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○クリーニング業の振興指針

(平成三十一年三月七日)

(厚生労働省告示第五十九号)

生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和三十二年法律第百六十四号)第五十六条の二第一項の規定に基づき、クリーニング業の振興指針(平成二十六年厚生労働省告示第七十五号)の全部を次のように改正し、平成三十一年四月一日から適用する。

クリーニング業の振興指針

クリーニング業の営業者が、クリーニング業法(昭和25年法律第207号)等の衛生規制に的確に対応しつつ、現下の諸課題にも適切に対応し、経営の安定及び改善を図ることは、国民生活の向上に資するものである。

このため、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「生衛法」という。)第56条の2第1項に基づき、クリーニング業の振興指針を定めてきたところであるが、今般、営業者、生活衛生同業組合(生活衛生同業小組合を含む。以下「組合」という。)等の事業の実施状況等を踏まえ、営業者、組合等の具体的活用に資するよう、実践的かつ戦略的な指針として改正を行った。

今後、営業者、組合等において本指針が十分に活用されることを期待するとともに、新たな衛生上の課題や経済社会情勢の変化、営業者及び消費者等のニーズを反映して、適時かつ適切に本指針を改定するものとする。

第一 クリーニング業を取り巻く状況

一 クリーニング業の事業者の動向

クリーニング業は、国民の衛生的で快適な衣料及び住環境を確保するとともに、家事労働の代替サービスを提供することにより、国民生活の向上に大いに寄与してきたところである。しかし、近年、家庭用洗濯機及び洗剤の進歩、コインランドリーの普及、形態安定素材を使用した衣料の普及、大規模企業による取次チェーン店の展開や無店舗型取次サービス、さらにはインターネット宅配型サービスといった新しい営業形態を採る企業との競争の激化など、クリーニング業を取り巻く経営環境は大きく変化している。

クリーニング業の施設数は97,776施設(平成28年度末)であり、10年前と比較して45,923施設の減となっている。従業クリーニング師数は43,560人であり、10年前と比較して17,985人の減となっている(厚生労働省『衛生行政報告例』による)。従業者数5人未満の事業者が84.8%で(総務省『平成26年経済センサス基礎調査』による)、平成27年度において経営者の年齢については、60歳から69歳の者の割合が26.9%(平成22年度は38.0%)、70歳以上の者の割合が47.0%(平成22年度は35.4%)となっており、経営者の高齢化が着実に進んでいる(厚生労働省『平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査』による)。

経営上の課題としては(複数回答)、「客数の減少」を最も多くあげており、次に多い問題点としては、「原材料費の上昇」、「燃料費の上昇」、「水道・光熱費の上昇」等となっている(厚生労働省『平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査』による)。

また、日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)が行った『生活衛生関係営業の景気動向等調査(平成30年7~9月期)』において、クリーニング業の経営上の問題点は、多い順に「顧客数の減少」(59.6%)、「仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」(38.8%)、「客単価の低下」(28.8%)となっている。

仕入価格・販売価格の動向としては、仕入価格が「上昇した」営業者が72.3%となっている一方で、仕入価格上昇分を販売価格へ「転嫁できていない」営業者が69.1%と約7割を占めている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査特別調査(平成30年7~9月期)』による)。

また、令和元年12月に確認された新型コロナウイルス(COVID―19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)の感染拡大は社会経済に大きな影響を与え、我が国のクリーニング業も多大な影響を受けたところである。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う事業への影響について、クリーニング業の営業者で、売上が減少したと回答した者は90.3%で、その売上の減少幅(令和2年2~5月の対前年比)は、「20%未満」が29.0%、「20%以上50%未満」が57.3%、「50%以上80%未満」が12.5%、「80%以上」が1.3%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による)。

二 消費動向

平成28年の1世帯(2人以上の世帯)当たりの洗濯代の平均支出額は6,615円で前年比14円の増で、平成18年の支出額を100とした場合、平成28年の支出額は73.4となっている(総務省『家計調査報告』による)。

三 営業者の考える今後の経営方針

営業者の考える今後の経営方針としては(複数回答)、「廃業」30.5%、「接客サービスの充実」28.3%、「価格の見直し」21.1%、「広告・宣伝等の強化」12.5%となっており、全体の3割が廃業を見据えている(厚生労働省『平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査』による)。

また、クリーニング業を営む者が、新型コロナウイルス感染症収束後に予定している取組としては、「広報活動の強化」が31.3%、次いで「新たな販売方法の開拓」が25.5%、「新商品、新メニューの開発」が13.1%となっている一方、「特にない」が51.7%となっている(日本公庫『生活衛生関係営業の景気動向等調査(令和2年4~6月期)特別調査』による)。

第二 前期の振興計画の実施状況

都道府県別に設立されたクリーニング業の組合(平成30年12月末現在で47都道府県で設立)においては、前期のクリーニング業の振興指針(平成26年厚生労働省告示第75号)を踏まえ、振興計画を策定、実施しているところであるが、当該振興計画について、全5ヵ年のうち4ヵ年終了時である平成29年度末に実施した自己評価は次表のとおりである。

表 振興計画の実施状況についての各組合による自己評価


事業名

達成

概ね達成

主な事業

1

衛生に関する知識及び意識の向上に関する事業

22%

47%

・衛生管理等に関する講習会の開催

・衛生管理マニュアルの作成・配布

・ドライチェッカーの普及

2

施設及び設備の改善に関する事業

4%

27%

・店舗特性を踏まえた改装や設備の導入投資

3

消費者利益の増進に関する事業

9%

68%

・講習会の開催

・ホームページの開設

・苦情相談窓口の開設

・標準営業約款の登録促進

・ギフト券の普及促進

4

経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事業

24%

46%

・経営講習会、各種研修会の開催

・IT機器、POSレジ導入の普及

5

営業者及び従業員の技能の向上に関する事業

34%

45%

・技術講習会の開催

・ワイシャツ仕上げ競技大会の開催

・洗濯絵表示改正講習会の開催

6

事業の共同化及び協業化に関する事業

33%

20%

・共同購入の実施

・共同宣伝の実施

・マシーンリングの検討

7

取引関係の改善に関する事業

25%

25%

・関係業界等との情報交換会の開催

8

従業員の福祉の充実に関する事業

9%

33%

・共済制度の加入促進

・定期健康診断実施の促進

・熱中症予防対策講習会の実施

9

事業の承継及び後継者支援に関する事業

24%

57%

・後継者育成支援のための研修会等の開催

・青年部の育成

10

環境の保全及び省エネルギーの強化、リサイクル対策の推進に関する事業

9%

41%

・講習会の開催

・VOC対策の実施

・ハンガーリサイクルの推進

11

少子・高齢化社会等への対応に関する事業

15%

29%

・高齢者住宅向け訪問サービスの推進

・店舗バリアフリー化の推進

12

地域との共生に関する事業

20%

34%

・地域イベントへの参加

・各種ボランティア事業への協力

13

東日本大震災への対応に関する事業

12%

39%

・融資相談

・災害時緊急連絡訓練の実施

(注)組合からの実施状況報告を基に作成。

なお、国庫補助金としての予算措置(以下「予算措置」という。)については、平成23年度より、外部評価の導入を通じた効果測定の検証やPDCAサイクル(事業を継続的に改善するため、Plan(計画)―Do(実施)―Check(評価)―Act(改善)の段階を繰り返すことをいう。)の確立を目的として、「生活衛生関係営業の振興に関する検討会」の下に設けられた「生活衛生関係営業対策事業費補助金審査・評価会」において、補助対象となる事業の審査から評価までを一貫して行う等、必要な見直し措置を講じている。

このため、組合及び生活衛生同業組合連合会(以下「連合会」という。)等においても、振興計画に基づき事業を実施する際は、事業目標及び成果目標を可能な限り明確化した上で、達成状況についても評価を行う必要がある。

当該振興計画等の実施に向けて、組合、連合会等においては、本指針及び振興計画の内容について広報を行い、組合未加入の営業者への加入勧誘を図ることが期待されている。

組合への加入、非加入は営業者の任意であるが、生衛法の趣旨、組合の活動内容等を詳しく知らない新規開設者等の営業者がいることも考えられるため、都道府県、保健所設置市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、営業者による営業の許可申請又は届出等の際に、営業者に対して、生衛法の趣旨並びに関係する組合の活動内容、所在地、連絡先等について情報提供を行う等の取組の実施が求められる。

第三 クリーニング業の振興の目標に関する事項

一 営業者の直面する課題と地域社会から期待される役割

クリーニング業は、国民の衛生的で快適な衣料及び住環境を確保するとともに、家事労働の代替サービスを提供することにより、国民生活の向上に大いに寄与してきた。こうした重要な役割をクリーニング業が引き続き担い、国民生活の向上に貢献できるよう、経営環境や国民のニーズ、衛生課題に適切に対応しつつ、各々の営業者の経営戦略に基づき、その特性を活かし、事業の安定と活力ある発展を図ることが求められる。

また、異なる素材を組み合わせる等、繊維製品の多様化により、クリーニング事故等が生じているため、事故等の防止の取組を推進し、利用者の信頼を得る営業を目指すことが必要である。

さらに、環境保全についての国民の関心は一層高くなっており、ドライクリーニング溶剤等の化学物質を使用する機会が多いクリーニング業にとっては、ドライクリーニング溶剤等の化学物質に対する環境規制の強化も踏まえ、臭気、騒音等のクリーニング所の環境面での配慮、環境保全対策に積極的に取り組んでいくことが重要である。また、住居地域等において引火性溶剤を用いるクリーニング所については建築基準法(昭和25年法律第201号)への対応が求められている。

また、高齢者や障害者等のニーズに的確に即応することで、クリーニング業の営業者の地域住民が日常生活を送るために必要なセーフティーネットとしての役割や地域における重要な構成員としての位置づけが強化され、生活者の安心を支える役割を担うことが期待される。社会全体の少子高齢化の中で、営業者自身の高齢化による後継者問題に加え、深刻な労働力不足、従業員等への育児支援等も課題となっている。併せて、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)の施行を踏まえ、全ての消費者が店舗を円滑に利用できるよう、ソフト、ハード両面におけるバリアフリー化及びユニバーサルデザイン化の取組が求められる。

ISOへの整合化を図るための繊維製品の取扱いに関するJIS表示の切替が行われたことから、新旧の表示記号に適切に対応していく必要がある。

各営業者は、これらを十分に認識し、衛生水準の向上、技術及びサービスの向上、クリーニング事故の防止及び利用者への情報提供、環境保全の推進等、各般の安全安心対策に積極的に取り組むことにより、クリーニング業に対する消費者の理解と信頼の向上を図ることを目標とすべきである。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う売上減や経営維持、雇用確保等に対応するため、日本公庫の融資や国・自治体の補助金・助成制度を積極的に活用して早期に業績回復を図る必要がある。

二 今後5年間における営業の振興の目標

1 衛生問題への対応

クリーニング業は、人体の分泌物、ほこり、微生物等により汚染された衣料等を処理する営業であり、病原微生物に汚染されたおそれのある衣料等を洗濯することによる公衆衛生上の危害の発生を防止するため、その取扱い及び処理を衛生的かつ適正に行うことは、営業者の責務である。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策が求められている。

また、石油系溶剤等の残留による健康被害が生じないように留意することが必要である。衛生課題は、営業者の地道な取組が中心となる課題と、新型インフルエンザへの対応のように、営業者にとどまらず、保健所等衛生関係機関や都道府県生活衛生営業指導センター(以下「都道府県指導センター」という。)等との連携を密にして対応すべき課題とに大別される。衛生問題は、営業者が一定水準の衛生管理を行っている場合、通常、発生するものではないため、発生防止に必要な費用及び手間について判断しにくい特質がある。しかし、一旦、衛生上の問題が発生した場合には、多くの消費者に被害が及ぶことはもとより、営業自体の存続が困難になる可能性があることから、日頃からの地道な衛生管理の取組が重要である。また、こうした衛生問題は、個々の営業者の問題にとどまらず、業界全体に対する信頼を損ねることにもつながることから、組合及び連合会には、組合員、非組合員双方の営業者が自覚と責任感を持ち、衛生水準の向上が図られるよう、継続的に知識及び意識向上に資する普及啓発や適切な指導及び支援に努めることが求められる。

とりわけ、零細な営業者は重要な公衆衛生情報の把握が困難となる場合が考えられるため、これら営業者に対する組合加入の促進や公衆衛生情報の提供が円滑に行われることが期待される。

さらに、クリーニング師研修については、営業者のニーズを踏まえ、研修内容の充実や受講しやすい環境の整備を図りながら、受講率の向上に向けた取組をさらに進めていく必要がある。

2 経営方針の決定と消費者及び地域社会への貢献

家庭用洗濯機及び洗剤の進歩、コインランドリーの普及、形態安定素材を使用した衣料の普及等により消費者の家計支出に占めるクリーニングに関する支出も減少している。また、大規模企業による取次チェーン店の展開や無店舗型取次サービス、さらにはインターネット宅配型サービスといった新しい営業形態を採る企業の参入等による過当競争の激化が見られるとともに、原材料価格が高騰するなど、営業者を取り巻く経営環境は厳しいものとなっている。

こうした中で、営業者は、消費者のニーズや世帯動向等を的確に把握し、専門性や地域密着、対面販売等の特性を活かし、競争軸となる強みを見出し、独自性を十分に発揮し、経営展開を行っていくことが求められる。

(1) 消費者ニーズの把握と創意工夫による経営展開

消費者のニーズも高度化する中で、専門性や技術力を活かして、消費者の立場に立って付加価値を高めるとともに、仕上げ等のサービスの質やこれに対応した価格に関する認知度を高め、サービスの違いを明確に打ち出すことによって、差別化を図り、顧客を増やしていくことが重要である。

また、衣類の素材が多様化する中で、衣類等の保全に係る総合的なサービス業として、地域の衣類に関する情報ステーションとしての役割を担い、衣類以外の洗濯物の取扱いや保管サービスなどサービスの多様化を図ることも重要である。

安定した経営のためには、組合等が推進する共同事業やマシーンリング方式の活用による経営の効率化に努めることも重要である。

さらに、利用者の苦情や事故を防ぐために、受付を行う従業員の知識や説明の水準の向上、事故が生じた後の苦情処理の適正化、責任賠償保険への加入促進に業界をあげて取り組んでいくことが期待される。

(2) 高齢者、障害者及び子育て世帯等への配慮

人口減少、少子高齢化及び過疎化の進展は、営業者の経営環境を厳しくする一方、買い物の場所や移動手段など日常生活に不可欠な生活インフラそのものを弱体化させる側面があることから、高齢者や障害者、子育て・共働き世帯等が身近な買い物に不便・不安を感じる、いわゆる「買い物弱者」の問題を顕在化させる。地域に身近な営業者の存在は、買い物弱者になりがちな高齢者等から頼られる位置づけを確立し、中長期的な経営基盤の強化につながることが期待される。

特に、高齢化が進展する中で、来店することが困難な高齢者が増加していくことが予想されることから、これらの者に対する集配サービスを推進していくことが期待される。こうしたシニア層向けのサービスの提供は、単に売上げを伸ばすだけでなく、地域社会が抱える問題の課題解決や地域経済の活性化にも貢献するものであり、これら取組を通じた経営基盤の強化により、大手資本によるチェーン店との差別化にもつながるものと期待できる。

また、障害者差別解消法において、民間事業者は、障害者に対し合理的な配慮を行うよう努めなければならないとされていることから、ソフト、ハード両面におけるバリアフリー化及びユニバーサルデザイン化の取組を進める必要がある。

(3) 省エネルギーへの対応

節電などの省エネルギーによる経営の合理化、コスト削減、環境保全に資するため、不要時の消灯や照明ランプの間引き、LED照明装置やエネルギー効率の高い空調設備等の導入等を推進することが期待される。

(4) 訪日・在留外国人への配慮

政府においては、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年度までに訪日外国人旅行者4,000万人、2030年度までに6,000万人を目標に掲げ、「観光先進国」への新たな国づくりに向けて取組を進めている。また、訪日外国人旅行者の急増に加え、外国人労働者や在留外国人も増加していることから、営業者においても、外国語表記の充実や外国人とのコミュニケーション能力の向上、キャッシュレス決済等の導入を図るなど、外国人が入りやすい店づくりが求められる。

(5) 受動喫煙防止対策への対応

受動喫煙(他人のたばこの煙にさらされること)については、健康に悪影響を与えることが科学的に明らかにされており、受動喫煙による健康への悪影響をなくし、国民・労働者の健康の増進を図る観点から、健康増進法(平成14年法律第103号)及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)により、多数の者が利用する施設の管理者や事業者は受動喫煙を防止するための措置を講ずることとされている。国際的に見ても、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の締結国として、国民の健康を保護するために受動喫煙防止対策を推進することが求められている。これらのことから、クリーニング業においても、受動喫煙防止対策の強化を図り、その実効性を高めることが求められる。

3 税制及び融資の支援措置

クリーニング業の組合又は組合員には、生活衛生関係営業の一つとして、税制優遇措置及び日本公庫を通した低利融資を受ける仕組みがある。

税制優遇措置については、組合が共同利用施設を取得した場合の特別償却制度が設けられており、組合において各種クリーニング機器の購入時や共同工場の建設、組合の会館を建て替える際などに活用することができる。

融資については、対象設備及び運転資金について、振興計画を策定している組合の組合員である営業者が借りた場合は、組合員でない営業者が借りる場合よりも低利の融資を受けることができる。また、各都道府県の組合が作成した振興計画に基づき、一定の会計書類を備えている営業者が所定の事業計画を作成して設備資金及び運転資金を借りた場合には、さらに低利の融資を受けることができる振興事業促進支援融資制度が設けられており、特に設備投資を検討する営業者には、積極的な活用が期待される。

加えて、組合の経営指導を受けている小規模事業者においては、低利かつ無担保・無保証で融資を受けることができる生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付が設けられており、積極的な活用が期待される。

三 関係機関に期待される役割

1 組合及び連合会に期待される役割

組合は、公衆衛生の向上及び消費者の利益の増進に資する目的で、組合員たる営業者の営業の振興を図るための振興計画を策定することができる。組合には、地域の実情に応じ、適切な振興計画を策定することが求められる。

組合及び連合会には、予算措置や独自の財源を活用して、営業者の直面する衛生問題及び経営課題に対する適切な支援事業を実施することが期待される。

事業の実施に際しては、有効性及び効率性(費用対効果)の観点から、計画期間に得られる成果目標を明確にしながら事業の企画立案及び実施を行い、得られた成果については適切に効果測定する等、事業の適切かつ効果的な実施に努めることが求められる。

また、事業効果を最大限発揮し事業成果を広く国民や社会に還元できるよう、都道府県指導センター、保健所等衛生関係行政機関、日本公庫支店等との連携及び調整を行うことが期待される。

2 都道府県等、都道府県指導センター及び日本公庫に期待される役割

営業許可申請等各種申請や届出、研修会、融資相談などの様々な機会を捉え、新規営業者をはじめとする組合未加入の事業者に対し、組合に関する情報提供や組合活動の活性化のための取組等を積極的に行うことが期待される。

また、多くの営業者が経営基盤が脆弱な中小零細事業者であることに鑑み、都道府県指導センター及び日本公庫において、組合と連携しつつ、営業者へのきめ細かな相談、指導その他必要な支援等を行い、予算措置、融資による金融措置(以下「金融措置」という。)、税制優遇措置等の有効的な活用を図ることが期待される。

とりわけ、金融措置については、審査及び決定を行う日本公庫において営業者が利用しやすい融資の実施、生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握及び分析に努め、関係団体に情報提供するとともに、日本公庫と都道府県指導センターが協力して、融資手続や事業計画の作成に不慣れな営業者への支援の観点から、融資に係るきめ細かな相談及び融資手続の簡素化を行うことが期待される。低利融資制度については、各々の営業者の事業計画作成が前提とされることから、本指針の内容を踏まえ、営業者の戦略性を引き出す形での指導を行うことが求められる。

加えて、都道府県指導センターにおいて、組合が行う生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付に係る審査を代行するなど、金融措置の利用の促進を図ることが期待される。

3 国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センターに期待される役割

国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)は、公衆衛生の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、都道府県等及び連合会と適切に連携を図り、信頼性の高い情報の発信、的確な政策ニーズの把握等を行う必要がある。また、予算措置、金融措置、税制優遇措置を中心とする政策支援措置については、営業者の衛生水準の確保及び経営の安定に最大限の効果が発揮できるよう、安定的に所要の措置を講ずるとともに、制度の活性化に向けた不断の改革の取組が必要である。

国は都道府県等に対し、営業許可申請等各種申請や届出等の機会に組合未加入の営業者への組合に関する情報提供や組合活動の活性化のための取組等を求めるものとする。また、全国指導センターにおいては、地域で孤立する中小規模の営業者のほか、大規模チェーン店に対しても、組合加入の働きかけや公衆衛生情報の提供機能の強化を行うため、関係の組合及び連合会との連携を促すための取組が求められる。

第四 クリーニング業の振興の目標を達成するために必要な事項

クリーニング業の目標を達成するために必要な事項としては、次に掲げるように多岐にわたるが、営業者においては、衛生水準の向上等のために必須で取り組むべき事項と、戦略的経営を推進するために選択的に取り組むべき事項の区別を行うことで、課題解決と継続的な成長を可能にし、国民生活の向上に貢献することが期待される。

また、組合及び連合会においては、組合員である営業者等に対する指導及び支援並びに消費者のクリーニング業への信頼向上に資する事業の計画的な推進が求められる。

このために必要となる具体的取組としては、次に掲げるとおりである。

一 営業者の取組

1 衛生水準の向上に関する事項

(1) 日常の衛生管理に関する事項

近年のセレウス菌、ノロウィルス等の感染症の発生状況を踏まえ、クリーニング業においても、公衆衛生の見地から感染症対策の充実を図ることが要請されている。このため、クリーニング所における衛生管理要領を遵守し、洗濯前の衣料と洗濯後の衣料の適切な区分け、消毒等の処理、施設及び設備の清潔保持、引火性溶剤の適切な取扱い及び従業員への衛生教育の徹底や健康管理を行うべきである。また、石油系溶剤の残留による化学やけどの防止のため、ドライチェッカー(石油系溶剤残留測定機)による溶剤の乾燥状態の確認の励行にも取り組むべきである。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国でも3つの「密」(密閉・密集・密接)の回避、人と人との距離を空ける、消毒や換気の徹底、業種別の感染拡大予防ガイドラインの遵守・徹底など、感染症対策に関する「新しい生活様式」に向けて徹底した衛生対策を行う必要がある。

(2) 衛生面における施設及び設備の改善に関する事項

営業者は、店舗の内外装を美しく、かつ、衛生的にすることが基本であり、取次所や洗濯物の集配車を含めて、洗濯前の衣料と洗濯後の衣料を区分するなど、一定の衛生水準を保つ構造設備にするよう留意するとともに、石油系溶剤の残留による健康被害が生じないような設備の点検及び整備に努めるものとする。

2 経営課題への対処に関する事項

個別の経営課題への対処については、営業者の自立的な取組が前提であるが、多様な消費者の要望に対応する良質なサービスを提供し、国民生活の向上に貢献する観点から、営業者においては、次に掲げる事項を念頭に置き、経営改革に積極的に取り組むことが期待される。特に、家族経営等の小規模店は、営業者や従業員が変わることはほとんどないため、経営手法が固定的になりやすい面があるが、経営意識の改革を図り、以下の事項に選択的に取り組んでいくことが期待される。

(1) 経営方針の明確化及び独自性の発揮に関する事項

現在置かれている経営環境や市場を十分に把握、分析し、専門性や技術力、立地条件等の特性を踏まえ、強みを見出し、経営方針を明確化し、自店の付加価値や独自性を高めていくとともに、経営管理の合理化及び効率化を図ることが必要である。

ア 自店の立地条件、顧客層、資本力、経営能力、技術力等の経営上の特質の把握

イ 周辺競合店に関する情報収集と比較

ウ ターゲットとする顧客層の特定

エ 重点サービスの明確化

オ 店舗のコンセプト及び経営戦略の明確化

カ 経営手法、熟練技能、専門的知識の習得・伝承や後継者の育成

キ 若手人材の活用による経営手法の開拓

ク 共同仕入れ等の共同事業の推進

ケ 都道府県指導センター等の経営指導機関による経営診断の積極的活用

(2) サービスの見直し及び向上に関する事項

多様化する消費者のニーズやライフスタイル、世帯構造の変化等に適確に対応し、消費者が安心して利用できるよう、サービス及び店づくりの充実や情報提供の推進に努め、利用者の満足度を向上させることが重要であることから、以下の事項に選択的に取り組むことが期待される。

ア 「技術」と「こだわり」による独自サービスの提供

イ 仕上がりの違いの体験のためのお試しサービス

ウ 特殊なシミ抜き、丁寧な仕上げ等のサービスの見直し

エ 抗菌・UV加工等付加価値加工

オ 和服のクリーニング

カ 布団、靴、鞄等衣類以外のクリーニングサービスの提供

キ 季節外衣料の有料保管の実施

ク リフォーム

ケ 集配サービス

コ 衣料の特徴に合った洗濯・保管に関する知識の消費者への情報提供

サ マニュアルを超えた「おもてなしの心(気配り・目配り・心配り)」による温もりのあるサービスの提供

シ 顧客との信頼関係の構築

ス 立地条件及び経営方針に照らした営業日及び営業時間の見直し

(3) 店舗及び設備の改善並びに業務改善等に関する事項

営業者は、店舗及び設備の改善並びに業務の効率化等のため、以下の事項に取り組むことが期待される。

ア 安全で衛生的な店舗とするための定期的な内外装の改装

イ 各店舗の特性を踏まえた清潔な雰囲気の醸成

ウ 高齢者、障害者等に配慮したバリアフリー対策の実施

エ サービスの高付加価値化、生産性の向上

オ 従業員の安全衛生の確保、労働条件の改善

カ 環境保全の推進

キ 節電・省エネルギーの推進

ク 建築基準法への対応

ケ 作業手順の標準化・見える化やコンピュータ・情報システムの導入等による業務の合理化及び効率化

コ 都道府県指導センターなどが開催する生産性向上等を図るためのセミナー等への参加及び業務改善助成金等各種制度の活用

サ 賠償責任保険への加入

(4) 情報通信技術を利用した新規顧客の獲得及び顧客の確保に関する事項

営業者は、情報セキュリティの管理に留意しつつ、インターネット等の情報通信技術を効果的に活用する等、以下の事項に選択的に取り組むことが期待される。

ア インターネット等の活用によるサービスの提供、異業種との提携

イ ホームページの開設等、積極的な情報発信によるプロモーションの促進

ウ POSレジの導入やデータベース化等による顧客情報の適正管理及び預かり品管理

エ ダイレクトメールの郵送や広報チラシの配布

オ クレジットカード決済、電子決済、クリーニングギフト券の導入・普及

カ スマートフォンアプリ等を介したサービスの提供

(5) 表示の適正化と苦情の適切な処理に関する事項

営業者は、店外を始めとして、消費者の見やすい場所にサービスの項目及び料金並びに苦情の申出先を明示するものとする。

また、営業者は、全国指導センターが定めるサービスの内容並びに施設及び設備の表示の適正化に関する事項等を内容とするクリーニング業の標準営業約款に従って営業を行う旨の登録をし、標識及び当該登録に係る約款の要旨を掲示するよう努めるものとする。

さらに、クリーニング師研修及び業務従事者講習の修了の店頭表示に努めるものとする。

クリーニング業は、受託した衣料の破損、仕上がりへの不満等事故や苦情が生じやすい業態である。このため、洗濯物の受取及び引渡しの際に衣料の破損等の相互確認を徹底するとともに、処理方法等について利用者に対する十分な説明に努めなければならない。そのため、新たな衣料に関する知識の取得等により、事故の未然防止に努めるとともに、事故が生じた場合には、適切かつ誠実な苦情処理と賠償責任保険等を活用した損害の補填により、利用者との信頼関係の維持向上に努めるものとする。

加えて、利用者が長期にわたり洗濯物を引き取りに来ないことを防ぐため、各営業者が仕上がり予定日から処分までの日数を定め、洗濯物の受取時に契約内容を説明し、期間経過後は洗濯物を処分する可能性のあることを利用者に提示するよう努めるものとする。

(6) 人材育成及び自己啓発の推進に関する事項

クリーニング業の新たな発展を期するためには、技術力、情報収集力、人的能力等の質的な経営資源を充実し、経営力の強化を図る必要があるが、特に人材の育成は、経営上の重要な点である。

したがって、営業者は、従業員の資質の向上に関する情報を収集し、繊維製品に関する知識を習得するなど、進んで自己研さんに努め、従業員が衣料の受取時に利用者に対して行う素材、色、デザイン、仕上がりに関する事前説明を徹底するなど、職場内指導を充実するとともに、自治体、都道府県指導センター、組合等の実施するクリーニング師研修会への積極的参加や講習会等あらゆる機会を活用して従業員の資質の向上を図り、その能力を効果的に発揮できるよう努めるとともに、安全衛生履行の観点も含め、従業員に対する適正な労働条件の確保に努めるものとする。

二 営業者に対する支援に関する事項

1 組合及び連合会による営業者の支援

組合及び連合会においては、営業者の自立的な経営改革を支援する都道府県指導センター等の関係機関との連携を密にし、次に掲げる事項を中心に積極的な支援に努めることが期待される。また、支援に当たっては、関係機関等が作成する、営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等を効果的に活用すること、及び関係機関が開催する生産性向上等を推進するためのセミナー等に関して組合員に対する参加の促進等必要な協力を行うことが期待される。

(1) 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事項

営業者に対して衛生管理を徹底するための研修会及び講習会の開催、営業者及びクリーニング師の衛生管理の手引の作成等による普及啓発、基礎的技術の改善、感染症、化学やけど等の新たな健康被害に関する研究の推進及び新技術の研究開発並びに衛生管理体制の整備充実に努めることが期待される。

(2) サービス、店舗及び設備の改善並びに業務の効率化に関する事項

衛生水準の向上、経営マネジメントの合理化及び効率化、消費者の利益の増進、建築基準法への対応等のため、サービス、店舗及び設備の改善並びに業務の効率化に関する指導、助言、情報提供、ICTの活用に係るサポート等、必要な支援に努めることが期待される。

(3) 消費者利益の増進に関する事項

サービスの適正表示や苦情処理の対応に関するマニュアルの作成による普及啓発、クリーニング物の誤配防止のための取組の推進に努めることが期待される。

また、時代の変化を踏まえた「クリーニング事故賠償基準」の見直しを適宜行うとともに、クリーニング製品の安全・安心に係る危機管理マニュアルの作成、賠償責任保険への加入促進、利用者の意見等に関する情報の収集及び提供並びに消費者教育支援センター等との連携による利用者のクリーニング業に対する正しい知識の啓発普及に努めることが期待される。

(4) 経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事項

先駆的な経営事例等経営管理の合理化及び効率化に必要な情報、立地条件等経営環境に関する情報並びにクリーニング業界の将来の展望に関する情報の収集及び整理並びに営業者に対するこれらの情報提供に努めるものとする。さらに、関係機関との連携の下での、創業や事業承継における助言・相談の取組の推進が期待される。

(5) 経営課題に即した相談支援に関する事項

営業者が直面する様々な経営課題に対して、経営特別相談員による経営指導事業の周知に努めるとともに、これを金融面から補完する生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付制度の趣旨や活用方法の周知が期待される。

(6) 営業者及び従業員の技能の向上に関する事項

クリーニング師等の資質の改善向上を図るための研修会、講習会及び技能コンテストの開催等教育研修制度の充実強化に努めるものとする。また、自治体が主催するクリーニング師研修会の受講の支援及び受講促進に努めることが期待される。

(7) 事業の共同化及び協業化に関する事項

事業の共同化及び協業化の企画立案並びに実施に係る指導に努めることが期待される。特に、経営環境の悪化や住宅密集地域におけるクリーニング所の立地の困難化及び営業者の高齢化が進む中で、組合や経営方針を同じくする営業者間でクリーニング工場の共同化、自店では特定の分野の商品の処理に特化し、それ以外の商品は各々の分野に特化した他の営業者へ依頼を行う方式(マシーンリング方式)についての指導に努めることが期待される。また、公害防止用設備及び付帯設備の導入においても、営業者間での協業化の推進及び指導に努めることが期待される。

(8) 取引関係の改善に関する事項

共同購入等取引面の共同化の推進、クリーニング機械業界、資材業界等の関連業界の協力を得ながらの取引条件の合理的改善及び組合員等の経済的地位の向上に努めることが期待される。

また、関連業界と連携を深め、情報の収集及び交換の機会の確保に努めることが期待される。

(9) 従業員の福利の充実に関する事項

従業員の労働条件整備及び労働関係法令の遵守に関する助言、作業環境の改善及び健康管理充実(定期健康診断の実施等を含む。)のための支援、医療保険、年金保険及び労働保険の加入等に係る啓発、組合員等の大多数の利用に資する福利厚生の充実並びに共済等制度(退職金、生命保険等をいう。)の整備及び強化に努めるものとする。

また、男女共同参画社会の推進及び少子高齢化社会の進展を踏まえ、従業員の福利の充実に努めることが期待される。

(10) 事業の承継及び後継者育成支援に関する事項

営業者の高齢化が急激に進んでいることから、事業の円滑な承継に関するケーススタディ及び成功事例等の経営知識や各地域にある事業承継に関する相談機関及び最新の関連税制についての情報提供並びに後継者育成支援の促進を図るために必要な支援体制の整備に努めることが期待される。

2 行政施策及び政策金融による営業者の支援及び消費者の信頼の向上

(1) 都道府県指導センター

組合との連携を密にして、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等を効果的に活用した、営業者に対する経営改善の具体的指導、助言等の支援

イ 消費者からの苦情及び要望の営業者への伝達

ウ 消費者の信頼の向上に向けた積極的な取組

エ 都道府県等(保健所)と連携した組合加入促進に向けた取組

オ 生産性向上や業務改善を推進するためのセミナー等の開催

(2) 全国指導センター

都道府県指導センターの取組を推進するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 関係機関等が作成する手引や好事例集等、営業者の経営改革の取組に役立つ情報の収集、整理及び情報提供

イ 危機管理マニュアルの作成

ウ 苦情処理マニュアルの作成

エ 標準営業約款の登録の促進

オ クリーニング師研修及び従事者講習の充実、受講しやすい環境の整備

カ 効果測定の支援及び政策提言機能の強化

キ 公衆衛生情報の提供機能の強化

(3) 国及び都道府県等

クリーニング業に対する消費者の信頼の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める。

ア クリーニング業法等関係法令の施行業務等を通じたクリーニング師研修及び従事者講習の実施、研修内容の充実、受講しやすい環境の整備、指導監督

イ 安全衛生に関する情報提供その他必要な支援

ウ 災害又は事故等における適時、適切な風評被害防止策の実施

エ 営業者の経営改善に役立つ手引や好事例集等の作成・更新及び周知

(4) 日本公庫

営業者の円滑な事業実施に資するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

ア 営業者が利用しやすい融資の実施

イ 生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握、分析及び情報提供

ウ 組合等と連携した経営課題の解決に資するセミナーの開催及び各種印刷物の発行による情報提供

エ 災害時等における速やかな相談窓口の設置

オ 事業承継の相談窓口に関する情報提供

第五 営業の振興に際し配慮すべき事項

クリーニング業においては、他の生活衛生関係営業と同様に、衛生水準の確保と経営の安定のみならず、営業者の社会的責任として環境の保全や省エネルギーの強化、リサイクル対策の推進に努めるとともに、時代の要請である少子高齢化社会等への対応、地域との共生、禁煙等に関する対策、災害への対応及び従業員の賃金引上げに向けた対応、働き方・休み方改革への対応といった課題に応えていくことが要請される。こうした課題への対応は、個々の営業者が中心となって関係者の支援の下で行われることが必要である。こうした課題に適切に対応することを通じて、地域社会に確固たる位置づけを確保することが期待される。

一 環境の保全及び省エネルギーの強化、リサイクル対策の推進

1 営業者に期待される役割

(1) 公害防止用設備の導入、産業廃棄物の適正処理

(2) 省エネルギー対応のボイラー機器、空調設備、太陽光発電設備、低公害(ハイブリッド)車、電気自動車等の導入

(3) 節電に資する人感センサー、LED照明、蓄電設備等の導入

(4) 温室効果ガス排出の抑制

(5) エコバッグ利用の推奨

(6) ハンガー、ポリ包装資材等の3R(廃棄物の発生抑制、再使用及び再資源化)の推進

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 公害防止、省エネルギー、リサイクルの各取組方法の構築・普及啓発

(2) エコバッグ利用の推奨

(3) 業種を超えた組合間の相互協力

3 日本公庫に期待される役割

省エネルギー設備導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知を図る。

二 少子高齢化社会等への対応

1 営業者に期待される役割

営業者は、高齢者、障害者及び一人暮らしの者並びに子育て世帯、共働き世帯等が住み慣れた地域社会で安心かつ充実した日常生活を営むことができるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。

(1) 高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの顧客等に配慮した店舗のバリアフリー対策

(2) 集荷・配達サービスの実施

(3) 障害者差別解消法の規定に基づく障害者への合理的配慮

(4) 従業員に対する教育及び研修の充実・強化

(5) 子育て世帯、共働き世帯等が働きやすい職場環境の整備

(6) 地域社会とのつながりを強化する観点も含めた地域の高齢者、障害者等の積極的雇用の推進

2 組合及び連合会に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの顧客等の利便性を考慮した店舗設計やサービス提供に係る研究を実施する。

3 日本公庫に期待される役割

高齢者、障害者、妊産婦及び子ども連れの顧客等の利用の円滑化を図るために必要な設備(バリアフリー化等)導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

三 地域との共生(地域コミュニティの再生及び強化(商店街の活性化))

1 営業者に期待される役割

営業者は、地域住民に対してクリーニング業の存在、提供する商品及びサービスの内容並びに営業の社会的役割及び意義をアピールするとともに、地域で増加する「買い物弱者」の新たなニーズに対応し、地域のセーフティーネットとしての役割や地域コミュニティの基盤である商店街における重要な構成員としての位置付けが強化されるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的に取り組むことで、地域コミュニティの再生及び強化や商店街の活性化につなげることが期待される。

(1) 地域の街づくりへの積極的な参加

ア 祭りや商店街による手作りイベント等共同事業の立案及び参加

イ 商店街の活性化を通じた地域生活者の「ふれあい」、「憩い」、「賑わい」の創出

(2) 「賑わい」や「つながり」を通じた豊かな人間関係(ソーシャル・キャピタル)の形成

(3) 商店街の空き店舗の有効的活用(子育て支援施設、高齢者交流サロン、地域ブランド品販売等へ利用)

(4) 共同ポイントサービス事業及びスタンプ事業の実施

(5) 地域の防犯、消防、防災、交通安全及び環境保護活動の推進に対する協力

(6) 暴力団排除等への対応

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 地域の自治体等と連携し、社会活動の企画、指導及び援助ができる指導者を育成

(2) 業種を超えた相互協力の推進

(3) 地域における特色ある取組の支援

(4) 自治会、町内会、地区協議会、NPO、大学等との連携活動の推進

(5) 商店街役員へのクリーニング業の若手経営者の登用

(6) 地域における事業承継の推進(承継マッチング支援)

(7) 地域、商店街活性化に資する組合活動事例の周知

3 日本公庫に期待される役割

きめ細かな相談、指導、融資の実施等により営業者及び新規開業希望者を支援する。

四 禁煙等に関する対策

1 営業者に求められる役割

店舗や工場内の禁煙の徹底及び喫煙専用室等の設置により受動喫煙を防止する。

2 組合及び連合会に期待される役割

効果的な受動喫煙防止対策に関する情報提供を行い、併せて制度周知を図る。

3 国及び都道府県等の役割

受動喫煙防止に関する制度周知や受動喫煙防止対策に有効な予算措置、金融措置等に関する情報提供を行う。

4 日本公庫に期待される役割

受動喫煙防止設備の導入時に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

五 災害への対応と節電行動の徹底

我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっており、継続的な防災対策及び災害時の地域支援を含めた対応並びに節電行動への取組が期待される。

1 営業者に期待される役割(災害時は営業者自身の安全を確保した上で対応する)

(1) 災害発生前段階における防災対策の実施及び災害対応能力の維持向上

(2) 地域における防災訓練への参加及び自店舗等での防災訓練の実施

(3) 近隣住民等の安否確認や被災状況の把握及び自治体等への情報提供

(4) 地震等の大規模災害が発生した場合における、地域住民への支援

(5) 災害発生時における、被災営業者のみならず営業者全体による相互扶助と連携の下での役割発揮

(6) 災害発生時における、被災営業者の営業再開を通じた被災者へのサービスの確保・充実や地域コミュニティの復元

(7) 従業員及び顧客に対する節電啓発

(8) 中長期の節電に資する省エネルギー対応の設備の導入

(9) 節電を通じた経営の合理化

(10) 電力制約下における新たな需要(ビジネス機会)の取り込み

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 営業者及び地域並びに災害種別を想定した防災対策への支援

(2) 同業者による支え合い(太い「絆」で再強化)

(3) 災害発生時の被災者の避難誘導などを通じた帰宅困難者防止等への取組

(4) 節電啓発や節電行動に対する支援

(5) 節電に資する共同利用施設(共同蓄電設備等)の設置

3 国及び都道府県等の役割

過去の災害を教訓とした防災対策や情報収集、広報の実施等、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努める。

(1) 過去の災害を教訓とした緊急に実施する必要性が高く、即効性の高い防災、減災等の施策

(2) 節電啓発や節電行動の取組に対する支援

4 日本公庫に期待される役割

災害発生時には、被災した営業者に対し低利融資を実施し、きめ細やかな相談及び支援を行う。

六 最低賃金の引上げを踏まえた対応(生産性向上を除く)

最低賃金については、政府の目標として「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が1000円となることを目指す」ことが示されていることから、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが必要である。

1 営業者に求められる役割

(1) 最低賃金の遵守

(2) 業務改善助成金及びキャリアアップ助成金等各種制度の必要に応じた活用

(3) 関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等への参加を通じた最低賃金制度の理解

2 組合及び連合会に期待される役割

(1) 最低賃金の制度周知

(2) 助成金の利用促進

助成金等各種制度や関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

(1) 最低賃金の周知

従業員等の最低賃金違反に関する相談窓口(労働基準監督署等)の周知を図る。

(2) 助成金の利用促進に向けた体制の整備

助成金等の申請に係る支援の周知や相談体制の整備を図る。

(3) 関係機関との連携によるセミナー等の開催

労働局等との連携により経営相談事業等を実施するほか、関係機関との連携により最低賃金に関するセミナー等を開催する。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した周知

(2) 営業許可等の際における窓口での個別周知

(3) 研修会等を通じた助成金制度の周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の賃金引上げや人材確保に必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

七 働き方・休み方改革に向けた対応

従業員がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる職場環境をつくることで人材の確保に繋がり、ひいては生産性の向上が図られるよう、営業者には長時間労働の是正や、公正な待遇の確保等のための措置が求められる。

1 営業者に求められる役割

(1) 時間外労働の上限規制及び月60時間超の時間外割増賃金率の引き上げへの対応による長時間労働の是正

(2) 年5日の年次有給休暇の確実な取得

(3) 雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保

(4) 従業員に対する待遇に関する説明

2 組合及び連合会に期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

3 都道府県指導センターに期待される役割

相談窓口及び関係機関が開催するセミナー等の周知を図る。

4 国及び都道府県等の役割

(1) 営業許可等を行っている自治体における事業者向け講習会等の機会を利用した制度周知

(2) 営業許可等の際における窓口での制度周知

(3) 研修会等を通じた制度周知

5 日本公庫に期待される役割

従業員の長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善に取り組むために必要な融資に、振興事業貸付等が積極的に活用されるよう、引き続き制度の周知等を図る。

改正文 (令和三年三月一八日厚生労働省告示第七九号) 抄

令和三年四月一日から適用する。ただし、この告示による改正後の飲食店営業(一般飲食業、中華料理業、料理業及び社交業)及び喫茶店営業の振興指針(平成二十九年厚生労働省告示第六十八号)、理容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十七号)、美容業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十八号)、クリーニング業の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第五十九号)、飲食店営業(すし店)の振興指針(平成三十一年厚生労働省告示第六十号)、興行場営業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十一号)、旅館業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十二号)、浴場業の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十三号)及び飲食店営業(めん類)の振興指針(令和二年厚生労働省告示第五十四号)の規定は、この告示の告示の日以後に行われた生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律施行規則(昭和三十二年厚生省令第三十七号)第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請について適用し、同日前に行われた同令第十五条第一項に基づく認定の申請又は同令第十六条第一項に基づく変更に係る認定の申請については、なお従前の例による。