添付一覧
○ヒト受精胚の提供を受けて行う遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針
(平成三十一年四月一日)
(/文部科学省/厚生労働省/告示第三号)
ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針を次のように定め、公布の日から施行する。
ヒト受精胚の提供を受けて行う遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針
(令6こども庁文科厚労告1・改称)
目次
第1章 総則
第1 目的
第2 定義
第3 研究の要件
第4 ヒト受精胚に対する配慮
第2章 ヒト受精胚の取扱い等
第1 ヒト受精胚の入手
第2 取扱期間
第3 胎内への移植等の禁止
第4 他の機関への移送
第5 研究終了時等の廃棄
第3章 インフォームド・コンセントの手続等
第1 インフォームド・コンセント
第2 提供者への配慮等
第3 インフォームド・コンセントに係る説明
第4 説明書等の交付等
第5 インフォームド・コンセントの撤回
第6 ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コンセントの確認
第4章 研究の体制
第1 研究機関
第2 提供機関
第3 研究機関と提供機関が同一である場合の要件
第5章 研究の手続
第1 研究計画の実施
第2 研究計画の変更
第3 研究の進行状況の報告
第4 研究の終了
第5 個人情報の保護
第6 遺伝情報の取扱い
第7 研究成果の公開等
第6章 ヒトES細胞の取扱い等
第1 研究におけるヒトES細胞の取扱いの要件
第2 ヒト受精胚の取扱いに関する規定の準用等
第7章 雑則
第1 指針不適合の公表
第2 見直し
第1章 総則
第1 目的
この指針は、ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる基礎的研究(第4章第1の1の(1)の①及び②、3の(1)の②並びに4の(5)の①のイの(ii)を除き、以下「研究」という。)について、ヒト受精胚の尊重、遺伝情報への影響その他の倫理的な観点から、当該研究に携わる者が遵守すべき事項を定めることにより、その適正な実施を図ることを目的とする。
第2 定義
この指針において、次に掲げる用語の定義は、それぞれ次のとおりとする。
(1) 遺伝情報改変技術等
ゲノム編集技術その他の核酸を操作する技術をいう。
(2) 遺伝情報
研究の過程を通じて得られ、又は既にヒト受精胚に付随している子孫に受け継がれ得る情報で、遺伝的特徴及び体質を示すものをいう。
(3) ヒト受精胚
ヒトの精子とヒトの未受精卵との受精により生ずる胚(当該胚が一回以上分割されることにより順次生ずるそれぞれの胚であって、ヒト胚分割胚(ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号)第2条第8号に規定するヒト胚分割胚をいう。)でないものを含む。)をいう。
(4) ヒトES細胞
ヒト受精胚から採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないもののうち、多能性(内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞に分化する性質をいう。)を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を有することが推定されるものをいう。
(5) 提供者
生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚のうち、当該目的に用いる予定がないヒト受精胚を提供した夫婦(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びインフォームド・コンセントを受ける時点において既に離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含む。)した者を含む。以下同じ。)をいう。ただし、インフォームド・コンセントを受ける時点において夫婦の一方が既に死亡している場合は生存配偶者をいう。
(6) インフォームド・コンセント
提供者が、研究者等から事前に研究に関する十分な説明を受け、当該研究の意義、目的及び方法並びに予測される結果及び不利益等を理解した上で、自由な意思に基づいて与えるヒト受精胚の提供及びその取扱いに関する同意をいう。
(7) 研究機関
提供者から提供を受けたヒト受精胚又は作成したヒトES細胞を用いた研究を実施する法人、行政機関又は個人事業主をいう。なお、複数の法人、行政機関又は個人事業主において共同で研究を行う場合には、それぞれの法人、行政機関又は個人事業主をいう。
(8) 提供機関
提供者から研究に用いるヒト受精胚の提供を受ける法人、行政機関又は個人事業主をいう。
(9) 研究責任者
研究機関において、研究を遂行するとともに、当該研究に係る業務を統括する者をいう。
(10) 研究実施者
研究機関において、研究責任者の指示を受け、研究に携わる者をいう。
(11) 研究機関の長
提供者から提供を受けたヒト受精胚又は作成したヒトES細胞を用いた研究を実施する法人の代表者、行政機関の長又は個人事業主をいう。
(12) 提供機関の長
提供者から研究に用いるヒト受精胚の提供を受ける法人の代表者、行政機関の長又は個人事業主をいう。
(13) 倫理審査委員会
研究の実施、継続又は変更の適否その他の研究に関し必要な事項について、倫理的及び科学的な観点から審査等を行うために設置された合議制の機関をいう。
(14) 個人情報
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項に規定する個人情報をいう。
第3 研究の要件
研究は、当分の間、次に掲げるものに限るものとする。
(1) 胚の発生及び発育並びに着床に関するもの、ヒト受精胚の保存技術の向上に関するものその他の生殖補助医療の向上に資するもの(以下「生殖補助医療研究」という。)
(2) 遺伝性又は先天性疾患の病態の解明及び治療の方法の開発に資するもの(以下「遺伝性又は先天性疾患研究」という。)
第4 ヒト受精胚に対する配慮
ヒト受精胚を取り扱う者は、ヒト受精胚が人の生命の萌芽であることに配慮し、人の尊厳を侵すことのないよう、誠実かつ慎重にヒト受精胚を取り扱うものとする。
第2章 ヒト受精胚の取扱い等
第1 ヒト受精胚の入手
研究の用に供されるヒト受精胚は、次に掲げる要件を満たすものに限り、提供を受けることができるものとする。
(1) 生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供者による当該ヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであること。
(2) 研究に用いることについて、提供者から適切なインフォームド・コンセントを受けたことが確認されているものであること。
(3) 原則として、凍結保存されているものであること。
(4) 受精後14日以内(凍結保存されている期間を除く。)のものであること。
(5) 必要な経費を除き、無償で提供を受けたものであること。
第2 取扱期間
ヒト受精胚は、原始線条が現れるまでの期間に限り、取り扱うことができる。ただし、受精後14日を経過する日までの期間内に原始線条が現れないヒト受精胚については、14日を経過した日以後は、取り扱わないこととする。なお、ヒト受精胚を凍結保存する場合には、当該凍結保存期間は、取扱期間に算入しないものとする。
第3 胎内への移植等の禁止
(1) 研究に用いたヒト受精胚は、人又は動物の胎内に移植してはならない。
(2) 研究は、ヒト受精胚を人又は動物の胎内に移植することのできる設備を有する室内において行ってはならない。
第4 他の機関への移送
研究機関は、研究に用いたヒト受精胚を他の機関に移送してはならない。ただし、複数の研究機関において共同で研究を行う場合には、これらの研究機関間においてのみ研究に用いたヒト受精胚を移送することができる。
第5 研究終了時等の廃棄
研究機関は、研究を終了し、又は第2のヒト受精胚の取扱期間を経過したときは、直ちにヒト受精胚を廃棄するものとする。
第3章 インフォームド・コンセントの手続等
第1 インフォームド・コンセント
(1) 提供機関は、提供者の文書によるインフォームド・コンセントを受けた上で、ヒト受精胚の提供を受けるものとする。
(2) ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コンセントは、具体的な研究計画が確定していない段階において受けてはならない。
(3) 提供機関は、次に掲げる事項に配慮した上で、(1)に定める文書によるインフォームド・コンセントに代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。第4及び第6の(1)において同じ。)によりインフォームド・コンセントを受けることができる。
① 提供者に対し、本人確認を適切に行うこと。
② 提供者が説明内容に関する質問をする機会を確保し、かつ、当該質問に十分に答えること。
第2 提供者への配慮等
提供機関は、インフォームド・コンセントを受けるに当たり、提供者の心情に十分配慮するとともに、次に掲げる要件を満たすものとする。
(1) 提供者が置かれている立場を不当に利用しないこと。
(2) インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される者にヒト受精胚の提供を依頼しないこと。
(3) 提供者によるヒト受精胚を滅失させることについての意思が事前に確認されていること。
(4) 提供者が提供するかどうか判断するために必要な時間的余裕を有すること。
(5) インフォームド・コンセントを受けた後少なくとも30日間は、当該ヒト受精胚を保存すること。
第3 インフォームド・コンセントに係る説明
インフォームド・コンセントに係る説明は、研究の目的及び方法、提供されるヒト受精胚の取扱い、個人情報の保護の方法その他必要な事項について十分な理解が得られるよう、提供者に対し、次に掲げる事項を記載した説明書を提示して、分かりやすく、これを行うものとする。
(1) 研究の目的、方法及び実施体制
(2) ヒト受精胚が滅失することその他提供されるヒト受精胚の取扱い
(3) 予想される研究の成果
(4) 研究計画のこの指針に対する適合性が研究機関、提供機関並びにこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣(厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。以下同じ。)により確認されていること。
(5) 個人情報の保護の具体的な方法(第5章の第5の(2)に基づき講ずる措置を含む。)
(6) 提供者が将来にわたり報酬を受けることがないこと。
(7) ヒト受精胚について、遺伝子の解析が行われる可能性がある場合には、その旨及び当該遺伝子の解析が特定の個人を識別するものではないこと。
(8) 提供を受けたヒト受精胚に関する情報を提供者に開示しないこと。
(9) 研究の成果が学会等で公開される可能性があること。
(10) 研究から有用な成果が得られた場合には、その成果から特許権、著作権その他の知的財産権又は経済的利益が生ずる可能性があること及びこれらが提供者に帰属しないこと。
(11) ヒト受精胚を提供すること又はしないことの意思表示がヒト受精胚の提供者に対して何らの利益又は不利益をもたらすものではないこと。
(12) インフォームド・コンセントの撤回に関する次に掲げる事項
① インフォームド・コンセントを受けた後少なくとも30日間はヒト受精胚が提供機関において保存されること。
② 研究が実施されることに同意した場合であっても随時これを撤回できること。
③ 提供者からの撤回の内容に従った措置を講ずることが困難となる場合があるときは、その旨及びその理由
④ インフォームド・コンセントは、提供者の一方又は双方から申出があった場合に、撤回できること。
第4 説明書等の交付等
インフォームド・コンセントに係る説明を実施するときは、提供者の個人情報を保護するため適切な措置を講ずるものとする。また、第3の説明書及び当該説明を実施したことを示す文書(以下この第4において「説明書等」という。)を提供者に交付するものとする。ただし、第1の(3)に基づき電磁的方法によるインフォームド・コンセントを受けた場合は、説明書等の交付に代えて、提供者に対し、説明書等に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるものとする。この場合において、説明書等は提供者に交付されたものとみなす。
第5 インフォームド・コンセントの撤回
(1) 提供者は、提供機関に対し、提供者の一方又は双方から撤回の申出を行うことにより、インフォームド・コンセントを撤回することができる。
(2) 提供機関の長は、(1)の申出があった場合には、研究機関の長にその旨を通知するものとする。
(3) 提供者からヒト受精胚の提供を受けた研究機関の長は、(2)の通知を受けたときは、提供を受けたヒト受精胚を廃棄するとともに、その旨を文書により提供機関の長に通知するものとする。ただし、次のいずれかの場合には、この限りでない。この場合、当該撤回の内容に従った措置を講じない旨及びその理由について、提供者に説明し、理解を得るよう努めなければならない。
① 当該ヒト受精胚の提供者を識別することができない状態となっている場合
② 研究を継続することについて、研究機関の倫理審査委員会(他の機関に設置された倫理審査委員会に審査を依頼する場合にあっては、当該機関の倫理審査委員会を含む。第6の(1)の倫理審査委員会において同じ。)の意見を尊重した上で研究機関の長が了承した場合
第6 ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コンセントの確認
(1) 提供機関の長は、研究計画に基づくインフォームド・コンセントの取得の適切な実施に関して、第1の(1)の文書(第1の(3)に基づき電磁的方法によるインフォームド・コンセントを受けた場合においては、その記録)及び第3の説明を実施したことを示す文書(第1の(3)に基づき電磁的方法によるインフォームド・コンセントを受けた場合であって、第4ただし書の規定により、提供者に対し第3の説明を実施したことを示す文書に記載すべき事項を電磁的方法により提供したときは、当該事項)を確認するとともに、当該提供機関の倫理審査委員会の意見を聴くものとする。
(2) 提供機関の長は、ヒト受精胚を研究機関に移送するときには、(1)の確認を行ったことを文書で研究機関に通知するものとする。
(3) 提供機関は、ヒト受精胚を研究機関に移送したときは、移送に関する記録を作成し、これを保管するものとする。
第4章 研究の体制
第1 研究機関
1 研究機関の基準等
(1) 研究機関は、生殖補助医療研究を行う場合には、次に掲げる基準に適合するものとする。
① ヒト受精胚を用いる研究を行うために必要な施設及び設備を有すること。
② ヒト受精胚の取扱い並びに生殖補助医療研究及びヒト又は動物の受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する十分な実績及び技術的能力を有すること。
③ ヒト受精胚の取扱いに関する管理体制が整備されていること。
④ 提供者の個人情報及び遺伝情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
⑤ 研究に関する倫理並びに研究の実施に必要な知識及び技術を維持向上させるための教育研修を当該研究に携わる者が受けることを確保するための措置が講じられていること。
⑥ 少なくとも1名の医師が研究に参画すること。
(2) (1)の規定は、遺伝性又は先天性疾患研究を行う場合について準用する。この場合において、「生殖補助医療研究」とあるのは、「遺伝性又は先天性疾患研究」と読み替えるものとする。
(3) 研究機関は、ヒト受精胚の取扱いに関する記録を作成し、これを保管するものとする。
2 研究機関の長
(1) 研究機関の長は、次の業務を行うものとする。
① 研究計画及びその変更の妥当性を確認し、その実施を了承すること。
② 研究の進行状況及び結果並びにヒト受精胚の取扱いの状況を把握し、必要に応じ、研究責任者に対し留意事項、改善事項等に関して指示をすること。
③ ヒト受精胚の取扱いを監督すること。
④ 研究機関においてこの指針を周知徹底し、これを遵守させること。
⑤ 教育研修を実施すること。
(2) 研究機関の長は、その属する研究機関において定められた規程により、この指針に定める業務の全部又は一部を当該研究機関内の適当な者に委任することができる。
(3) 研究機関の長又は(2)の規定により研究機関の長の業務の全部又は一部を委任された者は、研究責任者及び研究実施者を兼ねることはできない。ただし、研究責任者又は研究実施者として関与する研究の実施に当たり、(1)に規定する研究機関の長の業務の代行者が選任されている場合には、この限りでない。
3 研究責任者等
(1) 研究責任者は、生殖補助医療研究を行う場合には、次に掲げる要件を満たさなければならない。
① ヒト受精胚の取扱い及びヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる生殖補助医療研究に関する倫理的な識見を有すること。
② ヒト受精胚の取扱い並びに生殖補助医療研究及び当該研究に関連するヒト又は動物の受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する十分な専門的知識及び経験を有すること。
(2) (1)の規定は、遺伝性又は先天性疾患研究を行う場合について準用する。この場合において、「生殖補助医療研究」とあるのは、「遺伝性又は先天性疾患研究」と読み替えるものとする。
(3) 研究実施者は、ヒト又は動物の受精胚の取扱いに関する倫理的な識見及び経験を有する者でなければならない。
4 研究機関の倫理審査委員会
(1) 研究機関に、次に掲げる業務を行うための倫理審査委員会を設置するものとする。
① この指針に即して、研究計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について総合的に審査を行い、その適否、留意事項、改善事項等に関して研究機関の長に対し、意見を提出すること。
② 研究の進行状況及び結果について報告を受け、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して研究機関の長に対し、意見を提出すること。
(2) (1)の規定にかかわらず、適切に審査を行うことができる場合は、他の機関によって設置された倫理審査委員会をもって、(1)の倫理審査委員会に代えることができる。
(3) 研究機関の倫理審査委員会は、審査の過程の記録を作成し、これを保管するものとする。
(4) 研究機関の倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者は、審査及び関連する業務に先立ち、倫理的及び科学的な観点からの審査等に必要な知識の習得のための教育研修を受けなければならない。また、その後も、適宜継続して教育研修を受けなければならない。
(5) 研究機関の倫理審査委員会は、次に掲げる要件を満たすものとする。
① 研究計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性を総合的に審査できるよう、次に掲げる要件を満たさなければならない。研究機関の倫理審査委員会の開催する会議(②及び③において「会議」という。)の成立要件についても同様とする。
イ 次に掲げる者が含まれていること。なお、次に掲げる者は、それぞれ他の次に掲げる者を兼ねることができない。
(i) 生殖医学の専門家
(ii) 遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する専門家
(iii) 生命倫理に関する意見を述べるにふさわしい識見を有する者
(iv) 法律に関する専門家その他人文・社会科学の有識者
(v) 一般の立場に立って意見を述べられる者
ロ 研究機関が属する法人に所属する者以外の者が2名以上含まれていること。
ハ 男性及び女性がそれぞれ2名以上含まれていること。
ニ 研究責任者又は研究実施者との間に利害関係を有する者及び提供者の生殖補助医療に主として関わった医師(以下「主治医」という。)その他のヒト受精胚の提供に携わる者が審査に参加しないこと。
② 研究責任者及び研究実施者が、審査及び意見の決定に同席しないこと。ただし、当該倫理審査委員会の求めに応じて、その会議に出席し、当該研究計画に関する説明を行うことができる。
③ 審査を依頼した研究機関の長が、審査及び意見の決定に参加しないこと。ただし、倫理審査委員会における当該審査の内容を把握するために必要な場合には、当該倫理審査委員会の同意を得た上で、その会議に同席することができる。
④ 倫理審査委員会は、審査の対象、内容等に応じて有識者に意見を求めることができること。
⑤ 倫理審査委員会は、遺伝性又は先天性疾患に関する研究計画の審査を行う場合、遺伝医学の専門家に意見を求めること。
⑥ 倫理審査委員会は、社会的に弱い立場にある特別な配慮を必要とする者からヒト受精胚の提供を受ける研究計画の審査を行い、意見を述べる際は、必要に応じてこれらの者について識見を有する者に意見を求めること。
⑦ 倫理審査委員会の意見は、委員全員の同意により決定するよう努めること。
⑧ 倫理審査委員会の組織及び運営並びにその議事の内容の公開に関する規則が定められ、かつ、当該規則が公開されていること。
(6) 研究機関の倫理審査委員会は、研究計画の軽微な変更等に係る審査について、当該倫理審査委員会が指名する委員による審査を行い、意見を述べることができる。当該審査の結果は、倫理審査委員会の意見として取り扱うものとし、全ての委員に報告されなければならない。
(7) 議事の内容は、知的財産権及び個人情報の保護等に支障が生じる場合を除き、公開するものとする。
第2 提供機関
1 提供機関の基準等
提供機関は、次に掲げる基準に適合するものとする。
(1) 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の5第1項に規定する病院又は同条第2項に規定する診療所であること。
(2) 提供者の個人情報及び遺伝情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
(3) ヒト受精胚の取扱いに関して十分な実績及び能力を有すること。
(4) ヒト受精胚の保存に関する管理体制が整備されていること。
(5) 研究に関する倫理及び研究の実施に必要な知識を維持向上させるための教育研修を当該研究に携わる者が受けることを確保するための措置が講じられていること。
(6) ヒト受精胚の研究機関への提供は、研究に必要不可欠な数に限るものとすること。
2 提供機関の長
(1) 提供機関の長は、次の業務を行うものとする。
① 研究計画について、インフォームド・コンセントに係る手続を含め、提供機関の立場から、研究計画の妥当性を確認し、その実施を了解すること。
② ヒト受精胚の提供に関する状況を把握し、必要に応じ、主治医その他のヒト受精胚の提供に携わる者に対し指導及び監督を行うこと。
③ 教育研修を実施すること。
(2) 提供機関の長は、その属する提供機関において定められた規程により、この指針に定める業務の全部又は一部を当該提供機関内の適当な者に委任することができる。
3 提供機関の倫理審査委員会
第1の4((1)の②を除く。)の規定は、提供機関の倫理審査委員会について準用する。この場合において、第1の4中「研究機関」とあるのは、「提供機関」と読み替えるものとする。
第3 研究機関と提供機関が同一である場合の要件
研究機関と提供機関が同一である場合には、当該機関の長、研究責任者及び研究実施者は、提供者の主治医を兼ねてはならない。
第5章 研究の手続
第1 研究計画の実施
1 研究機関の長の了承
(1) 研究責任者は、研究の実施に当たり、研究計画書を作成し、研究機関の長に研究計画の実施について了承を求めるものとする。
(2) 研究機関の長は、(1)の了承を求められた研究計画の実施の妥当性について研究機関の倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見を尊重し、研究計画のこの指針に対する適合性を確認するものとする。
(3) 研究機関の長は、(2)によりこの指針に対する適合性を確認した研究計画の実施について、提供機関の長の了解を得るものとする。ただし、研究機関と提供機関が同一である場合には、この限りでない。
(4) 提供機関の長は、(3)の研究計画の実施を了解するに当たっては、提供機関の倫理審査委員会の意見を聴くものとする。なお、提供機関の長は、研究計画の実施を了解する場合には、提供機関の倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類を添えて、研究機関の長に通知するものとする。
2 こども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣の確認等
(1) 研究機関の長は、研究計画の実施を了承するに当たっては、研究計画のこの指針に対する適合性についてこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣の確認を受けるものとする。
(2) 研究機関の長は、(1)の確認を求めるに当たって、次に掲げる書類を提出するものとする。
① 研究計画書
② 研究機関のヒト受精胚の取扱いに関する規則の写し
③ 研究機関の倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類並びに倫理審査委員会に関する事項を記載した書類
④ 提供機関のヒト受精胚の保存に関する規則の写し
⑤ 提供機関の倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類並びに当該機関の倫理審査委員会に関する事項を記載した書類
3 研究計画書
研究計画書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
(1) 研究計画の名称
(2) 研究機関の名称及びその所在地並びに研究機関の長の氏名
(3) 研究責任者の氏名、略歴、研究業績、教育研修の受講歴及び研究において果たす役割
(4) 研究実施者の氏名、略歴、研究業績、教育研修の受講歴及び研究において果たす役割
(5) 研究に用いられるヒト受精胚及びその入手方法
(6) 研究の目的及び必要性
(7) 研究の方法(研究に用いる遺伝情報改変技術等の種類を含む。)及び期間
(8) 研究機関の基準に関する説明
(9) インフォームド・コンセントに関する説明
(10) 提供機関の名称及びその所在地並びに提供機関の長の氏名
(11) 提供機関の基準に関する説明
(12) 個人に関する情報の取扱い(第5の(2)に基づき講ずる措置を含む。)
(13) 遺伝情報の取扱い
第2 研究計画の変更
(1) 研究責任者は、研究計画(第1の3の(2)、(4)及び(10)に掲げる事項を除く。)を変更しようとするときは、あらかじめ、研究計画変更書を作成して、研究機関の長の了承を求めるものとする。提供機関の追加に係る変更の場合も、同様とする。
(2) 研究機関の長は、(1)の変更の了承を求められたときは、その妥当性について当該機関の倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見を尊重し、当該変更のこの指針に対する適合性を確認するものとする。
(3) 研究機関の長は、(2)によりこの指針に対する適合性を確認するに当たって、研究計画の変更の内容が提供機関に関係する場合には、当該変更について当該提供機関の長の了解を得るものとする。
(4) 提供機関の長は、(3)の了解をするに当たっては、当該機関の倫理審査委員会の意見を聴くものとする。
(5) 研究機関の長は、(1)の変更の了承をするに当たっては、当該変更のこの指針に対する適合性についてこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣の確認を受けるものとする。
(6) (5)の確認を受けようとする研究機関の長は、次に掲げる書類をこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣に提出するものとする。
① 研究計画変更書
② 当該変更に係る研究機関の倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
③ (3)に該当する場合には、当該変更に係る提供機関の倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
(7) 研究機関の長は、第1の3の(2)又は(10)に掲げる事項を変更したときは、その旨をこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣に届け出るものとする。
第3 研究の進行状況の報告
(1) 研究責任者は、研究を実施している間は、毎年度終了後、研究の進行状況(ヒト受精胚の取扱状況を含む。)を記載した研究進行状況報告書を作成し、研究機関の長に提出するものとする。
(2) 研究機関の長は、(1)の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを研究機関の倫理審査委員会並びにこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣に提出するものとする。
(3) 研究機関は、研究に関する資料の提出、調査の受入れその他こども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣が必要と認める措置に協力するものとする。
第4 研究の終了
(1) 研究責任者は、研究を終了したときは、速やかに、その旨及び研究の結果(研究に用いたヒト受精胚の廃棄の状況を含む。)を記載した研究終了報告書を作成し、研究機関の長に提出するものとする。
(2) 研究機関の長は、(1)の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを研究機関の倫理審査委員会並びにこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣に提出するものとする。
第5 個人情報の保護
(1) 研究機関の長及び提供機関の長は、提供者の個人情報の保護に関する措置について、個人情報の保護に関する法令等を遵守するほか、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)に準じた措置を講ずるものとする。
(2) 提供機関の長は、提供を受けたヒト受精胚を研究機関に移送する前(研究機関と提供機関が同一である場合にあっては、提供を受けたヒト受精胚が当該機関の研究部門において取り扱われる前)に、提供先の研究機関において、当該ヒト受精胚の提供者を識別することができないよう、措置を講ずるものとする。
第6 遺伝情報の取扱い
研究機関の長及び提供機関の長は、遺伝情報を取り扱う場合、遺伝情報を適切に取り扱うため、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に準じた措置を講ずるものとする。
第7 研究成果の公開等
(1) 研究機関は、知的財産権及び個人情報の保護等に支障が生じる場合を除き、研究の成果を公開するものとする。
(2) 研究を実施する者は、あらゆる機会を利用して研究に関し、情報の提供等普及啓発に努めるものとする。
第6章 ヒトES細胞の取扱い等
第1 研究におけるヒトES細胞の取扱いの要件
研究におけるヒト受精胚を用いたヒトES細胞の作成及び当該ヒトES細胞の使用は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
(1) 第1章第3に定める研究の範囲内であること。
(2) 新たにヒトES細胞を作成し、使用することが、第1章第3に定める研究において、科学的合理性及び必要性を有すること。
第2 ヒト受精胚の取扱いに関する規定の準用等
第2章から第5章までの規定は、研究においてヒト受精胚からヒトES細胞を作成し、使用する場合について準用する。この場合において、次の表の左欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の右欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
読み替える規定 |
読み替えられる字句 |
読み替える字句 |
第2章第3の(2) |
(2) 研究は、ヒト受精胚を人又は動物の胎内に移植することのできる設備を有する室内において行ってはならない。 |
(2) 研究は、ヒト受精胚及びヒトES細胞を人又は動物の胎内に移植することのできる設備を有する室内において行ってはならない。 (3) 作成したヒトES細胞の人又は動物の胎内への移植、ヒト受精胚又は人の胎児への導入及び作成したヒトES細胞を使用した生殖細胞の作成を行ってはならない。 |
第2章第4 |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及び作成したヒトES細胞 |
第2章第5 |
研究機関は、研究を終了し、又は第2のヒト受精胚の取扱期間を経過したときは、直ちにヒト受精胚を廃棄するものとする。 |
研究機関は、研究を終了し、又は第2のヒト受精胚の取扱期間を経過したときは、直ちにヒト受精胚を廃棄するものとする。また、研究を終了したときは、直ちに研究に用いたヒト受精胚から作成したヒトES細胞(当該ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞を含む。)を廃棄するものとする。 |
第3章第3の(1) |
目的、方法及び |
目的及び方法(ヒトES細胞の作成の目的及び方法を含む。)並びに |
第3章第3の(7) |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及びヒトES細胞 |
第3章第3の(8) |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及び作成したヒトES細胞 |
第3章第5の(3) |
提供を受けたヒト受精胚 |
提供を受けたヒト受精胚及び作成したヒトES細胞(当該ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞を含む。) |
第4章第1の1の(1)の①、②及び③並びに(3)並びに2の(1)の②及び③ |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及びヒトES細胞 |
第4章第1の3の(1)の① |
ヒト受精胚の取扱い及び |
ヒト受精胚及びヒトES細胞の取扱い並びに |
第4章第1の3の(1)の② |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及びヒトES細胞 |
第4章第1の3の(3) |
ヒト又は動物の受精胚 |
ヒト又は動物の受精胚及びヒトES細胞 |
第5章第1の2の(2)の② |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及びヒトES細胞 |
第5章第1の3の(6) |
研究の目的及び必要性 |
研究の目的及び必要性(ヒトES細胞の作成の目的及び必要性を含む。) |
第5章第3の(1) |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及びヒトES細胞 |
第5章第4の(1) |
ヒト受精胚 |
ヒト受精胚及び作成したヒトES細胞(当該ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞を含む。) |
第7章 雑則
第1 指針不適合の公表
こども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣は、研究の実施について、この指針に定める基準に適合していないと認められるものがあったときは、その旨を公表するものとする。
第2 見直し
この指針は、関連研究の進展、ヒト受精胚の取扱いに関する社会的情勢の変化等を勘案して、必要に応じ見直しを行うこととする。
附 則 (令和三年六月三〇日/文部科学省/厚生労働省/告示第二号)
この告示は、公布の日から適用する。
改正文 (令和三年七月三〇日/文部科学省/厚生労働省/告示第四号) 抄
令和三年七月三十日から適用する。
改正文 (令和四年三月三一日/文部科学省/厚生労働省/告示第三号) 抄
令和四年四月一日から適用する。
附 則 (令和五年三月三一日/文部科学省/厚生労働省/告示第三号) 抄
(適用期日)
第一条 この告示は、令和五年四月一日から適用する。
(ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針の一部改正に伴う経過措置)
第三条 この告示の適用前に第二条による改正前のヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(以下この条において「旧指針」という。)の規定により文部科学大臣及び厚生労働大臣がした確認、公表その他の行為は、この告示の適用後は、同条による改正後のヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(以下この条において「新指針」という。)の相当規定によりこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣(厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。)がした確認、公表その他の行為とみなす。
2 この告示の適用の際現に旧指針の規定により文部科学大臣及び厚生労働大臣に対してされている届出、提出その他の行為は、この告示の適用後は、新指針の相当規定によりこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣(厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。)に対してされた届出、提出その他の行為とみなす。
3 この告示の適用前に旧指針の規定により文部科学大臣及び厚生労働大臣に対して届出、提出その他の手続をしなければならない事項で、この告示の適用の日前にその手続がされていないものについては、この告示の適用後は、これを、新指針の相当規定によりこども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣(厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。)に対してその手続がされていないものとみなして、新指針の規定を適用する。
附 則 (令和六年二月九日/こども家庭庁/文部科学省/厚生労働省/告示第一号)
この告示は、告示の日から適用する。