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○生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業の適切な実施等に関する指針

(平成三十年九月二十八日)

(厚生労働省告示第三百四十三号)

生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号)第七条第五項の規定に基づき、生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業の適切な実施等に関する指針を次のように定め、平成三十年十月一日から適用することとしたので、同項の規定により、公表する。

生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業の適切な実施等に関する指針

生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況などの多様な状況に応じた支援を行うことが必要であり、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成三十年法律第四十四号。以下「改正法」という。)により、生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号。以下「法」という。)の一部が改正され、都道府県等(法第四条第三項に規定する「都道府県等」をいう。以下同じ。)は、生活困窮者自立相談支援事業(法第三条第二項に規定する「生活困窮者自立相談支援事業」をいう。以下同じ。)及び生活困窮者住居確保給付金(法第三条第三項に規定する「生活困窮者住居確保給付金」をいう。以下同じ。)の支給のほか、生活困窮者就労準備支援事業(法第三条第四項に規定する「生活困窮者就労準備支援事業」をいう。以下同じ。)及び生活困窮者家計改善支援事業(法第三条第五項に規定する「生活困窮者家計改善支援事業」をいう。以下同じ。)を行うように努めるものとされた。

生活困窮者自立相談支援事業並びに生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業(以下「両事業」という。)については、これらを都道府県等において一体的に実施することにより、事業間の相互補完的かつ連続的な支援が可能となり、生活困窮者に対する自立の支援をより効果的かつ効率的に行うことができる。このため、平成三十四年度には全ての都道府県等が両事業を行うことを目指して、平成三十一年度から平成三十三年度までの間を都道府県等における両事業の実施を集中的に促進する期間とし、国及び都道府県等は両事業が計画的かつ効果的に実施されるよう必要な措置を講ずることとしている。

本指針は、法第七条第一項に規定された努力義務を受けて両事業の適切な実施を図るとともに、生活困窮者自立相談支援事業と両事業を一体的に実施するための方策、留意点等を示すものである。なお、本指針において示す事業実施の方策については、参考事例として示すものであり、都道府県等においては各々の実情に合わせた方策の個別の検討が必要であることについて留意されたい。

第一 両事業の実施

各都道府県等においては、法第二条に規定する基本理念にのっとり、生活困窮者に対する自立の支援を行うに当たって、生活困窮者が置かれている就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況などの多様な状況に応じた支援を可能とするため、法に基づく事業の実施を充実させていくことが求められる。特に、各都道府県等内において生活困窮者自立相談支援事業と両事業が、専門性を維持しながら実施されていることが、生活困窮者の自立の促進に当たって効果的である。その一方で、都道府県等によっては、支援ニーズの多少や地域資源の偏在といった個別の事情により、単独の都道府県等では両事業を実施することが困難になっている実態も見受けられることから、各都道府県等において両事業の実施体制の整備を行う際の考え方について以下のとおり示す。

一 生活困窮者就労準備支援事業の実施に当たっての取組方策

生活困窮者就労準備支援事業の対象者は、ひきこもり状態にある者や長期間就労することができていない者など、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者であり、都道府県等の人口の多少を問わず該当する者は存在する。また、一般就労を希望する生活困窮者の中には複雑かつ複合的な課題を抱え、直ちには一般就労に至らない者も多く存在する。このような生活困窮者に対しては、生活困窮者就労準備支援事業において、就労に向けて生活習慣の獲得などの基礎的な能力の向上を図る支援を実施することが求められる。したがって、生活困窮者就労準備支援事業による自立の支援は全国的に提供されることが望ましい。以下、各都道府県等がそれぞれの実情に応じて生活困窮者就労準備支援事業を実施する際の取組方策について示す。

1 都道府県等によっては、支援ニーズの多少やマンパワーの不足など、個別に実情が異なるが、それらの実情に応じて柔軟に事業を実施するに当たって、次に掲げる方策が考えられる。

(一) 就労体験の中で、日常生活自立、社会生活自立及び就労自立に向けた取組を一括して実施すること。

(二) 複数の都道府県等で連携し、広域的な事業の実施体制を整備すること。

2 都道府県等によっては、地域資源の偏在や支援手法の蓄積不足など、個別に実情が異なるが、他制度や関係機関等と連携し、既存の地域資源を活用した実施体制を整備するに当たって、次に掲げる方策が考えられる。

(一) 地域資源である障害福祉サービスと連携した事業の実施など多様な地域資源の活用を行うこと。

(二) 被保護者に対して就労準備支援を行う事業と一体的に実施し、切れ目のない支援を行うこと。

二 生活困窮者家計改善支援事業の実施に当たっての取組方策

生活困窮者家計改善支援事業の対象者は、収入、支出その他家計の状況を適切に把握することが難しい生活困窮者や家計の改善の意欲が低い生活困窮者であり、都道府県等の人口の多少を問わず該当する者は存在する。また、当該事業は家計の課題に対する踏み込んだ相談に応じ、生活困窮者とともに家計の状況を明らかにして家計の改善に向けた意欲を引き出した上で、生活困窮者自身による家計の管理に向けた支援を行う専門性を要するものである。したがって、生活困窮者家計改善支援事業による自立の支援は全国的に提供されることが望ましい。以下、各都道府県等がそれぞれの実情に応じて生活困窮者家計改善支援事業を実施する際の取組方策について示す。

1 都道府県等によっては、支援ニーズの多少や地域資源の偏在など、個別に実情が異なるが、それらの実情に応じて柔軟に事業を実施するに当たっては、生活困窮者家計改善支援事業の専門性を維持しつつ、複数の都道府県等で連携することにより広域的な事業の実施体制を整備し、特定曜日のみの実施や巡回による実施などの工夫を行うこと。

2 都道府県等によっては、地域資源の偏在や支援手法の蓄積不足など、個別に実情が異なるが、他制度や関係機関等と連携し、既存の地域資源を活用した実施体制を整備するに当たって、次に掲げる方策が考えられる。

(一) 消費生活相談における家計に関する相談と連携した事業の実施など多様な地域資源の活用を行うこと。

(二) 被保護者に対して家計改善支援を行う事業と一体的に実施し、切れ目のない支援を行うこと。

三 留意点

両事業について、複数の都道府県等で連携し、広域的な事業実施体制を整備した場合であっても、事業の実施主体はあくまで個々の都道府県等であって、事業実施の判断は個別に行われるべきであることに留意されたい。

四 生活困窮者を両事業の利用につなげる取組

都道府県等においては、両事業の実施体制を整備するとともに、両事業の対象者となる潜在的な生活困窮者の支援のニーズを把握し、事業の利用につなげる取組も進める必要があることから、アウトリーチの観点からの取組を促進していくことが求められる。また、各生活困窮者の課題に合わせた支援が実施できるよう、多様な地域資源の開拓とそれら地域資源との連携を進め、支援内容の充実を図っていくことも期待される。特に、生活困窮者就労準備支援事業については、生活困窮者自立支援法施行規則(平成二十七年厚生労働省令第十六号)の改正により、六十五歳未満としていた年齢要件を撤廃したことを踏まえて就労意欲のある高齢者に対して積極的な働きかけを行うことや、資産及び収入要件の明確化を踏まえて生活困窮者個人の状況に一層焦点を当てた支援の要否の判断を行うことが可能となった。これらの取組を進め、支援を必要としている者にそれぞの状況に合わせたオーダーメイドの支援を確実に届けていくことが重要である。

第二 生活困窮者自立相談支援事業及び両事業を一体的に実施する方策

生活困窮者自立相談支援事業及び両事業については、これらを都道府県等において一体的に実施することにより、事業間の相互補完的かつ連続的な支援が可能となり、生活困窮者に対する自立の支援をより効果的かつ効率的に行うことができる。それぞれの事業間の相互補完的かつ連続的な関係性としては、生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者就労準備支援事業間では、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、生活困窮者就労準備支援事業による就労体験や生活習慣の獲得などの基礎的な能力の向上を図る支援を行い、就労に向けた準備が整った段階で生活困窮者自立相談支援事業による公共職業安定所(職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第八条に規定する公共職業安定所をいう。)への同行支援等を実施するといった事例が考えられる。生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業間では、生活困窮者自立相談支援事業により生活困窮者の家計面も含めた全般的な相談支援を行う一方、自らの家計の状況を把握することについて特に困難がある生活困窮者を生活困窮者家計改善支援事業の利用につなげ、生活困窮者の家計の改善に向けた意欲を引き出す支援を連携して実施するといった事例が考えられる。両事業間では、生活困窮者家計改善支援事業により生活困窮者の家計面の状況を明らかにした上で、必要となる収入を得るための就労に向けた準備を行う生活困窮者就労準備支援事業の利用につなげるといった事例が考えられる。

これら事業間の連携の効果も踏まえ、以下、都道府県等において生活困窮者自立相談支援事業及び両事業を一体的に実施するための取組方策について示す。

一 法第三条第二項第三号に規定する計画(以下「自立支援計画」という。)の協議又は自立支援計画に基づく支援の提供状況の確認の際に両事業に従事する者が参画することや、両事業に従事する者に対して支援の実施状況や支援対象となっている生活困窮者の状態に関する情報を共有することなどにより、両事業との緊密な連携を図る体制を確保すること。

二 両事業を実施する中で把握した生活困窮者を生活困窮者自立相談支援事業につなぐ体制を確保すること。

三 留意点

生活困窮者自立相談支援事業と両事業の一体的な実施を行う際には、事業間の緊密な連携を図るとともに、両事業の専門性を維持し、生活困窮者自立相談支援事業と両事業との間で適切な役割分担の上、支援が実施される必要があることについて留意されたい。

第三 都道府県による市等に対する法に基づく事業の実施に向けた支援策

都道府県は、法第四条第二項第一号の規定により市等(法第四条第一項に規定する「市等」をいう。以下同じ。)が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給、両事業並びに生活困窮者一時生活支援事業(法第三条第六項に規定する「生活困窮者一時生活支援事業」をいう。以下同じ。)、生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業及びその他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われるよう、市等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う責務を有しており、更に当該責務を効果的かつ効率的に果たしていくために、改正法第一条の規定により都道府県の市等の職員に対する研修等事業(法第十条第一項に規定する事業をいう。以下「都道府県事業」という。)が創設された。都道府県においては、当該責務及び都道府県事業に基づき、広域的な見地に基づく市等に対する支援が一層促進されることが期待される。以下、都道府県による支援の具体的な取組方策を示す。

一 法に基づく事業及び給付金の支給を効果的かつ効率的に行うための体制の整備のための支援

地域資源の偏在や人材不足といった実情から、単独での事業実施が困難になっている市等も存在することから、広域自治体である都道府県において、複数の都道府県等の連携による事業実施体制の整備や地域資源の開拓などの取組を行うことで、市等の両事業を始めとした法に基づく事業の実施を促進することなどが考えられる。

二 法に基づく事業に従事する職員の資質の向上や支援手法に関する助言等の人材確保に向けた支援

複雑かつ複合的な課題を抱える生活困窮者に対する支援を実施するためには、事業に従事する職員が実施する支援の質の向上や支援手法に関し、情報共有を進める必要があり、広域自治体である都道府県において、支援に従事する職員に対する研修の事業の実施や、支援困難事例に関する支援手法の共有など事業に従事する職員間の市等の圏域を越えた関係性作りを行うほか、情報共有の推進、個別のヒアリングの実施による助言を行うことなどが考えられる。

第四 国による都道府県等に対する法に基づく事業の実施に向けた支援策

国は、法第四条第三項の規定により都道府県等が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給、両事業並びに生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者である子どもの学習の援助を行う事業及びその他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われるよう、都道府県等に対し、必要な助言、情報の提供その他の援助を行う責務を有している。各都道府県等においてその実情に合わせ法に基づく事業の実施を充実させていくためには、国が都道府県等の状況に応じ、様々な支援を行っていくことが必要である。以下、国による支援の具体的な取組方策を示す。

一 両事業の実施が低調な都道府県等に対する個別のヒアリングの実施その他の援助を継続的に行うことにより、都道府県等における両事業を実施するための体制の整備を支援すること。

二 各都道府県等における法に基づく事業を実施するための体制の整備の状況に関し、情報の提供を行うこと。

三 生活困窮者自立支援制度の認知度を高めるため、広報媒体等について各年齢層や広報先ごとに作成し、積極的な展開を図ること。

四 利用勧奨等の努力義務に関し、福祉、就労、教育、税務、住宅その他の関係部局への周知を行うこと。