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○遺伝子治療等臨床研究に関する指針

(平成三十一年二月二十八日)

(厚生労働省告示第四十八号)

臨床研究法(平成二十九年法律第十六号)並びに臨床研究法施行規則(平成三十年厚生労働省令第十七号)及び再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則及び臨床研究法施行規則の一部を改正する省令(平成三十年厚生労働省令第百四十号)の施行等に伴い、遺伝子治療等臨床研究に関する指針(平成二十七年厚生労働省告示第三百四十四号)の全部を次のように改正し、平成三十一年四月一日から適用する。ただし、この告示の適用の際現にこの告示による改正前の遺伝子治療等臨床研究に関する指針第十六の三の1の規定により研究機関の長の許可を得て遺伝子治療等臨床研究を実施している者は、この告示の適用の日から起算して一年を経過する日までの間は、この告示による改正後の遺伝子治療等臨床研究に関する指針第2章第1節第2の1(1)イの規定にかかわらず、引き続き当該遺伝子治療等臨床研究を実施することができる。

遺伝子治療等臨床研究に関する指針

目次

第1章 総則

第1 目的

第2 用語の定義

第3 適用範囲

第4 遺伝子治療等臨床研究の対象の要件

第5 有効性及び安全性

第6 品質等の確認

第7 生殖細胞等を対象とする遺伝子治療等臨床研究の禁止等

第8 インフォームド・コンセントの確保

第9 公衆衛生上の安全の確保

第10 情報の公開

第11 被験者の選定

第2章 遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等

第1節 研究者の責務等

第1 研究者の責務

第2 研究責任者の責務

第3 総括責任者の責務

第4 研究機関

第5 研究機関の長の責務

第2節 研究計画書

第1 研究計画書に関する手続

第2 研究計画書の記載事項

第3 遺伝子治療等臨床研究に関する登録・公表

第3節 倫理審査委員会

第1 倫理審査委員会の設置等

第2 倫理審査委員会の役割・責務等

第4節 インフォームド・コンセント等

第1 インフォームド・コンセントを受ける手続等

第2 代諾者からインフォームド・コンセントを受ける場合の手続等

第5節 厚生労働大臣の意見等

第1 厚生労働大臣の意見

第2 重篤な有害事象等に係る厚生労働大臣の意見

第3 厚生労働大臣の調査等

第6節 個人情報等及び試料に係る基本的責務

第1 個人情報等の保護

第2 試料の保護

第3 死者の試料・情報の保護

第7節 重篤な有害事象への対応

第1 重篤な有害事象への対応

第8節 遺伝子治療等臨床研究の信頼性確保

第1 利益相反の管理

第2 試料及び情報等の保管

第3 モニタリング及び監査

第9節 雑則

第1 普及啓発

第3章 臨床研究法に定める臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等

第1 研究機関の長の責務

第2 研究計画書に関する手続

第3 研究計画書の記載事項

第4 倫理審査委員会の設置等

第5 インフォームド・コンセントを受ける手続等

第6 厚生労働大臣の意見

第7 重篤な有害事象等に係る厚生労働大臣の意見

第8 厚生労働大臣の調査等

第9 重篤な有害事象への対応

第10 試料及び情報等の保管

第11 普及啓発

第1章 総則

第1 目的

この指針は、遺伝子治療等臨床研究(第2の2に規定する「遺伝子治療等臨床研究」をいう。以下同じ。)に関し遵守すべき事項を定め、もって遺伝子治療等臨床研究の医療上の有用性及び倫理性を確保し、社会に開かれた形での適正な実施を図ることを目的とする。

第2 用語の定義

1 この指針において「遺伝子治療等」とは、疾病の治療又は予防を目的とした次のいずれかに該当する行為をいう。

(1) 遺伝子又は遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すること。

(2) 特定の塩基配列を標的として人の遺伝子を改変すること。

(3) 遺伝子を改変した細胞を人の体内に投与すること。

2 この指針において「遺伝子治療等臨床研究」とは、遺伝子治療等を行うことにより、当該遺伝子治療等の有効性又は安全性を明らかにする研究をいう。

3 この指針において「被験者」とは、遺伝子治療等臨床研究において、遺伝子治療等の対象となる者をいう。

4 この指針において「研究者」とは、遺伝子治療等臨床研究を実施する者をいう。

5 この指針において「研究責任者」とは、遺伝子治療等臨床研究を総括する立場にある研究者をいう。

6 この指針において「総括責任者」とは、他の研究機関と共同して実施する遺伝子治療等臨床研究において、当該遺伝子治療等臨床研究に係る業務を総括する研究責任者をいう。

7 この指針において「研究機関」とは、遺伝子治療等臨床研究を実施する個人又は法人その他の団体をいう。

8 この指針において「研究機関の長」とは、遺伝子治療等臨床研究を実施する個人又は法人その他の団体の代表者をいう。

9 この指針において「共同研究機関」とは、研究計画書に基づいて遺伝子治療等臨床研究を共同して実施する研究機関をいう。

10 この指針において「学術研究機関等」とは、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)第16条第8項に規定する学術研究機関等をいう。

11 この指針において「倫理審査委員会」とは、遺伝子治療等臨床研究の実施又は継続の適否その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な事項について、倫理的及び科学的な観点から調査審議する合議制の機関をいう。

12 この指針において「試料」とは、血液、体液、組織、細胞、排せつ物及びこれらから抽出したDNA等、人の体から取得されたものであって遺伝子治療等臨床研究に用いられるもの(死者に係るものを含む。)をいう。

13 この指針において「研究に用いられる情報」とは、被験者の診断又は治療を通じて得られた傷病名、投薬内容、検査又は測定の結果等、人の健康に関する情報その他の情報であって遺伝子治療等臨床研究に用いられるもの(死者に係るものを含む。)をいう。

14 この指針において「試料・情報」とは、試料及び研究に用いられる情報をいう。

15 この指針において「インフォームド・コンセント」とは、遺伝子治療等臨床研究の実施又は継続(試料・情報の取扱いを含む。)に関する被験者又はその代諾者(以下「被験者等」という。)の同意であって、当該研究の目的及び意義並びに方法、被験者に生じる負担、予測される結果(リスク及び利益を含む。)等について研究責任者等(研究責任者又は研究責任者の指示を受けた研究者で医師であるものをいう。以下同じ。)から十分な説明を受け、それらを理解した上で自由意思に基づいてなされるものをいう。

16 この指針において「代諾者」とは、被験者の意思及び利益を代弁できると考えられる者であって、当該被験者がインフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される場合に、当該被験者の代わりにインフォームド・コンセントを与えることができる者をいう。

17 この指針において「インフォームド・アセント」とは、インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される被験者が、実施又は継続されようとする遺伝子治療等臨床研究に関して、その理解力に応じた分かりやすい言葉で説明を受け、当該遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることを理解し、賛意を表することをいう。

18 この指針において「最終産物」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(1) 疾病の治療又は予防のための遺伝子が組み込まれたDNA又はウイルスその他の粒子であって、被験者に投与するため最終的に作製されたもの(以下「組換え遺伝子等」という。)

(2) 特定の塩基配列を標的として遺伝子を改変するために用いるタンパク質、核酸その他の物質

19 この指針において「個人情報」とは、個人情報保護法第2条第1項に規定する個人情報をいう。

20 この指針において「仮名加工情報」とは、個人情報保護法第2条第5項に規定する仮名加工情報をいう。

21 この指針において「匿名加工情報」とは、個人情報保護法第2条第6項に規定する匿名加工情報をいう。

22 この指針において「個人情報等」とは、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報をいう。

23 この指針において「削除情報等」とは、個人情報保護法第41条第2項に規定する削除情報等をいう。

24 この指針において「加工方法等情報」とは、個人情報の保護に関する法律施行規則(平成28年個人情報保護委員会規則第3号。以下「個人情報保護法施行規則」という。)第35条第1号に規定する加工方法等情報をいう。

25 この指針において「有害事象」とは、実施された遺伝子治療等臨床研究との因果関係の有無を問わず、被験者に生じた全ての好ましくない若しくは意図しない傷病又はその徴候(臨床検査値の異常を含む。)をいう。

26 この指針において「重篤な有害事象」とは、有害事象のうち、次のいずれかに該当するものをいう。

(1) 死亡

(2) 死亡につながるおそれのある有害事象

(3) 治療のために医療機関への入院又は入院期間の延長が必要とされる有害事象

(4) 障害

(5) 障害につながるおそれのある有害事象

(6) (1)から(5)までの規定に準じて重篤である有害事象

(7) 後世代における先天性の疾病又は異常

27 この指針において「モニタリング」とは、遺伝子治療等臨床研究の適正な実施を確保するため、遺伝子治療等臨床研究がどの程度進捗しているか並びにこの指針及び研究計画書に従って行われているかについて、研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。

28 この指針において「監査」とは、遺伝子治療等臨床研究の結果の信頼性を確保するため、遺伝子治療等臨床研究がこの指針及び研究計画書に従って行われたかについて、研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。

第3 適用範囲

1 適用される遺伝子治療等臨床研究

この指針は、日本国の研究機関により実施され、又は日本国内において実施される遺伝子治療等臨床研究を対象とする。ただし、第2章の規定は臨床研究法(平成29年法律第16号)第2条第1項に規定する臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究について、第2章及び第3章の規定は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第17項に規定する治験又は再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条第1項に規定する再生医療等に該当する遺伝子治療等臨床研究については、適用しない。

2 死者に係る情報

この指針は、日本国の研究機関により実施され、又は日本国内において実施される研究であって、遺伝子治療等臨床研究における死者に係る情報を取り扱うものについて準用する。

3 日本国外において実施される遺伝子治療等臨床研究

(1) 日本国の研究機関が日本国外において遺伝子治療等臨床研究を実施する場合(日本国外の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合を含む。)には、この指針の規定によるほか、実施地の法令、指針等の基準を遵守しなければならない。ただし、この指針の規定と比較して実施地の法令、指針等の基準の規定が厳格な場合には、この指針の規定に代えて当該実施地の法令、指針等の基準の規定により遺伝子治療等臨床研究を実施するものとする。

(2) この指針の規定が日本国外の実施地における法令、指針等の基準の規定より厳格であり、この指針の規定により遺伝子治療等臨床研究を実施することが困難な場合において、次に掲げる事項が研究計画書に記載され、日本国の研究機関の長が、倫理審査委員会の述べた意見を踏まえ、当該遺伝子治療等臨床研究の実施を許可したときは、この指針の規定に代えて当該実施地の法令、指針等の基準の規定により遺伝子治療等臨床研究を実施することができるものとする。

イ インフォームド・コンセントについて適切な措置が講じられること。

ロ 遺伝子治療等臨床研究に用いられる個人情報の保護について適切な措置が講じられること。

第4 遺伝子治療等臨床研究の対象の要件

遺伝子治療等臨床研究は、次に掲げる全ての要件に適合するものでなければならない。

1 遺伝子治療等臨床研究により明らかにしようとする遺伝子治療等の効果が、当該遺伝子治療等臨床研究の対象とする疾患(以下「対象疾患」という。)に対する現在実施可能な他の治療又は予防の方法と比較して同等以上であることが十分予測されるものであること。

2 被験者にとって遺伝子治療等臨床研究により得られる利益が、不利益を上回ることが十分予測されるものであること(遺伝子治療等臨床研究が予防を目的とする場合にあっては、利益が不利益を大きく上回ることが十分予測されるものであること。)。

第5 有効性及び安全性

遺伝子治療等臨床研究は、その有効性及び安全性が十分な科学的知見に基づき予測されるものでなければならない。

第6 品質等の確認

遺伝子治療等臨床研究に使用される遺伝子その他の人に投与される物質は、当該物質の品質、有効性及び安全性を確保する上で医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第17条第1項本文若しくは再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成26年厚生労働省令第89号)第25条第1項本文の製造所と同等の水準にあると認められる施設又は再生医療等の安全性の確保等に関する法律第35条第1項の許可若しくは同法第39条第1項の認定を受けた若しくは同法第40条第1項の規定により届け出られた細胞培養加工施設において製造され、その品質、有効性及び安全性が確認されているものでなければならない。

第7 生殖細胞等を対象とする遺伝子治療等臨床研究の禁止等

人の生殖細胞又は胚(一の細胞又は細胞群であって、そのまま人又は動物の胎内において発生の過程を経ることにより一の個体に成長する可能性のあるもののうち、胎盤の形成を開始する前のものをいう。以下同じ。)を対象とした遺伝子治療等臨床研究及び人の生殖細胞又は胚に対して遺伝的改変を行うおそれのある遺伝子治療等臨床研究は、行ってはならない。

第8 インフォームド・コンセントの確保

遺伝子治療等臨床研究は、インフォームド・コンセントが確実に確保された上で実施されなければならない。

第9 公衆衛生上の安全の確保

遺伝子治療等臨床研究は、公衆衛生上の安全が十分確保された上で実施されなければならない。

第10 情報の公開

遺伝子治療等臨床研究は、一般社団法人国立大学附属病院長会議、一般財団法人日本医薬情報センター又は公益社団法人日本医師会が設置している公開データベース(臨床研究法第2条第1項に規定する臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究にあっては臨床研究法施行規則(平成30年厚生労働省令第17号)第24条第1項に規定するデータベース、再生医療等の安全性の確保等に関する法律第2条第1項に規定する再生医療等に該当する遺伝子治療等臨床研究にあっては再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号)第8条の9第1項に規定するデータベース)に登録され、その情報は適切かつ正確に公開されなければならない。

第11 被験者の選定

被験者の選定に当たっては、人権保護の観点から、病状、年齢、同意能力等を考慮し、慎重に検討しなければならない。

第2章 遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等

第1節 研究者の責務等

第1 研究者の責務

1 研究者は、次に掲げる業務を行わなければならない。

(1) 被験者等への配慮に関し次に掲げる業務

イ 被験者の生命、健康及び人権を尊重して、遺伝子治療等臨床研究を実施すること。

ロ 遺伝子治療等臨床研究を実施するに当たっては、あらかじめインフォームド・コンセントを受けること。

ハ 被験者等及びその関係者からの相談、問合せ、苦情等(以下「相談等」という。)に適切かつ迅速に対応すること。

ニ 遺伝子治療等臨床研究の実施に携わる上で知り得た情報を正当な理由なく漏らさないこと。遺伝子治療等臨床研究の実施に携わらなくなった後も、同様とする。

(2) 遺伝子治療等臨床研究の倫理的妥当性及び科学的合理性の確保等に関し次に掲げる業務

イ 法令、指針等を遵守し、倫理審査委員会及び厚生労働大臣の意見を尊重し、研究機関の長が許可した研究計画書に従って、適正に遺伝子治療等臨床研究を実施すること。

ロ 研究責任者を補助し遺伝子治療等臨床研究の計画に関する資料を作成するとともに、当該計画を実施し、研究責任者に対し必要な報告を行うこと。

ハ 遺伝子治療等臨床研究の倫理的妥当性若しくは科学的合理性を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報を得た場合(ニに該当する場合を除く。)には、速やかに研究責任者に報告すること。

ニ 遺伝子治療等臨床研究の実施の適正性若しくは研究結果に対する信頼を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報を得た場合には、速やかに研究責任者又は研究機関の長に報告すること。

(3) 遺伝子治療等臨床研究の実施に先立ち、遺伝子治療等臨床研究に関する倫理並びに遺伝子治療等臨床研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を受けるとともに、研究期間中も適宜継続して、当該教育・研修を受けること。

2 研究者は、遺伝子治療等臨床研究を適正に実施するために必要な専門的知識又は臨床経験を有する者とする。

第2 研究責任者の責務

1 研究責任者は、次に掲げる業務を行わなければならない。ただし、総括責任者が置かれている場合には、(1)イ並びに(2)ロ、ハ、ホ及びヘの規定に基づき倫理審査委員会に意見を求めること、(1)ロの規定に基づき倫理審査委員会に通知すること、(4)ロ及びハの規定に基づき厚生労働大臣に報告すること並びに(1)ニの規定に基づき遺伝子治療等臨床研究の概要その他の遺伝子治療等臨床研究に関する情報を公開データベースに適切に登録することについては、総括責任者が行うものとする。

(1) 研究計画書の作成及び研究者の指針遵守の徹底に関し次に掲げる業務

イ 遺伝子治療等臨床研究の実施に関して国内外の入手し得る資料及び情報に基づき、遺伝子治療等臨床研究の医療上の有用性及び倫理性について検討を行い、その結果を踏まえて、遺伝子治療等臨床研究の遂行に必要な体制を整え、あらかじめ、研究計画書を作成し、倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重し、研究機関の長の許可を求めること。研究計画書を変更(軽微な変更(臨床研究法施行規則第42条に規定する軽微な変更をいう。以下同じ。)を除く。)するときも、同様とする。

ロ 研究計画書について、軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を倫理審査委員会に通知すること。

ハ 遺伝子治療等臨床研究に関連して被験者に生じた健康被害に対する補償を行うため、あらかじめ、保険への加入その他の必要な措置を適切に講ずること。

ニ 第2節第3の1の規定により、遺伝子治療等臨床研究の概要その他の遺伝子治療等臨床研究に関する情報を公開データベースに適切に登録するとともに、遺伝子治療等臨床研究の結果を公表すること。

ホ 研究計画書に従って遺伝子治療等臨床研究が適正に実施され、その結果の信頼性が確保されるよう、遺伝子治療等臨床研究の実施に携わる研究者を指導・管理すること。

ヘ 遺伝子治療等臨床研究に関する業務の一部を委託する場合には、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行うこと。

ト 遺伝子治療等臨床研究がこの指針に適合していることについて、必要に応じ、自ら点検及び評価を行い、その結果に基づき適切な対応をとること。

(2) 遺伝子治療等臨床研究の進捗管理・監督及び有害事象等の把握・報告に関し次に掲げる業務

イ 遺伝子治療等臨床研究の実施に関し必要な情報を収集するなど、遺伝子治療等臨床研究の適正な実施及び研究結果の信頼性の確保に努めること。

ロ 第1の1(2)ハの規定による報告を受けた場合であって、当該報告が遺伝子治療等臨床研究の継続に影響を与えるものであると考えられるときは、速やかに、研究機関の長及び総括責任者に報告し、必要に応じて倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重するとともに、必要に応じて、当該遺伝子治療等臨床研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更すること。

ハ 第1の1(2)ニの規定による報告を受けた場合には、速やかに、研究機関の長及び総括責任者に報告し、必要に応じて倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重するとともに、必要に応じて、当該遺伝子治療等臨床研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更すること。

ニ 遺伝子治療等臨床研究により期待される利益よりも予測されるリスクが高いと判断される場合又は遺伝子治療等臨床研究により十分な成果が得られないと判断される場合には、遺伝子治療等臨床研究を中止すること。

ホ 研究計画書に定めるところにより、遺伝子治療等臨床研究の進捗状況、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に伴う有害事象の発生状況等を、研究機関の長及び総括責任者に文書で報告するとともに、倫理審査委員会に意見を求めること。この場合において、進捗状況に関しては、少なくとも毎年1回以上、報告すること。

ヘ 遺伝子治療等臨床研究を終了(中止の場合を含む。以下同じ。)したときは、第2節第1の5(1)の規定による総括報告書(遺伝子治療等臨床研究の結果等を取りまとめた文書をいう。以下同じ。)を作成し、当該遺伝子治療等臨床研究に関する審査を行った倫理審査委員会に意見を求めるとともに、研究機関の長及び総括責任者に当該総活報告書を提出すること。

ト 他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合には、共同研究機関の研究責任者に対し当該遺伝子治療等臨床研究に関連する必要な情報を共有すること。

(3) 遺伝子治療等臨床研究の実施後の被験者への対応に関し次に掲げる業務

イ 遺伝子治療等臨床研究の実施後においても、被験者が当該遺伝子治療等臨床研究の成果を含め必要な最善の予防、診断及び治療を受けることができるよう努めること。

ロ 遺伝子治療等臨床研究の実施後においても、安全性及び有効性の確保の観点から、遺伝子治療等による効果及び副作用について適当な期間の追跡調査その他の必要な措置を講ずるよう努めるとともに、その結果については、研究機関の長及び総括責任者に報告すること。

(4) 厚生労働大臣への報告に関し次に掲げる業務

イ (1)イの規定に基づく手続により許可を得た研究計画書及び(1)ロの規定による通知を行った研究計画書について、遅滞なく厚生労働大臣に提出すること。

ロ 第1の1(2)ハ若しくはニの規定による報告を受けた場合又は(2)ロ若しくはハの規定による報告等を行う場合は、速やかに厚生労働大臣に報告すること。

ハ (2)ホの規定による報告について、倫理審査委員会が意見を述べた日から1か月以内に、報告対象期間内に遺伝子治療等臨床研究を行った被験者数、有害事象の発生状況等について厚生労働大臣に文書で報告すること。

ニ (2)ヘの規定により作成した総括報告書の概要その他必要な書類を厚生労働大臣に提出すること。

(5) (1)から(4)までに定めるもののほか、自らが所属する研究機関における遺伝子治療等臨床研究を総括するに当たって必要な措置を講ずること。

2 研究責任者は、1件の遺伝子治療等臨床研究について1研究機関につき1名とし、1に掲げる業務を適確に実施できる者とする。

第3 総括責任者の責務

1 総括責任者は、次に掲げる業務を行わなければならない。

(1) 第2の1に規定する研究責任者の業務を行うこと。ただし、次に掲げる業務については、研究責任者を代表して行うこと。

イ 第2の1(1)イ並びに(2)ロ、ハ、ホ及びヘの規定に基づき倫理審査委員会に意見を求め、並びに第2の1(1)ロの規定に基づき倫理審査委員会に通知すること。

ロ 第2の1(4)ロ及びハの規定に基づき厚生労働大臣に報告すること。

ハ 第2の1(1)ニの規定に基づき遺伝子治療等臨床研究の概要その他の遺伝子治療等臨床研究に関する情報を公開データベースに適切に登録すること。この場合において、併せて、当該遺伝子治療等臨床研究を実施する全ての研究機関に関する情報を登録すること。

(2) 遺伝子治療等臨床研究を総括し、共同研究機関の研究責任者に必要な指示を与えるとともに、適宜、当該研究責任者に対する教育・研修を行うこと。

(3) 第2の1(2)ロ又はハの規定による報告を受けた場合は、自らが所属する研究機関の長及び共同研究機関の研究責任者に対し、速やかに、その旨を報告すること。

(4) (1)から(3)までに定めるもののほか、遺伝子治療等臨床研究を総括するに当たって必要な措置を講ずること。

2 総括責任者は、遺伝子治療等臨床研究1件につき1名とし、各研究機関の研究責任者の中から1名に限り選任するものとする。

第4 研究機関

研究機関は、次に掲げる全ての要件に適合するものでなければならない。

1 十分な臨床観察及び検査並びにこれらの結果の分析及び評価を行うことができる人的体制及び施設を備えたものであること。

2 被験者の病状に応じた必要な措置を採ることができる人的体制及び施設を備えたものであること。

第5 研究機関の長の責務

研究機関の長は、次に掲げる業務を行わなければならない。

1 遺伝子治療等臨床研究に対する総括的な監督に関し次に掲げる業務

(1) 実施を許可した遺伝子治療等臨床研究について、適正に実施されるよう必要な監督を行うとともに、最終的な責任を負うこと。

(2) 研究者に、被験者の生命、健康及び人権を尊重して遺伝子治療等臨床研究を実施することを周知徹底すること。

(3) 業務上知り得た情報を正当な理由なく漏らさないこと。その業務に従事しなくなった後も、同様とする。

(4) 遺伝子治療等臨床研究に関する業務の一部を委託する場合には、委託を受けた者が遵守すべき事項について、文書による契約を締結すること。

2 遺伝子治療等臨床研究の実施のための体制・規程の整備等に関し次に掲げる業務

(1) 遺伝子治療等臨床研究を適正に実施するために必要な体制・規程(試料・情報の取扱いに関する事項を含む。)を整備すること。

(2) 当該研究機関の実施する遺伝子治療等臨床研究に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、これに対する補償その他の必要な措置が適切に講じられることを確保すること。

(3) 当該研究機関において実施される研究の内容に応じて、研究の実施に関する情報を被験者等に通知し、又は被験者等が容易に知り得る状態に置かれることを確保すること。

(4) 研究結果等、遺伝子治療等臨床研究に関する情報が適切に公表されることを確保すること。

(5) 当該研究機関の実施する遺伝子治療等臨床研究がこの指針に適合していることについて、必要に応じ、自ら点検及び評価を行い、その結果に基づき適切な対応をとること。

(6) 遺伝子治療等臨床研究に関する倫理並びに遺伝子治療等臨床研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を当該研究機関の研究者が受けることを確保するための措置を講ずるとともに、自らも当該教育・研修を受けること。

(7) 当該研究機関において定められた規程により、必要に応じ、この指針に定める権限又は事務を当該研究機関内の適当な者に委任すること。

(8) 第2の1(2)ホの規定により研究責任者から報告を受けた場合には、必要に応じ、当該研究責任者に対しその内容に係る留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。

3 遺伝子治療等臨床研究の許可等に関し次に掲げる業務

(1) 第2の1(1)イの規定により研究責任者から許可を求められたときは、倫理審査委員会の述べた意見を参考に当該許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置について決定すること。

(2) 研究責任者から遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の重大な変更の許可を求められたときは、(1)の規定に基づき当該許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置について決定するに当たって、倫理審査委員会の述べた意見を参考に、次に掲げる書類を厚生労働大臣に提出し、その意見を求めること。この場合において、他の研究機関と共同して実施する遺伝子治療等臨床研究について厚生労働大臣に意見を求めるときは、総括責任者が所属する研究機関の長が一括して行うこと。

イ 研究計画書及び当該研究計画書に添付する資料

ロ 倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類

ハ 第3節第1の2(3)に定める規則

(3) 第2の1(2)ロ若しくはハ又は第3の1(3)の規定による報告を受けた場合には、必要に応じて、倫理審査委員会の述べた意見を尊重するとともに、速やかに遺伝子治療等臨床研究の停止、原因の究明等の適切な対応をとること。この場合において、倫理審査委員会が意見を述べる前においては、必要に応じ、研究責任者に対し、遺伝子治療等臨床研究の中止又は暫定的な措置を講ずるよう指示すること。

(4) 倫理審査委員会及び厚生労働大臣が行う調査に協力すること。

(5) 第1の1(2)ニ、第2の1(2)ロ若しくはハ又は第3の1(3)の規定による報告を受けた場合には、速やかに必要な措置を講ずること。

第2節 研究計画書

第1 研究計画書に関する手続

1 研究計画書の作成・変更

(1) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究を実施(研究計画書を変更(軽微な変更を除く。)する場合を含む。2及び3において同じ。)しようとするときは、あらかじめ、研究計画書を作成し、研究機関の長の許可を得なければならない。

(2) 研究責任者は、他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施しようとするときは、各共同研究機関の研究責任者の役割及び責任を明確にした上で、第1節第3の1(1)の規定により総括責任者が作成する研究計画書を踏まえて、研究計画書を作成しなければならない。

(3) 研究責任者は、自らが所属する研究機関における遺伝子治療等臨床研究に関する業務の一部について委託しようとするときは、当該委託しようとする業務の内容を研究計画書に定めなければならない。

2 倫理審査委員会への付議

(1) 研究責任者は、自らが所属する研究機関の長に対して遺伝子治療等臨床研究の実施の許可を求める前に、当該遺伝子治療等臨床研究の実施の適否について、倫理審査委員会に意見を求めなければならない。

(2) 総括責任者は、他の研究機関と共同して実施する遺伝子治療等臨床研究の実施の適否について、一括して倫理審査委員会に意見を求めなければならない。

3 研究機関の長による許可

研究機関の長は、倫理審査委員会及び厚生労働大臣の意見を尊重し、遺伝子治療等臨床研究の実施の許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置を決定しなければならない。この場合において、当該研究機関の長は、倫理審査委員会又は厚生労働大臣が遺伝子治療等臨床研究の実施について不適当である旨の意見を述べたときは、当該遺伝子治療等臨床研究の実施を許可してはならない。

4 研究中の手続

(1) 研究責任者は、研究計画書に定めるところにより、遺伝子治療等臨床研究の進捗状況、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に伴う有害事象の発生状況等を、研究機関の長及び総括責任者に文書で報告するとともに、倫理審査委員会に意見を求めなければならない。この場合において、進捗状況に関しては、少なくとも毎年1回以上、報告するものとする。

(2) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究の進捗状況、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に伴う有害事象の発生状況等について、被験者に対して適切な対応をとらなければならない。この場合において、当該研究責任者は、倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重し、有害事象の発生状況、改善事項等に関して必要な措置を講ずるとともに、厚生労働大臣に対し報告を行わなければならない。

5 研究終了後の対応

(1) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究を終了したときは、次に掲げる事項を記載した総括報告書を作成し、当該遺伝子治療等臨床研究に関する審査を行った倫理審査委員会に意見を求めるとともに、研究機関の長及び総括責任者に当該総括報告書を提出しなければならない。

イ 遺伝子治療等臨床研究に関し次に掲げる事項

(イ) 名称

(ロ) 目的及び意義

(ハ) 実施の方法及び期間

(ニ) 結果及び考察

ロ 研究責任者その他の研究者(他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合にあっては、総括責任者及び共同研究機関の研究責任者を含む。)の氏名

ハ 研究機関(他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合にあっては、共同研究機関を含む。)の名称及び所在地

ニ その他必要な事項

(2) 研究責任者は、(1)の規定により総括報告書を提出した時は、総括報告書の概要その他必要な書類を速やかに厚生労働大臣に提出しなければならない。

第2 研究計画書の記載事項

1 第1の1(1)の研究計画書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

(1) 遺伝子治療等臨床研究に関し次に掲げる事項

イ 名称

ロ 目的及び意義

ハ 実施の方法及び期間

ニ 実施が可能であると判断した理由

ホ 情報公開の方法

(2) 研究責任者その他の研究者(他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合にあっては、総括責任者及び共同研究機関の研究責任者を含む。)の氏名及び遺伝子治療等臨床研究において当該研究者が果たす役割

(3) 研究機関(他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合にあっては、共同研究機関を含む。)の名称及び所在地

(4) 対象疾患及びその選定理由

(5) 被験者の選定方針

(6) 導入する遺伝子に関し次に掲げる事項

イ 開発の経緯

ロ 遺伝子の構造及び機能

ハ 遺伝子の導入方法

ニ 被験者に投与する最終産物の組成

(7) 遺伝子の改変に用いるタンパク質、核酸等に関し次に掲げる事項

イ 開発の経緯

ロ タンパク質、核酸等の構造及び機能

ハ 遺伝子の改変方法

ニ 被験者に投与する最終産物の組成

(8) 特性解析及び品質試験の結果

(9) 被験者への投与に用いられる特殊な機器及び医療材料

(10) 非臨床試験における安全性及び有効性に関し次に掲げる事項

イ 臨床的有効性を予測するための非臨床試験の情報

ロ 生体内分布を分析した結果

ハ 非臨床試験における安全性の評価

ニ 非臨床試験の成績の総括

(11) 第4節第1の規定によるインフォームド・コンセントを受ける手続等(同規定による説明及び同意に関する事項を含む。)

(12) 個人情報等の取扱い(加工する場合にはその方法、仮名加工情報又は匿名加工情報を作成する場合にはその旨を含む。)

(13) 被験者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益、これらの総合的評価並びに当該負担及びリスクを最小化する対策

(14) 試料・情報(研究に用いられる情報に係る資料を含む。)の保管及び廃棄の方法

(15) 研究機関の長及び倫理審査委員会への報告の内容及び方法

(16) 遺伝子治療等臨床研究の資金源、個人の収益等、遺伝子治療等臨床研究に係る研究機関及び研究者の利益相反に関する状況

(17) 被験者等及びその関係者からの相談等への対応方法

(18) 代諾者からインフォームド・コンセントを受ける場合には、第4節第2の規定による手続に関する事項(代諾者の選定方針並びに説明及び同意に関する事項を含む。)

(19) インフォームド・アセントを得る場合には、第4節第2の規定による手続に関する事項(説明に関する事項を含む。)

(20) 被験者等に経済的負担又は謝礼がある場合には、その旨及び内容

(21) 重篤な有害事象が発生した際の対応

(22) 遺伝子治療等臨床研究によって生じた健康被害に対する補償の有無及びその内容

(23) 遺伝子治療等臨床研究の実施後における被験者への医療の提供に関する対応

(24) 遺伝子治療等臨床研究の実施に伴い、被験者の健康、子孫に受け継がれ得る遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られる可能性がある場合には、被験者に係る研究結果(二次的所見を含む。)の取扱い

(25) 遺伝子治療等臨床研究に関する業務の一部を委託する場合には、当該委託する業務の内容及び委託先の監督方法

(26) 被験者から取得された試料・情報について、被験者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性がある場合には、その旨及び同意を受ける時点において想定される研究の内容並びに実施される研究及び提供先に関する情報を被験者等が確認する方法

(27) 第8節第3の規定によるモニタリング及び監査の実施の体制及び手順

(28) その他必要な事項

2 第1の1(1)の研究計画書には、次に掲げる事項を記載した書類を添付しなければならない。

(1) 研究者の略歴及び研究業績

(2) 研究機関の施設設備の状況

(3) 遺伝子治療等臨床研究に関する有効性を示唆する試験の結果及び安全性に関する研究の成果

(4) 実施しようとする遺伝子治療等臨床研究に関連する国内外の研究状況(当該遺伝子治療等臨床研究を実施しようとしている研究者が自ら所属する研究機関において既に実施したものを除く。)

(5) インフォームド・コンセントにおける説明及び同意に関する文書の様式

(6) 遺伝子治療等臨床研究の概要を可能な限り平易な用語を用いて記載した要旨

(7) その他必要な事項

第3 遺伝子治療等臨床研究に関する登録・公表

1 遺伝子治療等臨床研究の概要及び結果の登録

研究責任者は、第1章第10に規定する公開データベースに、遺伝子治療等臨床研究の概要をその実施に先立って登録し、研究計画書の変更及び遺伝子治療等臨床研究の進捗に応じて適宜更新しなければならず、また、遺伝子治療等臨床研究を終了したときは、遅滞なく、その結果を登録しなければならない。ただし、被験者等及びその関係者の人権又は研究者及びその関係者の権利利益の保護のため非公開とすることが必要な内容として、倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可したものについては、この限りでない。

2 研究結果の公表

研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究を終了したときは、遅滞なく、被験者等及びその関係者の人権又は研究者及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で、当該遺伝子治療等臨床研究の結果を公表しなければならず、また、結果の最終の公表を行ったときは、遅滞なく研究機関の長に報告しなければならない。

第3節 倫理審査委員会

第1 倫理審査委員会の設置等

1 倫理審査委員会の設置の要件

倫理審査委員会の設置者は、次に掲げる全ての要件に適合するものでなければならない。

(1) 遺伝子治療等臨床研究の審査に関する事務を的確に行う能力があること。

(2) 倫理審査委員会を継続的に運営する能力があること。

(3) 倫理審査委員会を中立かつ公正に運営する能力があること。

2 倫理審査委員会の設置者の責務

倫理審査委員会の設置者は、次に掲げる業務を行わなければならない。

(1) 倫理審査委員会の組織及び運営に関する規程を定め、当該規程により、倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者に業務を行わせること。

(2) 遺伝子治療等臨床研究の審査に用いた資料を、当該遺伝子治療等臨床研究の終了について報告された日から起算して10年を経過する日までの間、適切に保管すること。

(3) 倫理審査委員会の構成、組織及び運営並びにその議事の内容の公開その他遺伝子治療等臨床研究の審査に必要な手続に関する規則を定め、倫理審査委員会報告システムにおいて公表すること。

(4) 毎年1回以上、倫理審査委員会の開催状況及び遺伝子治療等臨床研究の審査の概要を、倫理審査委員会報告システムにおいて公表すること。ただし、遺伝子治療等臨床研究の審査の概要のうち、被験者等及びその関係者の人権又は研究者及びその関係者の権利利益の保護のため非公開とすることが必要な内容として倫理審査委員会が判断したものについては、この限りでない。

(5) 倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者が遺伝子治療等臨床研究の審査及びそれに関連する業務に関する教育・研修を受けることを確保するため必要な措置を講ずること。

(6) 倫理審査委員会の組織及び運営がこの指針に適合していることについて、厚生労働大臣又はその委託を受けた者が実施する調査に協力すること。

第2 倫理審査委員会の役割・責務等

1 役割・責務

(1) 倫理審査委員会は、研究責任者から第1節第2の1(1)イ並びに(2)ロ、ハ、ホ及びヘの規定により意見を求められたときは、この指針の規定に基づき、倫理的及び科学的観点から必要に応じて調査を行うとともに、研究機関及び研究者の利益相反に関する情報も含めて中立かつ公正な審査を行い、必要に応じて文書により意見を述べなければならない。

(2) 倫理審査委員会は、遺伝子治療等臨床研究の審査が中立かつ公正に行われるよう、その活動の自由及び独立が保障されていなければならない。

(3) 倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者は、その業務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その業務に従事しなくなった後も、同様とする。

(4) 倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者は、(1)の規定により審査を行った遺伝子治療等臨床研究に関連する情報の漏えい等、被験者等の人権を尊重する観点又は遺伝子治療等臨床研究の実施上の倫理的妥当性若しくは科学的合理性若しくは審査の中立性若しくは公正性の観点から重大な懸念が生じたことを知った場合には、速やかに倫理審査委員会の設置者に報告しなければならない。

(5) 倫理審査委員会の委員及びその事務に従事する者は、倫理的及び科学的観点からの遺伝子治療等臨床研究の調査及び審査に必要な知識を習得するための教育・研修を受けなければならず、また、その後も、適宜継続して当該教育・研修を受けなければならない。

2 構成及び会議の成立要件等

(1) 倫理審査委員会の委員の構成は、遺伝子治療等臨床研究の調査及び審査を適切に実施できるよう、次に掲げる全ての要件に適合するものでなければならず、また、イからハまでに掲げる者は、それぞれ他の要件を兼ねることはできない。会議の成立についても、同様とする。

イ 分子生物学、細胞生物学、遺伝学、臨床薬理学、病理学等の専門家及び対象疾患に係る臨床医が含まれていること。

ロ 法律に関する専門家及び生命倫理に関する意見を述べるにふさわしい識見を有する者が含まれていること。

ハ 遺伝子治療等臨床研究に関する知識を十分に有しているとは限らない被験者の視点から、客観的な意見を述べることができる者が含まれていること。

ニ 倫理審査委員会の設置者の所属機関に所属しない者が複数含まれていること。

ホ 男女両性で構成されていること。

ヘ 5名以上であること。

(2) 審査の対象となる遺伝子治療等臨床研究の実施に携わる研究者は、倫理審査委員会の審議及び意見の決定に同席してはならない。ただし、倫理審査委員会から会議の出席及び遺伝子治療等臨床研究に関する説明の求めがあった場合は、この限りでない。

(3) 遺伝子治療等臨床研究の審査を依頼した研究責任者は、倫理審査委員会の審議及び意見の決定に参加してはならない。ただし、倫理審査委員会における審査の内容を把握するため必要な場合は、当該倫理審査委員会の同意を得た上で、その会議に同席することができる。

(4) 倫理審査委員会は、審査の対象、内容等に応じて有識者に意見を求めることができる。

(5) 倫理審査委員会は、特別な配慮を必要とする者を被験者とする遺伝子治療等臨床研究の審査を行い、意見を述べる際は、必要に応じてこれらの者について識見を有する者に意見を求めなければならない。

(6) 倫理審査委員会の意見は、全会一致をもって決定するよう努めなければならない。

3 迅速審査

他の研究機関と共同して実施される遺伝子治療等臨床研究であって、既に当該遺伝子治療等臨床研究の全体について共同研究機関における倫理審査委員会の審査を受け、その実施について適当である旨の意見を得ているものについて、倫理審査委員会は、当該倫理審査委員会が指名する委員による審査(以下「迅速審査」という。)を行い、意見を述べることができる。この場合において、迅速審査の結果は、倫理審査委員会の意見として取り扱うものとし、当該結果は、全ての委員に報告されなければならない。研究計画書が変更(軽微な変更を除く。)された遺伝子治療等臨床研究についても、同様とする。

4 他の研究機関が実施する遺伝子治療等臨床研究に関する審査

(1) 研究責任者が、自らが所属する研究機関以外に設置された倫理審査委員会に遺伝子治療等臨床の審査を依頼する場合には、当該倫理審査委員会は、当該遺伝子治療等臨床研究の実施体制について十分把握した上で審査を行い、意見を述べなければならない。

(2) 倫理審査委員会は、他の研究機関が実施する遺伝子治療等臨床研究について審査を行った後、継続して当該遺伝子治療等臨床研究に関する審査を依頼された場合には、審査を行い、意見を述べなければならない。

第4節 インフォームド・コンセント等

第1 インフォームド・コンセントを受ける手続等

1 インフォームド・コンセントを受ける手続等

(1) 研究責任者等は、遺伝子治療等臨床研究を実施しようとするときは、研究機関の長の許可を得た研究計画書に定めるところにより、あらかじめ、3に規定する説明事項を記載した文書により、インフォームド・コンセントを受けなければならない。

(2) 研究者その他の研究の実施に携わる者(以下「研究者等」という。)は、試料・情報を共同研究機関等に提供する場合は、当該提供に関する記録を作成しなければならない。この場合において、研究責任者は、研究者等が作成した当該記録を、当該試料・情報の提供をした日から起算して3年を経過する日までの間、保管しなければならない。

(3) 他の研究機関から試料・情報の提供を受ける場合は、研究者等は、当該試料・情報の提供を行う者によって適切な手続がとられていること等を確認するとともに、当該試料・情報の提供に関する記録を作成しなければならない。この場合において、研究責任者は、研究者等が作成した当該記録を、遺伝子治療等臨床研究の終了について報告された日から起算して5年を経過する日までの間、保管しなければならない。

2 研究計画書の変更

研究責任者等は、研究計画書を変更する場合には、当該変更について、原則として改めて1の規定によるインフォームド・コンセントの手続等を行わなければならない。ただし、倫理審査委員会の意見を受けて、研究機関の長が当該手続等を要しないことについて許可した変更については、この限りでない。

3 説明事項

研究責任者等は、インフォームド・コンセントを受ける際には、被験者等に対し、原則として次に掲げる事項を説明しなければならない。ただし、倫理審査委員会及び厚生労働大臣の意見を受けて、研究機関の長が当該説明を省略することについて許可した事項については、この限りでない。

(1) 遺伝子治療等臨床研究に関し次に掲げる事項

イ 名称

ロ 実施について研究機関の長の許可を得ている旨

ハ 目的及び意義

ニ 実施の方法(被験者から取得された試料・情報の利用目的を含む。)及び期間

ホ 情報公開の方法

(2) 研究機関の名称及び研究責任者の氏名(他の研究機関と共同して遺伝子治療等臨床研究を実施する場合にあっては、共同研究機関の名称及び共同研究機関の研究責任者の氏名並びに総括責任者の氏名を含む。)

(3) 被験者として選定された理由

(4) 遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることに同意した場合であっても随時これを撤回できる旨(被験者等からの撤回の内容に従った措置を講ずることが困難となる場合があるときは、その旨及びその理由を含む。)

(5) 遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることに同意しないこと又は同意を撤回することによって被験者等が不利益な取扱いを受けない旨

(6) 被験者等の求めに応じて、他の被験者等の個人情報の保護及び遺伝子治療等臨床研究の独創性の確保に支障がない範囲内において研究計画書及び当該遺伝子治療等臨床研究の方法に関する資料を入手又は閲覧できる旨並びにその入手又は閲覧の方法

(7) 個人情報等の取扱い(加工する場合にはその方法、仮名加工情報又は匿名加工情報を作成する場合にはその旨を含む。)

(8) 被験者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益、これらの総合的評価並びに当該負担及びリスクを最小化する対策

(9) 試料・情報(研究に用いられる情報に係る資料を含む。)の保管及び廃棄の方法

(10) 遺伝子治療等臨床研究の資金源、個人の収益等、遺伝子治療等臨床研究に係る研究機関及び研究者の利益相反に関する状況

(11) 被験者等及びその関係者からの相談等への対応方法

(12) 被験者等に経済的負担又は謝礼がある場合には、その旨及び内容

(13) 他の治療方法等に関する事項

(14) 遺伝子治療等臨床研究によって生じた健康被害に対する補償の有無及びその内容

(15) 遺伝子治療等臨床研究の実施後における被験者への医療の提供に関する対応

(16) 遺伝子治療等臨床研究の実施に伴い、被験者の健康、子孫に受け継がれ得る遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られる可能性がある場合には、被験者に係る研究結果(二次的所見を含む。)の取扱い

(17) 被験者から取得された試料・情報について、被験者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性がある場合には、その旨及び同意を受ける時点において想定される研究の内容並びに実施される研究及び提供先に関する情報を被験者等が確認する方法

(18) 被験者の秘密が保全されることを前提として、モニタリングに従事する者及び監査に従事する者、倫理審査委員会並びに厚生労働大臣が必要な範囲内において当該被験者に関する試料・情報を閲覧する旨

(19) 外国にある者に対して試料・情報を提供する場合には、第2章第4節第1の6(3)に規定する事項

4 同意を受ける時点で特定されなかった遺伝子治療等臨床研究への試料・情報の利用の手続

研究責任者等は、被験者等から同意を受ける時点で想定される試料・情報の利用目的等について可能な限り説明した場合であって、その後、利用目的等が新たに特定されたときは、研究計画書を作成又は変更した上で、新たに特定された利用目的等についての情報を被験者等に通知し、又は被験者等が容易に知り得る状態に置き、新たに遺伝子治療等臨床研究が実施されることについて、被験者等が同意を撤回できる機会を保障しなければならない。

5 同意の撤回等

研究責任者等は、被験者等から次のいずれかに該当する同意の撤回又は拒否があった場合には、遅滞なく、当該撤回又は拒否の内容に従った措置を講ずるとともに、その旨を当該被験者等に説明しなければならない。ただし、当該措置を講ずることが困難な場合であって、当該措置を講じないことについて倫理審査委員会に意見を求めた上で研究機関の長が許可したときは、この限りでない。この場合において、研究責任者等は、当該撤回又は拒否の内容に従った措置を講じない旨及びその理由を被験者等に説明し、その理解を得るよう努めなければならない。

(1) 遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることに関して与えた同意の全部又は一部の撤回

(2) 代諾者が同意を与えた遺伝子治療等臨床研究について、被験者からのインフォームド・コンセントの手続における、当該遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることの全部又は一部に対する拒否

6 外国にある者に試料・情報を提供する場合の取扱い

(1) 研究責任者等は、外国(個人情報保護委員会が個人情報保護法施行規則第15条第1項各号のいずれにも該当する外国として定めるものを除く。以下この6において同じ。)にある者(個人情報保護法施行規則第16条各号に掲げる基準のいずれかに適合する体制を整備している者を除く。以下この(1)、(2)及び(3)において同じ。)に対し、試料・情報を提供する場合(当該試料・情報の取扱いの全部又は一部を外国にある者に委託する場合を含む。)は、当該者に当該試料・情報を提供することについて、あらかじめ、被験者等の同意を受けなければならない。

(2) (1)により被験者等の同意を受けようとする場合に、当該同意を受けることが困難であって次のいずれかに該当するときは、当該同意の有無にかかわらず、当該試料・情報を外国にある者に提供することができる。

イ 当該試料・情報が次に掲げる要件を満たすとき

(イ) 提供する試料が、特定の個人を識別することができない状態にある場合であって、当該外国にある者において当該試料を用いることにより個人情報が取得されることがないこと

(ロ) 提供する情報が、匿名加工情報であること

ロ 次の(イ)から(ハ)までに掲げる要件の全てを満たしていることについて、倫理審査委員会の意見を求めた上で、研究機関の長の許可を得ているとき

(イ) 次に掲げるいずれかの要件を満たしていること

① 学術研究機関等に該当する研究機関が当該試料・情報を学術研究目的で共同研究機関である外国にある者に提供する必要がある場合であって、被験者の権利利益を不当に侵害するおそれがないこと

② 学術研究機関等に該当する外国にある者に当該試料・情報を提供する場合であって、当該外国にある者が学術研究目的で取り扱う必要があり、被験者の権利利益を不当に侵害するおそれがないこと

③ 当該試料・情報を提供することに特段の理由があること

(ロ) 当該研究の実施及び当該試料・情報の外国にある者への提供について、次の①から⑨までに掲げる全ての事項を被験者等に通知し、又は被験者等が容易に知り得る状態に置いていること

① 試料・情報の利用目的及び利用方法(外国にある者に提供する方法を含む。)

② 提供する試料・情報の項目

③ 試料・情報の提供を開始する予定日

④ 試料・情報の提供を行う機関(提供元機関)の名称及びその長の氏名

⑤ 試料・情報の提供を受ける機関(提供先機関)の名称及び試料・情報の管理について責任を有する者の氏名

⑥ 提供する試料・情報の取得の方法

⑦ 被験者等の求めに応じて、被験者が識別される試料・情報の提供を停止する旨

⑧ ⑦の被験者等の求めを受け付ける方法

⑨ 第2章第4節第1の6(3)に規定する事項

(ハ) 当該外国にある者に提供することについて被験者等が拒否できる機会を保障すること

(3) 研究責任者等は、(1)により被験者等の同意を受けようとする場合又は(2)(イの場合を除く。)により外国にある者に試料・情報を提供する場合には、あらかじめ、次に掲げる情報を当該被験者等に提供しなければならない。

イ 当該外国の名称

ロ 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報

ハ 当該外国にある者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報

(4) 研究責任者等は、外国にある者(個人情報保護法施行規則第16条各号に掲げる基準のいずれかに適合する体制を整備している者に限る。)に対し、被験者等の同意を受けずに試料・情報を提供した場合、個人情報保護法施行規則第18条に定めるところにより、当該外国にある者による相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、被験者等の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を当該被験者等に提供しなければならない。

第2 代諾者からインフォームド・コンセントを受ける場合の手続等

1 代諾の要件等

(1) 研究責任者等は、次に掲げる全ての要件に適合している場合でなければ、第1の規定による手続において代諾者からインフォームド・コンセントを受けてはならない。

イ 研究計画書に次に掲げる全ての事項が記載されていること。

(イ) 代諾者の選定方針

(ロ) 代諾者への説明事項((ハ)に関する説明を含む。)

(ハ) ロ(イ)又は(ロ)に該当する者を被験者とすることが必要な理由

ロ 被験者が次のいずれかに該当すること。

(イ) 未成年者

(ロ) 成年であって、インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される者

(2) 研究責任者等は、第1の規定による手続において代諾者からインフォームド・コンセントを受ける場合には、(1)イ(イ)の選定方針に従って代諾者を選定し、当該代諾者に対して、第1の3の規定によるほか、(1)イ(ロ)の説明事項を説明しなければならない。

(3) 研究責任者等は、代諾者からインフォームド・コンセントを受けた場合であって、被験者が中学校等の課程を修了している又は16歳以上の未成年者であり、かつ、遺伝子治療等臨床研究を実施されることに関する十分な判断能力を有すると判断されるときは、当該被験者からもインフォームド・コンセントを受けなければならない。

2 インフォームド・アセントを得る場合の手続等

(1) 研究責任者等は、代諾者からインフォームド・コンセントを受けた場合であって、被験者が遺伝子治療等臨床研究を実施されることについて自らの意向を表することができると判断されるときは、インフォームド・アセントを得るよう努めなければならない。ただし、1(3)の規定により被験者からインフォームド・コンセントを受けるときは、この限りでない。

(2) 研究責任者等は、(1)の規定によるインフォームド・アセントの手続を行うことが予測される遺伝子治療等臨床研究を実施しようとする場合には、あらかじめ被験者への説明事項及び説明方法を研究計画書に記載しなければならない。

(3) 研究責任者等は、(1)の規定によるインフォームド・アセントの手続において、被験者が、遺伝子治療等臨床研究が実施又は継続されることの全部又は一部に対する拒否の意向を表した場合には、その意向を尊重するよう努めなければならない。ただし、当該遺伝子治療等臨床研究を実施又は継続することにより被験者に直接の健康上の利益が期待され、かつ、代諾者がそれに同意するときは、この限りでない。

第5節 厚生労働大臣の意見等

第1 厚生労働大臣の意見

1 厚生労働大臣は、研究機関の長の求めに応じ、あらかじめ遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の重大な変更に関し意見を述べるものとする。

2 厚生労働大臣は、遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の重大な変更について意見を求められた場合において、複数の有識者の意見を踏まえ、当該遺伝子治療等臨床研究が次のいずれかに該当すると判断したときは、当該遺伝子治療等臨床研究の医療上の有用性及び倫理性について厚生科学審議会に意見を求めるものとする。

(1) 遺伝子を細胞内に導入する際に用いられる組換え遺伝子等であって新規のもの又は遺伝子の新規の投与方法を用いていること。

(2) 遺伝子の改変に用いられるタンパク質、核酸等であって新規のもの又は遺伝子の新規の改変方法を用いていること。

(3) 他の遺伝子治療等臨床研究において対象とされたことのない疾病が対象疾患であること。

(4) 新規の遺伝子治療等の方法を用いていること((1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。)。

(5) その他厚生科学審議会に意見を求めることが必要と認められる事項を含んでいること。

3 厚生労働大臣は、2の規定により厚生科学審議会に意見を求める必要がないと判断したときは、意見を求められた日から起算して30日以内に、当該遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の重大な変更に関し意見を述べるものとする。

第2 重篤な有害事象等に係る厚生労働大臣の意見

厚生労働大臣は、第1節第2の1(4)ロ若しくはハ又は第7節第1の2(1)の規定に基づき研究責任者から報告を受けた場合には、必要に応じ、遺伝子治療等臨床研究に関して意見を述べるものとする。

第3 厚生労働大臣の調査等

厚生労働大臣は、第1の1又は第2の規定に基づき意見を述べるときその他必要があると認めるときは、研究機関の長に対し第1節第5の3(2)に定める書類その他必要な資料の提出を求めるとともに、当該研究機関の長の承諾を得て当該研究機関の調査その他必要な調査を行うものとする。

第6節 個人情報等及び試料に係る基本的責務

第1 個人情報等の保護

研究者等及び研究機関の長は、個人情報の不適正な取得及び利用の禁止、正確性の確保等、安全管理措置、漏えい等の報告、開示等請求への対応などを含め、遺伝子治療等臨床研究における個人情報等の取扱いに関して、この指針の規定のほか、個人情報保護法に規定する個人情報取扱事業者や行政機関等に適用される規律、条例等を遵守しなければならない。

第2 試料の保護

研究者等及び研究機関の長は、試料の取扱いに関して、個人情報等と同様に、この指針の規定を遵守するほか、個人情報保護法や条例等の規定に準じて、必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

第3 死者の試料・情報の保護

研究者等及び研究機関の長は、死者の尊厳及び遺族等の感情に鑑み、死者について特定の個人を識別することができる試料・情報に関しても、この指針の規定のほか、個人情報保護法、条例等の規定に準じて適切に取り扱い、必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

第7節 重篤な有害事象への対応

第1 重篤な有害事象への対応

1 研究者の対応

研究者は、遺伝子治療等臨床研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、2(2)の規定による手順書等に従い、被験者等への説明等、必要な措置を講ずるとともに、速やかに研究責任者に報告しなければならない。

2 研究責任者の対応

(1) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、速やかに、その旨を研究機関の長及び総括責任者に報告するとともに、(2)の規定による手順書等に従い、適切な対応を図らなければならず、また、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に携わる研究者に対して、速やかに当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない。この場合において、研究責任者は、当該有害事象について、倫理審査委員会に意見を求め、必要な措置を講ずるとともに、速やかに厚生労働大臣に報告しなければならない。

(2) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究を実施しようとする場合には、あらかじめ、重篤な有害事象が発生した際に研究者が実施すべき事項に関する手順書を作成し、当該手順書に従って適正かつ円滑に対応が行われるよう必要な措置を講じなければならない。

3 総括責任者の対応

総括責任者は、2(1)の規定により報告を受けた場合は、自らが所属する研究機関の長及び他の研究機関の研究責任者に対し、速やかに、その旨を報告しなければならない。

4 研究機関の長の対応

研究機関の長は、研究責任者が重篤な有害事象に関し倫理審査委員会に意見を求める前に、必要に応じ、研究責任者に対し、遺伝子治療等臨床研究の中止又は暫定的な措置を講ずるよう、指示することができる。

第8節 遺伝子治療等臨床研究の信頼性確保

第1 利益相反の管理

1 研究者は、遺伝子治療等臨床研究を実施するときは、個人の収益等、当該遺伝子治療等臨床研究に係る利益相反に関する状況を研究責任者に報告し、その透明性を確保するよう適切に対応しなければならない。

2 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究を実施するときは、当該遺伝子治療等臨床研究に係る利益相反に関する状況を把握し、研究計画書に記載しなければならない。

3 研究責任者等は、2の規定により研究計画書に記載された利益相反に関する状況を、第4節第1に規定するインフォームド・コンセントを受ける手続において被験者等に説明しなければならない。

第2 試料及び情報等の保管

1 研究者は、遺伝子治療等臨床研究に用いられる情報及び当該情報に係る資料(試料・情報の提供に関する記録を含む。以下「情報等」という。)の正確性を確保しなければならない。

2 研究責任者は、試料及び情報等を保管するときは、4の規定による手順書に基づき、研究計画書にその方法を記載するとともに、情報等の正確性が確保されるよう研究者を指導・管理し、試料及び情報等の漏えい、混交、盗難、紛失等が起こらないよう必要な管理を行わなければならない。

3 研究責任者は、共同研究機関の研究責任者に対し試料及び情報等を提供する場合には、個人情報の保護の観点から、特定の個人を識別することができないように加工するよう努めなければならない。

4 研究機関の長は、試料及び情報等の保管に関する手順書を作成し、当該手順書に従って、当該研究機関が実施する遺伝子治療等臨床研究に係る試料及び情報等が適切に保管されるよう必要な監督を行わなければならない。

5 研究責任者は、4の規定による手順書に従って、2の規定による管理の状況を研究機関の長に報告しなければならない。

6 研究責任者は、被験者が将来新たに病原体に感染した場合等に、その原因が遺伝子治療等臨床研究に起因するかどうかを明らかにするため、最終産物を一定期間保管するとともに、当該被験者に最終産物を投与する前後の血清等の試料及び情報等について総括報告書を研究機関の長及び総括責任者に提出した日から起算して10年を経過する日までの間、保管するものとする。また、仮名加工情報及び削除情報等(個人情報保護法第41条第1項の規定により行われた加工の方法に関する情報にあっては、その情報を用いて仮名加工情報又は匿名加工情報の作成に用いられた個人情報を復元することができるものに限る。)並びに匿名加工情報及び加工方法等情報の保管(削除情報等又は加工方法等情報については、これらを破棄する場合を除く。)についても同様とする。また、他の研究機関に提供した試料・情報について提供した日から起算して3年を経過する日までの間、他の研究機関から提供を受けた試料・情報について遺伝子治療等臨床研究の終了を報告した日から起算して5年を経過する日までの間、保管するものとする。これらの場合において、研究機関の長は、当該期間、最終産物等が適切に保管されるよう必要な監督を行わなければならない。

7 研究機関の長は、試料又は情報等を廃棄する場合には、特定の個人を識別することができないようにするための適切な措置が講じられるよう必要な監督を行わなければならない。

第3 モニタリング及び監査

1 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究の信頼性を確保するため、研究機関の長の許可を得た研究計画書に定めるところにより、モニタリング及び必要に応じて監査を実施しなければならない。

2 研究責任者は、研究機関の長の許可を得た研究計画書に定めるところにより適切にモニタリング及び監査が行われるよう、モニタリングに従事する者及び監査に従事する者に対して必要な指導・管理を行わなければならない。

3 研究責任者は、監査の対象となる遺伝子治療等臨床研究の実施に携わる者及びそのモニタリングに従事する者に監査を行わせてはならない。

4 モニタリングに従事する者は、当該モニタリングの結果を研究責任者に報告しなければならず、また、監査に従事する者は、当該監査の結果を研究責任者及び研究機関の長に報告しなければならない。

5 モニタリングに従事する者及び監査に従事する者は、その業務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その業務に従事しなくなった後も、同様とする。

6 研究機関の長は、1の規定によるモニタリング及び監査の実施に協力するとともに、当該実施に必要な措置を講じなければならない。

第9節 雑則

第1 普及啓発

研究者は、あらゆる機会を利用して、遺伝子治療等臨床研究に関する普及啓発に努めるものとする。

第3章 臨床研究法に定める臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等

遺伝子治療等臨床研究のうち、臨床研究法第2条第1項に規定する臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究については、臨床研究法の規定によるほか、この章に定めるところによる。

第1 研究機関の長の責務

研究機関の長は、次に掲げる業務を行わなければならない。

1 研究責任者から遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の変更(軽微な変更を除く。)の許可を求められたときは、倫理審査委員会の述べた意見を参考に当該許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置について決定すること。

2 研究責任者から遺伝子治療等臨床研究の実施又は研究計画書の重大な変更の許可を求められたときは、1の規定に基づき当該許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置について決定するに当たって、倫理審査委員会の述べた意見を参考に、研究計画書及び次に掲げる事項を記載した書類を厚生労働大臣に提出し、その意見を求めること。

(1) 研究者の略歴及び研究業績

(2) 研究機関の施設設備の状況

(3) 遺伝子治療等臨床研究に関する有効性を示唆する試験の結果及び安全性に関する研究の成果

(4) 実施しようとする遺伝子治療等臨床研究に関連する国内外の研究状況(当該遺伝子治療等臨床研究を実施しようとしている研究者が自ら所属する研究機関において既に実施したものを除く。)

(5) 倫理審査委員会における審査の過程及び結果

(6) インフォームド・コンセントにおける説明及び同意に関する文書の様式

(7) その他必要な事項

第2 研究計画書に関する手続

1 研究機関の長による許可

研究機関の長は、倫理審査委員会及び厚生労働大臣の意見を尊重し、遺伝子治療等臨床研究の実施(研究計画書を変更(軽微な変更を除く。)する場合を含む。以下1において同じ。)の許可又は不許可その他遺伝子治療等臨床研究に関し必要な措置を決定しなければならない。この場合において、当該研究機関の長は、倫理審査委員会又は厚生労働大臣が遺伝子治療等臨床研究の実施について不適当である旨の意見を述べたときは、当該遺伝子治療等臨床研究の実施を許可してはならない。

2 研究中の手続

(1) 研究責任者は、研究計画書に定めるところにより、遺伝子治療等臨床研究の進捗状況、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に伴う有害事象の発生状況等を、研究機関の長及び総括責任者に文書で報告するとともに、倫理審査委員会に意見を求めなければならない。この場合において、進捗状況に関しては、少なくとも毎年1回以上、報告するものとする。

(2) 研究責任者は、遺伝子治療等臨床研究の進捗状況、当該遺伝子治療等臨床研究の実施に伴う有害事象の発生状況等について、被験者に対して適切な対応をとらなければならない。この場合において、当該研究責任者は、倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重し、有害事象の発生状況、改善事項等に関して必要な措置を講ずるとともに、厚生労働大臣に対し報告を行わなければならない。

第3 研究計画書の記載事項

研究計画書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

1 導入する遺伝子に関し次に掲げる事項

(1) 開発の経緯

(2) 遺伝子の機能及び構造

(3) 遺伝子の導入方法

(4) 被験者に投与する最終産物の組成

2 遺伝子の改変に用いるタンパク質、核酸等に関し次に掲げる事項

(1) 開発の経緯

(2) タンパク質、核酸等の機能及び構造

(3) 遺伝子の改変方法

(4) 被験者に投与する最終産物の組成

3 特性解析及び品質試験の結果

4 被験者への投与に用いられる特殊な機器及び医療材料

第4 倫理審査委員会の設置等

倫理審査委員会の設置者は、遺伝子治療等臨床研究の審査に用いた資料を、当該遺伝子治療等臨床研究の終了について報告された日から起算して10年を経過する日までの間、適切に保管しなければならない。

第5 インフォームド・コンセントを受ける手続等

1 研究責任者等は、外国(個人情報保護委員会が個人情報保護法施行規則第15条第1項各号のいずれにも該当する外国として定めるものを除く。以下この第5において同じ。)にある者(個人情報保護法施行規則第16条各号に掲げる基準のいずれかに適合する体制を整備している者を除く。以下この1、2及び3において同じ。)に対し、試料・情報を提供する場合(当該試料・情報の取扱いの全部又は一部を外国にある者に委託する場合を含む。)は、当該者に当該試料・情報を提供することについて、あらかじめ、被験者等の同意を受けなければならない。

2 1により被験者等の同意を受けようとする場合に、当該同意を受けることが困難であって次のいずれかに該当するときは、当該同意の有無にかかわらず、当該試料・情報を外国にある者に提供することができる。

(1) 当該試料・情報が次に掲げる要件を満たすとき

イ 提供する試料が、特定の個人を識別することができない状態にある場合であって、当該外国にある者において当該試料を用いることにより個人情報が取得されることがないこと

ロ 提供する情報が、匿名加工情報であること

(2) 次のイからハまでに掲げる要件の全てを満たしていることについて、倫理審査委員会の意見を求めた上で、研究機関の長の許可を得ているとき

イ 次に掲げるいずれかの要件を満たしていること

(イ) 学術研究機関等に該当する研究機関が当該試料・情報を学術研究目的で共同研究機関である外国にある者に提供する必要がある場合であって、被験者の権利利益を不当に侵害するおそれがないこと

(ロ) 学術研究機関等に該当する外国にある者に当該試料・情報を提供する場合であって、当該外国にある者が学術研究目的で取り扱う必要があり、被験者の権利利益を不当に侵害するおそれがないこと

(ハ) 当該試料・情報を提供することに特段の理由があること

ロ 当該研究の実施及び当該試料・情報の外国にある者への提供について、次に掲げる事項を全て被験者等に通知し、又は被験者等が容易に知り得る状態に置いていること

(イ) 試料・情報の利用目的及び利用方法(外国にある者に提供する方法を含む。)

(ロ) 提供する試料・情報の項目

(ハ) 試料・情報の提供を開始する予定日

(ニ) 試料・情報の提供を行う機関(提供元機関)の名称及びその長の氏名

(ホ) 試料・情報の提供を受ける機関(提供先機関)の名称及び試料・情報の管理について責任を有する者の氏名

(ヘ) 提供する試料・情報の取得の方法

(ト) 被験者等の求めに応じて、被験者が識別される試料・情報の提供を停止する旨

(チ) (ト)の被験者等の求めを受け付ける方法

(リ) 第3章第5の3に規定する事項

ハ 当該外国にある者に提供することについて被験者等が拒否できる機会を保障すること

3 研究責任者等は、1又は2((1)による場合を除く。)により外国にある者に試料・情報を提供する場合には、あらかじめ、次に掲げる情報を当該被験者等に提供しなければならない。

(1) 当該外国の名称

(2) 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報

(3) 当該外国にある者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報

4 研究責任者等は、外国にある者(個人情報保護法施行規則第16条各号に掲げる基準のいずれかに適合する体制を整備している者に限る。)に対し、被験者等の同意を受けずに試料・情報を提供した場合、個人情報保護法施行規則第18条に定めるところにより、当該外国にある者による相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、被験者等の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を当該被験者等に提供しなければならない。