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○興行場営業の振興指針

(令和二年三月五日)

(厚生労働省告示第五十一号)

生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和三十二年法律第百六十四号)第五十六条の二第一項の規定に基づき、興行場営業の振興指針(平成二十六年厚生労働省告示第七十六号)の全部を次のように改正し、令和二年四月一日から適用する。

興行場営業の振興指針

興行場営業の営業者(以下「営業者」という。)が、興行場法(昭和23年法律第137号)等の衛生規制に的確に対応しつつ、現下の諸課題にも適切に対応し、経営の安定及び改善を図ることは、国民生活の向上に資するものである。

このため、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「生衛法」という。)第56条の2第1項に基づき、興行場営業の振興指針を定めてきたところであるが、今般、営業者、生活衛生同業組合(生活衛生同業小組合を含む。以下「組合」という。)等の事業の実施状況等を踏まえ、営業者、組合等の具体的活用に資するよう、実践的かつ戦略的な指針として改正を行った。

今後、営業者、組合等において本指針が十分に活用されることを期待するとともに、新たな衛生上の課題や経済社会情勢の変化、営業者及び利用者等のニーズを反映して、適時かつ適切に指針を改定するものとする。

なお、現時点においては、興行場の多くを映画館が占めているため、今回の指針では特に映画館を例に記述することとする。

第一 興行場営業を取り巻く状況

一 興行場営業の営業者の動向

興行場営業は、国民生活における身近な娯楽を提供するものとして、その地位を保ってきたところである。その施設数及び入場者数は、昭和30年代半ばのピーク時から平成7、8年頃にかけて、娯楽の多様化、テレビ、家庭用ビデオ、パーソナルコンピュータ、家庭用ゲーム機、衛星放送等の普及により、長期間減少傾向にあったが、近年、邦画を中心とした話題作の増加、郊外地域を中心とした複数のスクリーンを有する映画館(以下「シネマコンプレックス」という。)の増加等により、スクリーン数は、平成20年末の3,359スクリーンから平成30年末には3,561スクリーンと増加傾向にある。スクリーン数の増加は、シネマコンプレックスの増加によるところが大きく、5スクリーン以上を有するシネマコンプレックスのスクリーン数は10年前と比較して491スクリーンの増となっており、全スクリーン数の88%を占めるまでに至っている(一般社団法人日本映画製作者連盟の統計による。)。他方、興行場(映画館)の許可を受けた施設数は、1,475施設(平成29年度末)であり、10年前と比較して286施設の減となっている(厚生労働省『衛生行政報告例』による)。

経営上の課題としては(複数回答)、「人件費の上昇」が49.8%(前回振興指針では記述なし)と最も多くあげており、次いで、「人手不足・求人難」が44.9%(前回振興指針では記述なし)、「施設・設備の老朽化」が35.2%(前回振興改正では34.1%)、「光熱費の上昇」が30.0%(前回振興指針では27.2%)、「他経費の上昇」が26.8%(前回振興指針では記述なし)となっている(厚生労働省『生活衛生関係営業経営実態調査』による。)。

また、日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)が行った『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和元年7~9月期)』において、興行場営業の経営上の問題点は、多い順に「店舗施設の狭隘・老朽化」(54.5%)、「従業員の確保難(36.4%)」、「顧客数の減少(30.9%)」となっている。

従業員の過不足感としては、「適正」が54.0%となっている一方で、「不足」が44.0%と約4割を占めている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査特別調査(平成30年10~12月期)』による。)。

また、令和元年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID―19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)の感染拡大は社会経済に大きな影響を与え、我が国の興行場営業も多大な影響を受けたところである。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う事業への影響について、興行場営業(映画館)の営業者で、売上が減少したと回答した者は98.2%で、その売上の減少幅(令和2年2~5月の対前年比)は、「20%未満」が0.0%、「20%以上50%未満」が8.9%、「50%以上80%未満」が39.3%、「80%以上」が51.8%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による。)。

二 消費動向

1世帯あたり(2人以上の世帯)の映画・演劇等入場料の支出(平成29年)は6,447円で、10年前と比較して204円の増となっている(総務省『家計調査年報』による。)。

映画館入場者数(平成30年)は169,210千人で、10年前と比較して8,719千人の増となっている(一般社団法人日本映画製作者連盟の統計による。)。

また、総務省『平成28年社会生活基本調査』によれば、映画館以外での映画鑑賞をしている者は男性が52.6%、女性が51.6%、映画館での映画鑑賞をしている者は男性が36.8%、女性が42.2%となっている。

三 営業者の考える今後の経営方針

営業者の考える今後の経営方針としては(複数回答)、「接客サービスの充実」が58.9%(前回振興指針では47.2%)、「広告・宣伝等の強化」が48.8%(前回振興指針では32.1%)、「施設・設備の改装」が47.7%(前回振興指針では35.4%)、「飲食メニューの工夫」が46.7%(前回振興指針では27.6%)、「新しい映像技術の導入」が28.6%(前回振興指針では52.8%)、「営業時間の変更」が27.2%(前回振興指針では11.4%)、「感謝デー等の行事の開催」が13.2%(前回振興指針では15.0%)となっている(厚生労働省『生活衛生関係営業経営実態調査』による。)。

また、興行場営業(映画館)を営む者が、新型コロナウイルス感染症収束後に予定している取組としては、「広報活動の強化」が57.9%、次いで「新たな販売方法の開拓」が36.8%、「新商品、新メニューの開発」が24.6%となっている一方、「特にない」が12.3%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による。)。

第二 前期の振興計画の実施状況

都道府県別に設立された興行場営業の組合(令和元年12月末現在で45都道府県で設立)においては、前期の興行場営業の振興指針(平成26年厚生労働省告示第76号)を踏まえ、振興計画を策定、実施しているところであるが、当該振興計画について、平成30年度末に実施した自己評価は次表のとおりである。

表 振興計画の実施状況についての各組合による自己評価

(単位:%)


事業名

達成

概ね達成

主な事業

1

衛生に関する知識及び意識の向上に関する事業

36%

46%

・衛生管理等に関する講習会の開催

・衛生管理マニュアル作成・配布

2

施設及び設備並びにサービスの改善に関する事業

35%

48%

・改装やデジタル化対応の設備の導入投資

3

利用者利益の増進に関する事業

83%

17%

・各種マニュアルの作成

・中高生等の映画教室の開催

・映画サービスデーの実施

4

経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事業

33%

52%

・経営管理講習会、経営相談会の開催

・映画盗撮防止セミナーの開催

5

営業者及び従業員の技能の向上に関する事業

32%

43%

・講習会の開催

・接客マニュアルの作成・配布

6

配給会社等との良好な関係の構築に関する事業

64%

25%

・関係業界との情報交換会の開催

7

事業の共同化及び協業化に関する事業

38%

42%

・共同購入・共同広報の実施

8

従業員の福祉の充実に関する事業

50%

32%

・永年勤続者・優良従業員の表彰

・定期健康診断の実施

9

事業の承継及び後継者支援に関する事業

37%

41%

・後継者育成支援のための研修会等の開催

・青年部員の活動支援

10

環境の保全及び省エネルギー強化に関する事業

36%

50%

・省エネ機器の導入

11

少子高齢化社会への対応に関する事業

59%

24%

・シニア料金制度の実施指導

12

地域との共生に関する事業

56%

22%

・地域イベントへの参加

・出張上映会の実施

13

東日本大震災への対応と節電行動の徹底に関する事業

29%

36%

・被災地域での映画上映会の実施

・不要時の消灯等、節電の啓発

(注) 組合からの実施状況報告を基に作成。

なお、国庫補助金としての予算措置(以下「予算措置」という。)については、平成23年度より、外部評価の導入を通じた効果測定の検証やPDCAサイクル(事業を継続的に改善するため、Plan(計画)―Do(実施)―Check(評価)―Act(改善)の段階を繰り返すことをいう。)の確立を目的として、「生活衛生関係営業の指針に関する検討会」の下に設けられた「生活衛生関係営業対策事業費補助金審査・評価会」において、補助対象となる事業の審査から評価まで一貫して行う等、必要な見直し措置を講じている。

このため、組合及び生活衛生同業組合連合会(以下「連合会」という。)等においても、振興計画に基づき事業を実施する際は、事業目標及び成果目標を可能な限り明確化した上で、達成状況についても評価を行う必要がある。

当該振興計画等の実現に向けて、組合、連合会等においては、本指針及び振興計画の内容について広報を行い、組合未加入営業者への加入勧誘及び組合未結成地域の営業者への組合結成の支援を図ることが期待されている。

組合への加入、非加入は営業者の任意であるが、生衛法の趣旨及び組合の活動内容等を詳しく知らない新規開設者等の営業者がいることも考えられるため、都道府県、保健所設置市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、営業者による営業の許可申請又は届出等の際に、営業者に対して、生衛法の趣旨並びに関係する組合の活動内容、所在地、連絡先等について情報提供を行う取組の実施が求められる。

第三 興行場営業の振興の目標に関する事項

一 営業者の直面する課題と地域社会から期待される役割

興行場営業は、娯楽・文化の身近な担い手として、国民生活を豊かにする上で欠かせない役割を果たしてきた。映画は、鑑る者に楽しさはもとより、感動や安らぎ、興味、関心を喚起し、学習の機会を提供するなど、人生に潤いをもたらし、豊かにさせるものといえる。こうした重要な役割を興行場営業が引き続き担い、国民生活の豊かさの向上に貢献できるよう、経営環境や国民のニーズ、衛生課題に適切に対応しつつ、各々の営業者の経営戦略に基づき、事業の安定と活力ある発展を図ることが求められる。

特に、娯楽の多様化、家庭用DVD・ブルーレイ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、家庭用ゲーム機、衛星放送、都市型ケーブルテレビ等が普及する中で、他の娯楽との競争に打ち克ち、映画を発展させるためには、業界を挙げた対応が求められる。

また、少子高齢化が進む中で、地域で身近で手軽な娯楽サービスとして年齢や障害の有無に関わらず、全ての国民が楽しめる拠点としての機能を積極的に担っていくことが期待される。特に、単独館の多くは中心市街地に立地しており、中心市街地の娯楽機能や賑わいの維持の観点からもその活性化が重要であり、地域のニーズを踏まえ独自性を発揮するなどの対応が期待される。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う売上減や経営維持、雇用確保等に対応するため、日本公庫の融資や国・自治体の補助金・助成制度を積極的に活用して早期に業績回復を図る必要がある。

二 今後5年間における営業の振興の目標

1 衛生問題への対応

興行場営業は、一時に不特定多数の利用者を密閉性の高い施設に長時間収容して行うという営業形態上の特殊性を有している。利用者の安全衛生を確保するために、適切な空調設備の整備保全、清掃の励行や洗面所等汚染されやすい区画の消毒等清潔で安全な環境の維持に努めることは、営業者の責務である。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策が求められている。

また、病原性が高い新型インフルエンザや同様に危険性のある新感染症が発生した場合に、国民生活・経済への影響を最小化する観点から、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づく使用制限等の要請に適切かつ迅速に対応することが求められる。

また、施設によってはホットドッグ等の食品を取り扱う施設もあることから、食中毒の発生防止策を適切に講じるとともに、食をとりまく環境の変化等に対応し食品の安全を確保するため食品衛生法(昭和22年法律第233号)が改正され(平成30年法律第46号)、HACCPの考え方を取り入れた営業者による衛生管理、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止等に必要な措置等が盛り込まれており、その確実な実施が求められる。

衛生課題は、営業者の地道な取組が中心となる課題と、新型インフルエンザへの対応のように、営業者にとどまらず、保健所等衛生関係機関や都道府県生活衛生営業指導センター(以下「都道府県指導センター」という。)等との連携を密にして対応すべき課題とに大別される。

衛生問題は、営業者が一定水準の衛生管理を行っている場合、通常、頻繁に発生するものではないため、発生防止に必要な費用及び手間について判断しにくい特質がある。しかし、一旦、衛生上の問題が発生した場合には、多くの利用者に被害が及ぶことはもとより、営業自体の継続が困難になる可能性があることから、日頃からの地道な衛生管理の取組が重要である。

また、こうした衛生問題は、個々の営業者の問題にとどまらず、業界全体に対する信頼の失墜、国民の健康被害やこれに伴う社会的影響をもたらすことにもつながることから、組合及び連合会には、組合員、非組合員双方の営業者が自覚と責任感を持ち、衛生水準の向上が図られるよう、継続的に知識及び意識向上に資する普及啓発や適切な指導及び支援に努めることが求められる。

とりわけ、零細な営業者は重要な公衆衛生情報の把握が困難となる場合が考えられるため、これら営業者に対する組合加入の促進や公衆衛生情報の提供が円滑に行われることが期待される。

2 経営方針の決定と利用者及び地域社会への貢献

映画は古くから国民の間に定着した代表的な娯楽であるが、家庭でも楽しめる娯楽が増加するなど、娯楽の多様化が進んでいる。映画の入場者数は、ヒット作品の有無など映画作品に大きく左右されるが、営業者としても、利用者のニーズを的確に把握し、利用者が望む映画を快適な環境で鑑賞できるような魅力的な施設づくりを進める必要がある。

(1) 消費者ニーズの把握と創意工夫による経営展開

映画人口の底上げを図るため、家庭では体験できない映画館ならではの大画面・高音質・臨場感を他の観客と同時に共有できるといった映画館の魅力を消費者に訴求していくことが業界の課題といえる。

このため、年齢、日時、対象者に応じた戦略的な割引制度や会員カードの発行、各種イベントの実施などを通じて、映画館の魅力を伝える機会を創出することが重要である。特に、今後、高齢化の進展により、シニア層向けのサービス需要の拡がりが期待されることから、シニア層のニーズに応じたサービスの展開が重要となる。また、若い世代を取り込むための工夫や、子育て世帯など新たな顧客層の開拓を進めていくことも必要である。さらに、映画紹介、独自の上映企画の企画、上映リクエストの多い映画の上映など、創意工夫を活かし、地域の映画ファンを増やしていくような取組も期待される。

さらに、収益源の多様化の観点から、ODS(アザー・デジタル・スタッフ)と呼ばれるスポーツや演劇、コンサートのライブ中継など映画作品以外のコンテンツ上映を拡大していくことも考えられる。また、結婚披露宴などイベント事業に映画館を有効に活用することも、地域の人々に映画館の魅力を伝える機会にもつながるものと期待される。

こうした新たなサービスの構築は、映画館の営業はもとより、映画鑑賞前後の消費や地域の賑わいにつながるなど、地域の活性化にも貢献することが期待される。

また、映画館におけるデジタル化への設備投資は進んでおり、現在、概ね9割の映画館でデジタル化が行われている。デジタル化は経営の合理化に資することはもとより、映画館の機能の多様化の面でも有効であり、更なる推進が重要である。

さらに、建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)の一部改正(平成17年法律第120号)により、興行場をはじめ不特定多数の者が利用する建築物について耐震化の対応が求められている。

また、映画の盗撮の防止に関する法律(平成19年法律第65号)(以下「映画盗撮防止法」という。)により、映画館における録音・録画行為は著作権の侵害となり違法であることについて、利用者へ周知を図っていく必要がある。

(2) 高齢者、障害者及び子育て世帯等への配慮

高齢化が進展する中で、シニア層向けのサービスの提供は、単に売上げを伸ばすだけでなく、地域社会が抱える問題の課題解決や地域経済の活性化にも貢献するものである。

また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)において、障害者の社会参加の推進がますます求められていることを踏まえ、専門性や独自のこだわり等の特性を活かしつつ、高齢者や障害者等が利用しやすい設備の整備など、これらのニーズにきめ細かに応じたサービスの提供を積極的に行っていくことが求められているとともに、同法において、民間事業者は、障害者に対し合理的な配慮を行うよう努めなければならない、とされていることから、ソフト、ハード両面におけるバリアフリー化及びユニバーサルデザイン化の取組を進める必要がある。

また、子育て世帯が安心・安全にサービスを利用できるための配慮も合わせて求められる。

(3) 省エネルギーへの対応

節電などの省エネルギーによる経営の合理化、コスト削減、環境保全に資するため、不要時の消灯や照明ランプの間引き、LED照明装置やエネルギー効率の高い空調設備等の導入等を推進することが期待される。

(4) 訪日・在留外国人への配慮

訪日外国人旅行者の急増に加え、外国人労働者や在留外国人も増加していることから、興行場営業においても、外国語表記の充実や外国人とのコミュニケーション能力の向上、キャッシュレス決済等の導入を図ることが求められる。

(5) 受動喫煙防止への対応

受動喫煙(人が他人の喫煙によりたばこから発生した煙にさらされること)については、健康に悪影響を与えることが科学的に明らかにされており、国際的に見ても、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の締結国として、国民の健康を保護するために受動喫煙防止を推進することが求められている。

そのため、受動喫煙による健康への悪影響をなくし、国民・労働者の健康の増進を図る観点から、健康増進法(平成14年法律第103号)の一部改正(平成30年法律第78号)及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)により、望まない受動喫煙が生じないよう、多数の者が利用する施設の管理者や営業者は受動喫煙を防止するための措置を講じることとされており、興行場営業においても、受動喫煙防止の強化を図り、その実効性を高めることが求められる。

3 税制及び融資の支援措置

組合又は組合員は、生活衛生関係営業の支援等の一つとして、税制優遇措置及び日本公庫を通した低利融資を受ける仕組みがある。

税制優遇措置については、組合が共同利用施設を取得した場合の特別償却制度が設けられており、組合において共同研修施設の建設、共同蓄電設備等の購入時や組合の会館を建て替える際などに活用することができる。

融資については、対象設備及び運転資金について、振興計画を策定している組合の組合員である営業者が借りた場合は、組合員でない営業者が借りる場合よりも低利の融資を受けることができる。また、各都道府県の組合が作成した振興計画に基づき、一定の会計書類を備えている営業者が所定の事業計画を作成して設備資金及び運転資金を借りた場合には、さらに低利の融資を受けることができる振興事業促進支援融資制度が設けられており、特に設備投資を検討する営業者には、積極的な活用が期待される。

加えて、組合の経営指導を受けている小規模事業者においては、低利かつ無担保・無保証で融資を受けることができる生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付制度が設けられており、積極的な活用が期待される。

三 関係機関に期待される役割

1 組合及び連合会に期待される役割

組合は、公衆衛生の向上及び利用者の利益の増進に資する目的で、組合員たる営業者の営業の振興を図るための振興計画を策定することができる。組合には、地域の実情に応じ、適切な振興計画を策定することが求められる。

組合及び連合会には、予算措置や独自の財源を活用して、営業者の直面する衛生問題及び経営課題に対する適切な支援事業を実施することが期待される。

事業の実施に際しては、有効性及び効率性(費用対効果)の観点から、計画期間に得られる成果目標を明確にしながら事業の企画立案及び実施を行い、得られた成果については適切に効果測定する等、事業の適切かつ効果的な実施に努めることが求められる。

また、事業効果を最大限発揮し事業成果を広く国民や社会に還元できるよう、都道府県指導センター、保健所等衛生関係行政機関、日本公庫支店等との連携及び調整を行うことが期待される。

2 都道府県等、都道府県指導センター及び日本公庫に期待される役割

営業許可申請等各種申請や届出、研修会、融資相談などの様々な機会を捉え、新規営業者をはじめとする組合未加入の事業者に対し、組合に関する情報提供を行うとともに組合活動の活性化のための取組等を積極的に行うことが期待される。

また、多くの営業者が経営基盤が脆弱な中小零細営業者であることに鑑み、都道府県指導センター及び日本公庫において、組合と連携しつつ、営業者へのきめ細かな相談、指導その他必要な支援等を行い、予算措置、融資による金融措置(以下「金融措置」という。)及び税制優遇措置等の有効的な活用を図ることが期待される。

とりわけ、金融措置については、審査及び決定を行う日本公庫において営業者が利用しやすい融資の実施、生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握及び分析に努め、関係団体に情報提供するとともに、日本公庫と都道府県指導センターが協力して、融資手続や事業計画の作成に不慣れな営業者への支援の観点から、融資に係るきめ細かな相談及び融資手続の簡素化を行うことが期待される。低利融資制度については、各々の営業者の事業計画作成が前提とされることから、本指針の内容を踏まえ、営業者の戦略性を引き出す形での指導を行うことが求められる。

加えて、都道府県指導センターにおいて、組合が行う生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付に係る審査を代行するなど、金融措置の利用の促進を図ることが期待される。

3 国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センターに期待される役割

国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)は、公衆衛生の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、都道府県等及び連合会と適切に連携を図り、信頼性の高い情報の発信及び的確な政策ニーズの把握等を行う必要がある。また、予算措置、金融措置及び税制優遇措置を中心とする政策支援措置については、営業者の衛生水準の確保及び経営の安定に最大限の効果が発揮できるよう、安定的に所要の措置を講じるとともに、制度の活性化に向けた不断の改革の取組が必要である。

国は都道府県等に対し、営業許可申請等各種申請や届出等の機会に組合未加入の営業者への組合に関する情報提供ならびに組合活動の活性化のための取組等を求めるものとする。

第四 興行場営業の振興の目標を達成するために必要な事項

興行場営業の目標を達成するために必要な事項としては、次に掲げるように多岐にわたるが、営業者においては、衛生水準の向上等のために必須で取り組むべき事項と、戦略的経営を推進するために選択的に取り組むべき事項の区別を行うことで、課題解決と継続的な成長を可能にし、国民生活の向上に貢献することが期待される。

また、組合及び連合会においては、組合員である営業者等に対する指導及び支援並びに利用者の興行場営業への信頼向上に資する事業の計画的な推進が求められる。

このために必要となる具体的取組としては、次に掲げるとおりである。

一 営業者の取組

1 衛生水準の向上に関する事項

営業者は、シックハウス等室内の化学物質による健康への影響についての関心の高まりや新たな感染症の発生状況等に配慮しつつ、公衆衛生の見地からの対策を講じることを要請されている。このため、自館の営業形態、施設及び設備等に応じた、快適な温度及び空気環境の確保、トイレ等の清掃の徹底、衛生教育の充実による従業員の資質の向上等衛生水準の維持向上のためのサービスの充実・強化を図り、利用者が清潔かつ衛生的な環境で快適に映画を楽しめるよう衛生管理に努めるものとする。特に最近、新型インフルエンザの発生が危惧されていることから、営業者自らが、従業員に対し衛生管理に関する模範を示すとともに、従業員の健康管理に十分留意し、従業員に対する衛生教育及び監督指導に当たることが必要である。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策を行う必要がある。

また、営業者は、利用者が信頼し、安心できる商品を提供するため、店舗の衛生管理、従業員の清潔な着衣の使用、手洗いの励行等により食中毒等食品衛生上の問題が発生しないよう努めるとともに、HACCPに沿った衛生管理を行う必要がある。

さらに、営業者は、消防法(昭和23年法律第186号)等の関係法令を踏まえた非常口表示等の措置を講じ、従業員の安全教育の徹底を図るとともに、地域との連携を密にした防災・避難対策や上映前の入場者に対する適切な情報提供を行うことが必要である。

2 経営課題への対処に関する事項

個別の経営課題への対処については、営業者の自立的な取組が前提であるが、営業を通じて娯楽を提供し、国民生活の向上に貢献する観点から、営業者においては、次に掲げる事項を念頭に置き、経営改革に積極的に取り組むことが期待される。

特に、地方都市の単独館では、営業者が変わることはほとんどないため、経営手法が固定的になりやすい面があるが、シネマコンプレックスとの間で広域的な競争のもと厳しい競争にあることから、以下の事項も積極的に採り入れ、地域の実情に応じた方策を検討することが期待される。

(1) 経営方針の明確化及び独自性の発揮に関する事項

現在置かれている経営環境や市場を十分に把握、分析し、自館や地域の特性を踏まえ、強みを見出し、経営方針を明確化し、自館の付加価値や独自性を高めていくとともに、経営管理の合理化及び効率化を図ることが必要である。

ア 自館の立地条件、顧客層、資本力、経営能力等の経営上の特質の把握

イ 周辺競合館に関する情報収集と比較

ウ ターゲットとする顧客層の特定

エ 自館のコンセプト及び経営戦略の明確化

オ 多様な顧客層の開拓・周知のための企画

カ 飲食等の附帯的サービスの強化

キ 自館の有効活用による収益源の多様化

ク 地域の飲食店等との提携

ケ 若手人材の活用による経営手法の開拓

コ 顧客や地域のニーズに沿った上映時間の見直し

サ 都道府県指導センター等の経営指導機関による経営診断の積極的活用

(2) サービスの見直し及び向上に関する事項

利用者のニーズやライフスタイルの変化に的確に対応し、利用者が安心して利用できるよう、自館の魅力を増し、顧客の満足度を向上させるとともに、新たな顧客を獲得することが重要であることから、以下の事項を選択的に取り組むことが期待される。

ア 映画紹介イベントや交流会の開催など映画ファンの拡大

イ 年齢、日時、対象者に応じた割引制度の実施

ウ 会員カードの発行

エ スポーツや演劇、コンサートのライブ中継など映画作品以外のコンテンツの上映

オ 結婚披露宴などイベント事業の展開

カ 上映リクエストの多い映画の上映

キ 関連書籍、DVD、ブルーレイ、キャラクターグッズ等の関連物品の販売

ク 喫茶、売店コーナー等附帯事業の充実

ケ 子育て世帯など新たな顧客層の開拓のための独自サービスの実施

コ 地域の飲食店等と提携したサービスの提供

サ 利用者のアンケート箱の設置などによる利用者の要望の調査

シ 優秀な人材の獲得、若手従業員の育成・指導、資質向上

ス 魅力ある職場づくり(人と人の心のチームワーク)

セ ホームページの開設等情報通信技術を活用した積極的な情報発信

ソ 地域のケーブルテレビ等を活用した広告宣伝

タ クレジットカード決済、電子決済の導入・普及

(3) 施設及び設備の改善並びに業務改善等に関する事項

営業者は、利用者が清潔かつ衛生的な環境で快適に映画を楽しめるよう衛生管理に努めるとともに、近年の省エネルギー及び節電の要請やバリアフリーの視点を踏まえた施設及び設備の改善並びに業務改善等を図るため、以下の事項に取り組むことが期待される。

ア 清潔で魅力的な施設に向けた定期的な内外装の改装

イ 快適な椅子の設置

ウ 映像・音響設備の改善

エ デジタル化への対応

オ 3D(立体映画)上映対応

カ 施設の耐震化

キ 高齢者、障害者等に配慮したバリアフリー対策の実施

ク バリアフリー映画への対応

ケ 利用者の安全衛生及び従業者の労働安全衛生の観点から施設の整備・改善

コ 節電・省エネルギーの推進

サ 経営の合理化・効率化のための改善

シ 都道府県指導センターなどが開催する生産性向上等を図るためのセミナー等への参加及び業務改善助成金等各種制度の活用

(4) 人材育成及び自己啓発の推進に関する事項

従業員の企画、顧客管理、接客等の技術の向上、映写技師の確保等を図るため、組合等の研修会、講習会等も活用しつつ、その資質の向上を図るとともに、適切な労働条件や健康管理を図る必要がある。

二 営業者に対する支援に関する事項

1 組合及び連合会による営業者の支援

組合及び連合会においては、営業者の自立的な経営改革を支援する都道府県指導センター等の関係機関との連携を密にし、次に掲げる事項を中心に積極的な支援に努めることが期待される。

また、支援に当たっては、関係機関等が作成する、営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等を効果的に活用すること、及び関係機関が開催する生産性向上等を推進するためのセミナー等に関して組合員に対する参加の促進等必要な協力を行うことが期待される。

(1) 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事項

営業者に対して衛生管理を徹底するための研修会及び講習会の開催、衛生管理に関するパンフレット及びHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を推進するための手引書の作成等に係る指導及び助言に努めることが期待される。

(2) サービス、施設及び設備の改善並びに業務の効率化に関する事項

衛生水準の向上、経営マネジメントの合理化及び効率化、消費者の利益の増進等のため、サービス、施設及び設備の改善並びに業務の効率化に関する指導、助言、情報提供、ICTの活用に係るサポート等、必要な支援に努めることが期待される。

また、高齢者、障害者等の利便性を考慮した施設の設計やサービスの提供等について研究を行い、その成果の普及に努めることが期待される。

(3) 利用者利益の増進及び商品の提供方法に関する事項

利用者のニーズの多様化に応えるために必要な新技術の研究、催事の開催等利用者に対する映画館営業に関する啓発活動、共通利用ができる映画鑑賞券の発行の検討並びに利用者の動向や意識を把握するための市場調査及び映画制作会社、映画配給会社等関連業界に対する当該情報の提供に努めるとともに、国民に対して映画館における映画鑑賞の魅力を宣伝することに努めることが期待される。

(4) 経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事項

先駆的な経営事例等経営管理の合理化及び効率化に必要な情報、地域的な経営環境条件に関する情報及び業界の将来の展望に関する情報の収集及び整理並びに営業者に対するこれらの情報提供に努めるものとする。さらに、関係機関との連携の下で、創業や事業承継における助言・相談の取組の推進が期待される。

また、映画盗撮防止法の施行により映画館における録音・録画行為は著作権の侵害となり禁止されたことに伴う利用者への周知方法等について営業者に情報提供するとともに、国民に対し映画盗撮防止法の趣旨の伝達に努めるものとする。

さらに、映画産業のデジタル化に伴うデジタルシネマへの移行について、情報提供等による支援に努めることが期待される。

(5) 経営課題に即した相談支援に関する事項

営業者が直面する様々な経営課題に対して、経営特別相談員による経営指導事業の周知に努めるとともに、これを金融面から補完する生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付制度の趣旨や活用方法の周知が期待される。

(6) 営業者及び従業員の技能の向上に関する事項

営業者の特質に応じて作成する接客マニュアルの作成の指導助言に努めることが期待される。

(7) 事業の共同化及び協業化に関する事項

事業の共同化及び協業化の企画立案並びに実施に係る指導に努めることが期待される。

(8) 配給会社等取引関係との良好な関係の構築に関する事項

単独館が、配給制度、割引制度等について、配給会社等との間で良好な関係を築くために行う情報収集及び連絡調整の支援に努めることが期待される。

(9) 従業員の福利の充実に関する事項

従業員の労働条件整備及び労働関係法令の遵守に関する助言、作業環境の改善及び健康管理充実(定期健康診断の実施等を含む。)のための支援、医療保険、年金保険及び労働保険の加入等に係る啓発、組合員等の大多数の利用に資する福利厚生の充実並びに共済等制度(退職金、生命保険等をいう。)の整備及び強化に努めるものとする。

さらに、男女共同参画社会の推進及び少子高齢化社会の進展を踏まえ、従業員の福利の充実に努めることが期待される。

(10) 事業の承継及び後継者育成支援に関する事項

営業者の高齢化が急激に進んでいることから、事業の円滑な承継に関するケーススタディ及び成功事例等の経営知識や各地域にある事業承継に関する相談機関及び最新の関連税制についての情報提供並びに後継者育成支援の促進を図るために必要な支援体制の整備に努めることが期待される。

2 行政施策及び政策金融による営業者の支援及び消費者の信頼の向上

(1) 都道府県指導センター

組合との連携を密にして、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等を効果的に活用した、営業者に対する経営改善の具体的指導、助言等の支援

イ 利用者からの苦情及び要望の営業者への伝達

ウ 利用者の信頼の向上に向けた積極的な取組

エ 都道府県等と連携した組合加入促進に向けた取組

オ 連合会及び都道府県等と連携した振興計画を未策定の組合に対する指導・支援

カ 生産性向上や業務改善を推進するためのセミナー等の開催

(2) 全国指導センター

都道府県指導センターの取組を推進するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等、営業者の経営改革の取組に役立つ情報の収集、整理及び情報提供

イ 危機管理マニュアルの作成

ウ 苦情処理マニュアルの作成

エ 効果測定の支援及び政策提言機能の強化

オ 公衆衛生情報の提供機能の強化

(3) 国及び都道府県等

興行場営業に対する利用者の信頼の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める。

ア 興行場に関する指導監督

イ 興行場に関する情報提供その他必要な支援

ウ 災害又は事故、新型インフルエンザ発生時等における適時、適切な対策、風評被害防止策の実施

エ 営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等の作成・更新及び各種支援策の周知

(4) 日本公庫

営業者の円滑な事業実施に資するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 営業者が利用しやすい融資の実施

イ 生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握、分析及び情報提供

ウ 組合等と連携した経営課題の解決に資するセミナーの開催及び各種印刷物の発行による情報提供

エ 災害時等における速やかな相談窓口の設置

オ 事業承継の円滑化に資する情報提供

第五 営業の振興に際し配慮すべき事項

興行場営業においては、他の生活衛生関係営業と同様に、衛生水準の確保と経営の安定のみならず、営業者の社会的責任として環境の保全や省エネルギーの強化に努めるとともに、時代の要請である少子高齢化社会等への対応、禁煙等に関する対策、地域との共生、災害への対応及び従業員の賃金引上げに向けた対応、働き方・休み方改革への対応といった課題に応えていくことが要請される。こうした課題への対応は、個々の営業者が中心となって関係者の支援の下で行われることが必要であり、かつ適切に対応することを通じて、地域社会に確固たる位置付けを確保することが期待される。

一 少子高齢化社会等への対応

1 営業者に期待される役割

営業者は、高齢者、障害者、一人暮らしの者、妊産婦、子育て世帯及び共働き世帯等が住み慣れた地域社会で安心かつ充実した日常生活を営むことができるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

(1) 高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの利用者等に配慮した積極的なバリアフリー対策の実施

(2) 車椅子用の鑑賞スペースの確保

(3) バリアフリー映画の普及に向けた取組

(4) 託児施設との連携

(5) 授乳室やベビーチェアの設置

(6) 障害者差別解消法の規定に基づく障害者への合理的配慮

(7) 従業員に対する教育及び研修の充実・強化

(8) 子育て世帯、共働き世帯等が働きやすい職場環境の整備

(9) 地域社会とのつながりを強化する観点も含めた地域の高齢者・障害者等の積極的雇用の推進

(10) 受動喫煙防止への対応

(11) 高齢者、障害者、妊産婦等への優しい環境の実現

2 組合及び連合会に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの利用者等の利便性を考慮した施設設計やサービス提供に係る研究を実施する。

3 日本公庫に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの利用者等の利用の円滑化を図るために必要な設備(バリアフリー化等)導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

二 地域との共生(地域コミュニティの再生及び強化(商店街の活性化))

1 営業者に期待される役割

営業者は、地域住民に対して興行場営業の存在、提供する商品及びサービスの内容並びに営業の社会的役割及び意義をアピールするとともに、新たなニーズに対応し、地域のセーフティーネットとしての役割や地域コミュニティの基盤である商店街における重要な構成員としての位置付けが強化されるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的に取り組むことで、地域コミュニティの再生及び強化や商店街の活性化につなげることが期待される。

(1) 地域の街づくりへの積極的な参加

ア 祭りや商店街による手作りイベント等共同事業の立案及び参加

イ 地域・商店街の活性化を通じた地域生活者の「ふれあい」、「憩い」、「賑わい」の創出

(2) 地域、地方公共団体、関係機関との連携による災害時の帰宅困難者への支援

(3) 福祉施設等での移動映画の上映

(4) 共同ポイントサービス事業及びスタンプ事業の実施

(5) 地域の防犯、消防、防災、交通安全及び環境保護活動の推進に対する協力

(6) 青少年に対する風紀面の配慮

(7) 暴力団排除等への対応

(8) 災害対応能力及び危機管理能力の維持向上

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 地域の自治体等と連携し、社会活動の企画、指導及び援助ができる指導者を育成

(2) 業種を超えた相互協力の推進

(3) 地域における特色ある取組の支援

(4) 自治会、町内会、地区協議会、NPO、大学等との連携活動の推進

(5) 地域・商店街役員への興行場営業の若手経営者の登用

(6) 地域における事業承継の推進(承継マッチング支援)

(7) 地域、商店街活性化に資する組合活動事例の周知

3 日本公庫に期待される役割

きめ細かな相談、融資の実施等により営業者及び新規開業希望者を支援する。

三 環境の保全及び省エネルギーの強化

1 営業者に期待される役割

(1) 省エネルギー対応の空調設備、太陽光発電設備等の導入

(2) 節電に資する人感センサー、LED照明、蓄電設備等の導入

(3) 廃棄物の最小化、分別回収の実施

(4) 温室効果ガス排出の抑制につながる施策及び省エネルギーへの啓発

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 廃棄物の最小化、分別回収の普及啓発

(2) 業種を超えた組合間の相互協力

3 日本公庫に期待される役割

省エネルギー設備導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知を図る。

四 禁煙等に関する対策

1 営業者に求められる役割

望まない受動喫煙の防止を図るため、以下の措置を講じることが求められる。

(1) 施設内の禁煙の徹底及び喫煙専用室等の設置

(2) 受動喫煙による健康影響が大きい子どもなど20歳未満の者、患者等への配慮

(3) 従業員に対する受動喫煙防止対策

2 組合及び連合会に期待される役割

効果的な受動喫煙防止対策に関する情報提供を行い、併せて制度周知を図る。

3 国及び都道府県等の役割

受動喫煙防止に関する制度周知や受動喫煙防止対策に有効な予算措置、金融措置等に関する情報提供を行う。

4 日本公庫に期待される役割

受動喫煙防止設備の導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

五 災害への対応と節電行動の徹底

我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっており、継続的な防災対策及び災害時の地域支援を含めた対応並びに節電行動への取組が期待される。

1 営業者に期待される役割(災害時は営業者自身の安全を確保した上で対応する。)

(1) 災害発生前段階における防災対策の実施及び災害対応能力の維持向上

(2) 地域における防災訓練への参加及び自店舗等での防災訓練の実施

(3) 近隣住民等の安否確認や被災状況の把握及び自治体等への情報提供

(4) 地震等の大規模災害が発生した場合における、地域住民への支援

(5) 被災した営業者のみならず営業者全体による相互扶助と連携の下での役割発揮

(6) 災害発生時における、被災営業者の営業再開を通じた被災者への支援及び地域コミュニティの復元

(7) 従業員及び利用者に対する節電啓発

(8) 中長期の節電に資する省エネルギー対応の設備の導入

(9) 節電を通じた経営の合理化

(10) 電力制約下における新たな需要(ビジネス機会)の取り込み

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 営業者及び地域並びに災害種別を想定した防災対策への支援

(2) 同業者による支え合い(太い「絆」で再強化)

(3) 災害発生時の被災者の避難誘導などを通じた帰宅困難者防止等への取組

(4) 被災した地域住民へのボランティアに関する呼びかけ

(5) 節電に資する共同利用施設(共同蓄電設備等)の設置

(6) 節電啓発や節電行動に対する支援

3 国及び都道府県等の役割

過去の災害を教訓とした防災対策や情報収集、広報の実施等、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める。

(1) 過去の災害を教訓とした緊急に実施する必要性が高く、即効性の高い防災、減災等の施策

(2) 節電啓発や節電行動の取組に対する支援

4 日本公庫に期待される役割

災害発生時には、被災した営業者に対し低利融資を実施し、きめ細やかな相談及び支援を行う。

六 最低賃金の引上げを踏まえた対応(生産性向上を除く。)

最低賃金については、政府の目標として「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が1,000円となることを目指す」ことが示されていることから、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める必要がある。

1 営業者に求められる役割

(1) 最低賃金の遵守

(2) 業務改善助成金及びキャリアアップ助成金等各種制度の必要に応じた活用

(3) 関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等への参加を通じた最低賃金制度の理解

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 最低賃金の制度周知

(2) 助成金の利用促進

助成金等各種制度や関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

(1) 最低賃金の周知

従業員等の最低賃金違反に関する相談窓口(労働基準監督署等)の周知を図る。

(2) 助成金の利用促進に向けた体制の整備

助成金等の申請に係る支援の周知や相談体制の整備を図る。

(3) 関係機関との連携によるセミナー等の開催

労働局等との連携により経営相談事業等を実施するほか、関係機関との連携により最低賃金に関するセミナー等を開催する。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した周知

(2) 営業許可等の際における窓口での個別周知

(3) 研修会等を通じた助成金制度の周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の賃金引上げや人材確保に必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

七 働き方・休み方改革に向けた対応

従業員がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる職場環境を作ることで人材の確保や生産性の向上が図られるよう、営業者には長時間労働の是正や雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、また、職場のハラスメント対策に必要な措置を図ることが求められる。

1 営業者に求められる役割

(1) 時間外労働の上限規制及び月60時間超の時間外割増賃金率の引上げへの対応による長時間労働の是正

(2) 年5日の年次有給休暇の確実な取得

(3) 雇用形態や就業形態に関わらない公正な待遇の確保

(4) 従業員に対する待遇に関する説明義務

(5) セクシュアルハラスメントやパワーハラスメント等職場のハラスメント対策

2 組合及び連合会に期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した制度周知

(2) 営業許可等の際における窓口での制度周知

(3) 研修会等を通じた制度周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善に取り組むために必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

改正文 (令和三年三月一八日厚生労働省告示第七九号) 抄

令和三年四月一日から適用する。ただし、この告示による改正後の飲食店営業(一般飲食業、中華料理業、料理業及び社交業)及び喫茶店営業の振興指針(平成二十九年厚生労働省告示第六十八号)、理容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十七号)、美容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十八号)、クリーニング業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十九号)、飲食店営業(すし店)の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第六十号)、興行場営業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十一号)、旅館業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十二号)、浴場業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十三号)及び飲食店営業(めん類)の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十四号)の規定は、この告示の告示の日以後に行われた生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律施行規則(昭和三十二年厚生省令第三十七号)第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請について適用し、同日前に行われた同令第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請については、なお従前の例による。