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○母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針

(令和二年三月二十三日)

(厚生労働省告示第七十八号)

母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)第十一条第一項の規定に基づき、母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針を次のように定めたので、同条第四項の規定により告示する。なお、母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針(平成二十七年厚生労働省告示第四百十七号)は、廃止する。

母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針

目次

はじめに

第1 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項

第2 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項

第3 都道府県等が策定する自立促進計画の指針となるべき基本的な事項

はじめに

1.方針のねらい

(1) 母子家庭及び父子家庭施策の必要性

我が国の年間離婚件数は、平成14年を最多に減少しているものの、母子家庭が123.2万世帯及び父子家庭が18.7万世帯と依然として多くの母子家庭及び父子家庭が存在している。現実の母子家庭及び父子家庭の置かれている生活実態や就業状況等を見ると、子育てと生計の担い手という二重の役割を一人で担うこととなった直後から、その生活は大きく変化し、住居、収入、子どもの養育等の面で様々な困難に直面することとなる。

母子家庭の母の場合、就業経験が少なかったり、結婚、出産等により就業が中断したりしていたことに加え、事業主側の母子家庭に対する理解不足等により、その就職又は再就職には困難が伴うことが多い。また、保育所等における待機児童が今なお都市部で多い中で、就業しても低賃金や不安定な雇用条件等に直面することが多い。さらに、約7割の離婚母子家庭は養育費が支払われていない。こうしたこと等から、その81.8%が就業しているにもかかわらず、平均年間就労収入は200万円と低い水準にとどまっているのが現状である。パート・アルバイト等の形態での就労が43.8%、その平均年間就労収入は平成27年において133万円となっており、依然としてパート・アルバイト等の平均年間就労収入が低い形態で就労する者の割合は高いままである。また、子どもの養育や教育のために収入を増やそうと複数の職場で就業する、より良い就業の場の確保のために自らの職業能力を高める等、懸命な努力をする中で、中にはその努力が結果として健康面での不安を招き生活をより困難にしている場合もある。

こうしたことから、特に母子家庭施策については、子育てをしながら収入面・雇用条件等でより良い就業をして、経済的に自立できることが、母本人にとっても、子どもの成長にとっても重要なことであり、就業による自立支援の必要性が従来以上に高まっている。

一方、父子家庭の父については、既に家計の担い手として就業していた場合が多いことから、その平均年間就労収入は平成27年において398万円となっている。その一方で、パート・アルバイト等の形態で就労する者が6.4%と一定割合存在し、その平均年間就労収入は平成27年において190万円と低い水準となっていることから、こうした家庭に対する就業の支援が必要である。また、母子家庭の母に比べて家事等生活面で多くの困難を抱えており、子育てや家事の支援の重要性が非常に高い。

このような母子家庭及び父子家庭の置かれた厳しい雇用・経済状況を背景として、厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満で17歳以下の子どもがいる世帯)のうち、大人が一人の世帯の貧困率は、平成27年で50.8%(平成24年54.6%)となっており、平成27年の国際比較では、OECD諸国の中でも高くなっている(OECD(2015)Family database “Child poverty”)。こうした状況にあって、子どもの権利条約の精神にのっとり、また、子どもの貧困の連鎖を断ち切るために、子どもの現在及び将来を見据えた対策として、必要な環境整備と教育の機会均等を図る子どもの貧困対策は極めて重要である。このため、子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成25年法律第64号)及び子供の貧困対策に関する大綱(令和元年11月29日閣議決定)を踏まえ、貧困の世代間連鎖の解消を目指し、子どもの意見を尊重しその最善の利益を考慮しながら、母子家庭及び父子家庭に関する施策を講じていく必要がある。さらに、生まれた地域によって子どもの将来が異なることのないよう、地方公共団体による計画の策定を促すとともに、地域の実情を踏まえた取組の普及啓発を積極的に進めていく。

また、離別後の子どもの養育においては、その養育に対する責務は両親にあり、離婚により変わるものではない。子どもを監護しない親からの養育費は、子どもの権利であるにもかかわらず、その確保が進んでいないことから、親の子どもに対する責務の自覚を促し、子どもを監護する親は子どもを監護しない親に養育費を請求し、また、子どもを監護しない親は、その責務を果たしていくべきことを、社会全体が当然のこととする気運を醸成していくためにも、国、都道府県及び市町村は、子どもの福祉の観点から、離婚協議段階から、離婚後の養育費や面会交流に関する取決めの必要性について、積極的に周知・啓発を行うとともに、更なる養育費の履行確保や面会交流の実施に向けた取組を推進していく必要がある。

さらに、母子、父子を問わず親との離死別は、子どもの生活を大きく変化させるものであり、そのことが子どもの精神面に与える影響や、親子の健康状態の変化、進学の悩み等、子どもの成長過程において生じる諸問題についても、十分な配慮が必要である。

このように、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の抱えている困難は、多くが複雑に重なり合っていることから、引き続き総合的な支援策を推進する必要がある。その際には、施策の実施主体は、精神面で支えを必要としている場合や養育能力や生活能力が欠けている場合において適切な援助を行う等、生活について幅広く支援する仕組み、個々の世帯の抱える問題に対し相互に支え合う仕組みを活用する等、きめ細かな配慮をすることが求められており、そうした観点から、母子・父子福祉団体やNPO等様々な関係者と緊密に連携を図りながら、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の置かれた状況に応じてきめ細かな支援を実施することが重要である。

特に、日頃から行政との関わりを持つ機会が持ちづらい家庭については、都道府県及び市町村が、母子・父子福祉団体等地域で子育て支援の活動をする民間団体と連携し、個々の家庭に必要な支援を的確に把握するとともに、継続した支援を行うことができるよう、個々の家庭に寄り添った伴走型の支援を実施することが重要である。

(2) 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦福祉対策に関する国の基本方針

我が国における母子家庭及び父子家庭並びに寡婦福祉対策は、昭和27年に戦争未亡人対策から始まり60年以上の歴史を持っており、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦を巡る状況の変化に応じた見直しが行われてきた。

平成14年には母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対する「きめ細かな福祉サービスの展開」と「自立の支援」に主眼を置いて施策を実施することとされ、離婚後等の生活の激変を緩和するために、母子家庭及び父子家庭となった直後の支援を重点的に実施するとともに、就業による自立を支援するため、福祉事務所(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に定める福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を設置する地方公共団体において、母子自立支援員が総合的な相談窓口となり、児童扶養手当等各種母子家庭及び父子家庭の支援策に関する情報提供、職業能力の開発、就職活動の支援を行う体制を整備しつつ、①子育てや生活支援策、②就業支援策、③養育費の確保策、④経済的支援策を総合的に展開することとされた。

平成22年には母子家庭及び父子家庭に対する自立を支援するため、父子家庭の父にも児童扶養手当が支給されるようになった。

平成24年には、子育てと就業との両立が困難であること、就業に必要な知識及び技能を習得する機会を必ずしも十分に有してこなかったこと等の母子家庭の母が置かれている特別の事情並びに子育てと就業との両立が困難であること等の父子家庭の父が置かれている特別の事情に鑑み、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別の措置を講ずるとともに、母子家庭及び父子家庭の福祉を図るため、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法(平成24年法律第92号。以下「特別措置法」という。)が成立した。

平成26年には、母子家庭の母及び父子家庭の父が就業し、仕事と子育てを両立しながら経済的に自立するとともに、子どもが心身ともに健やかに成長できるよう、母子家庭及び父子家庭の福祉の増進を図るため、関連法令の改正が行われ、①都道府県等(都道府県、指定都市及び中核市をいう。以下同じ。)並びに市(指定都市及び中核市を除き、特別区を含む。)及び福祉事務所を設置する町村(以下「市等」という。)による母子家庭及び父子家庭への支援の積極的かつ計画的な実施に関する規定の整備等の母子家庭及び父子家庭に対する支援体制の強化、②高等職業訓練促進給付金等に対する公課を禁止する等、就業や生活への支援の強化、③父子福祉資金の創設等、父子家庭に対する支援の充実、④児童扶養手当と公的年金給付等の併給調整の見直し等の措置が講ぜられることとなった。

平成27年には、「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト(すくすくサポート・プロジェクト)」が策定され、就業による自立に向けた支援を基本としつつ、子育て・生活支援、学習支援等の総合的な取組を充実することとし、①地方自治体窓口のワンストップ化の推進、②子どもの居場所づくりや学習支援の充実、③親の資格取得の支援の充実、④児童扶養手当の機能の充実を図ることとなった。

当該プロジェクトを踏まえ、平成28年に児童扶養手当法が改正され、第2子以降の加算額が倍増された。また、平成30年度には児童扶養手当の全部支給に係る所得制限限度額の引き上げ、令和元年からは児童扶養手当の支払回数の見直し(年3回から年6回、令和元年11月分より適用)等、支援施策の充実が図られている。

この基本方針は、母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)第11条第1項の規定に基づき、母子家庭等及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項、母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項並びに都道府県等及び市等が策定する母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する計画(以下「自立促進計画」という。)の指針となるべき基本的な事項について、特別措置法等の趣旨、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の実態等を踏まえて定めることにより、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のための施策が総合的かつ計画的に展開され、個々の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対して効果的に機能することを目指すものである。

2.方針の対象期間

この基本方針の対象期間は、令和2年度から令和6年度までの5年間とする。

第1 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項

以下の記述は、特に記載がないものは、母子世帯及び父子世帯に関しては厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査(平成28年11月1日現在)」(平成23年は「全国母子世帯等調査(平成23年11月1日現在)」)、寡婦に関しては厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課の調査(令和元年8月1日現在。平成26年は雇用均等・児童家庭局家庭福祉課の調査(平成26年8月1日現在)。)による。

1.離婚件数の推移等

離婚件数は、昭和39年以降毎年増加し、昭和58年をピークに減少傾向となったが、平成3年から再び増加を始め、平成14年には289,836件(厚生労働省「人口動態統計」)と、過去最高となった。平成15年からは再び減少傾向となり、平成30年の離婚件数は、208,333件(うち未成年の子どもがいる離婚件数120,497件)(厚生労働省「人口動態統計」)となっている。

2.世帯数等の推移

(1) 総務省の「国勢調査」によると、「未婚、死別又は離別の女親と、その未婚の20歳未満の子供のみから成る一般世帯」の数は、平成27年で754,724世帯となっており、平成22年の755,972世帯と比べ0.2%減少している。また、「未婚、死別又は離別の男親と、その未婚の20歳未満の子供のみから成る一般世帯」の数は、平成27年で84,003世帯となっており、平成22年の88,689世帯と比べ5.3%減少している。両世帯数の合計は、平成27年で838,727世帯となっており、平成22年の844,661世帯と比べ0.7%減少している。

(2) 母子世帯(他の世帯員がいる世帯を含む。以下同じ。)になった理由別の構成割合は、死別世帯が8.0%(平成23年7.5%)と増加する一方、生別世帯が91.1%(平成23年92.5%)と減少している。また、未婚の母の割合は8.7%(平成23年7.8%)と増加している。父子世帯(他の世帯員がいる世帯を含む。以下同じ。)になった理由別の構成割合は、死別世帯が19.0%(平成23年16.8%)と増加する一方、生別世帯が80.0%(平成23年83.2%)と減少している。また、未婚の父の割合は0.5%(平成23年1.2%)となっている。

(3) 寡婦においては、母子世帯における生別世帯の増加を反映して、生別によるものが66.9%(平成26年60.8%)となっており、生別の割合が増加している。

(4) 児童扶養手当の受給世帯については、平成27年度末は1,037,645世帯、平成28年度末は1,006,332世帯、平成29年度末には973,188世帯、平成30年度末は939,262世帯となっており(「厚生労働省福祉行政報告例」)、平成24年度末を境に減少に転じている。

3.年齢階級別状況等

(1) 母子世帯となった時の母の平均年齢は33.8歳(平成23年33.0歳)で、そのときの末子の平均年齢は4.4歳(平成23年4.7歳)となっている。

母子世帯の母の平均年齢は41.1歳(平成23年39.7歳)で、末子の平均年齢は11.3歳(平成23年10.7歳)となっており、母子とも平均年齢が上がっている。

(2) 父子世帯になった時の父の平均年齢は39.3歳(平成23年38.5歳)で、そのときの末子の平均年齢は6.5歳(平成23年6.2歳)となっている。

父子世帯の父の平均年齢は45.2歳(平成23年44.7歳)で、末子の平均年齢は12.8歳(平成23年12.3歳)となっており、父子とも平均年齢が上がっている。

(3) 寡婦の平均年齢は56.6歳(平成26年57.1歳)で、年齢分布としては「60~64歳」の階層が35.4%(平成26年40.3%)で最も多くなっている。

4.住居の状況

(1) 母子世帯の持ち家率は、全体で35.0%(平成23年29.8%)、死別世帯が58.8%(平成23年61.8%)、生別世帯が32.9%(平成23年27.2%)となっており、両者に大きな違いが見られる。持ち家以外については、賃貸住宅33.1%(平成23年32.6%)、公営住宅13.1%(平成23年18.1%)、同居13.2%(平成23年11.0%)等となっている。

(2) 父子世帯の持ち家率は、68.1%(平成23年66.8%)となっている。持ち家以外については、賃貸住宅11.4%(平成23年15.2%)、公営住宅7.4%(平成23年4.8%)、同居10.4%(平成23年7.8%)等となっている。

(3) 寡婦の持ち家率は、64.1%(平成26年64.5%)となっている。持ち家以外については、賃貸住宅15.9%(平成26年11.8%)、公営住宅14.2%(平成26年14.9%)、同居3.2%(平成26年5.6%)等となっている。

5.就業状況

(1) 母子世帯の母については、81.8%(平成23年80.6%)が就業しており、就業している者のうち正規の職員・従業員が44.2%(平成23年39.4%)、パート・アルバイト等が43.8%(平成23年47.4%)等となっている。母子世帯になる前に就業していた者の割合は75.8%(平成23年73.7%)(うち正規の職員・従業員32.1%(平成23年29.5%)、パート・アルバイト等54.7%(平成23年52.9%))であり、母子世帯になる前に就業していなかった母のうち、68.2%(平成23年69.1%)が現在就業している(正規の職員・従業員40.9%(平成23年31.1%)、パート・アルバイト等49.4%(平成23年57.4%))。現在従事している仕事の内容は、事務が23.5%(平成23年21.8%)、サービス職業が22.3%(平成23年23.0%)となっている。勤務先事業所の規模は、1,000人以上又は官公庁のものが最も多いが、300人未満の規模までで全体の約6割となっている。

また、母子世帯の母で資格を有している割合は、61.2%(平成23年55.7%)と増加しており、「資格が現在の仕事に役立っている」と回答した者の割合も60.9%(平成23年60.7%)と増加している。

さらに、現在就業している者のうち、30.4%(平成23年31.9%)が転職を希望しているが、その理由は「収入がよくない」が48.1%(平成23年52.6%)と約半分を占めている。

(2) 父子世帯の父については、父子世帯になる前に就業していた者の割合が95.8%(平成23年95.7%)(うち正規の職員・従業員71.9%(平成23年73.6%)、自営業16.2%(平成23年14.9%)、パート・アルバイト等4.6%(平成23年4.5%))とほとんどが就業しており、その後も85.4%(平成23年91.3%)と大半が就業している。就業している者を雇用形態別に見ると、正規の職員・従業員が68.2%(平成23年67.2%)、自営業が18.2%(平成23年15.6%)、パート・アルバイト等が6.4%(平成23年8.0%)等となっている。

現在従事している仕事の内容は、専門的・技術的職業が20.5%(平成23年22.1%)、サービス職業が11.0%(平成23年10.7%)、管理的職業9.8%(平成23年7.0%)となっている。勤務先事業所の規模は、1人から5人が最も多く、300人未満の規模までで全体の約7割となっている。

また、父子世帯の父で資格を有している割合は、57.8%で、「資格が現在の仕事に役立っている」と回答した者の割合は74.2%となっている。

さらに、現在就業している者のうち、20.2%(平成23年24.2%)が転職を希望しており、その理由は「収入がよくない」が51.4%(平成23年47.6%)と約半分を占めている。

(3) 寡婦については、90.5%(平成26年86.7%)が就業しており、就業している者を雇用形態別に見ると、正規の職員・従業員が43.1%(平成26年34.1%)、パート・アルバイト等が42.7%(平成26年35.7%)等となっている。

6.収入状況

(1) 母子世帯の母自身の平成27年の平均年間収入金額(就労収入、生活保護法(昭和25年法律第144号)に基づく給付、児童扶養手当、養育費等全ての収入の金額。以下同じ。)は243万円(平成22年223万円)、母自身の平均年間就労収入金額は200万円(平成22年181万円)、世帯の平均年間収入金額(平均世帯人員3.31人)は、348万円(平成22年291万円)となっている。

(2) 父子世帯の父自身の平成27年の平均年間収入金額は420万円(平成22年380万円)、父自身の平均年間就労収入金額は398万円(平成22年360万円)、世帯の平均年間収入金額(平均世帯人員3.70人)は、573万円(平成22年455万円)となっている。

(3) 母子世帯の母の最終学歴別の平均年間就労収入は、中学校117万円(平成22年129万円)、高校171万円(平成22年169万円)、高等専門学校254万円(平成22年199万円)、短大205万円(平成22年186万円)、大学・大学院303万円(平成22年297万円)、専修学校・各種学校257万円(平成22年201万円)となっている。

(4) 父子世帯の父の最終学歴別の平均年間就労収入は、中学校237万円(平成22年233万円)、高校357万円(平成22年356万円)、高等専門学校449万円(平成22年276万円)、短大205万円(平成22年302万円)、大学・大学院506万円(平成22年555万円)、専修学校・各種学校379万円(平成22年324万円)となっている。

7.学歴の状況

(1) 母子世帯の母の最終学歴は、中学校11.5%(平成23年13.3%)、高校44.8%(平成23年48.0%)、高等専門学校4.9%(平成23年4.2%)、短大14.2%(平成23年12.1%)、大学・大学院9.1%(平成23年6.9%)、専修学校・各種学校14.7%(平成23年14.0%)となっている。

(2) 父子世帯の父の最終学歴は、中学校13.2%(平成23年15.4%)、高校48.8%(平成23年51.6%)、高等専門学校3.6%(平成23年4.6%)、短大1.8%(平成23年2.0%)、大学・大学院19.4%(平成23年15.6%)、専修学校・各種学校12.1%(平成23年9.5%)となっている。

8.相対的貧困率

厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯)のうち、大人が一人の世帯の貧困率は、平成27年で50.8%(平成24年54.6%)となっており、平成27年の国際比較では、OECD諸国の中でも高い(OECD(2015)Family database “Child poverty”)。

9.養育費の取得状況

(1) 離婚母子世帯のうち養育費の取決めをしている世帯は、42.9%(平成23年37.7%)となっている。養育費の取決めをしていない理由としては、「相手と関わりたくない」が31.4%(平成23年23.1%)と最も多く、次いで「相手に支払う能力がないと思った」が20.8%、「相手に支払う意思がないと思った」が17.8%となっている。

また、養育費の受給状況については、現在も受給している者が24.3%(平成23年19.7%)、受けたことがある者が15.5%(平成23年15.8%)、受けたことがない者が56.0%(平成23年60.7%)となっている。

養育費を現在も受けている又は一度でも受けたことがある者の養育費の1世帯当たりの平均額は、月額43,707円(平成23年43,482円)となっている。

離婚の際又はその後、子どもの養育費の関係でだれかに相談をした者は、全体の31.2%(平成23年27.8%)であるが、そのうち相談相手は、親族が53.1%(平成23年44.8%)で最も多く、次いで弁護士が18.8%(平成23年11.2%)、家庭裁判所16.7%(平成23年22.4%)、知人・隣人7.3%(平成23年11.2%)等となっている。

(2) 離婚父子世帯のうち養育費の取決めをしている世帯は、20.8%(平成23年17.5%)となっている。養育費の取決めをしていない理由としては、「相手に支払う能力がないと思った」が22.3%と最も多く、次いで「相手と関わりたくない」が20.5%(平成23年17.0%)、「自分の収入等で経済的に問題がない」が17.5%(平成23年21.5%)となっている。

また、養育費の受給状況については、現在も受給している者が3.2%(平成23年4.1%)、受けたことがある者が4.9%(平成23年2.9%)、受けたことがない者が86.0%(平成23年89.7%)となっている。

養育費を現在も受けている又は一度でも受けたことがある者の養育費の1世帯当たりの平均額は、月額32,550円(平成23年32,238円)となっている。

離婚の際又はその後、子どもの養育費の関係でだれかに相談をした者は、全体の27.8%(平成18年38.5%)であるが、そのうち相談相手は、親族が44.8%(平成18年56.1%)で最も多く、次いで家庭裁判所22.4%(平成18年19.3%)、弁護士11.2%(平成18年8.8%)、知人・隣人11.2%(平成18年3.5%)等となっている。

10.面会交流の実施状況

(1) 離婚母子世帯のうち、面会交流の取決めをしている世帯は24.1%(平成23年23.4%)となっている。面会交流の取決めをしていない理由としては、「相手と関わり合いたくない」が25.0%と最も多く、次いで「取り決めをしなくても交流できる」が18.9%、「相手が面会交流を希望しない」が13.6%となっている。

また、現在も面会交流を行っている世帯は29.8%(平成23年27.7%)、行ったことがある世帯が19.1%(平成23年17.6%)、行ったことがない世帯が46.3%(平成23年50.8%)となっている。

面会交流の実施頻度は、「月1回以上2回未満」が最も多く23.1%(平成23年23.4%)となっている。

離婚の際又はその後、面会交流の関係でだれかに相談した者は、全体の34.7%であるが、そのうち相談相手は、親族が50.8%で最も多く、次いで家庭裁判所が18.1%、弁護士14.1%、知人・隣人10.0%等となっている。

(2) 離婚父子世帯のうち、面会交流の取決めをしている世帯は27.3%(平成23年16.3%)となっている。面会交流の取決めをしていない理由としては、「取り決めをしなくても交流できる」が29.1%と最も多く、次いで「相手と関わり合いたくない」が18.4%となっている。

また、現在も面会交流を行っている世帯は45.5%(平成23年37.4%)、行ったことがある世帯が16.2%(平成23年16.5%)、行ったことがない世帯が32.8%(平成23年41.0%)となっている。

面会交流の実施頻度は、「月2回以上」が最も多く21.1%(平成23年18.7%)となっている。

離婚の際又はその後、面会交流の関係でだれかに相談した者は、全体の30.8%であるが、そのうち相談相手は、親族が37.9%で最も多く、次いで家庭裁判所が27.4%、弁護士18.9%、知人・隣人7.4%等となっている。

11.子どもの状況等

(1) 母子世帯における1世帯当たりの子ども(20歳未満)の数は、「1人」が57.9%(平成23年54.7%)、「2人」が32.6%(平成23年34.5%)となっており、平均1.52人(平成23年1.58人)となっている。

就学状況別に見ると、小学生のいる世帯が30.2%(平成23年31.3%)で最も多く、中学生のいる世帯が20.1%(平成23年20.5%)、高校生のいる世帯が22.9%(平成23年20.4%)となっている。

小学校入学前の子どものいる母子世帯は全体の14.5%(平成23年16.2%)となっている。その子どもの養育の状況については、保育所の割合が59.0%(平成23年61.7%)と最も高く、親本人、親以外の家族等が養育している割合は減少している。

(2) 父子世帯における1世帯当たりの子ども(20歳未満)の数は、「1人」が59.8%(平成23年54.7%)、「2人」が30.4%(平成23年36.0%)となっており、平均は1.50人(平成23年1.56人)となっている。

就学状況別にみると、小学生のいる世帯が26.8%(平成23年27.9%)、中学生のいる世帯が20.4%(平成23年24.5%)、高校生のいる世帯が27.3%(平成23年25.1%)で最も多くなっている。小学校入学前の児童のいる父子世帯は全体の8.2%(平成23年8.1%)となっている。その子どもの養育の状況については、母子世帯同様、保育所の割合が57.1%(平成23年67.6%)と最も高いが、その割合が減少し、親本人、親以外の家族等が養育している割合が増加している。

(3) 母子世帯及び父子世帯の16歳の者のうち、平成28年11月1日現在で高等学校に在籍している者の割合は93.9%(平成23年92.8%)、高等専門学校に在籍している者の割合は2.0%(平成23年1.1%)、就労している者の割合は1.7%(平成23年0.8%)となっている。また、19歳の者のうち、平成28年11月1日現在で大学及び短期大学に在籍している者の割合は41.9%(平成23年23.9%)、専修学校等に在籍している者の割合は16.7%(平成23年17.8%)、就労している者の割合は24.8%(平成23年33.0%)となっている。

12.その他

(1) 公的制度の利用状況等

公共職業安定所(以下「ハローワーク」という。)を利用したことがある者は、母子世帯で68.5%(平成23年69.1%)、父子世帯で45.5%(平成23年49.4%)となっており、制度を知らなかった者は、母子世帯で3.1%(平成23年2.2%)、父子世帯で6.6%(平成23年4.5%)となっている。

一方で、母子・父子自立支援員による相談・支援を利用している又はしたことがある者は、母子世帯で4.0%(平成23年4.7%)、父子世帯で2.3%(平成23年1.7%)であり、制度を知らなかった者は、母子世帯で46.7%(平成23年46.4%)、父子世帯で50.3%(平成23年45.0%)であったほか、母子家庭等就業・自立支援センター事業については、利用したことがある者が母子世帯で10.9%(平成23年8.1%)、父子世帯で2.6%(平成23年0.7%)であり、制度を知らなかった者が母子世帯で31.8%(平成23年35.1%)、父子世帯で42.4%(平成23年45.8%)、高等職業訓練促進給付金については、利用したことがある者が母子世帯で3.2%(平成23年1.5%)、父子世帯で1.6%であり、制度を知らなかった者が母子世帯で48.1%(平成23年49.7%)、父子世帯で49.3%、母子福祉資金及び父子福祉資金については、利用したことがある者が母子世帯で6.0%(平成23年6.3%)、父子世帯3.7%であり、制度を知らなかった者が母子世帯で52.3%(平成23年63.6%)、父子世帯で68.8%となっている。

また、厚生労働省「平成30年度母子家庭の母及び父子家庭の父の自立支援施策の実施状況」によると、都道府県及び市町村において、母子・父子自立支援プログラム策定等事業を実施している割合が64.3%(平成25年62.7%)、ひとり親家庭等日常生活支援事業を実施している割合が52.2%(平成25年54.6%)となっており、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の自立支援施策は、地方自治体によって取組状況に差がある。

(2) 子どもについての悩み

① 母子世帯の抱える子どもに関する悩みの内容については、「教育・進学」が58.7%(平成23年56.1%)と最も多く、「しつけ」が13.1%(平成23年15.6%)で次いでいる。

② 父子世帯の抱える子どもに関する悩みの内容については、「教育・進学」が46.3%(平成23年51.8%)と最も多く、「しつけ」が13.6%(平成23年16.5%)で次いでいる。

(3) 困っていること

① 母子世帯における母が困っている内容については、「家計」が50.4%(平成23年45.8%)で最も多く、「仕事」13.6%(平成23年19.1%)、「自分の健康」13.0%(平成23年9.5%)の順となっている。

② 父子世帯における父が困っている内容については、「家計」が38.2%(平成23年36.5%)で最も多く、「家事」16.1%(平成23年12.1%)、「仕事」が15.4%(平成23年17.4%)の順となっている。

③ 寡婦における困っている内容については、「家計」が28.6%(平成26年23.8%)と最も多く、「親族の健康・介護」が23.6%(平成26年20.5%)、「自分の健康」が17.6%(平成26年21.5%)の順となっている。

(4) 相談相手について

相談相手がありと回答があったのは、母子世帯では80.0%(平成23年80.4%)、父子世帯では55.7%(平成23年56.3%)、寡婦では81.9%(平成26年85.0%)となっている。

相談相手がありと回答した者のうち、相談相手が公的機関と回答があったのは、母子世帯では1.5%(平成23年2.4%)、父子世帯では1.0%(平成23年3.6%)、寡婦では5.1%(平成26年4.3%)となっている。

また、相談相手がいないと回答した者のうち、相談相手が欲しいと回答した者は、母子世帯では60.2%(平成23年61.8%)、父子世帯では54.1%(平成23年50.4%)、寡婦では75.0%(平成26年64.2%)となっている。

13.まとめ

(1) 母子世帯及び寡婦の状況

母子世帯については、生別世帯の割合が約9割となっている。就業状況は、正規の職員・従業員の割合が増加し、就労収入は、一定の改善がみられるものの、一般世帯と比較するとなお低い水準にある。養育費も大半が取得していない状況に変わりはない。その結果、家計について困っているとの回答が最も多くなっているほか、自分の健康に困っているとの回答が一定割合存在する。また、子どもの「教育・進学」や「しつけ」に悩みを抱えている。

このように、母子世帯については、特に、子育てと仕事の両立支援、より収入の高い就業を可能にするための支援、学習支援等の児童に対する支援、養育費取得のための支援、生活の場の整備等が重要と考えられ、それらの必要性が従来以上に高まっている。また、母子・父子自立支援員を始めとした公的制度の認知度が低く、利用状況が低調となっていることから、支援施策の周知によりその利用を促進していくことが求められている。

寡婦については、家計の次に、親族の健康・介護や自身の健康で困っているとの回答があることから、就業面や生活面において、必要に応じた支援が重要と思われる。

(2) 父子世帯の状況

父子世帯については、死別世帯の割合が増加している。母子世帯に比べて、持ち家率が高く、また、父子世帯となる以前からほとんどの者が就業しており、その大部分は正規の職員・従業員であるが、父子世帯の平均年間収入は児童のいる世帯の平均所得金額743.6万円(平成30年「国民生活基礎調査」)より低くなっている。パート・アルバイト等の形態で就業する者が一定割合存在し、その就労収入が低い水準にとどまる者もいるとともに、就労収入が高い水準にある場合であっても住宅ローン等の債務を負いながら経済的な問題を抱えているケースがあることも想定される。また、母子世帯に比べて家事等生活面で多くの困難を抱え、相談相手が少ないという傾向がある。さらに、母子世帯と同様、自分の健康に困っているとの回答が一定割合存在するほか、子どもの「教育・進学」や「しつけ」に悩みを抱えている。

このように、父子世帯については、特に、子育て・家事と仕事の両立支援や相談支援、就業支援、学習支援等の児童に対する支援等が重要と考えられる。また、母子・父子自立支援員による相談・支援を始めとした公的制度の認知度が低く、利用状況が低調となっていることから、支援施策の周知によりその利用を促進していくことが求められている。

第2 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項

1.今後実施する母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策の基本的な方向性

(1) 国、都道府県及び市町村の役割分担と連携

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦については、就業による自立促進を図ることが重要であることから、就業支援を中心として、個々の家庭に寄り添ったきめ細かな福祉サービスの推進に主眼を置いて、①子育てや生活支援策、②就業支援策、③養育費の確保策、④経済的支援策を総合的に展開することとする。

その際、国、都道府県及び市町村が、適切に役割を分担しながら、互いに連携することが必要である。

国は、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策に係る施策や制度の企画・立案を行う。また、効果的な施策の展開のための調査・研究や、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策に係る施策の普及・啓発、関係者の研修等を行う。さらに、都道府県が市町村における母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策を効果的かつ効率的に実施するための課題や方策の検討について、地域の実情に応じて支援する体制を整備するとともに、連絡会議等を通じて、都道府県等及び市等の自立促進計画、施策や取組について情報提供を行う等、都道府県及び市町村に対する支援を行う。自立促進計画が未策定の都道府県等及び市等に対し支援を行い、その策定を促す。国の補助事業については、都道府県及び市町村によって事業によって実施状況のばらつきがみられるが、都道府県及び市町村がこれらの事業を積極的に活用して、地域のニーズに応じた施策を展開していくことができるよう、必要な支援を行う。

都道府県等及び市等では、この基本方針に即して、自立促進計画を策定すること等を通じて、地域の実情に応じて、計画的に母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策を実施することが必要である。また、母子・父子自立支援プログラム策定等事業、母子家庭等就業・自立支援事業等の国の補助事業を積極的に活用するとともに、地域のニーズに応じた施策を検討・展開していくことが求められる。都道府県等及び市等は、母子及び父子並びに寡婦福祉法第10条の2の規定の趣旨を踏まえ、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦が、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のために最も適切な支援を総合的に受けられるようにするため、地域の実情に応じた母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のための措置の積極的かつ計画的な実施及び周知並びに母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のための支援を行う者の活動の連携及び調整を図るよう努めなければならない。

都道府県は、広域的な観点から、市町村が実施する就業支援や生活支援が円滑に進むよう、市等における自立促進計画の策定状況や各種施策の取組状況等についての情報提供、市町村のニーズを踏まえた包括的な支援を展開する等、市町村に対する支援を行うことが必要である。

市町村は、母子家庭日常生活支援事業、父子家庭日常生活支援事業及び寡婦日常生活支援事業(以下「ひとり親家庭等日常生活支援事業」という。)、母子家庭生活向上事業、父子家庭生活向上事業及び寡婦生活向上事業(以下「ひとり親家庭等生活向上事業」という。)等の国の補助事業を積極的に活用するとともに、地域のニーズに応じた施策を検討・展開する。また、住民に身近な地方公共団体として、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対し、相談に応じるとともに、生活困窮者自立支援制度や修学支援制度などの他施策を含め、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対する支援の施策や取組について分かりやすい情報提供を行うなど、個々の家庭に寄り添ったきめ細かな支援を行うことが必要である。特に、市等では、児童扶養手当の支給と自立支援を一体的に行う重要な役割を担うことが求められる。

(2) 関係機関相互の協力

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦への支援については、就業支援と子育て・生活支援、経済的支援を組み合わせて実施することが重要であることから、母子・父子自立支援員、福祉事務所その他母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の福祉に関する機関、児童委員、児童家庭支援センター、母子生活支援施設、母子・父子福祉施設、ハローワーク、学校、教育委員会、母子・父子福祉団体等の地域で子育て支援等の活動を行う民間団体その他母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の支援を行う関係機関が相互に協力することが必要である。

また、家計、仕事、家事、住居、子どもの教育・進学、親族の健康・介護、児童虐待、配偶者からの暴力等、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の抱える課題は多岐にわたっていることから、福祉や教育等の幅広い分野にわたる関係機関が相互に連携することも必要である。特に、子どもの貧困対策の観点から、生活困窮者自立支援事業の支援員等と、ひとり親家庭の相談に対応する母子・父子自立支援員等の連携により、各種支援に適切につなげる体制の充実を図ることが必要である。あわせて、児童扶養手当の現況届提出時等の機会を積極的に活用し、子育て、生活、就業、養育費等に関する相談に集中的に対応できる体制の構築を図ることも必要である。

(3) 相談機能の強化

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦は、母子家庭の母又は父子家庭の父になった理由や、自身や子どもの年齢、住居や同居家族の状況、学歴・職歴や現在の職業、就業や転職への意欲等により多様な支援を必要としており、また、配偶者からの暴力や児童虐待の課題等の多様な課題を抱えている場合もある。このため、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の悩みや課題の内容のいかんにかかわらず、まず相談でき、それぞれの悩みや課題に応じ、様々な支援メニューを組み合わせて、また、必要に応じて、他の支援機関につなげることによって、総合的・包括的な支援を行う必要があることから、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の相談窓口においては、適切な支援メニューをワンストップで提供する体制を整えることが重要である。

その際、母子・父子自立支援員は、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の抱えている問題を把握し、母子・父子福祉団体等と連携し、その解決に必要かつ適切な助言及び情報提供を行う等、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対する総合的な相談窓口として重要な役割を担うことが求められる。都道府県等及び市等においても、母子・父子自立支援員が充分な相談支援を担うことができるよう必要な体制や環境を整備していくことが求められる。また、地域における福祉の増進を図る児童委員においては、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦について相談に応じ、それぞれの抱える問題に応じて利用し得る制度、施設及びサービスについて助言し、母子・父子自立支援員と連携して問題の解決に努めること等が重要である。さらに、母子・父子自立支援員の受けた相談内容の割合が母子父子寡婦福祉資金貸付金や児童扶養手当等に関するものが多い状況を踏まえると、相談窓口に就業支援を担当する者(以下「就業支援専門員」という。)を配置して就業支援の専門性と体制を確保するとともに、母子・父子自立支援員と連携することで、相談支援体制の質・量の充実を図ることが望ましい。そのため、相談窓口に関する分かりやすい情報提供等に取り組んでいくことが必要である。

また、行政とのあらゆる接点を通じて困難に陥る前から相談・支援につなげ、必要な支援メニューにつなげる体制を構築するため、離婚届提出時、児童扶養手当の受給資格認定時、現況届提出時等あらゆる機会を捉え、支援窓口につなげる仕組みを構築する。併せて、行政との関わりを持つ機会が持ちづらい母子家庭及び父子家庭並びに寡婦についても、必要な支援が行き届くよう、母子生活支援施設や地域の民間団体との連携により、きめ細かな相談・支援を行う仕組みを構築することが必要であり、このことによりソーシャルワーク機能の強化を図っていくことが重要である。

都道府県等及び市等は、福祉事務所等の相談窓口に、母子・父子自立支援員を適正に配置した上で、更にそれぞれの実情に応じ、就業支援専門員を配置する等し、相談窓口のワンストップ化を推進するとともに、児童扶養手当、子育て支援、離婚や妊娠に係る相談窓口や他の支援機関、地域の民間団体等との連携を密にすることにより、具体的な支援メニューにつなげる支援体制を整備することが重要である。また、相談窓口の整備に当たっては、地域の実情に応じ、母子生活支援施設等の児童福祉施設や民間団体と連携した相談体制の構築も重要である。あわせて、相談支援を担う母子・父子自立支援員等の相談員について、中長期的な継続した支援を行うことを前提とした人材の確保や育成をすること及び資質の向上のための研修等の機会を提供すること等を通じて、相談機能の強化を図るとともに、相談窓口並びに各種支援制度について、地域の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に分かりやすい方法で周知することにより、各種の支援の利用を促すことが必要である。児童扶養手当の受給資格認定時、現況届提出時等に、分かりやすい文体、デザインでひとり親家庭に対する支援施策を記載したリーフレットや冊子を用い、窓口で案内を徹底していくことが重要である。

支援を必要とする者に確実に情報等が届くよう、アウトリーチ型の相談やSNS等をはじめとした情報技術の活用をさらに図っていくことが求められるとともに、行政内の各担当部署が有する情報を把握・活用して相談支援を有意義なものとすることが求められる。

また、都道府県及び市町村は、児童扶養手当の支給要件の確認等の手続において、受給資格者の生活実態の確認に際しては、必要以上にプライバシーの問題に立ち入らないよう十分配慮する必要があり、プライバシーに関わる事項について確認が必要な場合には、確認の必要性について理解が得られるよう、児童扶養手当の支給要件との関係について十分に説明を行うとともに、個室や衝立のあるコーナーで行う等、プライバシー保護に配慮した事務運営を行うことが必要である。さらに、平成20年4月から実施されている児童扶養手当の一部支給停止措置に関連する手続について、プライバシーの保護に配慮しつつ、必要な情報の提供や相談等を行う必要がある。

その他、都道府県及び市町村の相談窓口において、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦が様々な事情を抱えていることを理解し、個々の家庭に寄り添った相談対応を行うことが求められており、これらの相談対応について、職員向けの研修等を通じて、質の向上に努めることが重要である。

(4) 子育て・生活支援の強化

母子家庭の母及び父子家庭の父が、安心して子育てと就業・就業のための訓練との両立ができるようにするため、また、就業が直ちに困難な場合に母子家庭の母及び父子家庭の父の状態に応じた自立を図るためには、多様な保育サービスやファミリー・サポート・センター事業、子育て短期支援事業等の一般の子育て支援を積極的に活用してもらうとともに、母子家庭の母及び父子家庭の父の居宅への家庭生活支援員の派遣等による日常生活支援の拡充、母子家庭の母及び父子家庭の父に対する子育てに関する講習会等の開催、親同士の情報交換の場の提供等に取り組むことが重要である。

また、各種支援施策の実施に当たっては、地域の母子家庭や父子家庭に分かりやすい方法で周知することが必要である。

相談に対応する職員は、母子家庭の母及び父子家庭の父からの相談に当たり、個々のニーズに応じて、これらの支援施策が選択できるよう、日頃から各支援施策の担当者との連携を密にしておくとともに、必要に応じてこれらの支援施策の利用の申請をあっせんする等の対応を行うことが重要である。

さらに、世代間の貧困の連鎖を防止するためにも、母子家庭及び父子家庭の子どもの生活の向上を図るため、放課後児童クラブ等の終了後の居場所の提供、学習支援等に取り組むことが重要である。

学習支援等の実施に当たっては、生活困窮者自立支援制度における子どもの学習・生活支援事業と連携を図ることで、学習ボランティア等の人材が確保しやすくなる等、効果的かつ効率的に事業を展開することが可能となり、また、個々の子どもの状況に応じた学習支援の提供が可能となることが考えられることから、学習支援事業の担当者間で連携しながら、地域の母子家庭及び父子家庭の子どもへの学習支援等の実施を推進していくことが重要である。さらに、事業の実施に当たっては、教育委員会や関係団体と連携するなど地域資源を積極的に活用することが望ましく、また、現状では参加していない子どもの参加を促す等の工夫が求められており、好事例や様々な課題への対応事例の収集・展開などにより更なる普及を図っていくことが重要である。

(5) 就業支援の強化

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の自立、生活の安定と向上を図るためには、その就業やより良い条件での転職を支援し、就業により収入を安定的に確保することが重要である。支援に当たっては、その置かれた状況を的確に把握し、その状況等に対応した施策を充実させていく必要があり、自己肯定感を高めるような内容やライフプランに関するものを盛り込んでいくことにも留意が必要である。

これまでも、母子家庭の母及び父子家庭の父に対する就業相談の実施、就業支援講習会の実施、就業情報の提供等一貫した就業支援サービスの提供や、児童扶養手当受給者等の自立を促進するため、個々の受給者の希望、事情等に対応した自立支援プログラムの策定のほか、マザーズハローワーク等におけるきめ細かな就職支援の実施、公共職業訓練の実施、職業能力開発のための給付金、母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用を促進するための事業主に対する助成金等の施策を実施しているが、引き続き、各施策を推進していくことが求められる。

特に就業への効果が高い母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金については、全ての都道府県等及び市等において積極的な実施とその周知が求められる。また、母子家庭の母及び父子家庭の父に対する高等学校卒業程度認定試験合格のための講座の受講費用等を一部支給する事業の積極的な実施とその周知が求められる。

さらに、特別措置法の規定を踏まえ、母子福祉団体等からの物品及び役務の優先調達に努めるとともに、各種雇用関係助成金の活用の推進や、母子家庭の母や父子家庭の父を多数雇用している企業の表彰等を通じて、働きやすい環境の整備と就業促進に向けた社会的機運を高めることが重要である。

また、親のみならず、希望に応じ、子どもの就労を支援するといった視点も重要である。子どもの就労支援については、ひとり親家庭の子どもを対象とした母子家庭等就業・自立支援事業における就業相談、就業支援講習会の開催、就業情報の提供等を行うほか、生活困窮者自立支援法に基づき子どもの学習・生活支援事業を実施し、進路選択や将来の就職に向けた相談や職場体験等の支援を行う。さらに、ハローワークと学校等の関係機関が連携し、ハローワーク等が実施する支援内容等について高校中退者等に対する情報提供を行う等、就職を希望する学生・生徒等に対する支援等を推進していくことが重要である。

(6) 養育費の確保及び面会交流に関する取決めの促進

養育費の確保については、養育費の取決めや確保が適切になされるよう、離婚する前からの意識付けが重要であり、離婚する当事者に対して養育費等の取決めの重要性や法制度を理解してもらうため、養育費等の取決めについて解説するとともに、養育費等の取決め合意書のひな形を記載したパンフレットを離婚届と同時に交付すること等を通じた離婚当事者に対する周知啓発や、養育費の相談等に対応する者に対する研修等の支援、養育費に係る各種手続き等に関するパンフレット等の作成、弁護士による養育費相談の実施が重要である。

養育費の履行確保に向けては、民事執行法(昭和54年法律第4号)の改正により、現行の財産開示手続をより利用しやすく実効的なものにするとともに、債務者の有する不動産、給与債権、預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続が新設されたことから、関係機関等への周知を図り、制度の利用を推進することが重要である。

また、面会交流については、基本的には子どもの立場からその実施が望ましいことであるが、他方で、児童虐待や配偶者からの暴力等により面会交流が適切でない場合があるとともに、養育費相談とは異なる専門性が必要である。このため、面会交流に関する意義や課題等を双方の親を含む関係者が認識した上で、取決め・実施が適切になされるよう、国、都道府県及び市町村は、関係機関や民間団体と協力して周知啓発や相談対応を実施していくことが重要である。

(7) 福祉と雇用の連携

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の早期自立を図るためには、早期の段階における支援が重要である。こうした観点から、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦を初期の段階で把握し、生活全般にわたり親身な相談に応じるとともに、就業相談の実施、就業支援講習会の実施、就業情報の提供等の一貫した就業支援サービスの提供や、児童扶養手当受給者等の自立を促進するため、個々の受給者の希望、事情等に対応した自立支援プログラムの策定を実施することが必要であるが、支援の実施に当たっては、ハローワーク等との連携を図り、必要に応じて窓口にあっせんする等のきめ細やかな支援が求められる。

また、就業による自立に向けた支援においては、就業に向けた職業能力開発とあわせて就業する際の子育て支援等、福祉と雇用の施策の緊密な連携が不可欠である。そのため、国の労働部局と都道府県及び市町村、また、都道府県及び市町村の福祉部局と産業労働部局が緊密に連携することが求められる。

(8) 子どもの貧困対策

就業支援を中心として、各種支援策を総合的に展開し、母子家庭の母及び父子家庭の父の自立、生活の安定と向上を図ることは、子どもの貧困対策にも資するものである。

子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することがないよう、子供の貧困対策に関する大綱に基づき、各種施策を講じていく必要がある。

子どもの貧困対策の推進のためには、国、地方公共団体、民間の企業や団体、地域住民等が、それぞれの立場から主体的に参画していく必要があるが、中でも個別の子どもに関する情報を多く保有する地方公共団体の役割は重要である。国は、地方公共団体による子どもの貧困対策計画の策定を促し、地方公共団体は、関係機関と連携しつつ、策定した計画に基づく各施策を着実に実施していくことが重要である。

2.実施する各施策の基本目標

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の自立を図るためには、①子育てや生活支援策、②就業支援策、③養育費の確保策、④経済的支援策を総合的かつ計画的に展開することが不可欠であり、これを積極的に推進する。これにより、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の収入状況、就業状況、養育費取得状況等の生活状況の好転を図る。

支援策の推進に当たっては、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割を認識し、連携を図るとともに、それぞれの役割に応じた積極的な支援施策の検討・実施の推進を図る。

(1) 子育てや生活の支援策

母子家庭の母及び父子家庭の父が、安心して子育てと就業・就業のための訓練との両立ができるよう、保育所、ファミリー・サポート・センター事業、子育て短期支援事業等の優先的利用等、保育サービスの提供、公営住宅への優先入居や住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)に規定する居住支援法人及び居住支援協議会(以下「居住支援協議会等」という。)が行う子育て世帯の入居を拒まない登録住宅等の情報提供等の推進、家庭生活支援員の派遣による家事援助や保育サービスを行う事業の推進、子育てに関する講習会等の開催や親同士の情報交換の場の提供等を行う事業の推進、子育てや生活の面での支援体制の整備を促進するとともに、地域の相互扶助による子育てや生活の面での支援を推進する。

また、母子家庭及び父子家庭の子どもの生活の向上を図るため、放課後児童クラブ等の終了後に基本的な生活習慣の習得支援や学習支援等を行う居場所づくりを推進する。

(2) 就業支援策

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦が十分な収入を得ることができ、自立した生活をすることができるよう、母子家庭の母及び父子家庭の父に対する就業相談の実施、就業支援講習会の実施、就業情報の提供等の一貫した就業支援サービス提供、就職に効果的な資格取得のための支援や個々の家庭の事情等に対応したプログラムの策定のほか、マザーズハローワーク等におけるきめ細かな就職支援の実施、職業能力向上のための訓練、効果的な就業あっせん、職業能力開発のための給付金、事業主に対する助成金や母子福祉団体等からの物品や役務の優先調達に努めること等による就業機会の創出等を実施する等、就業面での支援体制の整備を促進するほか、母子家庭の母及び父子家庭の父が高等学校卒業程度認定試験に合格するための支援を実施する。

また、親のみならず、子どもの就労支援に向けて、母子家庭等就業・自立支援事業における就業相談、就業支援講習会の開催、就業情報の提供等を行うほか、生活困窮者自立支援法に基づく子どもの学習・生活支援事業による進路選択や将来の就職に向けた相談や職場体験等の支援、ハローワークと学校等の関係機関が連携し、ハローワーク等が実施する支援内容等について高校中退者等に対する情報提供を行う等、就職を希望する学生・生徒等に対する支援等を推進する。

(3) 養育費の確保及び面会交流に関する取決めの促進

母子家庭及び父子家庭の子どもが必ず養育費を取得できるよう、また、子どもと同居していない親が適切に交流できるよう養育費の支払や面会交流についての社会的気運の醸成、養育費等の取決めの合意書のひな形や養育費等の取決めについて解説したパンフレットの離婚届との同時交付、弁護士による相談等を通じた養育費や面会交流についての取決めの促進を図る等、養育費確保面での相談体制の整備を促進する。また、財産開示手続の見直しや、債務者の有する不動産、給与債権、預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続の新設を盛り込んだ令和元年5月に成立した民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号。以下「民事執行法等一部改正法」という。)について、関係機関等への周知を図り、制度の利用を推進する。養育費の確保については、地方公共団体における先駆的な取組や、諸外国の制度なども把握しながら、検証等も行いつつ、必要な施策について検討を進める。また、面会交流は、基本的には子どもの立場からその実施が望ましいことから、児童虐待や配偶者からの暴力等により面会交流が適切でない場合があることや養育費相談とは異なる専門性が必要であること等に留意の上、相談に対応すること等により、面会交流の取決めの促進を図るとともに、行政機関と民間団体が連携して、その実施に向けた支援を推進する。

(4) 経済的支援策

母子家庭及び父子家庭にとって重要な経済的な支えとなっている児童扶養手当制度を利用しやすくするために、制度について積極的に情報提供を実施する。特に、近年の制度の拡充に伴って、様々な疑問点等が生じているとの指摘もあり、これらについての丁寧な説明を行う必要がある。

また、母子父子寡婦福祉資金貸付金制度を利用しやすくするために、制度について積極的に情報提供を実施するとともに、必要な時期に適切に貸付けを行う等、貸付事務の適正な実施を確保する。

児童扶養手当制度及び母子父子寡婦福祉資金貸付金制度については、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活実態等に対応した制度の整備を推進するとともに、プライバシー保護に配慮した事務運営の実施、関係職員に対する研修の実施等により、経済面での支援体制及び適切な事務運営の整備を促進する。

(5) その他

① 相談関係職員の人材の確保と専門性の向上

母子・父子自立支援員等の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の相談に従事する職員については、個々の家庭の事情を理解したうえで、寄り添ったきめ細やかな支援の実施が求められることから、中長期的な継続した支援を行うことができるよう、母子・父子自立支援員等の相談員の適切な配置、相談員向けの研修の実施等による人材育成と専門性の向上を推進する。

② 教育の支援

家庭の状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子どもが質の高い教育を受け、能力・可能性を最大限伸ばすことのできる社会を実現することが重要であり、高等教育の修学支援新制度等の教育費負担の軽減や、高校中退の予防、中退後の支援等を含め、関係施策の一層の充実を図る。

3.母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項

(1) 国等が講ずべき措置

① ハローワークにおける就業あっせん(公共職業訓練の受講あっせんを含む。)

ア 母子家庭の母及び父子家庭の父に対して、関係機関と連携し、きめ細かな職業相談・職業紹介等を実施する。また、マザーズハローワーク等においては、子育てをしながら就職を希望する女性等に対して、個々の希望やニーズに応じたきめ細かな就職支援を実施する。

イ 母子家庭等就業・自立支援事業の円滑な実施のため、母子家庭等就業・自立支援センターや市等の求めに応じて、必要な求人情報の積極的な提供を行う。

ウ 生活保護受給者等の就労・自立の促進

児童扶養手当又は生活保護を受給している母子家庭の母及び父子家庭の父に対して、ハローワークと福祉事務所が連携して、個々の対象者の状況、ニーズ等に応じたきめ細かい就労支援を実施する。

また、生活保護受給者の就労や自立に向けたインセンティブの強化として、積極的に求職活動に取り組む者への就労活動促進費の支給や安定した職業に就いたこと等により保護を脱却した場合の就労自立給付金の支給を行う。

② 公共職業訓練の実施

公共職業安定機関等と連携し、母子家庭の母及び父子家庭の父を含めた求職者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、託児サービスを付加した職業訓練や就労経験の少ない者にビジネスマナー講習等を行う準備講習をセットにした職業訓練等個々の求職者の特性に配慮した公共職業訓練を実施する。

③ 求職者支援制度の活用

雇用保険を受給できない母子家庭の母及び父子家庭の父等の求職者に対して、無料の職業訓練を提供し、一定の要件を満たす場合に当該職業訓練を受けることを容易にするための給付金を支給し、あわせて、ハローワークにおける積極的な就職支援を実施する。

④ ジョブ・カード制度の活用

母子家庭の母及び父子家庭の父を含めた労働者等に対し、ジョブ・カードを活用したキャリア形成支援を行う。

⑤ 特定求職者雇用開発助成金の活用

母子家庭の母及び父子家庭の父等の就職が困難な求職者を雇い入れる事業主に対する特定就職困難者コース助成金について、事業主に対する周知を徹底する等により、その活用を推進する。

⑥ 試行雇用を通じた早期就職の促進

母子家庭の母及び父子家庭の父等を含めた職業経験の不足等から安定した職業に就くことが困難な求職者に、実践的な能力を取得させる等により、早期就職の実現や雇用機会の創出を促進するための一定期間の試行雇用を実施する。

⑦ 助成金を活用した正規雇用への転換等の促進

正規雇用への転換等を促進するための助成金を活用し、母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用の安定化を促進する。

⑧ こども家庭庁関係機関等における母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用の促進

こども家庭庁の本庁や外局、関係機関において、母子家庭の母及び父子家庭の父の雇入れを促進するように努めるとともに、こども家庭庁以外の府省庁、社会福祉関係団体、公益法人等関係団体に対して雇入れの要請を行う。

⑨ 事業主に対する母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用に関する啓発活動等の推進

事業主に対し、母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用について理解を深めてもらうための啓発活動や、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進に向けた協力の要請を積極的に推進する。

⑩ 都道府県及び市町村、企業等における母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用に関する好事例の周知

母子家庭の母及び父子家庭の父を積極的に雇用する等、都道府県及び市町村や企業における母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用に関する好事例について、情報を収集し、その提供を行うとともに、その企業等の公表や表彰等を実施する。

⑪ 母子・父子自立支援プログラム策定等事業の支援

母子・父子自立支援プログラム策定等事業がより多くの都道府県等及び市等で実施されるよう、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業意欲の醸成や就業促進につながる各種情報を提供する。

⑫ 母子家庭等就業・自立支援事業の支援

母子家庭等就業・自立支援センター事業及び一般市等就業・自立支援事業を実施している都道府県等及び市等に対し、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業促進につながる各種情報を提供する。

⑬ 母子・父子福祉団体等の受注機会の増大への努力

母子・父子福祉団体等母子家庭の母及び父子家庭の父の福祉の増進を主たる目的とする団体が、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進につながる業務をより多く受注できるよう、国並びに母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法第六条の法人を定める政令(平成25年政令第3号)に定める独立行政法人及び特殊法人が物品やサービスを購入する場合には、予算の適正な使用に留意しつつ、優先的に母子・父子福祉団体等から購入するように努める。

⑭ 母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進を図るための措置に関する留意

母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進を図るための措置を講ずるに当たっては、情報通信技術等に関する職業能力の開発及び向上並びに情報通信ネットワークを利用した在宅就業等多様な就業の機会の確保並びにこれらに従事する人材の養成及び資質の向上に留意する。

⑮ 母子家庭及び父子家庭に対する生活の場の整備

都市機構賃貸住宅について、母子家庭及び父子家庭に対する優先入居を推進する。また、民間賃貸住宅への母子家庭及び父子家庭の入居の円滑化を支援するため、家賃債務保証業者登録制度に関する情報提供を実施するとともに、居住支援協議会等が行う子育て世帯の入居を拒まない登録住宅等の情報提供等の取組を推進する。

⑯ 親の扶養義務の履行を確保するための施策の推進等

養育費に関しては、養育費等の取決めの合意書のひな形や養育費等の取決めについて解説したパンフレットの離婚届との同時交付、養育費相談支援センターにおいて、母子家庭等就業・自立支援センターで受け付けられた養育費の取決め等に関する困難事例への対応や、養育費相談に当たる母子・父子自立支援員や母子家庭等就業・自立支援センターの相談員等に対する研修の実施、パンフレット等による普及・啓発等を行う。

また、財産開示手続の見直しや、債務者の有する不動産、給与債権、預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続の新設を盛り込んだ民事執行法等一部改正法について、関係機関等への周知を図り、制度の利用を推進する。

面会交流に関しては、養育費に関する相談とは異なる専門性が必要であることに鑑み、関係機関との役割分担を明確にした上で、養育費相談支援センターにおいて相談等の対応を行う。なお、養育費相談支援センターでの対応が困難な場合には、その解決に資する方策や関係機関等に関する情報提供を行い、面会交流の取決めの促進を支援する。

さらに、養育費及び面会交流の取決めの促進に効果的な取組に関する調査・研究等を行い、都道府県等及び市等に情報提供することにより、都道府県等及び市等支援の取組を支援する。

このほか、親の扶養義務の履行確保のために必要な支援を行う。

⑰ 母子福祉資金貸付金等の貸付条件に関する配慮

母子福祉資金貸付金等の貸付条件について、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援が促進されるように配慮をして定める。

また、都道府県等の適切・円滑な事務運営に向けた支援を実施する。

⑱ 効果的な母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策を展開するための実態把握・研究

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策を効果的に推進するために、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の就業状況、収入状況、養育費の取得状況、各施策の効果等の実態を把握し、更に効果的な支援策についてその研究・検討を進める。

(2) 都道府県、市町村等が講ずべき措置に対する支援

都道府県、市町村等が以下の措置を講ずるに際しては、国は、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦が必要なサービスを適切に受けることができるよう母子・父子自立支援員及び就業支援専門員を含めた相談体制の整備、関係機関の連携を推進しながら、当該措置が効果的に実施されるよう必要な支援を講じていくものとする。

① 相談支援体制の整備

ア 総合的な相談窓口の整備(実施主体:都道府県等及び市等)

福祉事務所等の相談窓口に、母子・父子自立支援員を適切に配置するとともに、地域の実情に応じ、母子・父子自立支援員に加えて就業支援専門員を配置すること等により、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の様々な課題に対し、様々な支援メニューを組み合わせて、また、必要に応じて、他の支援機関につなげることによって、総合的な支援を行う相談窓口を整備

イ 相談機関関係職員を対象とした研修等の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

福祉事務所の母子・父子自立支援員や就業支援専門員等の相談機関関係職員を対象とした研修を積極的に実施するほか、他の機関が行う研修会等へ参加する等により、相談機関関係職員の専門性の向上を図る

ウ 相談機関関係職員向けのマニュアル等の作成(実施主体:都道府県及び市町村)

「ひとり親家庭支援の手引き」等を参考にし、福祉事務所の母子・父子自立支援員や就業支援専門員等の相談機関関係職員向けの活動マニュアル等を作成

エ 支援施策及び相談窓口に関する分かりやすい情報提供の推進(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の支援施策に関する情報や相談窓口を分かりやすく示したパンフレット等を作成し、ホームページや広報誌等を活用して、支援施策及び相談窓口を情報提供

また、相談しやすい、SNS等をはじめとした情報技術を活用した相談ツールの構築を検討

オ 相談機関関係職員の人材の確保・育成及び専門性の向上(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦に対する寄り添ったきめ細やかな支援の実施に向けて、中長期的な継続した支援の実施を前提とした相談機関関係職員の適切な配置、研修等による人材育成や専門性の向上

カ 母子生活支援施設や民間団体との連携による相談体制の充実(実施主体:都道府県及び市町村)

行政との関わりを持つ機会が持ちづらい母子家庭及び父子家庭並びに寡婦について、必要な支援が行き届くよう、母子生活支援施設や地域の民間団体との連携により、きめ細やかな相談・支援を行う仕組みの構築

② 子育て支援、生活の場の整備

ア 保育所等の優先的利用の推進等(実施主体:市町村)

(a) 就業や求職活動、職業訓練を十分に行うことができるよう、母子家庭及び父子家庭の優先的取扱い等、母子家庭及び父子家庭の児童が保育所等を優先的に利用することができるような取組を推進

(b) 延長保育や休日保育、夜間保育、病児・病後児保育、一時預かりを実施

(c) 待機児童への対応や仕事と子育ての両立支援として、多様な保育サービス、ファミリー・サポート・センター事業や子育て短期支援事業を活用

イ 放課後児童クラブの優先的利用の推進(実施主体:市町村)

放課後児童クラブについても、その実施を推進するとともに、母子家庭及び父子家庭の児童が優先的に利用できるような取組を推進

ウ 母子生活支援施設の整備・機能の拡充(実施主体:都道府県及び市町村)

(a) 母子生活支援施設に入所する母子家庭のうち早期に自立が見込まれる者を対象に、地域社会の中の小規模な施設で、本体施設と十分な連携を図りながらその自立を重点的に支援する小規模分園型(サテライト型)の母子生活支援施設の設置を推進

また、公設民営方式による施設整備を推進するとともに、その場合であっても母子保護及び自立促進等の機能を十分に果たせるよう必要な体制を整備

(b) 母子生活支援施設の機能を活用し、地域で生活する母子家庭及び父子家庭の子どもを対象とする保育機能(夜間・延長保育や入所待機の解消等のニーズにも対応)の充実を図り、地域の母子家庭の母及び父子家庭の父の子育てと仕事の両立を支援

(c) ひとり親家庭の支援拠点としての活用

市町村と母子生活支援施設が相互に連携を図り、母子生活支援施設の機能を活用した、ひとり親家庭等生活向上事業における相談支援の実施や子育て短期支援事業の実施、就業支援専門員の配置等を通じ、母子生活支援施設を、地域におけるひとり親家庭の支援拠点として活用

エ 公営住宅の積極的活用の推進(優先入居の推進等)等(実施主体:都道府県及び市町村)

(a) 特に居住の安定確保が必要な者として母子家庭及び父子家庭に対する公営住宅への優先入居を推進

(b) 民間賃貸住宅への母子家庭及び父子家庭の入居の円滑化を支援するため、居住支援協議会等が行う子育て世帯の入居を拒まない登録住宅等の情報提供等の取組を推進

オ 身元保証人確保対策事業の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

母子生活支援施設等を退所する母子家庭等が、身元保証人を得られず、住居を借りる際に困難となることがないよう、身元保証人確保のための支援を推進

カ 母子父子寡婦福祉資金貸付金の住宅資金や転宅資金の貸付けの実施(実施主体:都道府県等)

母子父子寡婦福祉資金貸付金のメニューである住宅資金や転宅資金の貸付けを通じて母子家庭及び父子家庭への住宅支援を推進

キ ひとり親家庭等日常生活支援事業の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

(a) 母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦の修学や疾病等の事由により家事、育児等の日常生活に支障が生じた場合等に、多様なニーズ、時間帯に応じて家庭生活支援員を母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の居宅に派遣し、又は家庭生活支援員の居宅等において、児童の世話等日常生活の支援を行うひとり親家庭等日常生活支援事業について、地域における事業ニーズを的確に把握し、必要な家庭に対して支援が提供できるよう、適切に事業の実施を推進

(b) ひとり親家庭等日常生活支援事業の実施に当たっては、各家庭の様々なニーズに対応できるよう、昼間、夜間等の多様な時間帯の利用を推進するとともに、出張等の場合に対応できる宿泊型事業の活用を推進

(c) ひとり親家庭等日常生活支援事業の実施に当たっては、事業の一部を母子・父子福祉団体、NPO、介護事業者等に委託することができるものとし、家庭生活支援員として、母子家庭の母及び父子家庭の父を積極的に活用していくとともに、その資質の向上を図るため、講習会を実施

ク 子育て短期支援事業の実施(実施主体:市町村)

(a) 保護者の疾病や仕事等の事由により児童の養育が一時的に困難となった場合、緊急一時的に保護を必要とする場合又は育児不安や育児疲れ、慢性疾患児の看病疲れ等の身体的・精神的負担の軽減が必要な場合に、母子家庭及び父子家庭の児童を短期間預かる短期入所生活援助(ショートステイ)事業の実施を推進

(b) 保護者が仕事等の理由により平日の夜間又は休日に不在となった場合やその他の緊急の場合に、母子家庭及び父子家庭の児童を保護し、生活指導、食事の提供等を行う夜間養護等(トワイライトステイ)事業の実施を推進

(c) 母子家庭及び父子家庭の児童が事業を優先的に利用できるような取組等を推進

(d) 保護者が児童に付き添うことが困難である場合等に、居宅から実施施設等の間や実施施設から学校等の間における、職員による児童への付添いを実施する等、子どもの安全の確保や利用者の負担軽減等を推進

ケ ひとり親家庭等生活向上事業の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

(a) 母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦を対象とした家計管理等の講習会等の開催、親同士の情報交換の場の提供等を地域の実情に応じて実施

(b) 母子生活支援施設や地域の民間団体との連携による相談支援を推進

(c) 母子家庭及び父子家庭の子どもを対象とした学習支援等を地域の実情に応じて実施

③ 就業支援策

ア 母子・父子自立支援プログラム策定等事業の実施(実施主体:都道府県等及び市等)

(a) 児童扶養手当受給者等の個々の母子家庭及び父子家庭の実情に応じた自立支援プログラムを策定し、それに基づき、きめ細かな支援を行う母子・父子自立支援プログラム策定事業を実施

(b) 事業の実施に当たっては、児童扶養手当の受給資格認定時、現況届提出時、受給から5年経過した時等あらゆる機会を捉え、対象者に対する事業の紹介に努める等、自立が見込まれる対象者のプログラム策定に着実につながるよう、効率的かつ効果的に実施

(c) 適切な支援方針の提示とともに、効果的な資格取得を助言することができるよう、プログラムの策定を行う職員に対する研修等を実施

イ 母子家庭等就業・自立支援事業の実施(実施主体:都道府県等及び市等)

(a) 就業に関する専門的な知識や相談経験のある者による就業相談、就業支援講習会等、就業情報の提供、在宅就業の支援、母子・父子自立支援員を始めとする就業支援関係者の研修等、一貫した就業支援サービスを提供したり、母子生活支援施設と連携を図りながら、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の地域生活の支援や養育費の取り決めを促進するための専門相談を行う母子家庭等就業・自立支援センター事業を実施

(b) 母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦が身近な地域で支援を受けられるよう、母子家庭等就業・自立支援センター事業と同種の事業を地域の実情に応じ選択し、実施する一般市等就業・自立支援事業を実施

(c) 都道府県等と市等は、十分な連携を図りながら、母子家庭等就業・自立支援事業を実施。また、自ら事業を実施することのほか、母子・父子福祉団体、NPO、社会福祉協議会等に事業の全部又は一部を委託する等、既存の施設・人材等を積極的に活用し、地域の母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦に対するきめ細かな支援を実施

ウ より良い就業に向けた能力の開発

(a) 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金等(母子家庭自立支援教育訓練給付金及び父子家庭自立支援教育訓練給付金並びに母子家庭高等職業訓練促進給付金及び父子家庭高等職業訓練促進給付金等)の活用(実施主体:都道府県等及び市等)

・ 母子家庭自立支援教育訓練給付金及び父子家庭自立支援教育訓練給付金

都道府県等及び市等は、その長が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母及び父子家庭の父に対して、講座修了後に受講料の一部を支給

・ 母子家庭高等職業訓練促進給付金及び父子家庭高等職業訓練促進給付金等

都道府県等及び市等は、介護福祉士等の経済的自立に効果的な資格を取得するために2年以上修業する場合で、就業や育児と修学の両立が困難な場合に、生活費の負担軽減のための給付金及び入学金の負担軽減のための一時金を給付

(b) 技能習得期間中の技能習得資金及び生活資金の貸付け制度の活用(実施主体:都道府県等)

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の公共職業能力開発施設等における技能習得を支援し、技能を習得している期間中の生活保障のため、適正な償還期間を設定の上、技能習得資金及び生活資金の貸付けを実施

(c) 保育士資格の取得の促進(実施主体:都道府県等)

・ 家庭的保育事業の補助者としての経験を保育士養成施設における保育実習とする取扱い

・ 家庭的保育事業の補助者としての経験を保育士試験の受験に必要な実務経験に算入

(d) 高等学校卒業程度認定試験の合格支援(実施主体:都道府県等及び市等)

母子家庭の母及び父子家庭の父等が、高等学校卒業程度認定試験合格のための講座を受講し、これを修了した際に受講費用の一部を支給するとともに、高等学校卒業程度認定試験に合格した場合に、受講費用の一部を支給する事業の推進

(e) 在宅就業の支援(実施主体:都道府県等及び市等)

在宅就業を希望する母子家庭及び父子家庭に対し、専門の支援員による支援を実施

エ 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の状況に応じた就業あっせん(公共職業安定機関等との連携)(実施主体:都道府県等及び市等)

(a) 都道府県等及び市等は、母子・父子自立支援員や就業支援専門員を配置し、児童扶養手当の手続を行う際等に、公共職業安定機関等と連携して、求人情報の提供や、就職・能力開発に関する相談等を実施

(b) 都道府県等及び市等は、公共職業安定機関等と連携し、地域における労働市場の状況に係る情報の提供等その支援を受けつつ、母子・父子自立支援員等就業支援関係者に対する研修を実施

オ 公共職業訓練の実施(実施主体:都道府県)

都道府県は、公共職業安定機関等と連携し、母子家庭の母及び父子家庭の父を含めた求職者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、公共職業訓練を実施

カ 所得の増大に結び付く就業機会創出のための支援

(a) 母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦に対する起業支援(実施主体:都道府県等)

母子家庭の母若しくは父子家庭の父又は寡婦が共同して起業する場合に、母子福祉資金貸付金等(事業開始資金)を貸付け

また、母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦の起業を支援するため、起業の方法、事業計画、資金計画、労務管理等についてのセミナーを実施

(b) 公共的施設における雇入れの促進(実施主体:都道府県及び市町村)

都道府県及び市町村が設置する公共的施設において、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の雇入れを促進

(c) 母子・父子福祉団体等への優先的な事業発注の推進(実施主体:都道府県及び市町村)

売店の優先許可の普及や、都道府県や市町村の機関による清掃業務の委託等母子・父子福祉団体等に対する優先的な事業発注を推進

キ 母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用に関する啓発活動等・情報提供(実施主体:都道府県及び市町村)

(a) 事業主や都道府県及び市町村の関係団体に対して母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用について理解を深めてもらうための啓発活動や、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進に向けた協力の要請を積極的に推進

(b) 母子家庭の母及び父子家庭の父を積極的に雇用する等の企業等における母子家庭の母及び父子家庭の父の雇用に関する好事例について、情報を収集し、その提供を行うとともに、その企業等の公表等を実施

ク 母子・父子福祉団体、NPO等に対する支援

(a) 職業紹介事業を行う母子・父子福祉団体等への支援(実施主体:都道府県及び市町村)

職業紹介事業を行う母子・父子福祉団体やNPO等に対し、ハローワークや福祉人材センターと連携しつつ求人情報の提供等を実施

(b) 母子・父子福祉団体が行う事業に対する支援(実施主体:都道府県等)

母子・父子福祉団体が、母子家庭の母及び父子家庭の父の福祉の増進を図るための事業(社会福祉事業、職業紹介事業、労働者派遣事業、信用保証業等)を行う場合に母子福祉資金貸付金制度等を活用

(c) 母子・父子福祉団体等の受注機会の増大への努力(実施主体:都道府県、市町村及び地方独立行政法人)

母子・父子福祉団体等母子家庭の母及び父子家庭の父の福祉の増進を主たる目的とする団体が、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進につながる業務をより多く受注できるよう、都道府県、市町村及び地方独立行政法人が物品やサービスを購入する場合には予算の適正な使用に留意しつつ、優先的に母子・父子福祉団体等から購入するように努めること

ケ 母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進を図るための措置に関する留意(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の促進を図るための措置を講ずるに当たっては、情報通信技術等に関する職業能力の開発及び向上並びに情報通信ネットワークを利用した在宅就業等多様な就業の機会の確保並びにこれらに従事する人材の養成及び資質の向上とともに、長時間の就業により親子の時間が奪われることのないように留意

④ 養育費の確保及び面会交流に関する取決めの促進

ア 広報・啓発活動の推進(実施主体:都道府県及び市町村)

母子・父子福祉団体、NPO等の関係団体と連携して、養育費の支払や養育費及び面会交流の取決めに関する広報・啓発活動を推進

イ 相談体制の充実

(a) 養育費に関する相談支援(実施主体:都道府県等及び市等)

養育費の確保のため、弁護士による離婚前・離婚後の養育費取得のための取決めや支払の履行・強制執行に関する法律相談を実施するとともに、養育費に関する専門知識を有する相談員を配置し、取決めや支払の履行・強制執行手続に関する相談や情報提供、家庭裁判所等への同行支援のほか、講習会等を実施

(b) 面会交流に関する相談支援(実施主体:都道府県等及び市等)

離婚後における面会交流の取決めを行っている子どもと同居している親又は別居している親からの申請に応じ、面会交流に係る事前相談、支援計画の作成や子どもの付添い等の面会交流援助等の支援を実施

(c) 母子・父子自立支援員や女性相談支援員等に対する養育費及び面会交流に関する研修の実施(実施主体:都道府県等及び市等)

母子・父子自立支援員、女性相談支援員、母子家庭等就業・自立支援センターの養育費に関する専門知識を有する相談員に対し、養育費の取得手続等養育費に関する事項や面会交流の相談対応、関係機関や民間団体等との連携に関する研修を実施

(d) 母子・父子福祉団体、NPO等への支援(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭及び父子家庭に対して、養育費相談や情報提供活動を実施する母子・父子福祉団体やNPO等に対し、情報提供等の支援を実施

ウ 情報提供(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭及び父子家庭に対し、養育費取得手続、相談窓口等について、行政(児童扶養手当窓口、婚姻・離婚届窓口等)や関係団体による情報提供活動を推進

⑤ 経済的支援策

ア 母子父子寡婦福祉資金貸付金に関する情報提供、適正な貸付業務の実施(実施主体:都道府県等)

母子家庭若しくは父子家庭又は寡婦に対して、積極的に母子父子寡婦福祉資金貸付制度に関する情報提供を行うほか、プライバシーの保護への配慮や必要となる時期に速やかに資金の貸付けを行う等の適正な貸付業務を実施

イ 児童扶養手当に関する情報提供及び適正な給付業務の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

母子家庭の母及び父子家庭の父に対して、積極的に児童扶養手当制度に関する情報提供を行うほか、プライバシーの保護に配慮した適正な給付業務を実施

ウ 児童扶養手当窓口における相談、情報提供等適切な自立支援の実施(実施主体:都道府県及び市町村)

児童扶養手当窓口において、母子・父子自立支援員等による就業等に関する相談や情報提供を積極的に推進する等、母子家庭の母及び父子家庭の父に対する適切な自立支援を実施

⑥ 広報啓発

広報啓発・広聴、ニーズ把握活動等事業の実施等により、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策に係る要望・意見の聴取やニーズ調査等を行うとともに、パンフレットの配布、SNS等のインターネットメディア等の各種の広報手段の活用や、地域で活動する民間団体とも協力し、地域の特性を踏まえた、情報の取得が困難な者にも行き届くような広報啓発活動を実施(実施主体:都道府県及び市町村)

⑦ 相談に従事する職員や窓口対応を行う職員に対する研修等の実施

ア 母子・父子自立支援員、就業支援専門員その他の相談関係職員や相談窓口で対応を行う職員に対する研修会の開催や他の研修会への参加を促す等による人材の確保や専門性の向上を推進(実施主体:都道府県及び市町村)

イ 相談関係職員等の研修等の実施に当たっては、各種支援施策に関する内容のほか、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦が抱える様々な事情を理解し、プライバシー保護に配慮した相談対応の方法もあわせて実施(実施主体:都道府県及び市町村)

(3) 就業の支援に関する施策の実施の状況の公表

毎年1回、母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する施策の実施の状況を公表する。

(4) 基本方針の評価と見直し

① 基本方針の見直しに当たっては、見直し前に、基本方針に定めた施策の評価を行う。

この評価は、第1に掲げた母子家庭及び父子家庭の父並びに寡婦の動向に関して可能な限り定量的な調査を実施するほか、関係者の意見を聴取すること等により実施する。

② 施策評価結果の公表

①の評価により得られた結果は、公表する。

③ 基本方針の見直し

①の評価により得られた結果は、基本方針の見直しに際して参考にする。

(5) 関係者等からの意見聴取

基本方針の見直しに当たっては、母子・父子福祉団体、NPO、都道府県や市町村、母子生活支援施設関係者等、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策関係者からの意見を幅広く聴取するとともに、パブリックコメントを求める。

(6) その他

① 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策を実施するに当たっては、母子・父子福祉団体、NPOその他関係団体に対し適切な支援を行うとともに、これらの関係団体、児童委員及び施策に関係する部局とも十分な連携を図りつつ実施する。

② 効果的な母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策の在り方について研究・検討を行う。

③ 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策に従事する職員により母子家庭及び父子家庭並びに寡婦を巡る状況の理解、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策の習熟及びプライバシーへの十分な配慮が促進されるよう、職員の資質向上のための研修等を実施する。

第3 都道府県等が策定する自立促進計画の指針となるべき基本的な事項

都道府県等及び市等が、自立促進計画を策定する場合には、次に掲げる指針を踏まえ策定することが適当である。

1.手続についての指針

(1) 自立促進計画の期間

自立促進計画の運営期間は、5年間とする。ただし、特別の事情がある場合には、この限りではない。

(2) 他の計画との関係

自立促進計画は、法律の規定による計画であって母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の福祉に関する事項を定めるものとの調和を保つよう努めなければならない。

(3) 自立促進計画策定前の手続

① 調査・問題点等の把握

自立促進計画を策定するに当たっては、まず、次の事項について調査し、活用可能な既存のデータ等を基に評価・分析し、当該地域における母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の現状における問題点及び支援施策の利用に関する意向を把握する。

ア 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の数(離死別や未婚等の原因ごとの数)

イ 母子家庭及び父子家庭における子どもの状況(人数、性別、年齢、就学状況等)

ウ 平均年間所得(就業形態ごと、就業種別ごとの額)

エ 就業率(就業形態ごと、就業種別ごとの率)

オ 母子家庭及び父子家庭の養育費等の取決め率、取得率及び平均額

カ 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の住居の状況

キ 母子家庭及び父子家庭のうち、その児童が保育所等の利用を待機している世帯数

ク 当該地域の公共的施設における母子家庭及び父子家庭の雇用状況

ケ その他当該地域の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の自立促進にとって参考となる数値

コ 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の支援施策の利用に関する意向

サ 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の支援施策の実施に当たり、活用可能な地域資源(地域で活動する民間団体等)

② 基本目標

①の調査・問題点等の把握に基づいて、自立促進計画の基本目標を明確にする。

③ 合議制機関からの意見聴取

自立促進計画の策定に当たっては、あらかじめ、都道府県児童福祉審議会又は市町村児童福祉審議会、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第77条第1項又は第4項に規定する機関その他の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の福祉に関する事項を調査審議する合議制の機関の意見を聴取するよう努めなければならない。

④ 関係者等からの意見聴取

自立促進計画の策定に当たっては、あらかじめ、地域の母子・父子福祉団体、NPO、母子生活支援施設職員等の母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策関係者からの意見を幅広く聴取するとともに、インターネットの利用及び印刷物の配布等の方法により広く母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の意見を求める等、当該地域の住民の意見も聴取するよう努めなければならない。

(4) 自立促進計画の評価と次期自立促進計画の策定

① 評価

次の自立促進計画の策定に当たっては、自立促進計画の運営期間の満了前に、自立促進計画に定めた施策について評価を行う。

この評価は、(3)①に掲げる事項について調査を実施するほか、関係者の意見を聴取すること等により実施する。

② 施策評価結果の公表

①の評価により得られた結果は、公表する。

③ 次の自立促進計画の策定

①の評価により得られた結果は、次の自立促進計画を策定するに際して参考にする。

2.自立促進計画に盛り込むべき施策についての指針

(1) 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項としては、1.(3)①で把握した問題点を記載する。

(2) 母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項

母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項としては、第2の1.を参考にしつつ、当該都道府県等及び市等において今後実施する母子家庭及び父子家庭並びに寡婦施策の基本的な方向性を記載する。

さらに、第2の2.を参考にしつつ、当該都道府県等及び市等が自立促進計画に基づいて実施する各施策の基本目標を記載する。

(3) 福祉サービスの提供、職業能力の向上の支援その他母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項

①日常生活支援等の子育て支援、生活の場の整備、②高等職業訓練促進給付金及び自立支援教育訓練給付金等の就業支援策、③養育費の確保等に関する事項、④経済的支援策、⑤関係機関の協力その他の各項目について、(1)に記載した問題点を解消するために必要な施策として、次に掲げるものを記載する。

① 内閣総理大臣が提示した施策

第2の3.(2)に掲げられた施策のうち、当該都道府県等及び市等において実施する施策

② 都道府県等及び市等独自の施策

第2の3.(2)に記載されていない施策であって、当該都道府県等及び市等が独自で実施する施策

附 則 (令和五年三月三一日厚生労働省告示第一六七号) 抄

(適用期日)

第一条 この告示は、令和五年四月一日から適用する。

(経過措置)

第二条 この告示の適用前にこの告示による改正前のそれぞれの告示の規定により厚生労働大臣が行った行為は、この告示の適用後は、この告示による改正後のそれぞれの告示の相当規定により相当の国の機関がした行為とみなす。

改正文 (令和五年四月七日厚生労働省告示第一七一号) 抄

令和六年四月一日から適用する。