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○障害福祉分野に係る事業分野別指針

(平成二十八年七月一日)

(厚生労働省告示第二百八十三号)

中小企業等経営強化法(平成十一年法律第十八号)第十二条第一項の規定に基づき、障害福祉分野に係る事業分野別指針を次のように策定したので、同条第五項の規定に基づき告示する。

障害福祉分野に係る事業分野別指針

第1 基本認識

本指針の対象とする障害福祉事業とは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく給付又は事業の対象となっている障害者及び障害児に対するサービスを提供する事業のみならず、インフォーマルサービス(法律や制度に基づかない形で提供されるサービスをいう。以下同じ。)を提供する事業も含まれるものである。

障害福祉事業に関しては、障害者及び障害児に対するサービスのニーズが増加する中で、求められるサービスを効率的かつ持続的に提供するため、人材の育成や勤務環境の改善等を通じて質の高い人材を継続的に確保するとともに、サービスの質と生産性の向上を図るなどの取組が不可欠となっている。

このような我が国の障害福祉事業について、市場規模の動向等の現状について整理すると、以下のとおりである。

1 市場規模の動向

令和3年版障害者白書によると、我が国の障害者の概数は、身体障害者436.0万人、知的障害者109.4万人、精神障害者419.3万人となっている。複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有している。

障害福祉サービスの利用者数は、国民健康保険団体連合会へ支払を委託する自立支援給付の支払に関するデータによれば、平成20年2月の時点で45.0万人であったが、令和3年2月には91.5万人となっており、この13年間で約2.0倍に増加している。

障害福祉等関係予算も年々増加しており、平成18年度には約4,900億円であったが、令和3年度においては約1.7兆円となり、この15年間で3.0倍以上に増加している。

また、障害福祉職員数は平成18年度の約50万人から平成29年度には約100万人に増加している。

2 産業構造・業態の特徴

障害福祉サービス等の事業所の数は、令和元年「社会福祉施設等調査報告」(厚生労働省)によると、居宅介護が23,098事業所、重度訪問介護が20,789事業所、生活介護が8,268事業所、就労移行支援が3,399事業所、就労継続支援A型が3,860事業所、就労継続支援B型が12,497事業所、共同生活援助が8,643事業所である。また、障害児通所支援事業所数は、児童発達支援が7,653事業所、放課後等デイサービスが13,980事業所である。事業所種別で利用実人員の最も多い割合をみると、居宅介護事業所は「1~4人」が35.2%、重度訪問介護事業所は「1~4人」が81.3%、生活介護事業所は「10~19人」が27.7%、就労移行支援事業所は「1~4人」が29.9%、就労継続支援A型事業所は「10~19人」が36.7%、就労継続支援B型事業所は「10~19人」が33.5%、児童発達支援事業所は「1~4人」が23.5%、放課後等デイサービス事業所は「20~29人」が30.7%となっており、概して事業所の規模が小さいことに特徴がある。

障害者支援施設及び障害児入所施設の合計定員は、令和元年「社会福祉施設等調査報告」(厚生労働省)によると、障害者支援施設が138,941人、障害児入所施設(福祉型)が9,280人であり、1施設当たりの定員は、平均で、障害者支援施設が54.3人、障害児入所施設(福祉型)が36.4人である。

施設種別で利用定員をみると、障害者支援施設は50人以下の割合が63.7%、障害児入所施設(福祉型)は50人以下の割合が84.3%となっており、概して事業所の規模が小さい。

3 経営の特徴

一 障害福祉事業の経営の特徴

障害福祉事業の経営の特徴としては、多くの事業者にとって主たる収入となっている障害福祉サービス等報酬は、サービス等に応じた平均的な費用を勘案して国が定めるものであり、サービスの上限価格としての性質を有すること、3年に一度の障害福祉サービス等報酬改定という外的要因による影響を考慮する必要があること等が挙げられる。

二 労働市場の状況

障害福祉を含んだ介護分野の有効求人倍率は令和3年4月時点で3.31倍となっており、全産業の0.95倍に比べ高い水準にある。

障害福祉職員の平均賃金の水準は、全産業の平均賃金と比較して低い傾向にあり、また勤続年数も短い傾向にある。

第2 経営力向上の実施方法に関する事項

1 支援対象

障害福祉分野における経営力向上のための支援の対象は、障害福祉事業において、事業活動に有用な知識又は技能を有する人材の育成、組織の活力の向上による人材の有効活用、財務内容の分析の結果の活用、商品又は役務の需要の動向に関する情報の活用、経営能率の向上のためのデジタル技術の活用、経営資源の組合せその他の経営資源を高度に利用する方法を導入して事業活動を行う取組とする。ただし、中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)第2条第6項に規定する特定事業者等(以下単に「特定事業者等」という。)が事業承継等(同条第10項第9号に掲げるものを除く。)により、他の事業者から取得した又は提供された経営資源を高度に利用する方法を導入して事業活動を行う場合にあっては、事業の継続が困難である他の事業者の事業を承継するもののうち、事業の経営の承継を伴う取組を支援対象とする。

2 経営力向上に係る指標

障害福祉事業においては、対人サービスとして一定以上の質が求められることから、一概に中小企業等の経営強化に関する基本方針(令和3年厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「基本方針」という。)第4の2の二のイ及びロの(2)に掲げる労働生産性の向上という指標を用いて経営力向上の度合を測ることはできない。

このため、障害福祉分野における経営力向上の度合を測るための指標としては、障害福祉職員に関する、次の各号に掲げる指標、顧客満足度その他の各事業者において設定する客観的に評価可能な指標及びそれらの目標伸び率(伸び率が不要な指標は除く。)を用いることが適当と考えられる。

① 平均勤続年数

平均勤続年数とは障害福祉職員がその企業に雇い入れられてから経営力向上計画(中小企業等経営強化法第17条第1項に規定する経営力向上計画をいう。以下同じ。)に係る認定の申請を行った日までに勤続した年数の平均をいう。

② 入職率

入職率とは経営力向上計画に係る認定の申請を行った日前の直近の9月30日(以下「基準日」という。)における常用の障害福祉職員数(期間を定めずに雇われている人数及び1か月以上の期間を定めて雇われている人数)に対する基準日から1年を経過する日までの入職者数の割合をいう。

③ 離職率

離職率とは基準日における常用の障害福祉職員数(期間を定めずに雇われている人数及び1か月以上の期間を定めて雇われている人数)に対する基準日から1年を経過する日までの離職者数の割合をいう。

第3 経営力向上に関する事項

1 経営力向上の内容に関する事項

経営力向上において実施すべき事項

① 事業活動に有用な知識又は技能を有する人材の育成

障害福祉事業においては、対人サービスを担う障害福祉職員の資質向上、キャリアアップの実現及び専門性の確保が重要である。このため、各職員の専門性を考慮し、それを踏まえた人材育成と人事管理の仕組みの構築に取り組むことが必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 事業所における障害福祉業務の分析及び標準化並びにそれらを踏まえた研修の実施

(二) 他の事業者との連携による研修の共同実施

(三) 賃金テーブルの整備等によるキャリアパス及び人事評価に連動した処遇の実施

② 組織の活力の向上による人材の有効活用

障害福祉事業においては、今後増加が見込まれる障害福祉サービスに対するニーズに応えられるよう、障害福祉職員の確保及び有効活用に取り組むことが重要である。このため、障害福祉職員の職場環境の整備改善等により、障害福祉職員の離職率低下又は意欲の増進その他組織の活力の向上を図り、もって障害福祉職員の能力を有効に活用することが必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 障害福祉職員の健康増進又は職場におけるハラスメント防止に資する取組等の職場環境の整備改善

(二) 人事評価制度の導入による障害福祉職員の適正な評価

③ 財務内容の分析の結果の活用

障害福祉事業においては、事業収益の大部分が障害福祉サービス等報酬によって占められているものの、財務内容の分析は、他の事業分野と同様に重要である。このため、財務諸表等を基に収益性等の数値を定量的に分析すること及び人的資源等の経営資源について定性的に分析することが必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 財務諸表等の適切な整備並びに財務内容の分析及びその結果の活用

(二) 活動基準原価計算等の手法による障害福祉職員の業務内容等の分析及びその結果の活用

④ 商品又は役務の需要の動向に関する情報の活用

障害福祉事業においては、利用者と事業者との契約によりサービスを提供することとなるため、他の事業分野と同様に、需要の動向、同業事業者の動向等の情報を収集し、活用することが必要である。また、法令改正や障害福祉サービス等報酬改定の動向等の情報を収集し、活用することも必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 同業事業者における事業内容に係る情報の把握及び分析並びにその活用

(二) 事業者の強み、弱み等を分析する手法(いわゆる「SWOT分析」)等による内部環境等の定性的な分析及びその結果の活用

(三) 法令改正や障害福祉サービス等報酬改定等の外部環境を網羅的に分析する手法(いわゆる「PEST分析」)、競争要因に着目して業界の構造を分析する手法(いわゆる「ファイブフォース分析」)等による外部環境の定性的な分析及びその結果の活用

⑤ 経営能率の向上のためのデジタル技術の活用

障害福祉事業においては、サービスの提供に当たり最低限必要な人員及び設備が、都道府県又は市町村の条例により定められている一方、障害福祉職員の確保が容易ではないという状況にあり、障害福祉事業に投入できる人的資源の幅に制約があることから、経営能率を向上させるためには、情報通信技術(ICT)の活用により、サービスの質及び生産性の向上を図ることが必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 記録の作成、保管等の事務的業務について情報システムの導入(特に、クラウドサービスや会計、人事労務、販売管理等の基幹業務システムの一括導入。(二)において同じ。)による情報共有等の円滑化

(二) 情報システムの導入による業務の定量的な課題分析及びその結果に基づく業務の標準化

⑥ 経営資源の組合せ

障害福祉事業においては、サービスの質及び生産性の向上を図る必要がある一方、事業者が保有する経営資源には限りがあることから、現に有する経営資源及び他の事業者から取得した又は提供された経営資源を有効に組み合わせて一体的に活用することが必要である。

⑦ その他の経営資源を高度に利用する方法

①から⑥までのほか、経営資源をその有する潜在力が十分発揮されるように活用するためには、総務、経理、人事等の部門の共同化、居宅介護等における移動時間等の効率化等を実施することが必要である。具体的には次に掲げる事項とする。

(一) 中小企業等協同組合(中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)第3条に規定する中小企業等協同組合をいう。)等の制度を活用した総務、経理、人事等の部門における業務の共同化

(二) 居宅介護等において担当地域等を適切に見直すことによる移動時間等の効率化

2 経営力向上計画の認定

経営力向上計画について認定を受けようとする事業者にあっては、その経営規模に応じて取り組むことのできる事項に幅があると考えられることから、事業者は、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める数以上の第3の1の各号に掲げる事項に取り組むこととする。

① 小規模企業(特定事業者等のうち、常時使用する従業員の数がおおむね5人以下であるものをいう。以下同じ。) 1項目

② 中規模企業(特定事業者等のうち、資本金等の総額が5,000万円以下であって、常時使用する従業員の数が5人を超え300人以下であるものをいう。以下同じ。) 2項目

③ 中堅企業(特定事業者等のうち、小規模企業及び中規模企業に該当しないものをいう。) 3項目

3 業界団体に係る事項

障害福祉分野における業界団体においては、特定事業者等が経営力向上の取組を効果的に実施できるよう、その模範となる取組(新たな手法や成功事例等)に係る情報の収集等のほか、インフォーマルサービスも含めた地域資源の開発及び活性化を促すための取組を行うことが望まれる。

4 経営力向上に取り組むに当たって配慮すべき事項

特定事業者等が経営力向上に取り組むに当たっては、対人サービスとしての一定以上の質を確保するとともに、人員削減を目的とした取組をしないなど雇用の安定に配慮することが必要である。また、組織再編行為が利用者、従業員等に与える影響が大きいことに鑑み、事業承継等を行う場合にあっては、利用者に必要なサービスの継続的な提供、従業員の雇用の安定等に特に配慮するものとする。

第4 事業分野別経営力向上推進業務に関する事項

中小企業等経営強化法第39条第1項に規定する事業分野別経営力向上推進業務に関する事項については、基本方針第5の4から6までに定めるところによる。

改正文 (平成三〇年七月六日厚生労働省告示第二六二号) 抄

産業競争力強化法等の一部を改正する法律の施行の日(平成三十年七月九日)から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき公表する。

改正文 (令和元年七月一二日厚生労働省告示第六二号) 抄

中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年七月十六日)から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき公表する。

改正文 (令和二年九月三〇日厚生労働省告示第三三四号) 抄

中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日(令和二年十月一日)から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき公表する。

改正文 (令和三年七月三〇日厚生労働省告示第二九七号) 抄

産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律の施行の日(令和三年八月二日)から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき公表する。