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○高齢者の医療の確保に関する法律に基づく高齢者保健事業の実施等に関する指針

(令和二年三月二十七日)

(厚生労働省告示第百十二号)

高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第百二十五条第六項の規定に基づき、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく保健事業の実施等に関する指針(平成二十六年厚生労働省告示第百四十一号)の全部を次のように改正し、令和二年四月一日から適用することとしたので、同項の規定に基づき公表する。

高齢者の医療の確保に関する法律に基づく高齢者保健事業の実施等に関する指針

第一 本指針策定の背景と目的

一 高齢者保健事業に関するこれまでの制度改正等

国民の健康づくりや疾病予防をさらに推進するため、健康増進法(平成十四年法律第百三号)が平成十五年五月一日に施行され、同法に基づく健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(平成十六年厚生労働省告示第二百四十二号。以下「健康診査等実施指針」という。)が平成十六年八月一日に施行された。

平成二十年四月一日には、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号。以下「法」という。)が施行されたことに伴い、健康診査等実施指針の一部が改正されるとともに、法第百二十五条第一項の規定に基づき、後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)は、健康教育、健康相談、健康診査その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならないこととされた。

平成二十五年度からは国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(平成二十四年厚生労働省告示第四百三十号)により、健康づくりや疾病予防の更なる推進を図ることとされたが、令和六年度からは国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百七号。以下「基本方針」という。)により、誰一人取り残さない健康づくりの展開とより実効性をもつ取組の推進を図ることとされている。

平成二十八年四月一日には、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成二十七年法律第三十一号)により、広域連合は、高齢者の心身の特性に応じ、健康教育、健康相談、健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならないこととされた。

今後、高齢者の大幅な増加が見込まれる中、加齢により心身機能が低下するとともに、複数の疾患を有すること、治療期間が長期にわたること等により、自立した日常生活を維持することが難しくなる者が多くなると考えられる。

このため、高齢者ができる限り長く自立した日常生活を送ることができるよう、生活習慣病をはじめとする疾病(以下「生活習慣病等」という。)の発症や重症化の予防及び心身機能の低下を防止するための支援を行うことが必要である。

その際、高齢者は長年続けてきた生活習慣を変えること自体困難な場合が多く、若年者に比べ、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果は必ずしも大きくないこと、健康状態の個人差が大きい傾向があること、健康面の不安が生活上の課題となりやすいこと等から、個々の被保険者が自らの健康状態に応じて行う健康の保持増進の取組を広域連合等関係者が支援することが重要である。また、心身機能の低下等により被保険者の日常生活が制約される場合には、周囲からの支援が得られるよう、地域の関係者との連携を図ることが必要である。

このような健康の保持増進に向けた取組は、個々の被保険者の生涯にわたる生活の質の維持及び向上に大きく影響し、結果として医療費全体の適正化にも資するものである。

近年、診療報酬明細書及び調剤報酬明細書(以下「診療報酬明細書等」という。)の電子化の進展等により、広域連合が健康や医療に関する情報を活用して被保険者の健康課題の分析、法第百二十五条第一項に規定する高齢者の心身の特性に応じ、健康教育、健康相談、健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な高齢者保健事業(以下「高齢者保健事業」という。)の評価等を行うための基盤の整備が進んでいる。

平成二十七年には、健康寿命の延伸とともに医療費の適正化を図ることを目的として、民間主導の活動体である日本健康会議が発足し、自治体、企業、保険者等における先進的な取組を横展開するため、令和二年までの数値目標を定めた「健康なまち・職場づくり宣言二〇二〇」が、令和三年には、コミュニティの結びつき、一人一人の健康管理、デジタル技術等の活用に力点を置いた予防・健康づくりを推進するため、令和七年までの数値目標を定めた「健康づくりに取り組む五つの実行宣言二〇二五」が採択された。

二 高齢者保健事業と介護予防の一体的な実施の推進

人生百年時代を見据え、高齢者の健康増進を図り、できる限り健やかに過ごすことができる社会としていくため、高齢者一人一人に対する、きめ細かな高齢者保健事業と介護予防の実施の重要性は益々高まっている。高齢者については、複数の疾患の患に加え、要介護状態に至る前段階であっても身体的なぜい弱性のみならず、精神的、心理的又は社会的なぜい弱性といった多様な課題と不安を抱えやすい傾向にある。そこで、高齢者保健事業と介護予防の実施に当たっては、高齢者の身体的、精神的及び社会的な特性を踏まえ、効果的かつ効率的で、高齢者一人一人の状況に応じたきめ細かな対応を行うことが必要となる。

我が国の医療保険制度においては、七十五歳に到達すると、それまで加入していた国民健康保険制度等から、後期高齢者医療制度の被保険者に異動することとされている。この結果、高齢者保健事業の実施主体についても市町村(特別区を含む。以下同じ。)等から広域連合に移ることとなり、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第八十二条第五項に規定する七十四歳までの高齢者の心身の特性に応じた事業(以下「国民健康保険保健事業」という。)と高齢者保健事業が、これまで適切に継続されてこなかったといった課題が見られる。広域連合の中には、市町村に高齢者保健事業の委託等を行うことで重症化予防等の取組を行っている事例も見られるが、多くの場合、健康診査のみの実施となっている状況にある。また、高齢者は、疾病予防と生活機能維持の両面にわたるニーズを有しているが、高齢者保健事業は広域連合が主体となって実施し、介護予防の取組は市町村が主体となって実施しているため、健康状況や生活機能の課題に一体的に対応できていないという課題もある。

こうした課題について、市町村は、市民に身近な立場からきめ細かな住民サービスを提供することができ、国民健康保険及び介護保険の保険者であるため、国民健康保険保健事業及び介護予防についても知見を有していること等から、高齢者の心身の特性に応じてきめ細かな高齢者保健事業を進めるため、個々の事業については、広域連合は、市町村と連携し、国民健康保険保健事業及び介護予防の取組と一体的に実施する必要がある。

こうした状況を踏まえ、市町村が中心となって高齢者保健事業と介護予防の一体的な実施(以下「一体的実施」という。)を推進するための体制整備等を規定した医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第九号。以下「改正法」という。)が成立した。改正法においては、市町村が広域連合からの委託に基づき高齢者保健事業を国民健康保険保健事業や介護保険制度における介護予防の取組等と一体的に実施する枠組みを構築するため、高齢者保健事業における市町村の役割等を法令上明確に規定するとともに、これらの事業の基盤となる被保険者の医療、介護、健康診査等の情報について広域連合と市町村の間での提供を円滑にするための規定等を整備することとしたものである。

三 本指針の目的

本指針は、これらの高齢者保健事業をめぐる動向を踏まえ、生活習慣病等の発症や重症化の予防及び心身機能の低下の防止を図るための被保険者の自主的な健康の保持増進に向けた取組について、広域連合がその支援の中心となって、市町村と協力しつつ、被保険者の特性を踏まえた効果的かつ効率的な高齢者保健事業を展開することを目指すものである。

本指針においては、法第百二十五条第六項の規定に基づき、高齢者保健事業の適切かつ有効な実施を図るために、同条第七項各号に掲げる高齢者保健事業に関する基本的事項、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けて広域連合及び市町村が行う取組に関する事項、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けた広域連合及び市町村に対する支援に関する事項、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けた広域連合と市町村との連携に関する事項、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けた広域連合と地域の関係機関及び関係団体との連携に関する事項及びその他高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けて配慮すべき事項について規定するものとする。また、本指針は、同条第八項の規定に基づき、健康診査等実施指針、国民健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針(平成十六年厚生労働省告示第三百七号)及び介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に基づく介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成三十年厚生労働省告示第五十七号)と調和が保たれたものでなければならないとされている。

広域連合をはじめとする高齢者保健事業の実施者は、本指針及び健康診査等実施指針に基づき、高齢者保健事業の積極的な推進が図られるよう努めるものとする。

第二 高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に関する基本事項

一 関係者との連携

1 高齢者保健事業を行うに当たっては、複数の疾患の患に加え、要介護状態に至る前段階であっても身体的脆弱性のみならず、精神的、心理的又は社会的な脆弱性といった多面的な健康課題や不安を抱えやすい高齢者の特性に応じて、きめ細かな高齢者保健事業を効果的かつ効率的に実施するため、広域連合は、国民健康保険及び介護保険の保険者である市町村、都道府県、地域の医療関係団体等様々な実施主体と連携しながら、被保険者の立場に立って、疾病予防、重症化予防、健康の保持増進及び生活機能の維持向上を図るとともに、個々の被保険者の自主的な取組を支援するべきであること。

2 高齢者の特性に応じたきめ細かな高齢者保健事業を行うため、広域連合は、市町村と連携し、国民健康保険保健事業及び介護予防の取組と一体的に高齢者保健事業を進め、従来の疾病予防及び重症化予防に加えて、医療専門職によるきめ細かなアウトリーチを主体とした個別的支援及び通いの場等への積極的な関与の両者を実施することが重要であり、地域の医療関係団体との緊密な連携を図ること。

3 広域連合が様々な関係機関及び市民と一体となって高齢者保健事業に取り組むことにより、健康なまちづくりに向けた取組につなげていくことも期待されることから、1及び2の取組を進めるに当たっては、高齢者が積極的に地域社会に参画することができる機会を充実させることが重要であること。

二 高齢者保健事業と介護予防の一体的な実施

1 広域連合が高齢者保健事業を行うに当たっては、法第百二十五条第三項の規定に基づき、高齢者の身体的、精神的及び社会的な特性を踏まえ、高齢者保健事業を効果的かつ効率的で被保険者の状況に応じたきめ細かな対応を行うため、国民健康保険保健事業及び介護予防の取組と一体的に実施すること。

2 一体的実施を推進するに当たっては、広域連合は、法第百二十五条第四項の規定に基づき、当該広域連合に加入する市町村(以下「構成市町村」という。)との協議の上、市町村との連携に関する事項を地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百九十一条の七第一項に規定する広域計画(以下「広域計画」という。)に定めるよう努めなければならないこと。

3 法第百二十五条の二第一項の規定に基づき、広域連合は、広域計画に基づき、高齢者保健事業の一部について、構成市町村に対し、その実施を委託することができること。

4 広域計画に基づいて委託を受けた市町村は、法第百二十五条の二第一項の規定に基づき、高齢者保健事業の実施に関し、国民健康保険保健事業及び介護予防の取組との一体的な実施の在り方を含む基本的な方針を定めること。

5 広域計画に基づいて委託を受けた市町村において一体的実施を推進するため、次に掲げる医療専門職を配置することが重要であること。

(一) 地域の健康課題等の把握、地域の医療関係団体等との連携並びに地域の多様な社会資源及び行政資源を踏まえた事業全体の企画、調整等を担当する医療専門職

(二) KDBシステム(高齢者の医療の確保に関する法律施行規則(平成十九年厚生労働省令第百二十九号)第百十二条の四第一号に規定する被保険者に係る医療及び介護に関する情報等(当該被保険者に係る療養に関する情報並びに健康診査及び保健指導に関する記録並びに特定健康診査及び特定保健指導に関する記録、国民健康保険法の規定による療養に関する情報並びに介護保険法の規定による保健医療サービス及び福祉サービスに関する情報をいう。)に係るデータベース(情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、国民健康保険法第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)が構成するものをいう。以下同じ。)における医療、介護、健康診査等のデータ分析による地域の健康課題及び高齢者の健康課題の把握並びにデータ分析の結果に基づくアウトリーチを主体とした高齢者への個別的支援及び通いの場等への積極的関与を行う等地域を担当する医療専門職

6 広域連合及び広域連合から委託を受けた市町村は、法第百二十五条の四第一項及び第二項の規定に基づき、高齢者保健事業の一部について、事業を適切かつ確実に実施することができると認められる関係機関又は関係団体に対し、その実施を委託することができること。ただし、高齢者保健事業の企画立案や事業の実施状況の把握、検証等については、広域連合及び広域連合から委託を受けた市町村が責任をもって行うことが重要であること。

三 地域の特性に応じた事業運営

1 都道府県、市町村等の地域ごとに、被保険者の疾病構造、健康水準、受診実態、活用できる物的及び人的資源等が大きく異なり、医療費にも格差があることから、広域連合は市町村と協力し、地域の特性、医療費の傾向等の分析を行うとともに、被保険者のニーズや地域で活用可能な関係機関の状況を把握し、分析の結果を踏まえて優先順位や健康課題を明らかにし、地域の特性に応じた効果的かつ効率的な高齢者保健事業を行うよう努めること。

2 高齢者保健事業を行うに当たっては、都道府県、市町村、法第百五十七条の二第一項の規定に基づき都道府県ごとに組織される保険者協議会(以下「保険者協議会」という。)、医療又は介護に携わる者等と十分連携し、地域ごとの医療費の特性や健康課題について共通の認識を持った上で、地域の特性に応じた高齢者保健事業を行うよう努めること。

3 地域の関係者が連携及び協力して健康づくりを行う観点から、地域の特性の分析や、それに応じた課題に対する保健事業の企画及び実施に当たっては、健康増進法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)等に基づく地域における他の保健事業や介護保険法第百十五条の四十五第一項から第三項までに規定する地域支援事業(以下「地域支援事業」という。)等と積極的に連携及び協力を図るとともに、他の保険者や被用者保険の保険者等とも連携及び協力すること。

また、必要に応じて、関係者間で、保険者協議会や、地域・職域連携協議会等の場も活用することにより、各種行事や専門職研修等を共同して実施したり、施設や保健師等の物的及び人的資源を共同して利用する等、効率的に事業を行うよう努めること。

四 健康・医療情報の活用及びPDCAサイクルに沿った事業運営

高齢者保健事業の効果的かつ効率的な推進を図るためには、健康・医療情報(健康診査の結果や診療報酬明細書等から得られる情報(以下「診療報酬明細書等情報」という。)、各種保健医療関連統計資料、介護に関する情報その他の健康や医療に関する情報をいう。以下同じ。)を活用して、PDCAサイクル(事業を継続的に改善するため、Plan(計画)―Do(実施)―Check(評価)―Act(改善)の段階を繰り返すことをいう。以下同じ。)に沿って事業運営を行うことが重要であること。また、事業の運営に当たっては、費用対効果の観点も考慮すること。

五 被保険者の健康の保持増進のための環境整備

被保険者の健康の保持増進により、医療費の適正化及び広域連合の財政基盤強化が図られることは広域連合にとっても重要であること。

また、広域連合は、高齢者保健事業の実施にとどまらず、禁煙の推進、身体活動の機会の提供、医療機関への受診勧奨等、被保険者の健康を支え、かつ、それを守るための環境の整備に努めること。

第三 高齢者保健事業の内容

広域連合及び広域連合から委託を受けた市町村は、第二の高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に関する基本的事項を踏まえ、本項に示す高齢者保健事業を実施するよう努めること。また、被保険者が参加しやすいような環境づくりに努め、特に参加率が低い被保険者については重点的に参加を呼び掛けるなどの工夫を行うこと。

なお、本指針は、今後重点的に実施すべき高齢者保健事業を示すものであり、以下の項目以外でも、広域連合及び市町村独自の創意工夫により、健康の保持増進の観点から、より良い高齢者保健事業を展開することを期待するものであること。

一 健康診査

1 健康診査は、疾病予防、重症化予防及び心身機能の低下の防止を目的として、医療機関での受診が必要な者及び保健指導を必要とする者を的確に抽出するために行うものであること。

2 健康診査は、高齢者保健事業の中核的な事業の一つであり、健康診査の結果の通知を行うことにより本人の健康への気付きを促すこと、医療機関への受診の機会へつなげること、健康診査の結果を活用した医療専門職による保健指導を行うこと等、健康診査等実施指針等に沿って、受診率向上に関する取組等を効果的かつ効率的に実施していくことが重要であること。

3 被保険者の利便性を考慮して、健康増進法等に基づく健康増進事業等と連携を図り、各種検診の同時実施に努めること。

また、その際には、検診の種類ごとに、対象者、対象年齢等を適切に設定し、被保険者に周知すること。

健康診査における検査項目は、生活習慣病に着目した特定健康診査の必須項目を基本とし、検査方法と併せて、科学的知見の蓄積等を踏まえた設定及び見直しを行うこと。

4 被保険者にとって受診が容易になるよう、健康診査の場所、時期及び期間等を工夫すること。

また、健康増進法等に基づく地域における他の保健事業等との連携、協力を十分に図ること。

5 後期高齢者医療制度の健康診査において使用している質問票について、一体的実施の取組を進めるに当たり、高齢者の特性を踏まえた健康状態を総合的に把握することができるよう令和二年度に改定した質問票を活用するよう努めること。

二 健康診査後の結果の通知及び分析

1 健康診査を行った場合には、速やかに、治療を要する者及び保健指導を要する者の把握をはじめとして、対象者の健康水準の把握及び評価を行うこと。また、広域連合以外の者が健康診査を行う場合でも、事後の指導を有効に行うため、結果の把握に努めること。

2 健康診査の結果の通知については、医師、保健師等の助言及び指導を得て、治療を要する者に対して、必要に応じ医療機関での受診を勧めるとともに、経年的な変化を分かりやすく表示したり、自立した日常生活を送る上で生活習慣に関して留意すべき事項を添付する等により、対象者に自らの日常生活を振り返り生活習慣等の課題を発見、意識させ、療養及び健康の保持増進に効果的につながるような工夫を行うこと。

3 健康診査の結果に加え、医療及び介護のデータ等を分析し、地域の健康課題を明確化すること。把握した健康課題を基に事業の企画、立案、実施及び評価を行うこと。

三 保健指導

1 保健指導については、加齢や疾病等による健康状態及び心身機能の変化に着目し、生活習慣を見直すための保健指導を行うことにより、対象者が日常生活を振り返り自らの生活習慣を評価し、課題を認識するとともに、医療機関の受診、食生活への配慮、身体活動量の確保、認知機能低下の予防等を推進することを通じて、できる限り長く自立した日常生活を維持することを目的とするものであること。

2 保健指導は、健康診査の結果、生活状況、健康状態等を十分に把握し、疾病予防、重症化予防及び健康の保持増進のための方法を本人が選択できるよう配慮するとともに、加齢による心身の特性の変化や性差等に応じた内容とすること。その際には、個人を対象とした指導、小集団を対象とした指導、集団を対象とした指導等、対象者の状況に応じて、効果的かつ効率的な方策をとること。

四 健康教育

1 健康教育(対象者の生活状況等に即した生活習慣病等の発症や重症化の予防及び心身機能の低下の防止等に関する指導及び教育を実施することをいう。以下同じ。)は、広域連合の特性や課題に応じて、テーマや対象、実施方法等を選定し、計画的かつ効果的な実施に努めること。その際、個別の保健指導と併せて実施する等、個人の健康の保持増進の取組を支援していくものとすること。

2 生活習慣病等は生命及び健康に対して危険をもたらすものであることを示す一方で、日常生活を振り返り生活習慣の課題を意識し見直す等の取組が生活習慣病等の発症や重症化の予防又は心身機能の低下の防止につながった好事例を示す等、具体的な事例を挙げながら、運動習慣、食生活、喫煙、飲酒、歯及び口くうの健康の保持等について、生活習慣に着目した健康管理の重要性を被保険者に理解させること。

3 喫煙や飲酒が健康に及ぼす悪影響については、多くの疫学研究等により指摘がなされており、例えば、喫煙の弊害を具体的な数値を挙げて説明する等、効果的な指導及び教育を行うこと。

4 心の健康づくりは、健康の保持増進に極めて重要であることから、広域連合は被保険者への心の健康に関する正しい知識の普及啓発等を通じ、心の病気の予防、早期発見及び早期治療ができるような健康教育を推進すること。また、その際、プライバシーの保護に配慮する一方で、他の健康教育と一体的に実施するなど、心の健康に関する健康教育が利用しやすくなる工夫を行うこと。

5 加齢に伴う心身機能の低下の防止を図る観点から、高齢者の特性を踏まえ、日常生活における身体活動量の確保、低栄養を防ぐための食生活、社会参加の重要性等について被保険者等への普及啓発に努めること。その際、地域における自主的活動の場を活用し、介護予防の取組と一体的に実施するなど、健康教育を利用しやすくするための工夫を行うこと。

五 健康相談

1 健康相談は、被保険者の相談内容に応じ、主体性を重んじながら、生活習慣の見直しをはじめとした必要な助言及び支援を行うこと。その際には、被保険者の生活習慣に関する意識及びプライバシーの保護に配慮すること。

2 地域の健康管理センター等において定期的に健康相談を開催し、被保険者の参加を促すとともに、介護予防の取組と一体的に実施する等、より効果的で充実したものとなるよう工夫すること。

また、実施時間に配慮する、保健師等による巡回相談を行う、専門の電話相談窓口を設ける、地域の会合等の身近な集まりを活用する等の工夫を行い、従来健康相談を利用する機会が少なかった被保険者にも利用の機会を増やすよう努めること。

3 被保険者が心の健康に関する相談を利用しやすい環境となるよう、他の健康相談と一体的に実施する等の工夫を行うこと。

六 訪問指導

1 保健指導は、健康診査の結果、生活状況、健康状態、被保険者の心身の状況、置かれている環境、受診状況等に照らして、居宅を訪問して指導することが効果的と認められる者を対象として実施すること。その際には、被保険者ができる限り長く自立した日常生活を送ることができるようにする観点から、被保険者の生活状況等の実情に即した指導を行うこと。

2 居宅等における訪問指導を実施する場合には、おおむね次の事項に関する指導を必要に応じて被保険者又はその家族に対し行うこと。

(一) 健康診査等の結果、診療報酬明細書等情報等からみて、医療機関に受診が必要な者等への受診勧奨

(二) 必要があると認められる場合には、地域の保健医療サービス、福祉・介護予防等の活用方法又は居宅における療養方法に関する指導

(三) 生活習慣病等の発症や重症化の予防に関する指導

(四) 心身機能の低下の防止に関する指導

(五) 心の健康づくりに関する指導

3 特に、複数の医療機関を重複して受診する被保険者については、その事情を十分に聴取し、必要に応じて適切な受診につながるような助言及び指導を行うこと。

また、継続的な治療が必要であるにもかかわらず、医療機関を受診していない被保険者についても、その事情を十分に聴取した上で、適切な助言及び指導を行うこと。その際には、必要に応じて、医療機関と十分な連携を図ること。

七 健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援

1 健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援は、被保険者の健康づくりに向けた意識及び行動の変容を図ることを目的として、被保険者がそれぞれの年齢や健康状態等に応じ、健康づくりの取組を開始するきっかけや継続するための支援等として実施するものである。当該支援を実施する場合には、当該目的に照らして、当該支援が真に効果的であるかについて定期的に評価しながら行うこと。

2 1の支援の実施に当たっては、必要な医療を受けるべき被保険者の医療機関への受診抑制を招き、これにより症状が重症化すること等がないよう、十分に留意すること。

八 通いの場等における高齢者保健事業の実施

広域連合又は広域連合から委託を受けた市町村が高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施を推進するに当たっては、高齢者の身体的、精神的及び社会的な特性を踏まえ、通いの場等も活用した高齢者保健事業の実施に努めること。この実施に当たっては、介護予防の取組との一体的な実施を進め、通いの場等において、支援すべき対象者等を把握し、低栄養等の状態に応じた保健指導や生活機能向上に向けた支援等を行うとともに、地域包括支援センター等の関係機関と連携して必要に応じて医療サービス及び介護サービスにつなげていくこと。比較的健康な高齢者に対しても、通いの場等への参加継続や疾病の重症化のリスクに対する気付きを促し、運動、栄養、口くう等の健康課題に対する予防メニューへの参加を勧奨する等、既存事業等と連携した支援を行うこと。

通いの場等の支援内容に積極的に関与するとともに、様々な日常生活拠点において、日常的に健康相談等を行う等、健康づくりへの興味関心を喚起するような環境を整えること。こうした取組を進めるに当たっては、市民が自ら担い手となって積極的に参加できるような機会も充実するよう努めること。

九 社会情勢の変化等に対応した保健事業

被保険者の健康課題や属性の分析等を踏まえて事業を選択することを前提に、生活習慣病等の発症や重症化の予防の推進に加え、例えば、重複投薬・多剤投与対策をはじめとした適正な医薬品の使用の啓発・普及や二次性骨折予防の取組を含むフレイル対策等の取組の実施に努めること。

第四 高齢者保健事業と介護予防の一体的な実施のための具体的な取組

一 医療専門職の配置

広域計画に基づいて委託を受けた市町村において、一体的実施を推進するため、次に掲げる医療専門職を配置することが重要であること。

1 地域の健康課題等の把握、地域の医療関係団体等との連携並びに地域の多様な社会資源及び行政資源を踏まえ事業全体の企画、調整等を担当する医療専門職

2 KDBシステムにおける医療、介護、健康診査等のデータ分析による地域の健康課題及び高齢者の健康課題の把握並びにデータ分析の結果に基づくアウトリーチを主体とした高齢者への個別的支援及び通いの場等への積極的関与を行う等地域を担当する医療専門職

二 KDBシステム等を活用した高齢者保健事業等に関する情報の授受及びデータ分析

広域連合及び広域連合から委託を受けた市町村は、法第百二十五条の三の規定に基づき、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施を図る観点から、必要があると認めるときは、他の広域連合や他の市町村に対し、被保険者の医療、介護、健康診査等に関する情報の提供を求めることができるとともに、当該情報の提供を求められた広域連合及び市町村は当該情報を提供しなければならないこと。情報の授受に当たっては、KDBシステム等を活用して行うこと。また、市町村は、当該市町村内の後期高齢者医療所管課、国民健康保険所管課及び介護保険所管課が保有する被保険者の医療、介護、健康診査等に関する情報を他の市町村等から提供を受けた情報と併せて一体的に活用することができること。

広域連合又は広域連合から委託を受けた市町村が、こうして授受した被保険者の医療、介護、健康診査等に関する情報を高齢者保健事業において活用するに当たっては、これらの情報を一体的に分析し、本事業において支援すべき対象者を抽出することが重要であること。また、医療及び介護双方の視点から高齢者の状態をスクリーニングし、社会参加の促進を含む取組等、対象者及び各地域に対して、課題に対応した一体的な取組につなげることが重要であること。KDBシステムのデータに加え、市町村が有する介護予防・日常生活圏域ニーズ調査のデータ等も活用し、地域の健康課題の整理及び分析を行うことも重要であること。

三 高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施に向けた関係者の連携に関する内容

1 広域連合における体制の整備

広域連合は、高齢者保健事業を行うに当たっては、法第百二十五条第四項の規定に基づき、一体的実施を効果的かつ効率的に推進するため、市町村と協議の上、市町村との連携に関する事項を広域計画に定めるよう努めなければならないこと。当該計画に基づき、高齢者保健事業の一部について、構成市町村に対し、実施を委託することができること。

高齢者保健事業の企画調整とともに、KDBシステムのデータ等を活用した域内全体の高齢者の健康課題や構成市町村における保健事業の取組等の整理、把握及び分析、構成市町村への支援、都道府県や各国保連合会との調整等の取組を適切に行うことが重要であること。

2 市町村における体制の整備

広域連合から委託を受けた市町村は、一体的実施を推進するに当たっては、当該市町村内の後期高齢者医療所管課、国民健康保険所管課、介護保険所管課及び公衆衛生所管課間で連携しつつ、これまで実施した保健事業の内容等を踏まえ、関係各部局における既存の社会資源や行政資源等を勘案し、具体的な地域の課題の分析、それに基づく取組に関する進め方等を検討し、広域連合との具体的な調整を進めることが重要であること。各市町村の社会資源や行政資源等を整理していく中で、複数の市町村が連携及び協力し、双方の地域内の社会資源等を活用しながら、一体的実施を推進することで効果的かつ効率的な事業展開に繋がる場合も考えられることから、市町村の置かれた状況により、周囲の市町村と連携して検討を進めることも考えられること。

3 国保中央会及び国保連合会との連携

法第百三十一条の規定に基づき、公益社団法人国民健康保険中央会(以下「国保中央会」という。)は、診療報酬明細書等情報等を活用した医療費分析や高齢者保健事業に関する調査及び研究、広域連合間の連絡調整等、広域連合及び市町村が行う高齢者保健事業を支援する事業を行うよう努めなければならないこと。

法第百三十一条の規定に基づき、国保連合会は、診療報酬明細書等情報等を活用した医療費分析、保健事業に関する調査及び研究等に加え、専門的な技術又は知識を有する保健師等による高齢者保健事業従事者に対する研修の実施、広域連合が行う高齢者保健事業のPDCAサイクルに係る取組等を支援する事業を行うよう努めなければならないこと。

また、国保中央会及び国保連合会においては、国保・後期高齢者ヘルスサポート事業を行うに当たって、広域連合、市町村及び都道府県におけるレセプト・健康診査情報等のデータ分析に基づく高齢者保健事業のPDCAサイクルの取組を支援することが重要であること。広域連合、市町村及び都道府県においては、こうした取組等も活用してデータ分析に基づく高齢者保健事業を実施することが重要であること。

さらに、一体的実施を担当する市町村の医療専門職等においては、高齢者の身体的、精神的及び社会的特性に関する知見や、先進的な市町村における高齢者保健事業の取組状況等を把握するとともに、KDBシステムによるデータの分析手法、事業の取組結果に対する評価手法、効果的な取組を分析する手法等を身につけることが求められていることから、国保中央会及び国保連合会は、法第百三十一条の規定に基づき、高齢者保健事業の推進に向けて、広域連合向け情報交換会の実施、各自治体の医療専門職や実務担当者等に対する研修の実施等を支援するよう努めなければならないこと。

4 関係団体等との連携

広域連合又は広域連合から委託を受けた市町村が一体的実施を推進するに当たっては、地域の医療関係団体等の関係団体又は関係機関との協力が期待されるものであり、事業の企画の段階から緊密に連携することが重要であること。

5 都道府県から広域連合等に対する支援

都道府県は、健康増進法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画(以下「都道府県健康増進計画」という。)等を踏まえて、広域連合における高齢者保健事業の運営が健全に行われるよう、法第百三十三条の規定に基づき、必要な助言及び支援を行う等積極的な役割を果たすこと。

都道府県は、国民健康保険の保険者として、当該都道府県の区域内の市町村ごとの健康課題や保健事業の実施状況を把握するよう努めること。また、国民健康保険から後期高齢者医療に移行した被保険者に対し、広域連合が継続的な取組を行えるよう、広域連合との連携及び協力を図るよう努めること。

加えて、広域連合及び市町村における一体的実施の取組が着実に進むよう、都道府県内においても関係部局が連携して、広域連合や市町村に対する専門的見地等からの支援や事業に係る好事例の横展開を進めるとともに、広域連合とともに事業の取組結果に対する評価や効果的な取組の分析等を行うことが重要であること。都道府県からの支援に当たっては、一体的実施の円滑な推進を支援するため、都道府県から、都道府県単位の医療関係団体等に対して、広域連合又は市町村が実施する高齢者保健事業への技術的な援助等を依頼することも考えられること。

第五 高齢者保健事業の実施計画(データヘルス計画)の策定、実施及び評価

広域連合は、健康・医療情報を活用した被保険者の健康課題の分析や高齢者保健事業の評価等を行うための基盤が近年整備されてきていること等を踏まえ、健康・医療情報を活用してPDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的な高齢者保健事業の実施を図るための医療・健診等に関する情報を活用した高齢者保健事業の実施計画(以下「実施計画」という。)を策定した上で、高齢者保健事業の実施及び評価を行うこと。

実施計画の策定並びに高齢者保健事業の実施及び評価に当たっては、次の事項に留意すること。

一 実施計画の策定

実施計画の策定に当たっては、健康診査の結果、診療報酬明細書等情報等を活用し、広域連合、市町村、被保険者等ごとに、生活習慣の状況、健康状態、医療機関への受診状況、医療費の状況等を把握し、分析すること。その際、性別、年齢階層別、疾病別の分析のほか、経年的な変化、広域連合内の地域間の比較等、更に詳細な分析を行うよう努めること。

その際、都道府県健康増進計画及び健康増進法第八条第二項に規定する市町村健康増進計画の策定時に用いた住民の健康に関する各種指標も活用すること。

これらの分析結果に基づき、直ちに取り組むべき健康課題、中長期的に取り組むべき健康課題等を明確にして、目標値の設定を含めた事業内容の企画を行うこと。

具体的な事業内容の検討に当たっては、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠、飲酒、喫煙及び歯・口くうの健康など、基本方針に示された各分野及びその考え方を参考にすること。その際、身体の健康のみならず、心の健康の維持についても留意すること。

また、保健事業の選択・優先順位付けに当たっては、解決すべき健康課題への対応、財政上の制約、事業効果のエビデンス、地域特性、社会環境等を考慮して決定すること。

二 実施計画に基づく事業の実施

実施計画に基づく事業(以下単に「事業」という。)の実施に当たっては、健康診査が必要な被保険者について受診率の向上を図り、健康状態に関する情報の把握を適切に行うとともに、健康診査の結果や診療報酬明細書等情報等を踏まえ、対象者を健康状態等により分類し、それぞれの分類にとって効果が高いと予測される事業を提供するよう努めること。

特に疾病の重症化予防等に係る事業を行う際には、医療機関や地域の医療関係団体との連携を図ること。

1 一次予防の取組としては、被保険者に自らの日常生活を振り返り生活習慣等の課題を認識させるための取組を行うこと。このような取組としては、情報通信技術(ICT)等を活用し、被保険者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供すること、被保険者の性別若しくは年齢階層ごと又は広域連合、市町村等ごとの健康・医療情報を提供すること、被保険者の健康の保持増進に資する自発的な活動を推奨する仕組みを導入すること等が考えられる。

2 生活習慣病等の発症や重症化を予防する取組としては、健康診査の結果や診療報酬明細書等情報等を活用し、あらかじめ明確な基準を設定して、生活習慣病等の発症や重症化のリスクが高い者を抽出した上で、これらの者に対して、症状の進展等を抑えるため、優先順位を付けて適切な保健指導、医療機関への受診勧奨を行うこと等が考えられること。また、取組の実施に当たっては、医師会等地域の医療関係者との連携に努めるとともに、医療機関に受診中の者に対して保健指導等を実施する場合には、当該医療機関等と連携すべきこと。

3 加齢に伴う心身機能の低下を防止し、高齢期にある被保険者ができる限り長く自立した日常生活を送ることができるようにするため、運動機能や認知機能の維持・回復、低栄養の防止等に向けて、生活習慣の課題を意識し見直すための働きかけを重点的に行うこと等が重要であること。

4 健康・医療情報を活用したその他の取組としては、診療報酬明細書等情報等を活用して、複数の医療機関を重複して受診している被保険者に対し、医療機関、広域連合、市町村等の関係者が連携して、適切な受診の指導を行うこと等が考えられること。

また、健康診査や医療機関への受診がなく、健康状態を把握できていない被保険者に対しては、その状況を確認し、必要に応じて健康診査、医療機関への受診勧奨又は健康管理に関する助言及び指導を行うこと等が考えられること。

診療報酬明細書等情報等に基づき、後発医薬品を使用した場合の具体的な自己負担の差額に関して被保険者に通知を行うなど、後発医薬品の使用促進に資する取組を行うことも、医療費の適正化等の観点から有効であることも多いと考えられるため、積極的にこれらの取組の実施に努めること。その他、保健指導の場等の多様な機会を通じて、後発医薬品の普及啓発に努めること。

三 事業の評価

事業の評価は、健康・医療情報を活用して、費用対効果の観点も考慮しつつ行うこと。なお、評価の際に用いる指標については、全国の広域連合において、次の総合的な評価指標(共通評価指標)を設定するほか、各広域連合独自の評価指標を設定して差し支えない。

1 健康診査受診率

2 歯科健診実施市町村数及び当該数が構成市町村数に占める割合

3 質問票を活用したハイリスク者把握に基づく保健事業を実施している市町村数及び当該数が構成市町村数に占める割合

4 次に掲げる者に対する保健事業(ハイリスクアプローチ)の実施市町村数及び当該数が構成市町村数に占める割合

(一) 低栄養の状態にある者

(二) 口くう機能の低下のおそれのある者

(三) 服薬(重複投薬・多剤投与等)に係る指導等を必要とする者

(四) 身体的フレイル(運動機能の低下等のフレイルをいい、ロコモティブシンドロームを含む。5の(四)及び(五)において同じ。)の状態にある者

(五) 重症化予防(糖尿病性腎症等の予防)に係る指導等を必要とする者

(六) 健康状態が不明な者

5 次に掲げる者に対する保健事業におけるハイリスク者数が各広域連合の被保険者数に占める割合

(一) 低栄養の状態にある者

(二) 口くう機能の低下のおそれのある者

(三) 服薬(多剤投与又は睡眠薬投与)に係る指導等を必要とする者

(四) 身体的フレイルの状態にある者

(五) 重症化予防に係る指導等を必要とする者(血糖等管理が不十分な者、糖尿病等の治療を中断した者、基礎疾患を有し、かつ、身体的フレイルの状態にある者又は腎機能が低下し、かつ、医療機関を受診していない者)

(六) 健康状態が不明な者

6 平均自立期間

四 事業の見直し

それぞれの事業については、少なくとも毎年度効果の測定及び評価を行った上で、必要に応じて事業内容等の見直しを行うこと。

五 計画期間等

計画期間は、健康増進計画等との整合性も踏まえ、複数年とすること。また、策定した実施計画については、分かりやすい形でホームページ等を通じて公表すること。

第六 事業運営上の留意事項

広域連合及び市町村は、高齢者保健事業の運営に当たって、特に次の事項に留意すること。

一 高齢者保健事業の担当者

1 第三に掲げられた高齢者保健事業を実施する際には、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士等、生活習慣病等の発症や重症化の予防及び心身機能の低下の防止等に関し知識及び経験を有する者をもって充てること。

2 担当者の資質の向上のため、被保険者の健康の保持増進等に向けた取組の目的及び内容を理解させ、さらに知識及び技術を習得させるため、定期的な研修を行うこと。その際には、効果的な研修を行うため、他の保険者等と共同して行うことも有効であること。

二 実施体制の整備等

1 高齢者保健事業の積極的な推進を図るため、高齢者保健事業の担当者を確保するとともに、広域連合が主体となり、国民健康保険及び介護保険の保険者であり、かつ健康増進法等に基づく保健事業等も担当する市町村並びに国民健康保険の保険者である都道府県又は国保連合会と連携、協力を図る等実施体制の整備に努めること。

2 高齢者保健事業が円滑に実施されるよう、保険料等を財源とする高齢者保健事業費の確保に努めること。

三 地域における組織的な取組の推進

健康教室等をきっかけとして、地域における健康づくりを推進する被保険者の自主的な組織づくりを推進することができるよう、市町村等の関係者との連携、協力に努めること。これにより、地域における健康意識を高め、より充実した保健活動を行うこと。

地域において既に被保険者の自主的な組織がある場合は、その活用を含め十分な連携を図ること。

四 委託事業者の活用

1 よりきめ細かな高齢者保健事業を行うために委託事業者を活用することも可能であること。

その際は、事業が実効を上げるよう、保健又は医療に関する専門家を有する等、保健指導を効果的に行う知見を有するような一定の水準を満たす事業者を選定し委託すること。

特に、個人を対象とした指導又は小集団を対象とした指導等においては、広域連合等において企画及び調整を行うことを前提に、実際の指導に当たっては保健師等の専門職を活用すること。

2 委託を行う際には、効果的な事業が行われるよう、委託事業者との間で、高齢者保健事業の趣旨や被保険者への対応について、事前に十分に協議を行い、共通の認識を得ておくこと。

また、事業の終了後は、当該事業の効果について、客観的な指標を用いて評価を行うこと。

五 健康情報の継続的な管理

1 健康情報を継続的に管理することは、被保険者の健康の自己管理に役立ち、生活習慣病等の発症や重症化の予防の観点からも重要であること。

健康情報の管理は、健康の自己管理の観点から被保険者が主体となって行うことが原則であるが、広域連合は、健康診査の結果、保健指導の内容、主な受診歴等、個々の被保険者に係る健康情報を、少なくとも五年間継続して保存及び管理し、必要に応じて活用することにより、被保険者による健康の自己管理及び生活習慣病等の発症や重症化の予防の取組を支援するよう努めること。

2 広域連合及び広域連合から委託を受けた市町村は、法第百二十五条の三の規定に基づき、高齢者保健事業の効果的かつ効率的な実施を図る観点から、必要があると認めるときは、他の広域連合や他の市町村に対し、被保険者の医療、介護、健康診査等に関する情報の提供を求めることができるとともに、当該情報の提供を求められた広域連合及び市町村は当該情報を提供しなければならないこと。情報の授受に当たっては、KDBシステム等を活用して行うこと。情報の授受に当たっては、担当者に対する周知徹底等も含め、広域連合及び市町村は、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)、地方公共団体において同法第十二条第一項の趣旨を踏まえて制定される条例等を遵守し、厳正な管理を行う必要があること。また、広域連合と広域連合から委託を受けた市町村との間で取扱いに差が生ずることのないようにすることが重要であること。

3 広域連合及び市町村は、法第百二十五条の四第一項及び第二項の規定に基づき、高齢者保健事業の一部について、事業を適切かつ確実に実施することができると認められる関係機関又は関係団体に対し、その実施を委託することができること。広域連合又は市町村は、当該関係機関等に対し、委託した高齢者保健事業の実施に必要な範囲内において、被保険者の医療、介護、健康診査等の情報を提供することができること。

当該広域連合又は市町村は、当該関係機関等が個人情報を適切に管理し、適正な目的で使用するよう監督することが重要であること。また、これらの関係機関等において、委託を受けた事業を実施するために必要な範囲を超えた個人情報の提供は認められないこと。加えて、委託を受けた関係機関等の役員若しくは職員又は職員であった者には、法第百二十五条の四第三項に基づき秘密保持義務が課されるとともに、漏えいした場合には法第百六十七条第一項に基づき、罰則が科されること。

4 その他第三者に健康情報を提供する際の手続等については、原則としてあらかじめ被保険者の同意を得る等、個人情報の保護に関する法律、地方公共団体において同法第十二条第一項の趣旨を踏まえて制定される条例等によること。

改正文 (令和二年九月二五日厚生労働省告示第三二八号) 抄

令和二年十月一日から適用することとしたので、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第百二十五条第六項の規定に基づき公表する。

附 則 (令和五年八月三一日厚生労働省告示第二五八号)

この告示は、令和五年九月一日から適用する。