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○浴場業の振興指針

(令和二年三月五日)

(厚生労働省告示第五十三号)

生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和三十二年法律第百六十四号)第五十六条の二第一項の規定に基づき、浴場業の振興指針(平成二十七年厚生労働省告示第二十五号)の全部を次のように改正し、令和二年四月一日から適用する。

浴場業の振興指針

浴場業の営業者(以下「営業者」という。)が、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)等の衛生規制に的確に対応しつつ、現下の諸課題にも適切に対応し、経営の安定及び改善を図ることは、国民生活の向上に資するものである。

このため、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「生衛法」という。)第56条の2第1項に基づき、浴場業の振興指針を定めてきたところであるが、今般、営業者及び生活衛生同業組合(生活衛生同業小組合を含む。以下「組合」という。)等の事業の実施状況等を踏まえ、営業者及び組合等の具体的活用に資するよう、実践的かつ戦略的な指針として改正を行った。

今後、営業者及び組合等において本指針が十分に活用されることを期待するとともに、新たな衛生上の課題や経済社会情勢の変化、営業者及び利用者等のニーズを反映して、適時かつ適切に本指針を改定するものとする。

第一 浴場業を取り巻く状況

一 営業者の動向

浴場業は、高温多湿な我が国の気候風土の中で古くから「施浴」や「町湯」として栄え、多くの人々に入浴の機会を提供し、地域の保健衛生水準の維持向上に大いに役立ってきたところであり、地域の触れ合いの場としても重要な役割を担うなど、我が国独特の生活文化を築いてきたものである。

公衆浴場は、平成25年度の26,580施設から平成29年度の25,121施設に減少している。このうち、一般公衆浴場(いわゆる「銭湯」をいう。以下同じ。)は、同時期で、4,542施設から3,729施設に減少している(厚生労働省「衛生行政報告例」による。)。

一般公衆浴場は、物価統制令(昭和21年勅令第118号)第4条の規定に基づき入浴料金を都道府県知事が指定していることもあり、公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律(昭和56年法律第68号)第3条の規定に基づき、金融及び税制上の優遇措置等の諸施策を実施しているが、利用者数の減少に伴う収益の減少、経営者の高齢化、施設及び設備の老朽化等による経営環境の悪化、家族経営による長時間労働並びに相続税の負担増等による後継者の確保難により転業及び廃業が進んでいる。

さらに、営業者が抱える経営上の問題点としては、「客数の減少」と回答した割合が69.2%(前回振興指針では77.4%)となっており、以下、「施設・設備の老朽化」が68.0%(前回振興指針では57.1%)、「燃料費の上昇」が37.0%(前回振興指針では63.5%)、「光熱費の上昇」が33.7%(前回振興指針では49.6%)と続いている。このことから、客数の減少とともにエネルギー価格等の問題が経営上の問題点となっていることが伺われる(厚生労働省「生活衛生関係営業経営実態調査」による。)。

また、日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)が行った『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和元年7~9月期)』において、浴場業の経営上の問題点は、多い順に「店舗施設の狭隘・老朽化」(62.0%)、「顧客数の減少」(55.6%)、「仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」(25.0%)となっている。

一方、近年増加している訪日外国人旅行者の集客に向けた取組の実施状況については、令和元年6月時点で、「実施している」と回答した割合が21.3%と、生活衛生関係営業の中では、旅館業に次いで多くなっており、訪日外国人旅行者に対する今後の受け入れ方針としては、「積極的に受け入れていきたい」が17.4%、「受け入れてもよい」が58.7%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査特別調査(令和元年4~6月期)』による。)。

また、令和元年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID―19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)の感染拡大は社会経済に大きな影響を与え、我が国の浴場業も多大な影響を受けたところである。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う事業への影響について、公衆浴場業の営業者で、売上が減少したと回答した者は76.8%で、その売上の減少幅(令和2年2~5月の対前年比)は、「20%未満」が50.0%、「20%以上50%未満」が38.4%、「50%以上80%未満」が10.5%、「80%以上」が1.2%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による。)。

二 消費動向

平成30年の1世帯あたり(2人以上の世帯)の温泉・銭湯入浴料支出は1,795円で、前年比184円の減少であった(総務省「家計調査報告」による。)。

また、1日平均客数別施設数の構成割合は、総数では「50人~99人」が29.3%で最も多く、次いで「100人~199人」が27.3%となっている。立地条件別にみると、「住宅地区」では「100人~199人」が32.6%、「50人~99人」が30.8%と来客数が多くなっている(厚生労働省「生活衛生関係営業経営実態調査」による。)。

三 営業者の考える今後の経営方針

営業者の考える今後の経営方針(複数回答)としては、「接客サービス充実」30.5%(前回振興指針では24.6%)、「施設・設備の改装」29.0%(前回振興指針では23.4%)、「集客のためのイベント実施」23.5%(前回振興指針では20.2%)、「広告・宣伝等の強化」及び「サービスデー等の工夫」18.2%(前回振興指針では記述なし)となっている(厚生労働省「生活衛生関係営業経営実態調査」による。)。

また、公衆浴場業を営む者が、新型コロナウイルス感染症収束後に予定している取組としては、「広報活動の強化」が33.0%、次いで「生産性向上に資する設備投資の実施」が13.4%、「新商品、新メニューの開発」が8.0%となっている一方、「特にない」が50.9%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による。)。

第二 前期の振興計画の実施状況

都道府県別に設立された浴場業の組合(平成30年12月末現在、41都道府県で設立されている組合)においては、前期の浴場業の振興指針(平成27年厚生労働省告示第25号)を踏まえ、振興計画を策定及び実施しているところであるが、当該振興計画について、全5か年のうち4か年終了時である平成30年度末に実施した自己評価は次表のとおりである。

表 振興計画の実施状況についての各組合による自己評価

(単位:%)


事業名

達成

概ね達成

主な事業

1

衛生に関する知識及び意識の向上に関する事業

56%

36%

・衛生管理講習会の開催

・衛生マニュアルの作成及び配布

・自主管理対策

2

施設及び設備並びにサービスの改善に関する事業

25%

50%

・施設特性を踏まえた改装や設備の導入投資

3

利用者の利益の増進に関する事業

64%

36%

・行事湯の実施

・講習会の開催

・賠償責任保険への加入促進

4

経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事業

28%

40%

・経営講習会又は各種研修会の開催

・経営に関する相談及び指導

5

営業者及び従業員の技能の改善向上に関する事業

48%

26%

・技術講習会の開催

6

事業の共同化等に関する事業

64%

12%

・共同購入の実施

7

取引関係の改善に関する事業

38%

46%

・関係業界等との情報交換会の開催

8

従業員の福祉の充実に関する事業

25%

42%

・共済制度等の加入促進

・定期健康診断の実施

9

事業の承継及び後継者支援に関する事業

13%

35%

・後継者育成支援のための研修会等の開催

・青年部の活動支援

10

環境の保全及び省エネルギーの強化に関する事業

29%

42%

・省エネルギー機器の導入

11

少子高齢化社会等への対応に関する事業

38%

21%

・子ども又は高齢者向け入浴サービスの作成

12

「浴育」への対応に関する事業

64%

36%

・小学生等を対象とした体験入浴の実施

・入浴マナー啓発

13

禁煙等に関する対策に関する事業

45%

41%

・講習会の開催

・施設における禁煙・分煙の推進

14

地域との共生に関する事業

48%

26%

・地域イベントへの参加

・コミュニティの場としての施設の開放

・ポスター等の作成及び配布

15

東日本大震災への対応と節電行動の徹底に関する事業

29%

38%

・災害時における施設の提供

・節電に関する啓発

(注) 組合からの実施状況報告を基に作成。

なお、国庫補助金としての予算措置(以下「予算措置」という。)については、平成23年度より、外部評価の導入を通じた効果測定の検証やPDCAサイクル(事業を継続的に改善するため、Plan(計画)―Do(実施)―Check(評価)―Act(改善)の段階を繰り返すことをいう。)の確立を目的として、「生活衛生関係営業の振興に関する検討会」の下に設けられた「生活衛生関係営業対策事業費補助金審査・評価会」において、補助対象となる事業の審査から評価までを一貫して行う等、必要な見直し措置を講じている。

このため、組合及び生活衛生同業組合連合会(以下「連合会」という。)等においても、振興計画に基づき事業を実施する際は、事業目標及び成果目標を可能な限り明確化した上で、達成状況についても評価を行う必要がある。

当該振興計画等の実施に向けて、組合、連合会等においては、本指針及び振興計画の内容について広く広報を行い、組合未加入の営業者への加入勧誘及び組合未結成地域の営業者への組合結成の支援を図ることが期待される。

組合への加入、非加入は営業者の任意であるが、生衛法の趣旨及び組合の活動内容等を詳しく知らない新規開設者等の営業者がいることも考えられるため、都道府県、保健所設置市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、営業者による許可申請又は届出等の際に、営業者に対して、生衛法の趣旨並びに関係する組合の活動内容、所在地及び連絡先等について情報提供を行う等の取組の実施が求められる。

第三 浴場業の振興の目標に関する事項

一 営業者の直面する課題と地域社会から期待される役割

浴場業は、国民の衛生的で快適な生活を確保するサービスとして、国民生活の充実に大いに寄与してきた。自家風呂を持たない人々に対して入浴の機会を提供するとともに、自家風呂普及率が95%を超える中で、「浴槽が大きくリラックスできる」、「よく温まる」などの利用者の声もあり、従来のような単に身体を洗うという目的以外に、疲れをとる、気分転換を図るなどの心の癒しの場としても重要な役割を果たしている。こうした重要な役割を浴場業が引き続き担い、国民生活の向上に貢献できるよう、経営環境や国民のニーズ、衛生課題に適切に対応しつつ、各々の営業者の経営戦略に基づき、その特性を活かし、事業の安定と活力ある発展を図ることが求められる。

浴場業は不特定多数の者を入浴させる施設であることから、衛生上の問題、特に、レジオネラ症に注意が必要な業態であり、衛生上の危険を防止し、利用者に対して安全なサービスを提供することは営業者の責務である。

我が国においては、今後、一人暮らしの高齢者の増加が予想されるが、公衆浴場は、地域住民との交流の場を提供するのみならず、常に従業員や他の入浴者の目があり、入浴に起因する事故に対しても迅速な対応が可能であることから、このような利用者を積極的に取り込んでいくことが期待される。同時に、子ども世代等を対象にした「浴育」の推進により、日本の銭湯文化を幅広い層に伝えていくことも重要である。また、公衆浴場は、地域住民に身近な交流スペースとしても重要な地域資源であり、今後、地域コミュニティの核として、地域の様々な活動に積極的に開放していくとともに、ランニングブーム等に着目した健康増進関連の新規利用者の掘り起こしが望まれる。

今後、我が国においても、訪日外国人旅行者や在留外国人の増加が予想されるが、日本の伝統的な公衆浴場への関心は高いものと想定され、入浴マナーの紹介等をはじめ、その受入れ体制の整備が望まれる。その際、それぞれの国の文化や風習に配慮することが求められる。

また、地球環境問題や高騰するエネルギー価格の問題に的確に対応するため、環境に配慮したボイラー燃料への転換や、省エネルギー関係設備の導入等を推進する必要がある。

あわせて、社会全体の少子高齢化の進展や障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)を踏まえ、全ての利用者が施設を円滑に利用できるよう、ソフト、ハード両面におけるバリアフリー化及びユニバーサルデザイン化の取組が求められる。また、人工肛門又は人工膀胱を使用している者(以下「オストメイト」という。)及び入浴着を着用した乳がん患者・経験者への配慮が求められる。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う売上減や経営維持、雇用確保等に対応するため、日本公庫の融資や国・自治体の補助金・助成制度を積極的に活用して早期に業績回復を図る必要がある。

二 今後5年間における営業の振興の目標

1 衛生問題への対応

衛生課題は、浴槽等におけるレジオネラ症防止対策を講じることはもとより、インフルエンザ等の感染症への対応が必要であり、営業者にとどまらず、保健所等衛生関係機関及び公益財団法人都道府県生活衛生営業指導センター(以下「都道府県指導センター」という。)等との連携を密にして対応することが求められる。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策が求められている。

衛生問題は、営業者が一定水準の衛生管理をしている場合、通常、頻繁に発生するものではないため、発生防止に必要な費用及び手間について判断しにくい特質がある。しかし、一旦、感染症が発生した場合には、多くの利用者に被害が及ぶことはもとより、営業自体の存続が困難になる可能性があることから、日頃からの地道な衛生管理の取組が重要である。

また、こうした衛生問題は、個々の営業者の問題にとどまらず、業界全体に対する信頼を損ねることにもつながることから、組合及び連合会には、組合員、非組合員双方の営業者が自覚と責任感を持ち、衛生水準の向上が図られるよう、継続的に知識及び意識向上に資する普及啓発並びに適切な指導及び支援に努めることが求められる。

とりわけ、中小規模の営業者は重要な公衆衛生情報の把握が困難となる場合が考えられるため、これら営業者に対する組合加入の促進や公衆衛生情報の提供が円滑に行われることが期待される。

2 経営方針の決定と利用者及び地域社会への貢献

浴場業の中でも一般公衆浴場は、自家風呂普及率が95%を超える中で、設備の老朽化、後継者不足の問題等の課題を抱えており、営業者を取り巻く経営環境は厳しい。

こうした中で、営業者は、利用者のニーズや世帯動向を的確に把握し、専門性や地域密着、対面接客等の特性を活かし、競争軸となる強みを見い出し、独自性を十分に発揮し、以下の点に留意しつつ、経営展開を行っていくことが求められる。

(1) 消費者ニーズの把握と創意工夫による経営展開

一般公衆浴場は、既に地域に定着しているところが多いことから、利用者の要望、利用者層等の動向及び周囲の競合施設の状況等の情報を収集し、自施設のサービスを見直すなど、経営意識の改革に努めるとともに、経営方針について将来を見据えた上で改めて検討する必要がある。

また、自施設の立地条件や経営方針に照らし、営業日や営業時間、利用者が満足するサービスの見直しを行い、例えば、こどもの日、母の日、父の日又は敬老の日等の無料優待制度、しょうぶ湯、ゆず湯、リンゴ湯又はハーブ湯等のサービス、冷水や麦茶の無料サービス、優待制度付きのプリペイドカード、回数券又は家族券の発行、個人のプライバシー保護を考慮した番台のロビー化、清涼飲料水や氷菓等多様な飲食物等の提供及びBGMの放送等、自由な発想で自施設に適した新たなサービスを開発することが期待される。

(2) 地域コミュニティの核としての機能の発揮

我が国における一人暮らしの高齢者の数は、2010年の約480万人から2020年には約670万人と大幅に増加することが予想される。高齢者が地域社会でいきいきと暮らしていくためには、住民同士が会話する機会は非常に重要であり、公衆浴場は、リラックスしながら気軽な会話が行われる場として、地域の貴重な財産である。また、自宅での入浴時の事故を防止する観点からも、公衆浴場での入浴は有効であり、このような地域のニーズに的確に対応することが求められる。

また、自家風呂の普及により公衆浴場を利用したことのない子どもが多い中、体験入浴又は親子ふれあい入浴などの機会を通じて、子どもが利用しやすい企画を実践することや、歴史や構造で特色をアピールできる施設において、自施設の特色を含めた銭湯文化の紹介又は発信を行うことは、新規利用者を開拓する上でも有効な取組であり、積極的な対応が期待される。

さらに、地方公共団体や地域の自治会等と連携して、地域住民のサロンとして公衆浴場のスペースを開放することにより、地域住民の活動の活性化に貢献することができることから、このような取組に積極的に対応することが求められる。

加えて、健康に対する国民の意識の高まりを踏まえ、ランニングブーム等に着目した対応や、高血圧、糖尿病等生活習慣病患者に対する健康的な入浴法の普及等により、新規利用者の掘り起こしを行うことが望まれる。

(3) 高齢者、障害者及び子育て世帯等への配慮

高齢化の進展は、高齢者向けのサービス需要の拡がりにもつながることから、また、障害者差別解消法において、障害者の社会参加の推進がますます求められていることを踏まえ、専門性や独自のこだわり等の特性を活かしつつ、高齢者や障害者等が利用しやすい設備の整備など、これらのニーズにきめ細かに応じたサービスの提供を積極的に行っていくことが求められているとともに、同法において、民間営業者は、障害者に対し合理的な配慮を行うよう努めなければならない、とされていることから、ソフト、ハード両面におけるバリアフリー化及びユニバーサルデザイン化の取組が求められる。

また、オストメイト及び入浴着を着用した乳がん患者・経験者についても、衛生上問題ない形で入浴サービスを楽しんでいただくことは可能であり、その点を正しく認識し、適切に対処することが必要である。

また、子育て世帯が安心・安全にサービスを利用できるための配慮も合わせて求められる。

(4) 省エネルギーへの対応

節電などの省エネルギーによる経営の合理化、コスト削減、地球環境の保全、高騰するエネルギー価格の問題に的確に対応するため、不要時の消灯や照明ランプの間引き、LED照明装置やエネルギー効率の高い空調設備等の導入を進めることが期待される。

さらに、化石燃料の使用に伴う温室効果ガスの増加対策として、ボイラー等の機器の購入及び更新に際しては、省エネルギー性能の高い機器の購入に配慮することや、エネルギー価格増大に伴う電気料金の高騰などの対策として、普段から不要時の消灯、照明ランプの間引き及び設備面でのLED照明装置等の導入を推進するなど、継続的な対策をする必要がある。

(5) 訪日・在留外国人への配慮

平成30年度の訪日外国人旅行者数は、史上初めて3,000万人を突破し、5年前と比較して3倍程度に増加しており、今後も訪日外国人旅行者数の更なる増加が見込まれる。

政府においては、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度までに訪日外国人旅行者4,000万人、2030年度までに6,000万人を目標に掲げ、「観光先進国」への新たな国づくりに向けて取組を進め、ビザ要件の緩和やいわゆるLCC(ローコストキャリア)の参入促進による航空ネットワークの充実等に取り組むこととしている。また、訪日外国人旅行者の急増に加え、外国人労働者や在留外国人も増加していることから、外国語表記の充実や外国人とのコミュニケーション能力の向上、キャッシュレス決済等の導入を図ることが求められる。

また、訪日外国人旅行者の受入れに当たっては、我が国の入浴マナーを理解していただくとともに、旅行者の母国の文化や風習に対し配慮することが必要である。

(6) 受動喫煙防止への対応

受動喫煙(人が他人の喫煙によりたばこから発生した煙にさらされること)については、健康に悪影響を与えることが科学的に明らかにされており、国際的に見ても、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の締結国として、国民の健康を保護するために受動喫煙防止を推進することが求められている。

そのため、受動喫煙による健康への悪影響をなくし、国民・労働者の健康の増進を図る観点から、健康増進法(平成14年法律第103号)の一部改正(平成30年法律第78号)及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)により、望まない受動喫煙が生じないよう、多数の者が利用する施設の管理者や営業者は受動喫煙を防止するための措置を講じることとされており、浴場業においても、受動喫煙防止の強化を図り、その実効性を高めることが求められる。

3 税制及び融資の支援措置

浴場業の組合又は組合員は、生活衛生関係営業の支援等の一つとして、税制優遇措置及び日本公庫を通した低利融資を受ける仕組みがある。

税制優遇措置については、組合が共同利用施設を取得した場合の特別償却制度が設けられており、組合において共同配送用車輌及び共同蓄電設備の購入時や組合の会館を建て替える際などに活用することができる。

融資については、一般公衆浴場に対する設備資金を営業者が借りた場合は、日本公庫の生活衛生資金貸付の金利で、最も優遇された金利による融資を受けることができる仕組みが設けられており、特に、設備投資を検討する営業者には、積極的な活用が期待される。

三 関係機関に期待される役割

1 組合及び連合会に期待される役割

組合は、公衆衛生の向上及び利用者の利益の増進に資する目的で、組合員たる営業者の営業の振興を図るための振興計画を策定することができる。組合には、地域の実情に応じ、適切な振興計画を策定することが求められる。

組合及び連合会には、予算措置や独自の財源を活用して、営業者の直面する衛生問題及び経営課題に対する適切な支援事業を実施することが期待される。

事業の実施に際しては、有効性及び効率性(費用対効果)の観点から、計画期間に得られる成果目標を明確にしながら事業の企画立案及び実施を行い、得られた成果については適切に効果測定する等、事業の適切かつ効果的な実施に努めることが求められる。

加えて、組合及び連合会には、振興指針及び振興計画の内容について広く広報を図り、組合未加入の営業者への加入勧誘及び組合未結成地域の営業者への組合結成の支援を図ることが期待される。広報を行う際には、組合活動への参画のイメージを分かりやすく提示するなど、営業者の目線に立った情報提供を行うことが求められる。

また、事業効果を最大限発揮し事業成果を広く国民や社会に還元できるよう、都道府県指導センター、保健所等衛生関係行政機関及び日本公庫支店等との連携及び調整を行うことが期待される。

2 都道府県等、都道府県指導センター及び日本公庫に期待される役割

営業許可申請等各種申請や届出、研修会、融資相談などの様々な機会を捉え、新規営業者をはじめとする組合未加入の営業者に対し、組合に関する情報提供を行うとともに、組合活動の活性化のための取組等を積極的に行うことが期待される。

また、多くの営業者が経営基盤の脆弱な中小規模の営業者であることに鑑み、都道府県指導センター及び日本公庫において、組合と連携しつつ、営業者へのきめ細かな相談、指導その他必要な支援等を行い、予算措置、融資による金融措置(以下「金融措置」という。)及び税制措置等の有効的な活用を図ることが期待される。

とりわけ、金融措置については、審査及び決定を行う日本公庫において、営業者が利用しやすい融資の実施、生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握及び分析に努め、関係団体に情報提供するとともに、都道府県指導センター及び日本公庫が協力して、融資手続や事業計画の作成に不慣れな営業者への支援の観点から、融資に係るきめ細かな相談及び融資手続の簡素化を行うことが期待される。低利融資制度については、各々の営業者の事業計画作成が前提とされることから、本指針の内容を踏まえ、営業者の戦略性を引き出す形での指導を行うことが求められる。

加えて、都道府県指導センターにおいて、組合が行う生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付に係る審査を代行するなど、金融措置の利用の促進を図ることが期待される。

3 国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センターに期待される役割

国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)は、公衆衛生の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、都道府県等及び連合会と連携を図り、信頼性の高い情報の発信及び的確な政策ニーズの把握等を行う必要がある。また、予算措置、金融措置及び税制措置を中心とする政策支援措置については、営業者の衛生水準の確保及び経営の安定に最大限の効果が発揮できるよう、安定的に所要の措置を講じるとともに、制度の活性化に向けた不断の改革の取組が必要である。

全国指導センターにおいては、中小規模の営業者に対して、組合加入の働きかけや公衆衛生情報の提供機能の強化を行うため、関係の組合及び連合会との連携を促すための取組が求められる。

第四 浴場業の振興の目標を達成するために必要な事項

浴場業の目標を達成するために必要な事項としては、次に掲げるように多岐にわたるが、営業者においては、衛生水準の向上等のために必須で取り組むべき事項と、戦略的経営を推進するために選択的に取り組むべき事項の区別を行うことで、課題解決と継続的な成長を可能にし、国民生活の向上に貢献することが期待される。

また、組合及び連合会においては、組合員である営業者等に対する指導及び支援並びに利用者の浴場業への信頼向上に資する事業の計画的な推進が求められる。

このために必要となる具体的取組としては、次に掲げるとおりである。

一 営業者の取組

1 衛生水準の向上に関する事項

(1) 日常の衛生管理に関する事項

営業者は、入浴設備の衛生管理において、浴槽等におけるレジオネラ症の発生を防止するために、自主管理手引書及び点検表を作成し、営業者又は従業員の中から日常の衛生管理に係る責任者を定める等の自主管理対策の充実を図ることが必要である。

また、衛生管理を徹底するための研修会及び講習会を受講し、営業者及び従業員の衛生管理の手引の作成等による普及啓発及び衛生管理体制の整備充実に努めるものとする。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策を行う必要がある。

さらに、感染症の予防のため、発熱等の感染症が疑われる症状のある従業員に適切な対応を行うなど従業員の健康管理に十分留意し、従業員に対する正確な衛生教育の徹底及び危機管理体制を整備することが必要である。

(2) 衛生面における施設及び設備の改善に関する事項

営業者は、日常の衛生的管理の取組に加えて、定期的かつ適切に施設及び設備の衛生面の改善に取り組むことが必要である。清潔で快適な浴場を整備するために、換気、防湿、衛生害虫等の駆除並びに脱衣室及びトイレ等の清掃を行うほか、足拭きマット等の設備についても衛生の保持を図り、利用者が衛生的な環境で快適な入浴が行えるよう衛生管理に努めることが必要である。

2 経営課題への対処に関する事項

個別の経営課題への対処については、営業者の自立的な取組が前提であるが、多様な利用者の要望に対応する良質なサービスを提供し、国民生活の向上に貢献する観点から、営業者においては、経営改革に積極的に取り組むことが期待される。

特に、家族経営等の場合、営業者や従業員が変わることはほとんどないため、経営手法が固定的になりやすい面があるが、経営意識の改革を図り、以下の事項に選択的に取り組んでいくことが期待される。

(1) 経営方針の明確化及び独自性の発揮に関する事項

現在置かれている経営環境や市場を十分に把握した上で分析し、自施設や地域の特性を踏まえ、強みを見いだし、経営方針を明確化し、自施設の付加価値や独自性を高めていくとともに、経営管理の合理化及び効率化を図ることが必要である。

ア 自施設の立地条件、利用者層、資本力及び経営能力等の経営上の特質の把握

イ 周辺競合施設に関する情報収集と比較

ウ ターゲットとする利用者層の特定

エ 重点サービスの明確化

オ 施設のコンセプト及び経営戦略の明確化

カ 地域コミュニティの中で期待されている役割の把握

キ 経営手法及び専門的知識の習得及び伝承並びに後継者の育成

ク 若手人材の活用による経営手法の開拓

ケ 都道府県指導センター等の経営指導機関による経営診断の積極的活用

(2) サービスの見直し及び利用者の確保に関する事項

利用者のニーズやライフスタイルの変化に的確に対応し、利用者が安心して利用できるよう、浴場の魅力を増し、利用者の満足度を向上させるとともに、新たな利用者を獲得することが重要であることから、以下の事項に選択的に取り組むことが期待される。

ア サービスの充実

① 従業員等の教育及び研修の徹底

② マニュアルを超えた「おもてなしの心(気配り・目配り・心配り)」による温もりのあるサービスの提供

③ 回数券や家族券等の発行

④ 季節風呂(しょうぶ湯、ゆず湯、リンゴ湯又はハーブ湯等)等のサービス

⑤ 割引制度の実施

⑥ スタンプラリーの実施

⑦ 清涼飲料水や氷菓子等の販売

⑧ 冷水、お茶又はシャンプー等の無料サービス

⑨ 高齢者、障害者及び妊産婦等への介助

⑩ 身体障害者が同伴する身体障害者補助犬の待機場所やクレート(犬舎)の用意

⑪ 利用者との信頼関係の構築

⑫ 専門性を高めた高付加価値の提供

⑬ 看板サービスへのこだわり

⑭ 優秀な人材の獲得並びに若手従業員の育成、指導及び資質向上

⑮ 魅力ある職場作り(人と人の心のチームワーク)

⑯ 経営手法・熟練技能の効率的な伝承

⑰ 外国語表示の推進

イ 健康志向等に対応した取組

① 健康入浴法等の知識の普及

② 生活習慣病等の予防対策としての水中運動の推進

③ 生活習慣病患者等に対する入浴指導

④ 専門家による健康座談会の実施等

⑤ ランニング愛好家への対応

ウ 利用者のニーズやライフスタイルの変化等に対応した施設作り

① 清潔で入りやすく、誰もがくつろぎやすい施設の雰囲気作り

② BGM放送等による雰囲気作り

③ 個人のプライバシーを考慮した番台のロビー化

④ 親子又は子ども向け体験入浴の実施

⑤ 銭湯文化や入浴マナーの紹介及び啓発

⑥ 児童又は生徒の入浴体験学習への協力

⑦ 地域のイベント等に対する場所(脱衣場等)の提供

⑧ 訪日外国人旅行者への対応

(3) 施設及び設備の改善並びに業務改善等に関する事項

営業者は、施設及び設備の改善並びに業務改善等のため、以下の事項に取り組むことが期待される。

ア 安全で衛生的な施設となるような定期的な内外装の改装

イ 各施設の特性を踏まえた清潔な雰囲気の醸成

ウ 高齢者及び障害者等に配慮したバリアフリー対策の実施

エ 省エネルギー対応の空調設備、太陽光発電設備等の導入

オ 節電に資する人感センサー、LED照明、蓄電池設備等の導入

カ 都道府県指導センターなどが開催する生産性向上等を図るためのセミナー等への参加及び業務改善助成金等各種制度の活用

キ 受動喫煙の防止

ク サービスの高付加価値化及び生産性の向上

ケ 従業員の安全衛生の確保及び労働条件の改善

コ 環境保全の推進

サ 節電及び省エネルギーの推進

(4) 情報通信技術を利用した新規利用者の獲得及び利用者の確保に関する事項

営業者は、情報セキュリティの管理に留意しつつ、インターネット等の情報通信技術を効果的に活用する等、以下の事項に選択的に取り組むことが期待される。

ア インターネット等の活用による異業種との提携又は割引サービスの実施

イ ホームページの開設等、積極的な情報発信によるプロモーションの促進

ウ 広報チラシの配布

(5) 表示の適正化と苦情の適切な処理に関する事項

営業者は、施設外をはじめとして、利用者の見やすい場所に、営業時間、休業日、設備等、提供するサービス内容及び料金について明確に表示することにより、利用者の利便を図るとともに、利用者に対し入浴効果や正しい入浴マナー等の浴場に関する情報の提供に努めるものとする。

また、最近の国民の安全及び安心に対する意識の向上並びに消費者保護が一層求められてきていることから、営業者は利用者への真摯な対応が利用者の信頼確保につながることを認識し、利用者からの意見や苦情に対しては、誠意をもって対応することにより、問題の早急かつ円滑な解決に努めることが必要である。

(6) 人材育成及び自己啓発の推進に関する事項

浴場業においては、公衆浴場の持つ医学的効用や健康入浴法に関する知識を従業員に習得させ、健康入浴推進員の養成に努め、若手従業員の育成及び指導を図り、若者に魅力ある職場作りに努めることが必要である。

したがって、営業者は、従業員の資質の向上に関する情報を収集し、基礎的な接遇等に関する知識の習得を目指した職場内指導を充実するとともに、都道府県指導センターや組合等の実施する研修会及び講習会への積極的参加等、あらゆる機会を活用して従業員の資質の向上を図り、その能力を効果的に発揮できるよう努めるとともに、適正な労働条件の確保に努めることが期待される。

また、営業者は、後継者及び独立を希望する従業員が、経営、顧客管理及び従業員管理等の技能を取得できるよう、自己啓発を促すとともに、後継者及び従業員の人材育成に努めることが望まれる。

二 営業者に対する支援に関する事項

1 組合及び連合会による営業者の支援

組合及び連合会においては、営業者の自立的な経営改革を支援する都道府県指導センター等の関係機関との連携を密にし、次に掲げる事項を中心に積極的な支援に努めることが期待される。

また、支援に当たっては、関係機関等が作成する、営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等を効果的に活用すること、及び関係機関が開催する生産性向上等を推進するためのセミナー等に関して組合員に対する参加の促進等必要な協力を行うことが期待される。

(1) 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事項

営業者に対して衛生管理を徹底するための研修会及び講習会の開催、営業者及び従業員の衛生管理の手引の作成等による普及啓発並びに衛生管理体制の整備充実のために必要な支援に努めることが期待される。

(2) サービス、店舗及び設備並びに業務の効率化に関する事項

衛生水準の向上、経営マネジメントの合理化及び効率化、利用者の利益の増進等のため、サービス、店舗施設及び設備の改善並びに業務の効率化に関する指導、助言、情報提供、ICTの活用に係るサポート等必要な支援に努めることが期待される。

(3) 利用者の利益の増進及び商品の提供方法に関する事項

サービス内容の適正表示や営業者における接客手引及び作業手引の基本となるマニュアルの作成、苦情相談窓口の開設や苦情処理の対応に関するマニュアルの作成に努めること。

また、銭湯マップ等による組合員の施設紹介を進めるとともに、生活習慣病の予防及び改善等に資する知識や、入浴のストレス解消効果等、入浴に関する正しい知識の普及啓発に努めること。

さらに、スタンプラリーの実施や銭湯文化の周知など、一般公衆浴場の有用性を地域住民等に広くアピールする機会を増やすよう努めることが期待される。

さらに、関係機関との連携の下での、創業や事業承継における助言・相談の取組の推進が期待される。

(4) 経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事項

先駆的な経営事例等経営管理の合理化等に関する講習会及び研修会の開催、立地環境等経営環境に関する情報及び浴場業の将来の展望に関する情報の収集及び整理並びに営業者に対するこれらの情報提供に努めること。

(5) 経営課題に即した相談支援に関する事項

営業者が直面する様々な経営課題に対して、経営特別相談員による経営指導事業の周知に努めるとともに、これを金融面から補完する生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付制度の趣旨や活用方法の周知が期待される。

(6) 営業者及び従業員の技能の向上に関する事項

公衆浴場の持つ医学的効用や健康入浴法に関する知識及び基礎的な接遇等に関する研修会及び講習会の開催等教育研修制度の充実強化、健康入浴推進員の養成に努めることが期待される。

(7) 事業の共同化及び協業化に関する事項

事業の共同化及び協業化の企画立案及び実施に係る指導に努めることが期待される。

(8) 取引関係の改善に関する事項

設備業界や燃料業界等の関係業界の協力を得ることによる取引条件の合理的改善及び組合員等の経済的地位の向上に努めることが期待される。

(9) 従業員の福利の充実に関する事項

従業員の労働条件整備及び労働関係法令の遵守に関する助言、作業環境の改善及び健康管理充実(定期健康診断の実施等を含む。)のための支援、医療保険、年金保険及び労働保険の加入等に係る啓発、組合員等の大多数の利用に資する福利厚生の充実並びに共済等制度(退職金及び生命保険等をいう。)の整備及び強化に努めること。

さらに、男女共同参画社会の推進及び少子高齢化社会の進展を踏まえ、従業員の福利の充実に努めることが期待される。

(10) 事業の承継及び後継者育成支援に関する事項

営業者の高齢化が急激に進んでいることから、事業の円滑な承継に関するケーススタディ及び成功事例等の経営知識や各地域にある事業承継に関する相談機関及び最新の関連税制についての情報提供並びに後継者育成支援の促進を図るために必要な支援体制の整備に努めることが期待される。

2 行政施策及び政策金融による営業者の支援及び利用者の信頼の向上

(1) 都道府県指導センター

組合との連携を密にして、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等を効果的に活用した、営業者に対する経営改善の具体的指導及び助言等の支援

イ 利用者からの苦情及び要望の営業者への伝達

ウ 利用者の信頼の向上に向けた積極的な取組

エ 都道府県等及び特別区と連携した組合加入促進に向けた取組

オ 連合会及び都道府県等と連携した組合の振興計画の策定に対する指導及び支援

カ 生産性向上や業務改善を推進するためのセミナー等の開催

(2) 全国指導センター

都道府県指導センターの取組を推進するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等、営業者の経営改革の取組に役立つ情報の収集、整理及び情報提供

イ 危機管理マニュアルの作成

ウ 苦情処理マニュアルの作成

エ 効果測定の支援及び政策提言機能の強化

オ 公衆衛生情報の提供機能の強化

(3) 国及び都道府県等

浴場業に対する利用者の信頼の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めること。

ア 浴場に関する指導監督

イ 浴場に関する情報提供その他必要な支援

ウ 災害又は事故等の発生時における適時、適切な風評被害防止策の実施

エ 営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等の作成・更新及び各種支援策の周知

(4) 日本公庫

営業者の円滑な事業実施に資するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 営業者が利用しやすい融資の実施

イ 生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握、分析及び情報提供

ウ 組合等と連携した経営課題の解決に資するセミナーの開催及び各種印刷物の発行による情報提供

エ 災害時等における速やかな相談窓口の設置

オ 事業承継の円滑化に資する情報提供

第五 営業の振興に際し配慮すべき事項

浴場業においては、他の生活衛生関係営業と同様に、衛生水準の確保と経営の安定のみならず、営業者の社会的責任として環境の保全や省エネルギーの強化に努めるとともに、時代の要請である少子高齢化社会等への対応、禁煙等に関する対策、地域との共生、災害への対応及び従業員の賃金引上げに向けた対応、働き方・休み方改革への対応といった課題に応えていくことが要請される。こうした課題への対応は、個々の営業者が中心となって関係者の支援の下で行われることが必要であり、かつ適切に対応することを通じて、地域社会に確固たる位置付けを確保することが期待される。

一 「浴育」への対応

1 営業者に期待される役割

営業者は、入浴を通じて生涯、心身の健康をより育むことを目的とされている「浴育」について、民間の取組と連携して以下に掲げる事項に積極的に取り組むことが期待される。

(1) 入浴マナーの普及

(2) 安全入浴の普及の支援

2 組合及び連合会に期待される役割

効果的な「浴育」の実施方法についての研究の実施

3 日本公庫に期待される役割

融資の実施等により営業者を支援する。

二 少子高齢化社会等への対応

1 営業者に期待される役割

営業者は、高齢者、障害者及び一人暮らしの者並びに子育て世帯及び共働き世帯等が住み慣れた地域社会で安心かつ充実した日常生活を営むことができるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

(1) 高齢者、障害者、妊産婦や子供連れの顧客等に配慮した積極的なバリアフリー対策の実施

(2) 高齢者、障害者及び妊産婦等が安心して入浴できる環境の実現

(3) 障害者差別解消法の規定に基づく障害者への合理的配慮

(4) 受動喫煙の防止

(5) 従業員に対する教育及び研修の充実及び強化

(6) 子育て世帯、共働き世帯等が働きやすい職場環境の整備

(7) 地域社会とのつながりを強化する観点も含めた地域の高齢者、障害者及び女性等の積極的雇用の推進

2 組合及び連合会に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの顧客等の利便性を考慮した施設設計やサービス提供に係る研究の実施

3 日本公庫に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの顧客等の利用の円滑化を図るために必要な設備(バリアフリー化等)導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

三 地域との共生(地域コミュニティの再生及び強化(商店街の活性化))

1 営業者に期待される役割

(1) 地域の街づくりへの積極的な参加

(2) 「賑わい」や「つながり」を通じた豊かな人間関係(ソーシャル・キャピタル)の形成

(3) 共同ポイントサービス事業及びスタンプ事業の実施

(4) 地域の防犯、消防、防災、交通安全及び環境保護活動の推進に対する協力

(5) 暴力団排除等への対応

(6) 災害対応能力及び危機管理能力の維持向上

(7) 地震等の大規模災害が発生した場合における、地域住民への支援

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 地域の自治体等と連携して行う、社会活動の企画、指導及び援助ができる指導者の育成

(2) 業種を超えた相互協力の推進

(3) 地域における特色ある取組の支援

(4) 自治会、町内会、地区協議会、NPO及び大学等との連携活動の推進

(5) 地域・商店街役員への浴場業の若手経営者の登用

(6) 地域における事業承継の推進(承継マッチング支援)及び新規開業希望者の育成

(7) 地域、商店街活性化に資する組合活動事例の周知

3 日本公庫に期待される役割

きめ細かな相談、融資の実施等により営業者及び新規開業希望者を支援する。

四 環境の保全、省エネルギーの強化

1 営業者に期待される役割

(1) 省エネルギー対応の空調設備及び太陽光発電設備等の導入

(2) 節電に資する人感センター、不要時の消灯、空調機設定温度の見直し並びにLED照明装置及び熱電供給システム等の導入

(3) 廃棄物の最小化及び分別回収の実施

(4) 温室効果ガス排出の抑制

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 廃棄物の最小化及び分別回収の普及啓発

(2) 業種を超えた組合間の相互協力

3 日本公庫に期待される役割

省エネルギー設備導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知を図る。

五 禁煙等に関する対策

1 営業者に求められる役割

望まない受動喫煙の防止を図るため、以下の措置を講じることが求められる。

(1) 施設内の禁煙の徹底及び喫煙専用室等の設置

(2) 受動喫煙による健康影響が大きい子どもなど20歳未満の者、患者等への配慮

(3) 従業員に対する受動喫煙防止対策

2 組合及び連合会に期待される役割

効果的な受動喫煙防止対策に関する情報提供を行い、併せて制度周知を図る。

3 国及び都道府県等の役割

受動喫煙防止に関する制度周知や受動喫煙防止対策に有効な予算措置、金融措置等に関する情報提供を行う。

4 日本公庫に期待される役割

受動喫煙防止設備の導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

六 災害への対応と節電行動の徹底

我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっており、継続的な防災対策及び災害時の地域支援を含めた対応並びに節電行動への取組が期待される。

1 営業者に期待される役割(災害時は営業者自身の安全を確保した上で対応する。)

(1) 災害発生前段階における防災対策の実施及び災害対応能力の維持向上

(2) 地域における防災訓練への参加及び自店舗等での防災訓練の実施

(3) 近隣住民等の安否確認や被災状況の把握及び自治体等への情報提供

(4) 地震等の大規模災害が発生した場合における、地域住民への支援

(5) 被災した営業者のみならず営業者全体による相互扶助と連携の下での役割発揮

(6) 災害発生時における、被災営業者の営業再開を通じた被災者への支援及び地域コミュニティの復元

(7) 従業員及び利用者に対する節電啓発

(8) 中長期の節電に資する省エネルギー対応の設備の導入

(9) 節電を通じた経営の合理化

(10) 電力制約下における新たな需要(ビジネス機会)の取り込み

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 営業者及び地域並びに災害種別を想定した防災対策への支援

(2) 同業者による支え合い(太い「絆」で再強化)

(3) 災害発生時の被災者の避難誘導などを通じた帰宅困難者防止等への取組

(4) 被災した地域住民へのボランティアに関する呼びかけ

(5) 節電啓発や節電行動に対する支援

(6) 節電に資する共同利用施設(共同蓄電設備等)の設置

3 国及び都道府県等の役割

過去の災害を教訓とした防災対策や情報収集、広報の実施等、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める。

(1) 過去の災害を教訓とした緊急に実施する必要性が高く、即効性の高い防災、減災等の施策

(2) 節電啓発や節電行動の取組に対する支援

4 日本公庫に期待される役割

災害発生時には、被災した営業者に対し低利融資を実施し、きめ細やかな相談及び支援を行う。

七 最低賃金の引上げを踏まえた対応(生産性向上を除く。)

最低賃金については、政府の目標として「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が1,000円となることを目指す」ことが示されていることから、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める必要がある。

1 営業者に求められる役割

(1) 最低賃金の遵守

(2) 業務改善助成金及びキャリアアップ助成金等各種制度の必要に応じた活用

(3) 関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等への参加を通じた最低賃金制度の理解

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 最低賃金の制度周知

(2) 助成金の利用促進

助成金等各種制度や関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

(1) 最低賃金の周知

従業員等の最低賃金違反に関する相談窓口(労働基準監督署等)の周知を図る。

(2) 助成金の利用促進に向けた体制の整備

助成金等の申請に係る支援の周知や相談体制の整備を図る。

(3) 関係機関との連携によるセミナー等の開催

労働局等との連携により経営相談事業等を実施するほか、関係機関との連携により最低賃金に関するセミナー等を開催する。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した周知

(2) 営業許可等の際における窓口での個別周知

(3) 研修会等を通じた助成金制度の周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の賃金引上げや人材確保に必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

八 働き方・休み方改革に向けた対応

従業員がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる職場環境を作ることで人材の確保や生産性の向上が図られるよう、営業者には長時間労働の是正や雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、また、職場のハラスメント対策に必要な措置を図ることが求められる。

1 営業者に求められる役割

(1) 時間外労働の上限規制及び月60時間超の時間外割増賃金率の引上げへの対応による長時間労働の是正

(2) 年5日の年次有給休暇の確実な取得

(3) 雇用形態や就業形態に関わらない公正な待遇の確保

(4) 従業員に対する待遇に関する説明義務

(5) セクシュアルハラスメントやパワーハラスメント等職場のハラスメント対策

2 組合及び連合会に期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した制度周知

(2) 営業許可等の際における窓口での制度周知

(3) 研修会等を通じた制度周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善に取り組むために必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

改正文 (令和三年三月一八日厚生労働省告示第七九号) 抄

令和三年四月一日から適用する。ただし、この告示による改正後の飲食店営業(一般飲食業、中華料理業、料理業及び社交業)及び喫茶店営業の振興指針(平成二十九年厚生労働省告示第六十八号)、理容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十七号)、美容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十八号)、クリーニング業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十九号)、飲食店営業(すし店)の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第六十号)、興行場営業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十一号)、旅館業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十二号)、浴場業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十三号)及び飲食店営業(めん類)の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十四号)の規定は、この告示の告示の日以後に行われた生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律施行規則(昭和三十二年厚生省令第三十七号)第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請について適用し、同日前に行われた同令第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請については、なお従前の例による。