・課題等の把握に基づいて、基本計画における女性相談支援センターや女性相談支援員(都道府県・市町村)の配置の推進、女性自立支援施設の配置や、民間団体との協働による支援等について、定量的な基本目標を明確にする。

③ 基本計画の策定に当たっては、あらかじめ、女性相談支援センター関係者、女性相談支援員(都道府県・市町村)、女性自立支援施設関係者、NPO法人等の民間団体等関係者からの意見を幅広く聴取するとともに、インターネットの利用及び印刷物の配布等の方法により広く意見を聴取するよう努めなければならない。

④ 国は、都道府県及び市町村における基本計画の策定状況を調査し、公表する。

2.計画に関する評価と公表

(1) 評価

次の基本計画の策定に当たっては、基本計画の運営期間の満了前に、基本計画に定めた施策について評価を行う。この評価は、1(3)①に掲げる事項について調査を実施するほか、関係者の意見を聴取すること等により実施する。

(2) 評価結果の公表

(1)の評価により得られた結果については公表する。

(3) 次の基本計画の策定

(1)の評価により得られた結果は、次の基本計画を策定するに際して参考にする。

3.基本計画に盛り込むことが望ましい施策

(1) 困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な方針

困難な問題を抱える女性への支援に関する基本的な方針としては、1(3)①で把握した地域の実情や課題及び1(3)②の基本目標を記載する。

(2) 困難な問題を抱える女性への支援のための施策内容に関する事項

困難な問題を抱える女性への支援のための施策内容に関する事項としては、以下に関し、当該都道府県又は市町村において今後実施する困難な問題を抱える女性への支援内容に関する事項を記載する。その際、行政機関と民間団体それぞれにおいて、具体的な取組事項として記載するよう留意する。

① 困難な問題を抱える女性への支援の基本的な考え方

② 支援に関わる団体・機関等(女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設、民間団体等、その他関係機関)

③ 困難な問題を抱える女性への支援の内容

・アウトリーチ等による早期の把握

・居場所の提供

・相談支援

・一時保護

・被害回復支援

・生活の場を共にすることによる支援(生活支援・権利回復支援)

・同伴児童等への支援

・自立支援

・アフターケア

④ 支援の体制

・女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設の連携体制

・民間団体との連携体制

・関係機関との連携体制

⑤ 支援調整会議

⑥ 教育・啓発

⑦ 人材育成・研修

⑧ 調査研究等の推進

(3) その他困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する重要事項

その他困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する重要事項としては、(2)に記載されていない施策であって当該都道府県又は市町村が今後実施する予定のもの及び当該基本計画の見直し方法について記載する。